二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集中!!!〜 ( No.505 )
日時: 2011/08/17 21:41
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

34 災難を呼ぶ三人の少年

「あぁ〜もう!なんでだよ〜」

あれから結構円堂は嘆いていた。悔しいのは仕方がないだろう。一度は完成したのに、次またやってみようと試みたが、失敗ばかりだった。おまけに、あの時の体制やコツも全て分からないという。これでは鬼道もなすすべがない。

「そうだ!守、もう一度撃ってくれ!」
「断る。一発だけだ、と言ったはずだ」

さっきから同じことを繰り返している二人。円堂は両手で拝むようにして頼み、守はため息をつき、そっぽを向く。よく同じことをしてられるな、と周りにいる皆は心の中でひそかに思っていた。だが、口にすると守が暴走しそうで、なんとか言わないように制圧している。

「えぇ〜あと一発!!」
「だから、こt「守!!」あっ、姫」

会話の途中に割り込んできたのは、パタパタと小走りでやってきた冬花だった。何やら急いでいるらしい。

「どうかなさいましたか?」
「うん、ちょっと…えっと、円堂くんに来てほしいんだけど…」
「俺?」

人差し指で自分を指し、聞き返した。冬花はコクンと頷く。

「えっと、悠也さんが貴方に話があるみたいなんです」
「う〜ん、よく分らないけど、呼んでるんだろ?だったら行くよ」
「あっ、でも鬼道さんと豪炎寺さんにも来てほしいって…」

名前を呼ばれ、鬼道と豪炎寺は互いに顔を見合わせた。すると、円堂は二人の腕を強引に引っ張り、歩いていく冬花の後を追う。




「悠也さん、来ましたよ」
「すみません、姫。こんなことまでさせてしまって」
「いいんです。えっと、円堂くん、鬼道さん、豪炎寺さん」

少し遅れて入ってきた三人は、部屋に足を踏み入れると、その雰囲気に圧倒され、全身に緊張が走り、体を縛りつけた。
その部屋は真っ暗とまでは行かないが、外よりも明らかに暗く、怪しい占い師の館の様だ。幽霊が出てもおかしくない、雰囲気は少し円堂には辛いかもしれない。漫遊寺中でヒロトに初めて会ったとき、いきなりいなくなり、消えたのか、と不思議に思っていると、木野が幽霊ではないのか、と冗談で言ったつもりが、円堂はかなりビビッていた。

「フフッ、大丈夫ですよ。少し雰囲気が怪しいかもしれませんが、そんなに警戒しなくてもいいですよ」
「は、はい…」

円堂にとっては、やはり怖いのか、豪炎寺と鬼道の二人にすがりつくように歩いている。
日本代表のキャプテンでもある人が、これだけで腰を抜かしてしまうとは、とてもみっともないと思われるかもしれないが、二人にとっては長年付き合ってきた友だ。少しくらい頼ってもらえるだけでもうれしいのだろう。

「適当に座ってもらって構いませんよ」

悠也の声に答え、一番近かった椅子に腰かけた。

「会うは初めてではないでしょうが、こうして話すのはなかったですよね。僕はこの国の神官、悠也です。右から順に円堂守さん、豪炎寺修也さん、鬼道有人さんでいいですよね?」

確認のために悠也は名前を言った。もちろん、円堂たちは頷く。

「姫はこちらへ」
「はい」

冬花にも話があるのだろうか、彼女は円堂の隣に座った。

「今回、あなた方に来ていただいたのは、例の世界の事です」
「ダークエンペラーズが支配した世界ですよね」

鬼道の答えに悠也は一回だけ深くうなずいた。

「円堂さんは、その世界に行きたい、と姫から伺っています」
「はい!俺ができることがあるなら、あいつ等を…もう一人の俺たちを助けたい」

さっきまで雰囲気に怯えていた円堂には見えなかった。心の恐怖は消え去り、瞳に灯っているのは、熱く熱意のこもった炎だった。
これが、イナズマジャパン、熱血キャプテンの本当の姿だ。

Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集中!!!〜 ( No.506 )
日時: 2011/08/17 21:41
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

「大変なことですよ?それでも行きたいんですか?」
「はい!」
「鬼道さんや豪炎寺さんも……彼と同じ意志を持っていますか?」

鬼道と豪炎寺は正直言うと迷っていた。確かに、円堂の言う通り、ただ単に助けたい意識はある。しかし、だからと言って、勝手に自分たちがその者たちの未来を変えてもいいのだろうか。悪い良いは関係ない、その人の未来は彼ら自身の物だ。自分たちが変える必要がある。どんなに残酷であろうと、どんなに邪悪なものだろうと。全ては彼ら自身が決める権利がある。自分たちにはその権利はあるはずがない。

