二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.228 )
- 日時: 2015/04/07 23:15
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
最終章—光と闇の後悔の終焉、大いなる心と世界へ謳え—
「はぁ…はぁ…」
かつてホロウバスティオンと呼ばれていた、レイディアントガーデンの虚ろなる城では息切れを起こしている緑髪の少女が居た。
彼女の名前はガイア、彼女は仲間でありたった一人の兄にも知らせていないが—もう少しで力尽きようとしていた。
「フ、フフフッ…シヴァの予想よりも遥かに早く…生命力が弱って行っているわね」
彼女自身も自分の命の灯火が後僅かである事を悟っており、自嘲するかのような笑みを浮かべながらこうなった原因を思い出す。
「当然よね…あたしはあの時…【異世界へ送る儀式】を無理やり発動させた」
それはラクアイズを異世界へと運ぶ行為が原因だった、唯でさえ相当なエネルギーを使うと言うのに自分の魔力だけで発動させたため…反動が来てしまったのだ。
カヤを精霊として覚醒させた時にシヴァに言われた通り、身体は弱って行く一方で正直な所生きていること自体が奇跡な状況だった。
「それでも…あたしは後悔しない、例え自分がどうなろうとも…テルスお姉ちゃんの仇を取れれば…!!」
何時死ぬかも分からない状況であるが、ガイアはけしてそれを…自分の選択を悔いなかった。
全てはあの時自分の大切な者を奪った奴らへの、この理不尽な世界への復讐が出来ればどうでも良いのだ。
「そのためにも…まずはここに来るでしょう、リズ、ムーン、カヤを捕まえないと、他の連中は…皆殺しよ」
だからこそ自分が消えてしまう前に友人である3人を連れ出し、他のグラッセやレイシャと言った連中を消さなければとガイアは決意していた。
その決断が生きている姉を傷付ける物だとは思いもせずに、彼女は真実に気が付かず戦う意思を固めていたのだ。
「…ガイア」
「あっ、ウラノスお兄ちゃん」
そんな事を考えていると何時の間にか緑髪の青年ことウラノスが来ており、ガイアは兄の名前を呼ぶと彼は歪んだ笑みを浮かべながら
「たった今…リズたちが潜入したようだ、他の…リズの仲間たちもお揃いだ」
「あら、じゃあ最後の戦いが始まったのね♪」
「ああ…」
どうやら兄は友人たちが攻めて来た事を告げに来たらしく、ガイアは歓喜の声を上げながら笑うと彼も嬉しそうな笑みを浮かべる。
「さぁて…リズ、お前はどこまでやれるかな?俺たちに勝つか…それとも負けて絶望を味わい俺たちの元へ来るか」
それからウラノスはリーダー格であろう少女の名前を呼びながら、窓際へと駆け寄り不気味な笑みで語り出す。
「どちらかが倒れるまでの決戦に…幕を開こうじゃないか」
そしてスパークチャクラムを出しながら宣言すると、彼は向かい討つべく—来たる場所へと移動した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.229 )
- 日時: 2015/05/20 00:50
- 名前: リラ (ID: jFu2moab)
「…ついに来たわね、虚ろなる城」
「ここの何処かに…ウラノスとガイアが居るんだな」
ウラノスたちが動き出した同時刻—虚ろなる城へ通じる逆巻く滝の底まで来たリズとレイシャは、周りを見渡しながら待ち構えているであろう敵たちの居る場所に視線を向ける。
「お前ら少しは警戒して動け…ガイアが、何処かに魔法で罠をしかけている可能性もあるんだぞ」
「…あり得そうだから、言うの止めてくれ」
敵の本拠地で軽率な行動を取る姉弟を戒めるようにカヤが不吉な事を言うと、かつて彼らの友人であったムーンが嫌そうな顔をして呟く。
「寧ろ当然の事だと俺は思うぞ、奴らは俺たちが確実に来ると踏んでいるだろうし…デトネ系統とか仕掛けるのが得策だしな」
「それくらいで済めばいいけど、あの人魔法に関しては相当な知識を持ってるからもっとタチ悪い攻撃をしてくるかもしれない…用心して進もう」
だがマーベルとグラッセが向こうも馬鹿では無いので、慎重に行く事に越した事は無いと諭すと全員が頷く。
「私の弟と妹が…皆さんにこんなに迷惑をかけて、本当に申し訳ございません…」
「テルスさん、謝るのは…全てが終わってからにしましょう、今はただ前に進む事だけを考えるべきです」
「そうよ、謝ったってもうどうしようも無いし、どうにもならないんだ…だったらやるしかねぇだろ、あのバカ二人を止めると言う事を」
「………はい」
戦いに身を置くかつての友人とその仲間を見たテルスが、悲しげな様子で自分の身内のしでかした事に再び謝るとデータ・ファンタジアが止める。
それにリズも同意し自分たちが出来る事を—ウラノスとガイアをこの戦いから解放すると言う事をしようと言うと、ようやく彼女は泣きそうな表情を改めた。
「前に来た時に…エンブレムは埋め込んだから、そのまま行けるハズだよな」
「うん—まずエントランスに行くまで、それまで何も起きなければの話だけれども…」
そして正門の前まで来てムーンがエントランスの仕掛けの事を思い出し、エンブレムに関してリズに聞くと彼女も肯定する。
グラッセとファンタジアを救出するために来た時、4つのかけらを集めはめ込んだので予想外の何かが無い以上は問題無いと言いながら門を開いた瞬間—
—ブワァ…
「——————…ッ!!」
「これは…!」
エントランス(下部)への扉を開けるとリズは目を見開きながら口元を押さえ、レイシャも顔色を真っ青にしながら後退した。
それもそのハズである…闇が一か所に留まっており、それは即ち某人物が苦手とする匂いが充満している事から
「うっ…うえぇぇぇ…!うっ、うぅぅ…!!」
「…出たな、久しぶりに」
「ああ、何か懐かしいわ」
「何冷静に傍観してるの!?リズ、しっかりして!?」
「だ、大丈夫か…?」
そう—リズの闇の回廊酔いならぬ、闇の匂い酔い(?)が発生するのだ。
見慣れているメンバーはまたかと呆れ、見慣れていないメンバーは心配すると言う物で暫く時間が取られるのは確定した瞬間でもあった…
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.230 )
