二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 VSグリル 開幕・・・! ( No.223 )
- 日時: 2011/07/03 15:56
- 名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
第九楽章 VSグリル(後編) 〜ナミダの海〜
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同じ夢を、二度も見ることは極めて難しい。
そもそも夢を見ることすらあまりない。
だから、私は記憶を探って、意識の中で夢を思い描いた。
描くことは得意。
私には、絵を描くことしかできない。
これは宿命であって、呪いであった。
それでもいい、私にとって描くこということは、息をするのと同じこと。
生きるために必要なこと。
それに、絵を描くことは嫌いではない。
むしろ好き。
私の描くものは、すべてがすべて、私の夢だ。
憧れてやまないもの、焦がれてやまないもの、恋しくてやまないもの。
実体化するものも、すべてがすべて、私の夢。
どんな小さなものでも、私は繊細に、美しく描きあげてみせる。
どんなものでも、私の命そのもの。
描かれたものすべてがすべて、私が命を注いで描いたもの。
私が描く、夢物語。
醜い私の、芸術。
少しでも美しく、少しでも華やかに。
きらびやかで、美しいものを描いて、その中で生き続ければ。
私は、少しでも醜くないかしら。
醜い私が願った、理想の姿に、少しでも近づくために。
私は絵を描く。
かなうはずのない夢を、私は望み続ける。
いつまで?
永遠に。
ずっと。
いつまでも。
私は願うことをやめないだろう。
何人死んでも、何十人死んでも、何百人死んでも、何千人死んでも、何億人死んでも—————
屍連なる世界になったとしても、私は願うのをやめないだろう。
坂を転がる玉のように、もう止まれない。
ブレーキなんて、とうの昔に私自身が破壊した。
私は描き続ける。
理想に達するまで。
描いて、描いて、描いて。
それが、どれほどいけないことなのか、身をもって思い知ることになったとしても。
もう良かった。
私はもう、狂った化け物であって、だれからも愛されない。
孤独で哀れな化け物。
わかりきっていた。
もう、嫌というほどわかっていた。
愛されることが、どれほど罪深いことなのか。
でも、私は
だれかに愛されたかった。
私を—————本当の私を見てくれる人に—————
だけど、それはかなわないこと。
私は一人孤独に生きながらえなければならない。
呪いだ。
毎日が億劫で。
毎日がさびしくて。
毎日が苦しかった。
それでも、私は描くのだ。
四肢が引き裂かれるほど痛くても。
私は描くのだ。
理想を信じて。
理想を願って。
くだらない夢物語を望むことが、私にとっての世界だった。
そして—————
私はあの子に出会った。
かわいいあの子に。
あの子は私を「綺麗」と言ってくれた。
私に笑いかけてくれた。
「大好き」と言ってくれた。
嬉しかった。
これほど嬉しかったことが果たしてあっただろうか。
嬉しくてたまらなかった。
もう一人じゃない。
もう孤独じゃない。
だからこそ、恐ろしかった。
あの子が私を見捨ててここから出て行ってしまうんじゃないのかと。
それだけは嫌だった。
いかないでほしかった。
私の『理想』が、現実になるところだった。
いかないでほしくて、私は禁忌を犯した。
『幻想』という檻で、あの子を閉じ込めた。
それがどれほどいけないことか、私はわかりきっていた。
だけど、止めることができない。
あの子だけは、どうか手放したくなかった。
大切な宝物を隠すように、あの子を隠した。
私は、『ドロシア』という名の化け物であり、看守でもあった。
私は、あの子が愛しくてたまらない。
でも、あの子を殺したくない。
あの子のおかげで『理想』を見れたからもういい。
私は死を選ぼう。
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 VSグリル 開幕・・・! ( No.224 )
- 日時: 2011/07/04 17:00
- 名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
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ドロシアは僕ちんとの事件があった以来、全く部屋から出てこなくなった。