「まだ迷っています…円堂のように考えてみるのはいいですが…勝手に未来を変えていいのか…」
「確かにそうですね。勝手に未来を変えてしまうのはよくありません。しかし、この世界の未来が『偽り』だとすれば…どうします?」
「偽り?」
「彼らの未来はアルティスの干渉によって変えられました。姫にはもう伝えてありますが」

アルティスは彼らの元ある未来を変えたのだ。それを元の戻させるのは、世界の理(ことわり)のゆがみをなくせる事とつながる。ダークエンペラーズに勝利し、順調に世界へと旅立ち、一位の座を争う。その権利はあの世界にはあったのだ。それを取り上げたのが、アルティス。自らの計画を成功に導くため、邪魔な者は消した。だとしたら——

「あなた方のやろうとしていることは、決して間違いではありません。しかし、正しいことでもない。異世界へ渡る、それだけでもパラレルワールドへ大きな影響を与えてしまう。どうしますか?決められるとしたら、今しかありませんよ?」

急かしているのは分かっている。しかし、本当のことだ。事態は一刻を争っている。早く決めなければ、円堂や豪炎寺がどうなるか、悠也は昨晩の夢で見ていたのだ。
彼らには大きな壁が立ちはだかる、運命をこの世界の理を崩してしまうほどの大きな壁だ。

「……俺も円堂と同じ、行きます」
「豪炎寺…」
「フッ、仕方がないやつらだ…俺もサッカー馬鹿の仲間入りをする」

実に遠回しな言い方をする鬼道。だが、ここにいる三人の気持ちは一つになったことは明らかだ。

「そうですか。わかりました。では、日にちは…」
「できれば早い方がいいと思いますよ?彼らは一日で大きくパワーアップしていますから…」

冬花が悩んでいる円堂たちに提案した。すると、彼らは彼女の言葉を受け入れ、できれば早い日に、と決断した。

「明日の午後…でいいですか?」

コクンと、三人は頷いた。

悠也にあのいつもの笑顔が戻ってきた。優しくて冬花が大好きな笑顔が。でも、今のは何か違う気がする。作り物というべきか、偽りと言うべきか。とにかく、何か引っかかる感じがする。それは、鬼道も感じ取っていた。

「話はそれだけではないですよね?」

鬼道の一言で、悠也の表情は崩れた。崖から一気に落とされたように、彼の笑顔もすぐに深刻なものへと変わった。その様子で、鈍感な円堂でさえも、何かあると悟った。

「鬼道さんには隠し事ができそうにないですね」
「今の話が全部だとすれば、全員の前で話せばいいはずです。俺たち三人だけが呼ばれたということは…」
「自分たちだけに別の話がある……すごいですね。全部当たっていますよ」

褒めているつもりだろう、しかし、ちっともうれしくない。当然だ、彼の視線は剣のように鋭く、表情はまるで血に飢えた獣が獲物を見つけた時と同じ、とても喜べるような雰囲気ではない。

「このことは、誰にも話さないでください」
「……」


返事がない。返ってきたのは沈黙だけ。それでも、今の言葉の意味を理解したと分かれば、話を続ける。

「変な話をしますが…僕は夢で未来を視ることができます。冬花姫と同じ…」

悠也と冬花は夢で未来を視ることができる能力を持っている。もちろん、使えるときに使えるほど便利ではない。不定期に奇妙な夢を視たりするだけである。
夢を視た次の日には魔力の消費で、疲労が体を縛りつけてしまう時もある。

「信じなくてもいいです。僕もまだ、これが予知夢であるかどうかはわかりませんから」
「その夢の内容は?」
「詳しくはまだはっきりとは……しかし、あなた方三人には大きな困難が立ちはだかるでしょう…それは現在の、いや、過去から未来にかけてのパラレルワールドに大きく影響するほどの……今、分かるのはここまでです…後はもう少しかかると思います」
「そうですか…」

一応何か返そうと返事らしきことを鬼道はしたが、逆にこの雰囲気を暗く重いものにしてしまった。
守や修也との関係と、今の壮大すぎる話によって、円堂はさらに悩むことになった。よくよく考えると、この世界に来てから、自分でも驚くほどに、難しいことばかりが脳内を駆け巡っている気がする。唯一すべてを忘れることできるのは、皆とサッカーをしている時ぐらいしかないだろう。

「すみません、貴重な練休み時間を無駄にしてしまって」
「いいえ、ありがとうございます。えっと、ふゆっ…じゃなくて冬花はどうするんだ?」
「私はもう少しここで話しています」
「そっか、じゃあ行こうぜ。豪炎寺、鬼道」

三人は冬花と悠也を残し、風丸や吹雪たちが待っている場所へと戻って行った。
やっと、あの場所から離れられることができて、少しだけ喜んでいたのは、円堂だけだろう。