- 日時: 2015/04/22 22:23
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「リズって闇の回廊に弱かったのね…」
「ちなみに闇の匂いが濃い所もですね、ある意味コイツの弱点とも言えます」
その後—仰向けに倒れ気持ち悪い、吐きそうと言う発言を連呼するリズに、グラッセとテルスが回復魔法をかけながらそんな会話を行う。
「破壊神と呼ばれる化物レベルの女にもこうして弱点があると証明されてるんだから、世の中何があってもおかしくないよなー…」←
「誰が破壊神の化物だってぇぇぇっ…!?うっ、おえぷっ…!!」
するとその話を聞いたムーンが動けないリズを小突きながら、失礼な発言をしたので怒鳴ろうとする物のその反動で吐きそうになる。
「…具合悪いなら喋るなよ」
「うるさい…!元はと言えばムーンのせいで喋るはめになってるのよ…!!」
顔色を真っ青にしている師匠に呆れたようにカヤがツッコミを決めると、リズからすれば理不尽な言い様だったようで反論が返って来る。
「カヤの言う通りだよ、リズ姉ちゃん…今は一刻も早く体調を回復させてウラノスたちに挑まなきゃいけないんだから」
「そうですよリズ、少しは大人しくして下さい」
「う、うぅっ…」
このままでは一向に調子が良くならないと判断したレイシャとデータ・ファンタジアが窘めると、流石に実の弟と娘のような存在にここまで言われてはリズも黙るしか無い。
—レイシャがシスコンと言うのは分かりきっていた事だが、何だかんだ言ってリズもブラコンであった。(違うっ!!家族想いなだけ!!! byリズ&レイシャ姉弟)
「…それにしても敵の本拠地に来たってのに、随分と静かだな」
「それは…私も、気になっていた所なの…やけに静か過ぎてね、怪しいと言うか何と言うか…」
自分たちがこれほど騒いでいると言うのにウラノスたちは姿を見せず、何か嫌な予感がするとマーベルが警戒しているとリズも頷く。
「嵐の前触れ…いや嵐の前の静けさと言う言葉が、これほど合う状況も無いな—」
辺りを見渡した後に険しい顔をしたカヤが腕を組みながら、嫌な予感を覚えていると—
—パカッ
「………ん?」
「げっ…!!」
「…的中しやがったぁぁぁぁぁぁっ!!!!!?」
そう言う時に限って予感と言う物は当たる物で、カヤ、ムーン、リズの居る場所の罠が発動したのか—落とし穴に落ちる。
「ここに落とし穴なんてあったかぁ!!?り、リズ——————ッ!!?」
「カヤぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「ムーンっ!!?」
慌ててグラッセとレイシャとテルスが手を差し伸べる物の、間に合う訳も無く3人はこの場から消えてしまった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.231 )
- 日時: 2015/04/26 20:49
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「—ウフフ、上手く嵌ったようね」
「………ッ!!」
「来たな…」
「ガイア…!」
3人が完全に消えたタイミングを見計らったかのように、恐らくこの仕掛けを作ったであろう緑髪の少女—ガイアが現れる。
久しぶりに見た妹は残酷な表情をしており、その変貌っぷりにテルスは息を飲んでいるとマーベルとグラッセがキーブレードを構える。
「あら…見ない顔が居ると思えば、坊やまで居るじゃない♪どうやってあの光の中から抜け出したのかは気になるけど…」
「…そんな事はどうでも良いだろ、ガイア…あの時はよくも、リズ姉ちゃんを傷付けてアイズを行方不明にしてくれたな!その落とし前をつけさせて貰うぞ!!」
ガイアはデータ・ファンタジアに視線を向けた後に、自分が眠りにつかせたハズの少年が居る事に気付き問いかける。
それに対してレイシャは睨みながら姉を傷物にした挙句、大切な親友を別世界に送った相手に向かって武器を突き付ける。
「相も変わらず血の気が多いわね、少しは夢の世界で頭を冷やしたと思ったけれど」
「聞いて下さいガイア!私は…テルスです!貴女の姉の…!!お願い、貴女の良心が少しでも残ってるなら私の話を聞いて!!」
自分の嫌われっぷりにため息を吐きつつも無理も無いかと割り切り、冷静とは程遠いと言わんばかりににため息を吐くとテルスが叫ぶ。
「こんな事は止めてください!!幾らフリーズシティを滅ぼし…私を殺そうとしたあの人たちが憎くても…こんな形で復讐しようとしているなんて間違っています!!」
「何寝言を言ってるのよ、貴女がテルスお姉ちゃんですって…?ふざけるのも大概にしなさいっ!!!」
「きゃあっ!!!」
もしも目的が自分の敵討ちだとしたら今すぐ中止して欲しいとテルスは願う物の、ガイアは彼女が自分の姉だと信じておらずクラッカーファイガを打ち出す。
「あたしの大切な家族…テルスお姉ちゃんは死んだの!!もう戻ってこないのよっ!!生きている訳が無い!!それなのに…死者を侮辱…いや愚弄する真似をするなんて最低ね貴女…!!」
「…ガイ、ア…」
テルスに説得に対してのガイアの答えは拒絶で、彼女は目の前に居る人が自分の姉だと認知出来なかった。
それもそのハズであろう…リズたちでさえ最初は納得出来なかった、目の前で闇に包まれ…消えてしまっていたから
だからこそ絶望していたのに…今更そんな事を言われては、ガイアも信じられる訳も無く否定するとテルスは呆然とした様子で妹の名を呟くしか無かった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.232 )
- 日時: 2015/05/05 21:53
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「…もう会話は期待出来ないようですね」
「ああ、ここまで来て会話で解決しようとする時点で甘かった」
テルスとガイアのやり取りを見てデータ・ファンタジアはマジックスピアを構えながら呟き、グラッセも彼女の意見と同じなのかキーブレードを突き付ける。
「マーベル、テルスを連れて下がってくれ」
