二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜参照3000突破!!〜 ( No.486 )
- 日時: 2011/08/04 22:57
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 参照: ナルトの映画、面白かった〜それにしても、綱手さん、ひどい…
29 一人の少年のため
円堂守は本当にもう一人の自分なのだろうか。最近はそればかり考えていた。
サッカーが馬鹿みたいに好きで、俺とは大違いだ。俺はサッカーが大嫌いだ。
確かに昔は朝から晩まで、ボールを蹴り続けていた。夏未や修也たちと一緒に。
しかし、『あの事件』が起きてから、もうサッカーとは関わらないと決めた。『あいつ』のためにも自分自身のためにも、この国を守るために、俺はサッカーとはもう関わりたくない。
「あっ、いた!!お〜い!!」
「何か用か?」
「そんなこと言うなよ。なっ、ちょっと…っておいっ、まだ話が」
守を探していたのだろうか、円堂は守の姿を見つけると、すぐに駆け寄ってきた。しかし、守は相手にする気は全くないらしい。ただの無駄話だろうと気づけば、円堂を一人にして、一度は止めた足を動かし始めた。その後を、円堂が追いかけてくる。
別に無駄話が嫌な訳ではない。彼——円堂守が気に食わないのだ。彼といると、自分が自分でなくなるような気がしてならない。自分までも、彼の世界に引きずるこまれてしまうのではないかと、思ってしまう。恐怖を感じてしまう。あの世界にもう一度入ってしまうのが。一歩踏み入れてしまえば、いなくなった『彼』に対しての裏切り行為だ。
「あくまでも、俺は護衛の任務としてお前たちについているだけだ。じゃなきゃ、お前とも、お前の仲間とも関わる気はない」
「いいじゃん、ちょっと時間をくれ!!」
「断る。お前の相手をしている暇はない。話があるなら、修也か秋に言え」
「お前に話があるんだよ〜」
「ついてくるな。重要な話じゃなければ、さっさと俺の前から消え失せろ。邪魔だ」
やっと、引く気になったのか、円堂の足音が聞こえなくなった。
「なぁ…お前、なんでそんなに冬花を守ろうとするんだ?」
「っ…!?」
驚いた。外見から見て、彼はそんなに鋭い人ではないはずだ。なのにどうしてこの話を切り出してきたのか。
守の両手に力が自然と入った。
「いや、俺だって仲間は守りたい。別に守るのが悪いんじゃなくて…なんて言うのか分からないけどさ…」
「お前がそれを聞いて何になる?」
「え?いや、ただ気になっただけで…」
雰囲気が変わったのに気付いたのか、円堂が少し戸惑っているのが目に見える。
「お前に話す気はない…ボール遊びするなら呼べ、護衛につく」
「えっ?ちょっと、おいっ!!」
さっきのは勘違いだったようだ。未だに、円堂は自分を追おうとしている。ならば、仕方ない、面倒だがこれを振り切るには、彼ができないことをして逃げればいい。
そう思いつき、城の廊下から見える木に飛び移り、下へ降りた。円堂も、もうついてくる気は失せたらしい。
「ハァ…面倒な奴だな」
「あっ、逃げられた〜」
「おっ、円堂、何してるんだ?」
「綱海か…」
「なんだよ、らしくねぇじゃねぇか」
浮かない表情が張り付いてある円堂の顔を見て、綱海は彼なりに円堂を励ましたつもりだ。
「アイツにさ、話があるから時間くれ、って言ったんだけどな〜お前に話すことはない、とか言われて…」
「別にいいんじゃねぇか?あいつ等はこっちと絡む気はなさそうだしな」
「俺はただ仲良くしたいだけなのに」
「おかしなやつがいっぱいだよな。豪炎寺とか、あまりお前と仲好さそうじゃないし」
「…」
離れていくもう一人の自分の背後を見つめ、円堂は柱に寄りかかった。疲れたのか、大きなため息もしている。こんな表情をする円堂は珍しい。
「そう、落ち込むなよ。キャプテンがこうだと、チームはどうすんだ?」
「そんなだけどさ〜」
「……そうだ!円堂。海いかねぇか?」
「う、海?海なんてあるのか?」
見渡す限り、海のような場所はない。広がっているのは森だけだ。
「いまから、探すんだよ」
「綱海、いくらなんでも無茶だぞ?海なんてないし…」
「一番近くても、歩いて五日ってところだぞ?」
「お、お前…」
会話に割り込んできたのは、豪炎寺、ではなく、彼と同じ顔の修也だ。
「ここは地方の中心部なんだ、海なんてねぇよ」
「残念だな…こういう時に海がありゃな〜」
綱海が大きく背伸びをした。円堂はまだ少しだけ暗い表情が残っている。すると、修也は円堂を睨みつけた。
「円堂、仲間のためだと思って聞け。お前が今ダークエンペラーズとやらに戦ったとして、怪我するだけじゃない……
お前も仲間も死ぬぞ?」
「は?サッカーで死人が出る訳ねぇだろ?円堂に余計なこと吹き込むんじゃねぇ」
