二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜コメントください!!〜 ( No.436 )
- 日時: 2011/07/19 17:53
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
18 笑いあうため
「十四年前、貴女を呪いの子供だと、でっちあげたのは私ですわ」
「なん、ですって?」
夏未が驚いた表情で、聞き返した。チェルトはその表情を見ると、悪そうに微笑んだ。
「フフ、もちろん、これは貴女をフェアリー王国の姫と接触させるためですわ」
「あり得ない!!私のお父様とお母様は病で…」
「いいえ、私がその二人を呪い殺したのです」
「う、そだ…」
〜回想〜
「十四年前に?」
「えぇ、一人邪魔な王女がいましてね…貴女も知っているでしょ?スノー王国『夏未姫』」
「確か……炎と氷の魔法を使う二刀流の剣士ですわよね?」
「そうです。まず彼女が私の計画の邪魔になるでしょう。そこで、貴女を十四年前に送り込んで、過去を変えてもらいたいです」
「そんなことができますの?」
「時間をさかのぼれば、難しいことではありません」
「了解しました。アルティス様の仰せのままに…」
〜十四年前—スノー王国〜
「国の王女が生まれたぞ!!」
「時期この国の姫になるお方だ」
「…手始めに女王と王を殺しましょう」
「女王様!!!しっかりなさってください!!!」
夏未の出産から三日後、スノー王国の女王はとつぜん心臓発作を起こし倒れた。その二日後、王も病にかかり、半日も経たないうちに天国へ旅立ってしまった。
「王様と女王様が亡くなられたなんて…」
「あぁ、神はどうしてこんなにも不公平なんでしょうか…」
これで、一つの過去がすり替えられた。王と王女の死——
「さ〜て、お次は国の人々の家族ですわね。それと、あの女の氷の力を消さなければ」
「お、俺の家族が全員死んだ…」
「私のお兄さんも…まだ若いのに、どうして…?」
「お母さん!!お父さん!!起きてよ!!僕を一人にしないでぇ!」
「もう君の両親は助かる見込みがないんだ!諦めてくれ…」
「そんなの嫌だよ!!!」
男性が絶望に溺れる、女性がすすり泣く、子供が大声で叫ぶ。スノー王国は人々の悲しみのメロディーによって奏でられていた。チェルトにとってこれはほんの少しの喜びにしかならなかった。
「フフフ、まだまだですわよ。後は彼女を片づければ…」
「氷の魔法が使えない!?」
「どういうことだ?」
「それにあの子の髪の色と瞳…あれはあり得ないわ」
「呪われているんだよ…あの子は…だから、王様も女王様も…亡くなられて…」
「この少女を牢獄へ連れていけ。何も食べさせなくていい、誰も見に行かなくてもよい。こいつを完全に人々の記憶、そして国から存在を消し去るんだ」
「どう、して…」
—この女が私の母親と父親を奪った?
—この女が私を元ある幸せを奪った?
「これもアルティス様の考えですわ。本当は貴女は次期スノー国の王女になるはずだった。でも、それだとアルティス様の計画の邪魔になってしまう。だから、過去に私を送り、貴女から氷の力を奪い、呪いの子供として過去をすり替えた」
—やめて…
「アルティス様の計画のために、貴女やほかの四人は冬花姫と接触する必要があった。でも、あのまま未来に進んでしまえば、貴女は冬花姫と接触することは、ほぼ0%…でも、あの女が貴女を救ったのは計算外でしたけど」
—お願いだから…
「それにあの四人の『大切な人』を消したのもアルティス様…」
「貴方たちはアルティス様の偉大な計画のための操り人形でしたの」
「それに、冬花姫もアルティス様の道具にすぎませんわ。用が終わったら排除なさいますけど、その時に一緒に死にます?それとも今、屍になりたくて?あっ、そういえば今頃私にお兄様が城を襲っているはずですわ。あの方たちと一緒に逝けるのですから、さびしくはないですわよ?」
話を聞いていた夏未は、下を俯いたまま声も出なかった。春奈たちに危機が迫っているというのに、自分はここで動けずに馬鹿みたいに捕まっている。それに冬花を侮辱され、心の底から初めて味わう感情が生み出た——憎悪という名の怒り。
「あら?ショックで話すことができなくなりましたの?」
「……う…」
「?」
「ちがう…」
力を入れた手から、赤い炎が燃え始める。蔓は引火したところからバチバチと音を立て燃え始める。
「なっ!この蔓は燃えないはずですわよ!?」
「私たちは操り人形なんかじゃない…冬花は道具なんかじゃない…」
「っ!!」
チェルトは危険を感じとり、すぐに右手を振りおろした。命令通り、蔓は夏未の体に巻きつこうと、向かってくる。だが、体に触れることなく、蔓は黒く焦げ、最後には灰となり消えてしまった。