「分かった、任せろ…コイツを安全地帯まで置いて、落ち着かせてから加勢するから…それまで負けるなよ」
「安心しろ、俺たちはもうこの人に負けない…だから彼女を頼む」
「ああ」
それからグラッセは藍髪の少年に視線を向けた後にテルスを託すと、マーベルは承諾し彼女を抱き抱えながらそんな事を言う。
それに対してレイシャが代わりに答えると、彼は安心したのか金髪の女性と共に後退する。
「へぇ…あたしに挑もうとしてるの、リズみたいに対等に戦えるならまだしも、あの子の足手まといにしかなっていない…貴方たちがあたしに勝てるとでも?」
「足手まといだろうがなんだろうが…俺はアンタが許せないんだよ、ガイア」
自分たちが勝つと言う宣言をしたも同然の発言をした彼らに、ガイアは面白いと言わんばかりの顔をしながらレイシャたちを煽る。
通常ならレイシャあたりが逆上すると思ったのだが、意外にも怒ったのは—この中で一番冷静そうなグラッセであった。
「(予想に反して一番大人しそうな赤髪の男の子が切れちゃったわね…何故かしら?)」
正直な所ガイアは内心驚いていた、どうしてグラッセが怒っているのかが理解出来ないからだ。
だからこそ彼女は最大の誤算を犯してしまったのだ、リズとグラッセの関係を知らないが故に—魔物を降臨させてしまう。
「—トランス解放…そしてキングダムハーツ、力を借りるぞ…」
「あっ」
「ッ!!」
「げっ…」
グラッセは即座にトランスし魔物の姿になると同時に、大いなる心から託された力も解放し光を纏い始める。
これには上からデータ・ファンタジア、レイシャ、マーベルの順で声を上げる物の、降臨した魔物は彼らの反応を気にせず両手を前へと出し
「ルーキスモード解除の…光よぉぉぉっ!!!」
「…キャ——————ッ!!!!!?」
何とあろう事か詠唱無しにホーリーを発動させ、ガイアの周りへと強大な光の柱を降り注がせた。
「なっ、ななな…!」
「お前は絶対に許せない事をした…!まず一つ目、それはムーンの信頼を裏切った事!そして二つ目、レイシャとマーベルとカヤを陥れた事!そして三つ目の最後は…リズを傷物にした事だぁっ!!!」
いきなり何をするのだとガイアは言いたかったが上手く喋れずに、まさか彼がこの短時間でここまで強くなっていた事に驚きを隠せなかった。
しかし肝心要の本人は今言った内容を行った自分に対して、色々と根に持っていたようで怒り狂いながら叫ぶだけだった…
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.233 )
- 日時: 2015/05/10 14:48
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「………」
「あーあ、グラッセの奴…完全にブチ切れたな、アイツのブチ切れは久しぶりに見たぜ」
怒り狂いながらルーキスモードを解放した将来の義兄(?)に、レイシャは絶句しているとよく学校で切れたグラッセの被害にあっていたマーベルはヤレヤレとため息を吐く。(詳しくはスクールチルドレン参照)
「ファンタジアぁ!!」
「は、はいっ!?」
「アタックマジックを使って自分を強化!そして突っ込めぇ!!」
「り、了解です!」
そしてトランスした魔物はいきなりデータ・ファンタジアを名指しし、まさか呼ばれるとは思いもしなかった彼女は慌てて返事する。
すると彼は自分を強化する—アタックマジックの使用を頼んで来たので、その余りの迫力と怖さに少女はマジックスピアに力を宿し駆け出す。
「だぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「くぅ…!!?」
それから豪快な掛け声と共にガイアへと武器を振り下ろすと、その力の強さに驚いた彼女は押され始める。
「俺たちも援護するぞ!光を象徴する聖なる光を…」
「花開く雪景色よ、その凍てつく力を解放したまえ…!」
この調子ならいけると判断したマーベルとレイシャも、ガイア目掛けて上級魔法の詠唱を始め
「喰らいやがれ、ホーリー!」
「近付かないでも放てるように改造した…グレイシャルアーツ!!」
データ・ファンタジアが後退したのをきっかけに、光の柱と氷を纏った攻撃をぶつける。(レイシャのは若干魔法をアレンジした物だが)
「そう、簡単にやられて溜まる物ですか!」
だが相手はかつて不意打ちとは言えリズを追い込んだガイア、いとも簡単に避けられてしまい嘲笑われる。
「チッ!避けやがったか…」
「貴方…本当に可愛くない坊やね、本当にリズと血が繋がってるの?」
相も変わらず腹が立つ相手に対してレイシャは、ドス黒いオーラを纏いながら舌打ちする。
それに対してガイアが呆れた様子で腕を組みながら、かつての幼なじみであり友人の少女を思い浮かべながら問う。
「繋がってるに決まってるだろうが!この二人の絆は深くて強いんだから!!」
「そうだ!大体あの二人の血が繋がってないなら何でこんなにも姉弟揃ってと言うか、ほぼ一家揃って腹黒なのか証明出来ないだろうがぁっ!!」←
「ちょっと、それどう言う意味だよ、グラ兄!!?」
またしてもレイシャを煽るような発言をした彼女に、今までの修羅場を想いだし乗り越えて来た事故にマーベルが叫ぶ。
それはグラッセも同じで何気に失礼な内容を言うので、思わずレイシャがツッコミを決めたのは言うまでも無いだろう。(でも否定出来ない)
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.234 )
- 日時: 2015/05/14 14:41
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「うぅ…痛たた…」
グラッセたちがガイアと戦闘を始めた同時刻、一方の罠に嵌り落とし穴へと落ちたリズはと言うと身体を強く打ちつけたのか擦っていた。
ちなみに同じく落ちたムーンとカヤは当たり所が悪かったのか気絶しており、回復魔法を使うと疲れるので放置している。(酷
「何なんだこの穴…前に来た時にはこんなの無かったから、きっとウラノスとガイアが作ったんだろうけど…」
取りあえずポーションを飲みながら立ち上がり、どれほどの深さがあるのだろうと上を見上げながらこの罠を作ったであろう二人の名前を呟く。
