二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜参照3000突破!!〜 ( No.472 )
- 日時: 2011/08/01 11:28
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
27 影使いカリア
「これから、どうしましょうか…ご主人様の命で、風丸一郎太と吹雪士郎は生け贄ね…」
「あれ?カリアさん?」
ちょうど、悠也の部屋から出てきた、冬花は角にいるカリアを見かけ、声をかけた。
「あっ、姫様。王がお呼びでしたよ?」
音もなくいきなり冬花が出てきて、今の会話を聞かれていないか、少し戸惑ったが、彼女のことだ、いつものほほんとしているから、心配はいらないだろう。守だと少し警戒を持たれるが、肝心の彼は今いない。それだけでも、『潜入調査』は随分と楽になる。
「兄様が?」
「えぇ、何とも次の精霊会議のことで…」
—精霊会議。この世界で定期的に行われる重要国家の王族たちによって行われる会議のことだ。毎回、会議場は異なるが、大体はこのフェアリー王国で行われる。この国はどの国からも近く、ちょうど真ん中に位置する国であり、移動するのにとても便利だからなのだ。
そういえば、この時期は会議が行われる時だな〜、と思いだし、出てくるまで待ってくれたカリアにお礼を言った。
「そうなの?ごめんなさい、こんなところで待たせちゃって。でも、どうして私がここにいると分かったの?」
「偶然走ってくるのを見かけたので」
「えぇ!あの…う、うるさかった?///」
また顔を赤らめ、もじもじと可愛らしい動作をして、俯いてしまった。
「フフッ、大丈夫ですよ。それより、早く王のところへ行った方がよろしいのでは?」
「あっ、本当だ!!カリアさん、本当にありがとう!!」
そういうと、また小走りで走って行った。
カリアはフッと小さくため息をしながら、冬花の背後を見つめた。その黄緑の瞳は憎しみの色で染まっているのが見える。
すると、突然背後のから、低く猛獣が唸るような声が響いた。なんと、カリアの影が羽の生えた形になったのだ。それは人間と呼べるようなものではない、言うなら悪魔が適切だろう。
《おいおい、フレイミア、お前まだあの姫を殺そうとしないのか?》
「うっさいわね、アンタは黙ってなさい、馬鹿レイジュ。それに、今の私の名前はカリアよ」
《ケッ、俺はそろそろひと暴れしてーんだよ》
「もうすぐよ…円堂守を手に入れることができれば、ほかの奴らは死んでも構わないわ。その時はレイジュ、アンタの力を借りるわ。その方が円堂守にいい教訓になりそうだからね」
口角をあげ、悪そうに笑った。普段のあのカリアから想像もつかない、残酷でとても冷たい笑い方だ。
《グハハハッ、じゃ、俺はもう少しお前の中で様子を見るとするか》
「そうしてほしいわね」
影がだんだんと元の形に戻り、あの影の主—レイジュの声も聞こえなくなった。
「さぁ〜て、次は風丸一郎太と吹雪士郎ね…どうやって呪印をつけようかしら」
「お話の途中すみません、あの王が夏未様と美麗様と鈴様にお話があると…」
「あらら、美麗どっかいっちゃったね〜」
夏未はもう椅子の上でだらけている。
「で、では、私が探してきますので」
「大丈夫よ、リュウジ〜探索使って」
「命令口調…」
「いいから早く」
「はいはい」
手をパチンと叩くと、光る薄い紙の様なものが現われた。
「えっと…美麗だっけ?」
そうつぶやくと、目を閉じて意識を紙に集中させる。すると、真っ白の表面に赤い記号が現われた。おそらく、これが美麗のいる場所だろう。
「家にいるみたいだね……美麗?王が話があるから来てほしいって」
「会話もできるのか?」
「うん、便利だよね〜」
風丸の問いに、茜が羨ましそうに答えた。
《今から?》
「今から」
《今、家についだばかりなんだけど…》
美麗がめんどくさそうに言った。すると、夏未は隣から早く来いとリュウジに伝えると、彼はそのまま美麗に伝えた。
「早く来い、だって」
《分かった、今から行く》
話が付くと、リュウジは通信を切った。
「すみません、魔法を使わせてしまって」
「これくらい、大丈夫だよ。それより、仕事の戻らなくていいの?」
「は、はい」
メイドはペコリと頭を下げると、そそくさと早歩きで消えて行った。
「おい、この部屋どうするんだ?」
「守が一人で片づけて〜私、王のところ行かないと…」
怠そうに夏未が立ち上がり、食堂を出ようとした。
「当たり前だけど、断らせてもらう」
「じゃあ、修也使っていいよ」
「俺は道具か!」
「はいはい、いいからさっさとやってね〜で、円堂くん達は部屋に戻ってていいよ。疲れてるでしょ」
「春奈は…」
円堂が心配そうに呟きながら、ソファの上で寝ている春奈を見つめた。
「俺がh「抜け駆けすんなよ、お前も手伝え」一人でやれ」
「つうか、ここぶっ壊したの…そういえば!!」
守が急に大声を上げ、周囲の人は皆耳をふさいだり、胸を抑えたりして、驚いた。
「心臓に悪いでしょ!!」
「違う!アイツは!?」
「「アイツ?」」
「ほら!さっきまで春奈が戦ってた野郎!!」
「本当だ!いつの間にか消えてる!?」
