二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜波風美麗(少しだけ)登場!〜 ( No.454 )
日時: 2011/07/28 11:04
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
参照: 復活!!

23 蝶の少女

「どうします?ご主人様。今なら、姫の略奪ができます」
「本当は一刻も早く冬花姫の『力』が欲しいのですが…今はそうもいきませんね。まだ力が足りない…私がパラレルワールドのすべてを手に入れるためにはまだ…しかし、まずは小手試しです。『吹雪士郎』『風丸一郎太』にあの呪印を」
「了解しました。では、また連絡します」

城のメイド服を着ている少女が通信機を切った。今、彼女の目の前には春奈と円堂たちが迷い込んでいる結界という名の世界がある。中は歪んでいて、どうやら外からは様子が見えないようだ。

「円堂守…お前は仲間の命のために、自ら身を犠牲にできるか?」

アルティスと話していた時とは違い、まるで少年の低い声で少女はつぶやくと、その場を後にした。





「春奈!!」
「音無!」

「マダシネナイ…オマエダケハコロス!!」

蛇の剣が音無もろとも春奈を突き刺すとき、白いヨーヨーが円堂たちの目の前を素早く通り過ぎ、刀を弾いた。

「バッカじゃないの?一緒に死のうなんて」
「お、お前は?」

閉ざされているはずの扉から一人の少女が入ってきた。もとからそこには結界などと、道を塞ぐものなどないかのように、白いサイドテールの長い髪を揺らせ、カッカッと足音をならせながら平然と歩いてきている。
円堂の問いに答える代わりに、少女は真紅の瞳で彼を睨みつけた。

「貴方が円堂守ね…話は聞いている。でもちょっと自己紹介は後回しね♪」

円堂に片目でかわいらしくウインクをすると、光を彷彿させる刀を背中から引き抜き、彼らを閉じ込めていた水のベールを一振りで消し去った。

「もうすぐ終わるから、少し下がってて。別に死にたいなら、構わないけど」

こちらの様子が変わったことに気付いた音無が、体制を変えようとした瞬間。彼女は力尽きるように床に倒れ込んだ。
拘束を解かれたが、春奈はいまだに動かない。

「春奈!!」
「だから、下がって、って言っているの、鬼道有人。貴方の妹はちゃんと助けるから」

そういうと、もう肉体も精神もボロボロにされている、チェルタに向かった。

「お好みは何かな?チェルタ・フェイルス・テイル」
「キエロ、コロス」
「美麗を結界に閉じ込めたのは、褒めてあげる。でもね、君たちのあのずるい行為に関しては、僕は認められないな〜」

謎の少女の声はチェルタには届いていないらしい。さっきから奇妙なうめき声をあげている。

「お好みがないなら、僕が勝手にやらせてもらうね」

刀が白く光る。カチャッと刀が音を立てた瞬間
少女の姿が消え、チェルタの体が右肩から腹にかけて、斜めに大きな斬り口ができた。
その直後、消えたはずの少女がチェルトの背後に現れた。それは一瞬の出来事、円堂たちには何が起きたかわかっていない。

「終わりだね…」

少女がつぶやくと、チェルタは地面に倒れ込んだ。

「ふぅ〜口ほどにもなかった…こんな奴に光神刀使うのがもったいない」
「音無!!」
「春奈!!」

円堂や鬼道が音無の方へ駆け寄ろうとしたときだった。少女が彼らに刀を向け、道を塞いだ。

「おい!!お前、さっきから何なんだよ!!」

小暮や綱海が隣で怒鳴った。小暮に関しては体が小さすぎて、怒鳴られている、というよりも、駄々をこねているようにしか見えない。

「助けてあげたのにそれはないんじゃない?君たちあのままだったら、一気に昇天してたよ?それに、まだ一仕事残ってるの、下がって」

刀を軽く振ると、円堂たちがやっと一歩後ろへ下がった。

「水星神竜…どうしてそこまで春奈の躰(からだ)を欲しがっているの?」
「ねぇ…何で私の獲物を奪うの?」
「聞いている?さっさと戻って。さもないと、春奈の体ごとアンタを消すよ?」
「フフフッ、ハハハッ…いいや、まずはこいつから消してやる」