「見た感じ…結構深いかな、よじ登るにもムーンたちが絶対嫌がると言うか無理と言うだろうし…」←
光が見えない辺り予想よりも長い落とし穴だと判断し、寝ている二人を起こし次第攀じ上がる事を考える。
しかし確実に却下される未来が見えてしまったので、私だけならそうするんだけどなと人間離れした事を思いながらため息を吐いていると
—ブワァッ
「ッ!!?」
先らのように急に闇の匂いが濃くなったかと思えば、暗闇だった景色が一変し灰色のような物となる。
「うぷっ…これ、は…一体…」
『ひっく…ひっく…』
またしても気持ち悪くなり倒れ込むと、何処からか泣き声が聞こえて来て振り向く。
『やっと…泣けるようになったのに、どうして…私だけが消えなきゃいけないの?』
「私…!?」
そこに居たのはノースリーブ型の黒いコートを来たリズで、恐らく時間帯からしてグラッセたちと世界を救う旅をしていた頃だと判断した。
『貴女は…存在しちゃいけないの、ロクサスさんやナミネさん以上に』
『…記憶の中で似たような事を言われた事あるけど、思ったよりも辛いな…そうもハッキリと言われるのは』
『それでも事実だよ、現実を受け止めて…逃げないで、世界のためにも』
『逃げるつもりは毛頭も無い、元から私に逃げる選択肢なんて無いだろ?』
するとまたしても景色は変わり次の瞬間に現れたのは、本物の自分が手に掛けたファンタジアとそれを聞いて居た私だ。
この台詞もかつて皆と旅をしていた時に言われた物で、正直な所…思い出したくも無い苦い思い出だ。
「………懐かしいね、本当に」
こんなの見たくも無いと普段なら目を逸らすが、これに関しての正体に気付いているリズは薄く微笑みながらそう呟くだけだった。
「全く…手の込んだ事してくれるよ、ゼクと同じ—幻属性の幻覚なんて」
それからこの映像が幻である事を語ると同時に、リズはキーブレードを二本構え立ち上がった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.235 )
- 日時: 2015/07/18 00:33
- 名前: リラ (ID: 1HkQUPe4)
「確かに私はこの過去から何よりも目を逸らしたい、この幻が見せる通り…私はこの過去を忘れたかった!」
つい先らまで見せられていた忌々しい過去の思い出と言う名の幻に、リズは本音を吐きだしながらキーブレードを持って突っ込む。
「でも…もう過去から逃げる事なんてとうの昔に止めている!そして今は…その過去を後悔する事も止める!!」
かつてグラッセたちと旅をしていた時は逃亡する事をやめて、現在の旅ではその出来事を悔やむ事をやめると宣言する。
「過去を無くそうなんざ…出来っこないんだ、だからこそ…この幻を断ち切るっ!!」
起きた事を全て無かった事になんか出来ないと、リズは身を持って知っているからこそ—キーブレードを幻に振り下ろす。
—パキィィィンッ!!
「これで、終わりだ!」
それは幻影なハズなのに—まるでガラスが割れるような音で壊れ、景色が元通りの暗闇へと戻る。
未だにムーンとカヤが気を失っている所を見る限り、さほど時間が経過していなかった事が分かる。
「…さよなら」
あれを壊した瞬間…胸が痛くなり大切な物を失った喪失感を覚えたが、これで良いんだと泣いていた自分へ対して別れを告げる。
「それにしても…あの幻は、一体誰が作ったんだ?」
取りあえずムーンたちが目を覚ますまでする事も無いので、さり気なく男二人を蹴りつつ幻覚を見せた犯人についてリズは考える。(酷
「敵の罠って事で…普通ならガイアかウラノスと考える所だが、生憎あの二人の属性は炎と雷だから…幻属性の力なんて発動出来ないハズ」
一番考えられる線は残虐兄妹であるが…あの二人の属性上不可である、幻影とは幻属性しか出来ない事は書斎で学び済みだ。(正確にはゼクシオンからだが)
「だとしたら…幻属性の人が作った道具って線も、考えられるけど…」
後可能性として残っているのは、ヴィクセンのような発明家(?)が作ったと言う説である。
属性の力を宿す何かを作ってそこに幻属性の力を宿せばと、リズは頭の中で思い浮かべてため息を吐いた。
「…常識で考えて、無理か」
そんな事が可能ならは一般に普及しているとリズは頭を押さえ、周りが色んな意味で非常識過ぎて我ながら思考がおかしいと呆れる。
「あーもー…いっその事、やった犯人出て来いよー…」←
考える事を疲れてしまい項垂れた後に、リズは犯人は現場に戻って来ると言う心理を思い出し—ためしに騒いで見る。
『……ズ、リ………ズ………、こ………に……い…』
「本当に戻って来たぁ!!?」
すると何処からか女の子の声が聞こえて来て、何事かと思えば暗闇だった落とし穴にいきなり道が出来る。
突然の事に驚きつつも、ここから脱出出来るかもと思いムーンとカヤを担いでリズは動き出した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.236 )
- 日時: 2015/05/31 21:57
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「落とし穴に落ちてからと言う物の…罠からの脱出と言い、犯人が自ら名乗り出て来る事と言い…運が良かったとしか言いようがないなっと!」
突如現れた道を男二人を担ぎながら走るリズは、ここまで思っていたよりも楽に来れた事に内心ほっとしていた。
上記で言った出来事は通常なら散々な物なのだろうが、今までの経験上—いや比較的対象を考えるとマシである。(不憫
「でも…ここまで上手く行くとなると、何かおかしいと言うか不自然だな…」
だからこそリズは順調に進んでいる事に疑問を抱き、不安を覚えたので少し立ち止まりながら考える。
「まさかとは思いたいけど、またガイアの手のひらで踊らされているってパターンは無いよね…」
信じたくは無いが可能性が高い内容—ガイアがレイシャやカヤやマーベルの時のように、とんでもない事を企んで嵌めようとしているのでは無いかと憶測してしまう。
「(もう欺かれると言うか…謀られるのはごめんだわ)」
非道な行動をしたかつての友に複雑な感情を覚えつつも、騙されるのは嫌なので迷うなと後悔するなと自分を戒めて走り出す。
「…ん?あれは…」
