二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜波風美麗(少しだけ)登場!〜 ( No.444 )
日時: 2011/07/21 22:05
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

19 融合魔法

「あぶねぇ!」

夏未の体を抱き上げ、上空まで間一髪助け出したのは、ようやくあの空間から脱出した、守だった。足の裏が青色の雷でビリビリと火花を散らしている。おそらく、雷の魔力で浮いているのだろう。

「迅雷でも危なかったな…」
「なっちゃん!大丈夫!?」

夏未を下ろすと、茜がすぐに飛びついてきた。瞳が心配そうに見つめうるんでいる。

「大丈夫…どうやってあの結界を?」

力のなさそうな声で答え、茜の頭を優しく撫でた。

「秋が突破口を探し出した、こっちもあと一歩遅かったら、全員あの世いきだったかもしれねぇ」

晴矢がボソッと答えた。



〜回想〜

「これ、やばいかも…」

秋が窮地に立たされているように眉間に皺を寄せ、呟いた。

「何が?」
「この結界、時間制限があるから、時間内に出ないと、皆死ぬ」
「はぁ?」

守が聞き返した。すると、次に秋はめんどくさそうに顔を少し歪ませ、辺りを見渡した。感情をあまり出さないため、表情の変化は一緒に暮らしている守たちぐらいしか分からない。

「すぐにここから出ないとダメ、あと30分くらいだと思われ」
「さささ、30分!?でもでも、アツヤたちはどうするの?」
「リュウジなら探索の魔法が使えるけど、問題は方向音痴だから……」
「どうする?探しに行くのか?」

修也が聞き、秋は少し考えてから質問に答えた。

「探しに行くより、何か合図を出した方がいい…たとえば、大きな爆発とか、音の出る魔法…」
「だったら!」

守が刀を握っている右手を掲げ、魔法を発動しようとした。薄く頭上に魔方陣が現われる。

「ダメ!柱を一気に壊したら、私たちごと、この空間はぶっ飛ぶ!」

秋が感情的になるのはあまりない。それほど今の状況は危ないのだろう。まだ状況が読めていない守は吼える。

「じゃあ、どうすんだよ!」
「だから、皆を探して、この柱は規則順に壊していく。そうしたら出れるかも…あくまでも予想…しかも、柱ごとにどの属性の魔法で壊すか決められている」
「めんどくせぇ…」

無造作にバンダナでまとめてある紙をぐちゃぐちゃに掻く。

「とにかく、まずは風介かアツヤがいないとまずい…今は炎、雷、風しかないから…」
「ほかには何の属性が必要なんだ?」
「炎と風…それと氷、水、光…」
「水と光がいないぞ?どうするんだ?」

修也の言うことはもっともだ。今ここには、炎・氷・風・雷しかいない。光と水がいなければ、この空間から出ることはできない。つまり、残りの時間以内には何もできない。制限時間を過ぎ、空間ごと吹っ飛ばされ、死ぬのを待つだけだ。

「大丈夫…水は炎と氷、光は氷と雷で造れる…あとは、タイミングを合わせられるかどうかの問題…」
「氷と炎は晴矢と風介がいいけど…氷と雷はどうするの?」
「風介はもう使えないからアツヤ…雷は茜か守…でも、守の方がパワーあるからいいと思う…」
「でもな〜タイミング合わせられるのぉ?」
「だから、それが問題…大体守の性格から考えたら難しいけど、茜のパワーだとダメ」
「うっ…バッサリと…」
「この柱は、普通に見えるけど…」

秋は一番近い白い柱に触る。そして、目をつぶり、全身に小さな風が取り巻く。最後には力がすべて手に集まり、爆発した。しかし、柱は壊れるどころか、小さなヒビ一つすら入っていない。