水の剣を倒れている音無の首元に狙いを定めた。

「春奈は一人でいいの…こいつはいらない!!」

剣を振り下げ、首にあたる直前。少女は春奈の元まであの素早い行動で移動し、首元を右手で思いっきりつかみ、壁に叩きつけた。壁にひびが入り、春奈の体がめり込む。

「!?」

円堂たちが驚きの表情でその光景を見つめた。

「うっ…」

少しだけ、小さな声をあげて。力尽きたのだろうか、うなだれてしまった。
倒れ込む春奈の体を今度は優しく受け止めた。

「お前やっぱ敵か!?」

円堂の問いに、あのかわいらしい顔を少し歪ませ、機嫌の悪そうに円堂の方を向いた。

「僕は飛導鈴。フェアリー王国の兵士、さっき国に帰還したばっか」
「そんなの信じられないッス!」
「別にいいよ、覚えられたくもないし。それより、この子お前の妹なんでしょ?鬼道有人」
「どうして俺の名前を知っているんだ?」
「教えたとして、なんかいい利益でもある?」

鬼道の問いに、飛導鈴と名乗る少女は、答えも返さずに自分の質問を投げ返した。
さっきは戦いに目がいって、彼女の顔はよく見えなかったが、見てみると、とてもかわいらしい顔立ちをしている。何人かの顔がほのかに赤くなっている。

「音無さんはどうして倒れたの?」

吹雪の独りことが聞こえたのか、今度はちゃんと質問に答える。

「当たり前じゃない、あの魔力を無防備で受けてたもの」
「俺たちは魔法の効果は受けないぞ?」

豪炎寺が言うと、鈴がきょとんとした表情でジッと彼を見つめた。

「何言ってるの?効果は受け付けないなんて、あるはずがない。第一これが証拠よ」

鈴が人差し指で音無を指した。
確かに、魔法の効果が効かないとすれば、音無が倒れるはずがない。しかし、初めてこの冬花姫にあったとき、彼女は「魔法の効果は受けない」と言ったはずだ。これはどういうことだろうか。

「まさか…」
「私たちを騙していたのね、冬花さんは」
「でも、あの時、デスフィールドを受けた時は、効果はなかったよ?」

木野が言ったことも合っている。あの時、受けた魔法は冬花によると、生命をなくす魔法。あのまま効果を受け付ければ、皆死んでいた。

Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜波風美麗(少しだけ)登場!〜 ( No.455 )
日時: 2011/07/28 11:04
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
参照: 復活!!


「デスフィールドはもともとそんな効果なんてない」
「あれも嘘、か…」

風丸が言った。それを聞いて円堂以外は納得のいかない顔をしている。まんまとあの少女に騙され、未知な世界に連れてこられ、挙句の果てに元の世界へ帰れなくなってしまい、毎日が危険と隣り合わせの非日常的になってしまった。だとしたら、自分たちの世界が今、時間が止まっているというのも嘘なのかもしれない。

「だったら俺たちはただ、もう一人の円堂たちを助けるための道具にすぎなかったのかよ!」
「あいつ!!」

「俺…もう一人のふゆっぺを信じる」

突然円堂が呟いた。

「何か考えがあると思うんだ。それにもし本当にそうなら、護衛なんてつかせないと思う」
「それはヒロトが言った事だろ?冬花姫の命令じゃない」

風丸が言った。護衛をつかせたのは冬花ではなくヒロトの命令だった。その後、守たちは自分の意志で円堂たちを守ろうと、身を乗り出した。そう考えると、冬花は何もしていないのと同じだ。

「俺たちにしかできなかったんだろ?あいつらをエイリア石から助けるには」
「夏未がいただろ?それに茜もアツヤも」
「でも、戻れないのは事実よ。冬花さんから聞き出すにはまだ時間がたくさん残っているわ。焦らなくてもいずれわかるのではなくて?」
「な、夏未がお嬢様になってる…『あの』夏未が」

鈴が驚愕な表情を浮かべて、雷門を見た。

「黙ってなさい!!」

「っ…」
「春奈?」

小さく声をあげた音無の顔を鬼道が覗き込んだ。うっすらと目を開け、心配している兄の顔を見た。

「…お、兄ちゃん?」
「大丈夫か?」
「だぃ…!?」

腕をあげようと、体を動かした瞬間。全身に痛みが走った。針が何本も突き刺すような痛み。

「うっ!!」
「春奈!!」
「離れて!!」

すがりつく鬼道を急いではねのけ、鈴がもう一度光神刀を抜いた。

「拒絶反応ね…大丈夫、僕がすぐに直すから」

刀から無数の白い蝶が出てきた。蝶たちは音無の周りを一周踊るように回ると、キラキラと光るリンプンを落とし、消えていった。

「もう、大丈夫。今はちょっとまだ疲れてるから寝てるだけだけど、すぐに治るから」

眠る音無を抱き上げ、鬼道の傍まで運んだ。

「後は…春奈かな?」