そんな事を考えている内に何時の間にか結構進んでいたようで、前方に明かりが見え始めリズは首を傾げる。
「あの先に何がある…まだ二人とも起きないし、こうなったら私だけでも乗り込むか!」←
どんな事が待ち受けているかは分からないので、カヤとムーンが目を覚ますのを待った方が良いとは頭では分かっている。
しかし彼らは打ち所が悪かったのか、まだ意識が飛んでいるので二人を放置してリズは光の方角へと歩き出す。
「覚悟決めやがれ———っ!!!」←
それからまるで悪役のような台詞を叫びながら身を乗り出すと、その部屋に待ち構えていたのは…広がっていた光景は
「え…嘘、何で…こんな、事って…マジ、か…?」
余りにも予想外の物で流石のリズも絶句しながら、そこに居たモノに恐る恐ると近付いた—
「全てを燃やし尽くせぇぇぇっ!!!!!」
「そっちがそれで来るならこっちも同じ技でぶつかりあってあげるわ!」
リズが信じられない出来事に遭遇している中、同時刻のグラッセたちに再び視点を戻してみると
グラッセとガイアのメガフレアが同時に発動されており、ある意味魔力比べの戦闘と化していた。
「(チッ、流石炎のエキスパートと言うべきか!炎の魔法じゃ絶対に勝てない…!)」
メガフレアが相手の属性の魔法と言う事もあり、自分の力が確実に負けると判断したグラッセはブリザガを使い後退する。
「あら、力比べはもうお仕舞い?」
「無駄な力を使いたくないんでね、アンタの兄相手に出来る限りは力を温存しておきたいんだよ!」
氷魔法で逃れた事に気付いたガイアが挑発するも、グラッセが揺らぐ事はもう無く彼は敵を見据えてキーブレードを突き付けた。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.237 )
- 日時: 2015/06/04 16:58
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「グラッセさん…ガイア…」
武器を突き付けながら睨み合う二人を見つめるテルスは、今にも泣きそうな顔で彼らの名前を呼ぶ。
本当はこんな戦いなど見たくはないのだろう、どちらが勝つにせよ彼女は大切な者を失ってしまうのだ…辛い物以外の何でも無いのだから
「(どうしてこんな事になってしまったの…ガイア、あの頃の明るくて優しい貴女に戻って下さい…!!そうすれば貴女の犯した罪は消えなくとも、リズたちの傍には居れると言うのに…!!)」
殆どの人物たちが自分の同行を反対する中—我儘を通して来たと言うのに、ガイアに完全に拒絶もされたと言うのにテルスは未だに出来る事なら妹を救いたいと願っていた。
「…結局、私は口先だけの女です…出来る事なら、この戦いから目を逸らしたいです…」
あれだけ啖呵を切ったと言うのに相も変わらず私は成長していないと、テルスは項垂れると同時に苦悩する。
「(でも目を逸らす事は…リズたちへの、いいえガイアたちへも裏切り行為になります)」
だけどこれだけはハッキリとしていた、この状況から現実逃避する事は…逃げる事はけしてしてはいけないと言う事だけは
それをする事は今共にいるリズたちと、大切な家族のウラノスとガイアの両方に失礼だと分かっているから
「闇よ、俺に力を与えたまえ!!ダークメテオッ!!」
「甘いわ!レイジングストーム!!」
「(今私がやれる事は…何も言わずこの戦いの行方を見る事…)」
闇の隕石を降らせるレイシャにそれを炎を纏う事で防いだガイアを、今にも零れそうな顔で涙を堪えながら…テルスはただ見つめた。
「クソ!キリがねぇ!こうなったら…俺も解放させて貰おう!!」
数ではこちらが圧倒的に有利だと言うのに戦闘状況が変わらない事に、業を煮やしたマーベルがついにあれを解放する。
「世界の大いなる意思よ!力を貸して貰おう!コンバスションモード…解除ッ!!」
キーブレードことロストメモリーを構えながら、マーベルは託された力を解き放ち—赤いオーラを纏い始めたでは無いか
「あれが…マーベルさんの力…」
「コンバスションモード…確か瞬間移動の力だったはずだったけど、一体何に使う気だ…?」
初めて見たマーベルの特殊な力にデータ・ファンタジアが息を飲んでいると、彼の能力である瞬間移動をどう扱うのかとレイシャが首を傾げた瞬間
「—とぉ!!」
「きゃあっ!!?」
マーベルはガイアの後へと瞬時に回り、彼女の背中に対して飛び蹴りを決めたではないか
「そうか…!瞬間移動ならどこから攻撃を仕掛けるか分からないんだ…!!」
それにより今まで見落としていた事に気付いたグラッセが、この戦いを打ち破る戦法を思いつき駆け出した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.238 )
- 日時: 2015/06/12 22:35
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「テレポ!!」
「なっ!?」
思い立ったらすぐ行動とグラッセはキーブレードを構えながら、ガイアに近付くとワープ魔法を唱え姿を消す。
通常のテレポは敵の背後に移動するだけのハズだが、生憎そこは魔法のエキスパートと名高い彼なので、更に魔法に工夫を加え移動する間は何処にいるか分からないようにしている優れものである。
「(何処に行った!?大抵の動きならあたしが斬り付けるスピードが勝るけど…!!)」
恐らく近くにいるのであろうが幾ら素早いガイアと言えども、姿が見えないとなると攻撃出来ずに警戒しながらフレイムダガーを握りしめるしかない。
—シュンッ
「!そこかァ!」
気配を辿るしか無いと考え意識を集中させようとした瞬間、上から音が聞こえたのでガイアは武器を投げつける。
「—残念、俺はそこに居ないよ」
「え…?」
しかし上には赤髪の少年が居るどころが何もおらず、驚愕していると真横から声が聞こえる。
まさかと冷や汗を流しながらそちらを振り向くと、グラッセがキーブレードを構えており…自分はフレイムダガーを投げてしまったので丸腰だ。
「はぁっ!!」
「か、はぁ…!?」
彼の武器がガイアの上半身目掛けて振り下ろされ、ザシュッと言う効果音と共に少女は斬られる。
「油断、しちゃった、わね…!」
「結構深くやったと思ったが…まだ動けるのか」