「そうか…これはただの忠告だ。聞き入れなくてもいい、ただ後悔するぞ?」
謎めいた言葉だけ残し、修也はクルッと回れ右をして、機嫌が悪そうに帰って行った。本当に変な奴ばっかだよな〜、と綱海は愚痴をこぼしているが、円堂は修也の一言がとても気になって、彼の言葉は耳に入っていなかった。
———本当に俺たちはもう一度ダークエンペラーズに勝てるのだろうか。一瞬その疑問が頭を横切った。しかし、すぐに頭を左右に振って、自分の心に訴えかける。勝てる、勝てると。
「円堂、少し冷えてきたな。部屋に戻ろうぜ」
「そうだな!あいつ等とも、いつか仲良くなれるよな!」
「そうそう。それでこそ、俺たちのキャプテンだ!」
綱海が円堂の背中をバチンと思いっきり叩き、転びそうになるが、その後、円堂も綱海も顔を見合わせて笑った。
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜参照3000突破!!〜 ( No.487 )
- 日時: 2011/08/04 22:52
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 参照: ナルトの映画、面白かった〜それにしても、綱手さん、ひどい…
「本当に円堂って不思議だよな〜」
「炎愁、お前はどう思う?」
「何がだ?」
空も暗くなり、そろそろ夕食時。修也は円堂と綱海に接触した後、城下町に出向いていた。目的は、夕香の様子を見るため。今日も彼女と彼女の母は元気そうだった、この様子を見れば、当分は心配いらないだろうと考え、同じように料理を作り、家を出た。
その帰り道、偶然炎愁と会い、一緒に城まで行くことのしたのだ。
「円堂のことをどう思う?」
「だから、不思議な奴だって…お前には何か感じるのか?」
「いや、別に…」
「な、なんだそれ?」
自分から聞いてきたくせに、別に、とはないだろう、と思いつつ、炎愁はもう一度、円堂のことを思い出してみた。
確かに不思議なやつだ。サッカーの練習を直接は見たことないが、彼の周りにいる皆はいつも嬉しそうだ。「あの中にも、私たちみたいに辛い過去を持っている子がいるって、信じられる?」と夏未が言っていた。
辛くて悲しくて、どうしょうもないはずなのに笑っている。もちろん、自分たちだって笑う。仲間が傍にいれば楽しいことは数えきれないほどある。それでも、彼らとは何か違う感じがする。
「あいつは…円堂守は一体何なんだろうな…」
「さぁな、俺にはただの無駄なボール遊びをしている馬鹿にしか見えねぇ」
「お前さ〜守と仲が悪いからって、円堂も敵に回すか?」
「るっせぇ、あのビリビリは関係ねぇだろ」
「ハァ…お前らさぁ〜一緒に暮らしてんだから、もう少しは仲良くしろよ」
「お前は俺の母親か」
反抗する修也に大きくため息をつきながらも、彼が抱えている紙袋に目を付けた。袋口が閉じていて、中身が何なのかは分からないが、爽やかないい香りがほのかに漂ってくる。
「また、夏未になんか買ってこいって言われたのか?」
「あぁ、春奈が林檎食いすぎて、家の中の果物がなくなったからな。一ついるか?」
「いや、遠慮しておく。それにもうすぐ晩飯だしな」
(……あれ?そういえば、あいつの命日もうすぐじゃないのか?)
ふと、心の中で疑問が浮かんできた。小さいころ守と修也たちと一緒にいた少年の顔が浮かび上がった。
彼はとても明るくて元気のいい子だった。守と修也が喧嘩を始めると、夏未の場合は力でねじ伏せるが、彼はいつも言葉でどうにか抑えようとしていた。
——しかしあの日、彼はサッカーが原因で死んでしまった。いや、サッカーをやっていたせいで、と言った方がいいのだろうか。どっちにしろ、彼の死をきっかけに、修也たちはサッカーをやらなくなってしまった。
「あのさ、言いにくいんだけど……そろそろ、だよな?あいつの命日」
あいつ、と聞いた瞬間。すぐにあの少年だと分かった。
「あぁ…来週だ。その時は護衛を休むつもりだから、炎愁は代わりにできるか?」
「悪い、無理だ。明後日から仕事が入ってんだよ〜美麗と行くつもりだったんだけどな。王からの命令が出てるしな…そうだ、晴矢たちは暇か?」
「一人で行けばいいだろ?」
「二人以上じゃないと無理なんだ」
「面倒なもの引き受けるな」
「お前は俺の親か」
さっき、修也が言ったような感じで、炎愁も言い返した。修也は「真似するな」と言っているが、その後、なぜか吹き出した。つられて炎愁も笑い出す。
「こんなことで笑うなんて、バカバカしいなぁ」
「おい、炎愁。もうそろそろ時間だぞ?夏未に怒られる」
「うわっ、急ごう!!」
二人は歩きから猛ダッシュに速さを切り替え、城への道を急いだ。
夏未に怒られてしまえば、何年彼女の奴隷にされるか、分からない。