「簡単に壊れそうにないな…」

修也がため息を零しながら呟いた。

「だから、攻撃力が低い茜は無理」
「ようするにぶっ壊せばいいんだろ?」

秋がコクンと頷いた。もう一度上を見上げる。やはり、続くのは夜空のような漆黒な闇。

「だ〜か〜ら、こっちだろ!!」
「晴矢かな?」

声の主は徐々にその姿を現した。リュウジを間にはさみ、晴矢と風介、そしてその後から、アツヤがのろのろと歩いている。リュウジの手には黄色に淡く光っている、紙のようなものがある。彼の魔法—探索。魔力を頼りに、誰がどの場所にいるのか探し出すことができ、そこまでの場所を、一時的に地図として示される。方向音痴なリュウジが使っても意味のないことだが、別の人が見れば、これはとても便利な魔法の類に入る。

「あっ、本当だ」
「大体おかしいだろ!東って示してんのに、どうして西に行くんだよ!」

晴矢が隣のリュウジに怒鳴りつけている。守ほどではないが、彼も結構気が短い。のんびり屋さんのリュウジとは大違いだ。

「晴矢、風介、融合魔法(ユニゾン・マジック)使える?」
「あぁ、使えるが…それがどうした?」

リュウジを叱っている晴矢の代わりに、風介が答えた。
融合魔法—ユニゾン・マジックとは、二人以上の人数で、一緒に魔法技を発動させることである。もちろん、お互いの息や動きが合っていなければ、成しえることは不可能。魔法が不発であれば、多くの場合は発動せずに魔方陣が消えてしまうが、時折、大爆発を引き起こし、周りを巻き込み、死に至る可能性も十分にある。成功はパートナーとのコンビネーションにかかっている。

「じゃあ、あの右から三本目の柱を壊して…絶対に間違えないで、私たち死ぬから」
「なんだかよくわかんねぇけど、あれを壊せばいいんだろ?」

やっとのことで説教から解放されたリュウジはその場に座り込んだ、よほど疲れているらしい。
晴矢の答えに秋は小さくうなずくと、すぐにやれ、と言ってそうな目線で、晴矢と風介を交互に見つめた。

「ファイヤブリザードでいいのか?」
「早くして、急がないと時間がない」
「晴矢、やるぞ」
「あれでいいんだな?」

もう一度頷く。そして、晴矢と風介が正面に立つと、秋や茜たちは一歩後ろへ下がった。
互いの位置を確認し、息を合わせる。両手に小さなナイフを持ち、一気に自分の魔力を流し込む。

「「融合魔法(ユニゾン・マジック)、ファイヤブリザード!!!」」

炎と氷のコンビネーション。互いの属性が絡まり合い、大きなトルネードを造りだす。柱にぶつかると、あのビクともしなかったものが、みごとに砕け散った。

「あれって、水にかぞえるの?」
「性質は水と同じになる…次は」

秋は修也を見つめた。どうやら次は修也の出番らしい。

「どれ壊すんだ?」
「左から二番目…完全に壊して」
「分かってる」

「火炎ノ一撃(フレイムインパクト)!」
「疾風ノ一撃(ウインディインパクト)」

Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜波風美麗(少しだけ)登場!〜 ( No.445 )
日時: 2011/07/21 22:05
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

その後の修也と秋の攻撃により、二つの柱が壊され、残っている柱は一つとなった。
すると、一瞬空間にゆがみができた。

「そろそろ時間かも…次、アツヤと守」
「俺と守!?コンビネーション技なんてねぇぞ!?」
「ここで作ればいい話…」
「そんな簡単じゃねぇっての…」
「アツヤ、やってみよう、早く出ないと姫があぶない」

秋の言葉に一瞬戸惑ったが、冬花や国の安否を考えれば、一刻も早くこの空間から出る必要がある。

「分かった」

短剣を取り出し、集中する。

「行くか…」

守も目を閉じて、全身の魔力を大太刀へ集中させる。たちまち刃には青い雷が火花を散らす。
この間に空間はさっきよりも歪み始めている。それでも、集中。経験のないことだが、一発で成功しなければ、おそらく自分たちは——