物凄く痛くて気を失いそうだったが辛うじて耐え、ガイアは流れる血を押さえつけながら後退しフレイムダガーを回収する。
グラッセとしては彼女が動けなくなるレベルで斬ったつもりだったが、まだ倒れぬガイアに若干驚きつつも感心した。
「あたしはまだ死ぬ訳にはいかないのよ…!それでいてアンタみたいな弱い男に負ける趣味も無いわ…!」
「…黙って聞いてれば、俺たちの仲間に随分と酷い事を言ってくれるな」
「その弱い男に斬られた奴が何言ってるんだよ!!」
その反応はガイアからすれば屈辱だったように、グラッセを見下すように叫ぶとその高飛車な態度にマーベルとレイシャも不快な表情をする。
「グラッセを侮辱しないで下さい!貴女は、貴女には人の心と言う物が無いのですか!!?」
データ・ファンタジアもその言い方に腹が立ち、マジックスピアを突き付けながら怒鳴るとガイアは嘲笑い
「そんな物…ある訳ないじゃない、そんな物は当の昔に捨てたわ、全部テルスお姉ちゃんを殺した白い集団のせいでね!!だから恨むならフリーズシティを襲った連中を恨む事ね!!あっはははははっ!!!」
今更何を言っているのだと言わんばかりの眼差しで、自分が変わった責任を白い集団に擦り付けながら狂ったように高笑いしたのだった…
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.239 )
- 日時: 2015/06/14 13:33
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「………」
「アンタ…よくも本当の姉が居る目の前でそんな事言えたな…!」
完全に壊れてしまった妹の姿にもはやテルスは何も言えず、憔悴した顔をしていると同じく姉が居るレイシャが怒りで声を震わせる。
「何度も言わせないで頂戴、あたしの姉であるテルスお姉ちゃんは死んだのよ!そこに居る紛い物と一緒にしないでっ!!」
「ふざけるな!アンタにとってこの人は何よりも大切な存在だったんだろ!?この人が居なくなったからこそ復讐しようと思ったんだろう!?それなのに今更戻れないからってこの人が生きていた事自体を否定するな!!!」
拳を握りしめる少年にガイアは呆れた様子で、テルスを指差しながら先らと同じような発言をし拒絶する。
折角家族が生きていたと言うのに何故そこまで徹底的に拒否するのだと、レイシャは分からないが故に叫ぶとガイアは睨み付け
「うるさいっ!アンタなんかに…アンタなんかに分かる訳ないでしょ!アンタはリズと言う姉を失った事が無いからそんな事言えるのよ!!」
「あるよ!俺はかつてリズ姉ちゃんをとある騒動で失った!だから嫌って程に大切な人が居なくなる悲しみは知ってる!!」
レイシャを家族を亡くした事が無いから綺麗事を語れるのだと批判し、軽蔑した眼差しを向けると金髪と栗毛が混ざった少年は首を横に振る。
自分もかつて光の勇者たちが世界を救う旅をしていた時、χブレード騒動でリズを奪われてしまった事があるからと叫ぶ。
「それでも貴方にはリズが帰って来る希望はあったでしょ!だから現に彼女は今貴方の傍に居る!!でもあたしには、あたしとウラノスお兄ちゃんにはそんな物無かった!!」
でもガイアからすればリズが戻って来た以上は違うらしく、レイシャたちのように自分たち兄妹には何も無かったと叫び返す。
「だから…あたしは貴方みたいな坊やが嫌いなのよ…!貴方みたいに甘くて何の覚悟も無い子供がね!!」
そして話は終えたと言わんばかりにガイアは空中へ炎を生み出し、レイシャへ向かって暴言と共に魔法を放つ。
「喰らいなさい!インテンスヒート・バーストッ!!!」
「がああああああっ!!!!!?」
その炎はレイシャにぶつかると同時に爆発し、彼の身体を焼き尽くし至る至る所を黒焦げにし火傷させた。
「う、うぅ…」
「レイシャ!」
「来る、な!グラ兄!これぐらい、問題無いから…今はガイアに、集中して!!」
痛々しい声を上げる少年にグラッセは回復しようと駆け寄ろうとするが、レイシャ自身がそれを嫌がり戦う事を促した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.240 )
- 日時: 2015/06/18 22:24
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「あの炎を喰らって生きているなんて…大した物ね、大口を叩くだけはあるのは認めてあげるわ」
「何様だ、アンタは…」
本気で魔法を放ったと言うのにしぶとく生存していたレイシャに、ガイアは呆れながら見下していた少年の認識を少しだけ改める。
その態度の悪さと失礼さに思わずグラッセがツッコミを決めるが、彼女は気にした様子も見せずフレイムダガーをくるくると回すだけだ。
「…非常に腹が立つのだが、この女」
「それは俺もだよ、けど…何と言うかこの腹立たしさ、やけに見慣れたような気が…」
女扱いされる以外では沸点が高いマーベルも流石に青筋を立て、拳を鳴らし始めながら口を開いたのでグラッセも同意する。
だが彼は不愉快以外にも違う感情を覚えていた、懐かしいと言うか何時も見ているような…と考え
「あっ…そうか」
ようやくその思考の答えに気付いた、何故ガイアの態度にそこまで苛立ちを覚えないかと言うと
「(この人少しだけリズに似てるんだ、そのせいで余り怒りを感じないのか)」
ガイアは自分の大切な人である少女とそっくりな所があったのだ、リズの理不尽な行動に慣れてしまっているグラッセは神経が少々(?)麻痺しているためすぐに気付けなかった。
「…何よ、その視線?」
「いいえ?ただアイツとは違い優しさなんて全く無いなと思っただけです」←
「…意味が分からないんだけれども」
そんな事を考えていると—何時の間にかガイアを生暖かい目で見つめていたようで、彼女は不審な眼差しで何なのだと聞いて来る。
この戦いの中リズと似てるなんて言える訳も無いので、アンタとは違い彼女は優しいと言う本音を話すと意味が伝わらなかった彼女は更に顔を歪める。(当然です by作者)
「………あたしを馬鹿にしてると取ってもいいのかしら?」
「あー…そう思いたければどうぞ」
「そう…ならその減らず口を聞けないようにしてやるわ!!」