周りをキョロキョロと見渡しても、さっきまで倒れていたあの少年の姿だけではなく、わずかな血痕でさえも残ってはいない。戦った形跡があるとすれば、荒らされた食堂と春奈の傷ついた体だけだった。
「誰か転送か移動の魔法使った?」
「まさか。使ったとすれば、俺の探索魔法と鈴と秋の回復魔法だけだよ」
「でも、転送魔法使ったら、音がある…」
「音なしの魔法(サイレント)は?」
音なしの魔法—通称サイレントの魔法は、足音をなくしたり、物音をなくす。つまり、音を消す魔法。潜入の時によく使えわれるが、使えるのは風の魔力を持つ者だけ、この中では秋ぐらいしか使えない。
「私はずっと春奈の傍にいた……それにサイレントは魔法にはかけられない」
「じゃあ、なんで消えたの?」
茜が秋に聞くが、さすがに彼女でも分からない。
「調べないと…」
「あっ、いいよ。それより、ここ片づけて。行こう、鈴」
「は〜い」
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜参照3000突破!!〜 ( No.473 )
- 日時: 2011/08/01 11:28
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
夏未は鈴をつれて嵐のもとへ向かうが、その背後を守たちが睨んでいる。もちろん、理由は後片付けを任されたからだ。家の掃除はやるのに、こういうところでは、絶対と言っていいほど、彼女はしない。
「ハァ…やるか」
「あっ、手伝うか?」
円堂が親切に聞いているのに、守と修也はあまりいい顔はしない。もともと、秋は表情を表に出さないため、何を考えているのか、全く分からない。そんな中、茜が元気よく、円堂たちにも手伝ってほしいと答え、彼らも手伝うことになった。
「これ、どうしよう…」
冬花と木野の目の前には四脚くらいの椅子が重なってあり、とても運べそうにない。それを見た、秋が無言で手を椅子に振りかざした。すると、椅子が浮かび上がり、静かに直地した。
「うわっ、すごい。ありがとうございます」
「……」
冬花が礼を言っても、秋は何も反応することなく、次の作業へと移っていった。
「アイツのことは気にするな。いつもあんな感じだ」
椅子を二脚ほど持ちながら、修也が言った。
「あまり表情を出すのが嫌いなんだよ」
「えっ?何でですか?」
「まぁ…昔にいろいろあってな…」
「大変なんですね」
「まぁな…」
木野がつぶやくと、遠くの方でガラスをかき集めている秋の背後を、修也は悲しそうな瞳で見つめ、椅子を持っている手に力を入れた。
その様子に、木野達は心配そうな表情を浮かべるが、どうやら、修也は気が付いていないらしい。
数秒後、修也は「じゃあ、俺はこれ持っていくから」と言って、食堂の入り口を目指して歩き始めた。
「秋〜ふゆっぺ〜なんかあったのか?」
円堂に声をかけられ、顔を見合わせる二人だが、木野が頭を左右に振って、大丈夫、と言うと、床の掃除を始めた。
「キャプテン、何かあったの?」
「いや、別になんでもないんだけどさぁ〜」
「結構、悩んでるように見えるけど?」
「そうか?」
「…ごめん、僕の勘違いだったみたい」
円堂の呑気な表情を見れば、誰でもそういいたくなるだろう。彼は責任を自分一人で抱え込もうとするときもある、しかし、それはよく表に出やすいため、誰でもすぐにわかるのだが、今の円堂にはその心配はいらなさそうだ。
「兄貴〜ちょっといいか〜」
「すぐ行く〜」
何度見てもあの二人はとても似ている。もし、本当に吹雪アツヤが生きていたとすれば、同じ様な光景が見られただろう。最強のDFとFWのコンビとして、名をあげていたかもしれない。雪崩で自分の弟を失い、その寂しさから出てきた人格「アツヤ」に苦しめられたにも関わらず、それでも、吹雪にとってアツヤはとっても大切な人なのだろう。
この世界に来て、元の世界に戻れなくなってしまったが、ここでも手に入れた物はたくさんあった。
「魔法、使わないの?」
「こんなのに使ったらきりがねぇよ、いざ、って時に、魔力がないんじゃあ、戦えねぇだろ?」
(よかったな、吹雪)
「円堂、これ一緒に運んでくれないか?」
「いいよ、これ俺が運ぶから、風丸は——」
「あれが風丸一郎太よね……ウィンス王国の王子にそっくり」
《たりめぇだろ。同じ存在だ、性格は違うかもしんねぇが、顔は同じだ。で、どうすんだ?》
角ではあの二人が身をひそめて、円堂たちを監視していた。今のところ、誰も彼女がスパイだとは気付いていない。たとえ気づかれたとしても、こちらの戦力には及ばない。なぜなら、彼女カリア—またの名をフレイミアは仮にもアルティスにその力を認められ、ここの派遣されたのであるからだ。
「影使いのフレイミア」それが彼女の二つ名だ。あらゆる影を使い、恐怖のステージを披露する。彼女のステージを見た者で、帰ってきた人はいない。
「じゃあ、作戦は円堂守が例の世界から帰ってきた時にね…」
もう一度あの不気味な笑いを浮かべ、食堂を離れた。
彼女はスパイ。それは誰も知らないこと。
彼女は次の悪夢(しれん)の元凶であることも誰もしらない。
知ったときには、もう彼女との「死合」は始まっているであろう。