「よし、アツヤ!!行くぞ!!」
「あぁ!」

大きく返事をかえし、守よりも先に柱へ突き進む。その後方、雷の剣を持ち、アツヤの短剣に狙いを定めた。

「やばい…あと少し、空間が…」

いよいよ空間は壊れ始めた、決して届くはずのない夜空が崩れ落ちてきた。

「「グレーターアイス!!(煌めく氷)」」

守の魔力を受け取ったアツヤが、最後の柱に刃を向けた。
柱が壊れたのは空間が完全に消滅する前のほんの一瞬——彼らは助かったのだ。






「そう、よかった…」

夏未はほっと息を吐き。茜の肩を借りながらも、立ち上がった。

「お前は大丈夫なのか?」

守が聞くと、無理やり笑顔を作り笑い返す。

「大丈夫よ」
「ふん、これ言うのも難だが…お前本当に嘘つくのが苦手だよな…そんなこと言ってるけど……泣いてるぞ?」

そう、夏未は泣いていた。一つは守たちが無事だったこと。もう一つは、姿こそ見えなかったが亡き両親たちの声が聞こえたこと。この涙は悲しいものではない、どちらかというとうれし泣きだった。

「いいの、気にしないで…これはうれし泣きだから」

もう一度ニコッ笑った。

「それより、姫と春奈が危ないかもしれない。早く城へ行かないと…」
「なっちゃん、少し休んで。傷がすごいよ?」
「いいの、ここで春奈や姫を失ったら、私今後どうしていいか分からなくなる、後悔しないためにもすぐに行かなくちゃ」

顔を見合わせるメンバーたちだが、それでも、夏未と帰ってきた美麗をつれて城へ向かった。
その時だ、またあの声が聞こえたのだ。

《夏未》
「なっちゃん?どうしたの?」

茜が声をかけても夏未は動かない。

《夏未、怖がらないでいいのよ。私たちはずっとあなたの傍にいるから》
《お前は立派な娘だよ。本当によくやってくれた》
「お、母様…お父様…?」
「?おい、夏未!どうしたんだ?」

今度は修也が夏未の肩を揺さぶった。どうやら、彼らには聞こえていないらしい。

《これから、辛いこともあるし、悲しいこともあるかもしれないけど、絶対に大丈夫。今の仲間たちを信じて…》
《急がなくていい、ゆっくりでいい。一歩ずつ前進んでいけ》

その一つ一つの言葉は夏未の心に刻まれていく。振り向いて抱きつきたかった。二人の顔を見て、二人の懐で泣きじゃくろうとした。それでも、振り向かなかった。自分のためにも二人のためにも。ただ一言だけ、言葉を返しただけだった。

《ありがとう、お母様、お父様》

振り向かなくても、繋がっている。振り返る必要なんてない、ただひたすら前を見ていればいいんだから。
背後から、何かが消えていく感じがした。だが心にはもっと優しくて暖かいあの感情はまだ残っている。きっとこれからもこの気持ちが自分を助けてくれるだろう。

「「夏未!!」」
「ううん、なんでもない。さっ!早く行きましょ!!」
「何なんだそのノリは…」

アツヤが呟いた。
その直後、上空から真っ赤に燃え上がる炎のように煌めく石が舞い降りた。—魔光石だ。

「魔光石?」

手を差し伸べると、石は夏未の手にそっと落ちた。

「なんで?」

夏未のほかにも守たちも驚いている。行方不明だった魔光石の一つが今、目の前にそれも自分からやってきた。

「考えてもしょうがないだろ…今は城に戻ろう」

吐き捨てるように守は言うと、城の方角へ一目散に走って行った。その後を皆が追う。

(どうして、魔光石が?これはお父様とお母様の仕業?)

魔光石についてのことが頭をめぐる。だが、今は春奈たちを救出するのが先だ。光る魔光石をポケットにいれ、先を急ぐ。