そしてガイアは少しだけグラッセの言った事を自分なりに考えたようで、最終結論は侮辱されていると言う物だった。
もはやそれで構わないと赤髪の少年も訂正せずに居ると、彼女は切れたようで魔力を溜め始める。
「!この力は…!マズいです!グラッセ、逃げて下さい!!」
「遅いわ、それでいて逃がすと思って?」
それの恐ろしさを無意識に感じ取ったデータ・ファンタジアが逃亡を促すが、既にガイアは魔法を構築していたらしくグラッセの真上こと宙へ飛ぶと
「エクサフレアァァァァァァッ!!!!!」
「グラ兄——————っ!!!!!」
メガフレアよりも更に上級魔法である強力な炎を解き放ち、その火力に飲み込まれたグラッセの名前をレイシャが悲痛に叫んだ…
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.241 )
- 日時: 2015/06/21 23:00
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
炎の最強魔法とうたわれるメガフレアよりも更に上を行く上級魔法—古より使う事を禁じられた禁断魔法の一種でもあるエクサフレア
ガイアの放ったそれをもろに喰らったであろうグラッセに、レイシャは先らの名残である煙が晴れてから即座に駆け寄るが…そこには誰も居ない。
「あら!跡形も無く消えちゃったってパターンかしら?あたしたちを邪魔しようとした人間に相応しい末路ね」
「貴様ァァァァァァッ!!!!!」
この状況に仲間は全員息を飲む物の敵であるガイアは非情にも笑い出し、グラッセの事を消えて当然だと侮辱するような発言をする。
その言い分についにレイシャがブチ切れ、キーブレードをガイアに投げつけるが防がれる。
「野蛮な坊やね…あれほど女性には優しくするように言ったでしょう?」
「そんな事は一言も言われてないわぁ!!女性に付き合うとかは言ってたがなぁ!!!」
怒りで我を忘れている彼にガイアは前に言った事(女性について扱い方)を諭すが、あちらはきちんと内容を覚えていたようで律儀なツッコミと共にダークオブリングが飛んで来る。
「真面目に敵と会話している場合ですかレイシャ!その人はグラッセを手にかけた—!!」
「—誰が手にかけられたって?」
一応戦闘はしている物(?)のもはやただの話になっているので、データ・ファンタジアが泣きながら叫ぼうとした瞬間—呆れたような声が降って来た。
「「「ッ!!?」」」
「…一旦姿をけして消えたふりをするのは性格が悪いぞ、グラッセ」
聞こえて来た声にガイア、レイシャ、データ・ファンタジアは驚愕していると、唯一事情を理解したマーベルが呆れたように文句を言う。
「はははっ…悪い悪い、何せ俺が作った上級魔法で回避して体力を消耗しちゃってさ、お前たちが騒いでいる内に回復魔法をかけてたのさ」
それに赤髪の少年ことグラッセが謝りながら現れ、どうやって先らのエクサフレアを防いだのかを説明した後にガイアを見つめる。
「まんまと引っかかってくれてありがとう、そして忠告させて貰う—己の力を過信するなッ!!」
前半は笑顔でお礼を言う物であったが後半を言うにつれ、彼の眼差しは睨み付けるような物になり最後まで言うと
「その代価がこれだぁ!!トランス奥義…エンド・オブ・ドライヴゥゥゥゥゥッ!!!!!」
「ああ——————っ!!!!!?」
彼はキングダムハーツに授けられた力を全解放し、先らよりも大きなエネルギーがガイアへと当たり彼女は痛々しい悲鳴を上げた…
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.242 )
- 日時: 2015/07/02 13:39
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「…さ、すが…と、言うべきかしら、見事、よ…グラッセ・ディスティニー」
「………」
グラッセのトランスの奥義とも言える技を喰らったガイアに、もう立つ力は残っておらず彼女は赤髪の少年を褒めながら崩れ落ちる。
その姿を自分たちの仲間を傷付けた敵故に、グラッセは険しい表情をしながらただ見つめる事しか出来ない。
「うふふ、そう…こなくっちゃ、ね…これ、ぐらい…やれなきゃ、あたしの、兄…とは、戦う事すら…出来ないわ」
「喋ってはダメよガイア!こんな大怪我で喋ったら…貴女…!!」
その甘さを捨てた敵対するには正しい行動にガイアは微笑み、自分を倒せなければウラノスと戦闘する事すらままならないと告げる。
そんな妹の痛々しい姿にとうとう涙を流したテルスは、急いで駆け寄り無理して口を開くガイアを止めようとする。
「…そうだね、言いたい事は、何となく、分かるよ…でも、ね…もう無駄なの…よ、テルス、お姉ちゃん…」
「ッ!」
「やっぱりコイツがテルスだと受け入れていたのか…それを分かってて戦ってたのか」
泣きじゃくるテルスを優しげな表情でガイアは見つめ返し、彼女の事を久しぶりに姉と呼ぶと本人は驚きマーベルが苦々しい表情で呟く。
「当たり、前でしょ…昔から、ちっとも、変わってない…から、それにあたし…たち、知ってた物、テルスお姉ちゃんが…トワイライトタウンで生きていた事を」
「何だって…?じゃあどうしてこんな馬鹿げた事を…?」
先らまでテルスをテルスじゃないと否定していたのは全て演技だったと語るガイアは、更に自分の姉の生存を前から知っていたと言う爆弾発言をする。
それに顔を歪めたのは金髪の女性の記憶を見たレイシャで、それならば何故ここまで色々としたのだと視線で問う。
「坊や、人間って言う…物はね、理屈では、分かっていても…どうしようも、無い時があるのよ…間違った行動をする事でしか、自分を…保て、無かったり、ね…」
「…俺には分からない、分かりたく…無い」
「…それで、良いのよ…本来は、ね…貴方は、その道に、進まない事を…オススメ、するわ」
色んな意味で幼い少年に少しだけ大人なガイアは、頭で分かっていでもどうする事も出来ない事があるのだと語る。
それを理解したくないレイシャは首を横に振ると、緑髪の少女も分かっているのか苦笑した様子だった。
「あたしは…テルス、お姉ちゃんが生きているだけで良かった、これで…ようやく…眠れ、る…これで、リズを…ムーンを、カヤを…託せる、わ」