閉じこもってしまったのだ。
僕ちんの怪我は、見違えるほど早いスピードで治った。
それでも、事件の傷は、心の傷はふさがらなかった。
あれからドロシアは、一番初めに屋敷に来たときは言った部屋に、ずっといる。
一心不乱に絵を描き、時にはキャンバスごと壊したり、絵を引き裂いたり—————
ドロシアは病んでしまった。
もうあの笑顔を見せない。
僕ちんと距離を取る。
部屋には決して入れてくれなかった。
だから、キャンバスを壊したりするのも、音を聞いてのボクちんの想像だ。
僕ちんはドロシアが変わらず好き。
その心は変わらない。
だけどドロシアは—————
僕ちんは悲しかった。
ただひたすら。
僕ちんは、ドロシアの中に住み着いている■■■を、まだ完全には見ていない。
でも、わかることは、あれは危険だと。
崩れたドロシア。
化け物のようなドロシア。
それでもいい。
僕ちんはドロシアのそばに入れるならそれでいい。
僕ちんはどんなドロシアでも好きだ。
それは本当だ。
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 グリル戦ラスト間近! ( No.225 )
- 日時: 2011/07/04 17:00
- 名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
好きで
好きで
好きで
本当に心から好きで—————
だけど
ドロシアが苦しんでいるのを見るのが、つらかった。
彼女は狂い始めていた。
壊れ始めていた。
このままでは、最悪なことだって十分予想できる。
僕ちんは、殺されてもいい。
だけど、ドロシアは死なせたくない。
これは真実だ。
僕ちんは別に、『昔』殺されていてもおかしくなかった。
死んでいても、おかしくないんだ。
僕ちんは、ドロシアを守る。
彼女のために、何をなげうってもいい。
これはおかしいのかもしれない。
自分ではないものに、命をささげることは、おかしいことなのかもしれない。
僕ちんも狂っているのかもしれない。
でも、いいんだ。
ドロシアは命の恩人。
ここまで生きられたのも、ドロシアのおかげだ。
だから—————
僕ちんは、ドロシアに命をささげる。
ドロシアを攻撃するものは、なんだって排除する。
僕ちんは殺しは嫌いだ。
『昔』、殺されかけたことを思い出すから。
でも、なんだっていい。
過去は消した。
僕ちんはドロシアのために、ドロシアのためだけにつくそう。
〝グリル〟という魔女の存在は、ドロシアのものだ。
彼女の望むままにする。
彼女の願いを叶えよう。
彼女のためだけに、生きよう。
どうせ死にぞこないの魔女。
いつ死んだっておかしくなかった魔女。
その魔女が、大好きな存在のために死ぬなら、なんと喜ばしいことだろう。
ドロシア。
僕ちんは、ちっとも痛くもないし苦しくもないよ?
僕ちんは、ドロシアのそばにいたいんだ。
ずっと。
だけど、ドロシアは扉をあけてくれなかった。
嫌われたっていい。
もう一度。
もう一度だけでも。
一緒にいたい。
そばにいたい。
今まで、たくさんの時間を過ごしたけど。
こんなにもさびしい時間は初めてだよ。
ドロシア。
僕ちんは生贄、ドロシアを守るイケニエ。
ドロシアを攻撃するやつは、殺す。
そして、僕ちんは戦っている。
ドロシアのために—————
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 グリル戦ラスト間近! ( No.226 )
- 日時: 2011/07/04 17:23
- 名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
♪:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪♪:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪・:*:・
自らの命を捨ててまで、仲間を守ろうとした、盗賊団の団長。
自らの命をささげてまで、大好きな人を守ろうとした、魔女。
自らの命を喰らってまで、自分の憎むものすべてを破壊しようとし、己を守ろうとした、道化師。
未来の話、過去の話。
願いを、願って。
望みを、望んで。
それぞれの理想を目指した。
そして、カービィは—————
—————の部分は、最後に。
誰もかれも
命を—————