「こんなこと、あるはずが…」
「私たちは、アルティスのためにこの国にいるんじゃない…」
「仲間たちと笑いあう……そのためにいるんだ!!」
炎が一気に空に向かって柱のように大きく渦巻き、夏未に縛りついていた蔓の鎖は砕け散った。水晶の園(クリスタル・ガーデン)もヒビが入り、少しずつ壊れていく。
「なっ!?」
「私の両親と国を奪った……守たちに苦しみを与えた、なにより冬花を侮辱したことを後悔しろ!!」
鬼のような形相で大太刀を振り上げた。柄の部分に削られている炎と竜が、赤く光り浮かんだ。
「消えろ!!この蔓野郎!!!」
「させませんわよ!!薔薇の兵士(ローズ・ソルジャー)!!」
チェルトを思わせる赤く咲きほこる薔薇が、天から大量に降ってくる。その一つ一つの薔薇が積み重なり、大量の女性の形をした分身を作り上げた。彼女たち(?)は両手に剣を持ち、向かってくる夏未に襲い掛かる。
「こ、この兵士たちは一人一人が私の二倍の強さを持っていますわ。こんな大人数相手にか、勝てますの?」
チェルトは勝ち誇った表情を見せた。水晶の園の効果が薄れ、魔力の消費が体を消費が体を縛りつけるが、この兵士であれば、もう勝ちは決まったも同然。脳裏に夏未の死にざまが目に思い浮かぶ。
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜コメントください!!〜 ( No.437 )
- 日時: 2011/07/19 17:53
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
「闇空刃(シャドー・クウハ)!!」
夏未に向かった三体の兵士は闇の刀で上半身と下半身を真っ二つに斬られた。
前方には白に近い青色の長い髪、深緑色のまっすぐな瞳がチェルトを睨む。
「あ…あなたは…」
「ずいぶんとお世話になったね。変態兄弟の妹さん?」
「美麗!遅い!!」
「しょうがないじゃない、あの変態さんに足止めされてたんだもん」
「ど、どうやってあの結界を…」
「あ〜、あの結界?どこかの毒舌お嬢さんの見事な蹴りで破壊されたよ」
「チッ!!行け!!ソルジャーたちよ!!」
薔薇の兵士たちが剣を振り上げて大量に襲い掛かる。
「美麗、後は任せた!!」
「えっ!?ちょっと!!」
美麗などの声は耳には届かなかった、今はただ目の前にいるあの女を倒す。それだけだった。美麗に構っている時間もない。冬花や春奈、そして取り込まれた守たちを助けなければならない。自分の両親を殺し、国を滅ぼし、そして、何より冬花を馬鹿にされたことが一番憎い。自分の、守たちの命の恩人である、彼女を侮辱されるのは一番許せない。
「火炎ノ一撃(フレイムインパクト)!!」
「ソルジャー!!」
夏未の剣を三体の兵士がガードをする。目と鼻の先に憎き敵がいるというのに、刀は動かない。
《夏未》
不意に背後から声がした。とても暖かくて明るくて、何より懐かしい匂いがする。全身に力が入った。その声はまるで自分を励ましているよう、そんな感じがした。振り向かなくてもわかる、それが誰なのかを。
(お父様…お母様…)
「あ…あぁ…」
チェルトは避けることも動くこともできず、炎の地獄に飲み込まれた。炎は大きく膨れ上がり、爆発した。チェルトも水晶の園もそれに近くにある森の木々までも、夏未の炎に吹き飛ばされた。後に残ったのは黒く焦げた地面、そして炎を纏ったフェニックス(夏未)と竜だけだった。
「あ……る……さ…ま」
「こっちも巻き込まれるところだったじゃない!使うなら最初に言ってよね」
「……」
「うん?夏未?」
美麗が夏未の俯いた顔を覗き込む。反応はない。
「夏未さぁ〜ん」
「えっ、あ、ごめん。ボーとしてた…」
照れたように右手で髪掻いた。何が起きたか分からないが、顔が少し悲しそうにも見える。
「それより、守たちが…」
「ゆ……い…許さない…」
「ハッ!?」
二人の背後にチェルトは地面に這いつくばりながら、声を出した。その声からはさっきまでのお嬢様らしさは一欠けらも感じられない。まるでゾンビのようだ。
「許せません…せめて貴女方二人だけは…」
「あの攻撃を受けて、こいつ、まだ生きているの?」
チェルトは衣服を破った。ボロボロのドレスの真っ白な肌が姿を現した。肌には二匹の絡み合っている黒い蛇と不気味な髑髏の印が怪しく光り出した。
「終わりですわよ…私も貴女方も!!」
「夏未!絶壊(ぜっかい)魔法陣だ!!逃げるよ!!」
美麗の声が聞こえていても、体が素直に話を聞いてくれない。足が地面につき、特に左足はもう折れ、とても歩けるような状態ではない。
「夏未!!」
「死ね!!」
光が強くなり、その直後、どす黒い空間がすべてを包み込んだ。