「託せる…?どう言う事だ!?」
それからテルスの手を握りしめながら小さな声で呟くガイアに、グラッセは自分の親友や仲間を案じる台詞に疑問を抱き問いかけた。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.243 )
- 日時: 2015/07/04 16:23
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「…言葉通りの、意味よ…あたし、は…いえ、ウラノス、お兄ちゃんも…リズ、ムーン、カヤの、幸せを…何よりも、願っている」
かつての友人たちを託すと言う台詞を吐いたガイアに、グラッセがそれの意味を問うと彼女は疲れた顔で語り出す。
「あの子、たちは…あたし、たち…の、一族のせいで、フリーズシティで…襲われた、そのせいで、かなり不幸に…なった」
「…リズ姉ちゃんたちは、そんな事を思っていない」
「例えリズたちが、思っていなくても…幾ら何でも、そこまで…あの優しい、心たちに、甘えられ…ない、わ」
リズとムーンとカヤの辛い生い立ちは全て自分たちに責任があると、ガイアはずっと抱いていた罪悪感を口にするとレイシャが首を横に振りながら否定する。
確かにそうだろう、あの3人ならあり得る…と言うか確実だろう、でもそれを受け入れる資格など無いのだと緑髪の少女は思っていた。
「だから…あの時、リズとムーンと…旅立ちの地で、再会した事を、ウラノス、お兄ちゃんから聞いて…驚いた」
姉を奪った全てに復讐するべく動いていた自分へ、その目的を果たすために必要な条件があると言う—ランドオブディパーチャーへと赴いた兄から衝撃的な内容が語られた。
『リズとムーンが生きていたですって…?それで会ったの!!?』
『ああ…相変わらず生意気そうな目をしていたよリズは、ムーンは…何処か落ち着いた様子で…これも相変わらずか』
『そうね…あの子は昔から年の割には冷静だったし』
旅立ちの地へ向かった兄と合流し上手く言ったのかを確認しようした自分に、ウラノスが言ったのはかつての仲間たちが生存している事だった。
話を聞く限りでは元気そうに生きているようで、ガイアも良かったと嬉しそうに息を吐く。
『…って、それなら二人を連れて来てよ!そうすればあたしたちに協力してくれるのに!!』
『アイツらは俺たちを覚えていなかったんだよ…それに何よりも厄介な事があったんだ』
しかし二人が居たならばこの場に連行すれば良かったのだと思い当たったガイアは、強力な仲間を得れたかもしれない機会を無にした兄に怒る。
そんな緑髪の少女にウラノスは頭を押さえながら、二人が何も知らない事と予想外の事が起こった事を告げる。
『厄介?それは一体…』
『…俺たちが狙っている【純粋な光の心を持つ少女】が、リズの事だったんだ』
『………は?何ですってぇぇぇぇぇぇっ!!!!!?』
何時も飄々した態度を取る兄の煮え切らない様に、何事だと首を傾げた自分に次の瞬間語られた事はどんでも無い事だった。
何と自分たちの目的である人物が—あろう事か、かつての友人だったのだから
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.244 )
- 日時: 2015/07/07 14:27
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
『嘘でしょ…リズが純粋な光の心の持ち主だったなんて…!』
『残念ながら本当だ、寧ろ俺はそれで納得したね…アイツが昔からキーブレードを扱えた理由を』
自分たちの目的には必須と言える純粋な心、その持ち主がまさかかつての友人である少女だった事にガイアは驚きを隠せず頭を押さえる。
しかし兄の言う通り理解出来てしまったのも事実だ、リズが光の心を持っていたならば彼女が幼少から伝説の武器を持てた事も頷ける。
『それもあるでしょうけど…一番はあの子自身が強い心を持っていたからだと、あたしは思うわ』
『…ああ、そうだろうな…だからこそあの惨劇の後…フリーズシティでの出来事があっても、真っ当な生き方を出来たんだと思う』
リズがキーブレードを使えたのは純粋な光の心を持っていたからだけでは無いと、ガイアは友人の真の力である—心の強さを語るとウラノスも悲しげな笑みを浮かべて同意する。
『真っ当…か、そうね、リズはあたしたちと違ってこんな道に堕ちはしないでしょうね』
『リズだけじゃない、ムーンやカヤだって…俺たちのような間違った道には来ねぇよ』
兄の言葉がガイアにとっては痛く…自分たちがけして進む事が出来なかった、光の道を歩むリズたちに思いを馳せてため息を吐く。
『はぁ…白い連中に復讐するために手段なんて選んでられないって思ってた、けど…そのやり遂げるために必要な対象の相手が大切な人となると…こうも悩むはめになってしまうなんて』
ウラノスから話を聞くまで—ガイアは例え何の犠牲を払ってもやり遂げると決心していた。
しかしそのためにはリズの心を傷付ける以外に入手する方法は無い、自分の意思の弱さに緑髪の少女は情けなさを覚えた。
『…それが普通の反応だ、ガイア安心しろ…お前がやりたくない事をやるのは兄の役目だ』
『え?』
『リズから心を奪うのは俺がやると言っている、だから気にする必要は無い』
そんな妹の反応を見てウラノスは何処か嬉しそうに微笑むと、ガイアに対してリズの件は自分に任せろと言う。
『で、でも…リズの心を奪ったら、あの子…壊れるんじゃ?』
『壊れない程度に抉る、恐らく暫くは心が傷付いた反動で記憶が無くなり別人のようになるだろうが…時間が経てば癒えるさ』
自分がやらなくていいと分かってほっとする物の、リズから心を頂けば彼女は意思が無くなってしまうのではと不安を覚える。
それに対してウラノスはリズが無事で済むようにやると告げ、ガイアの心配事を取り除くように笑った。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.245 )
- 日時: 2015/07/12 14:24
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「あたし、は…偽善者よ、どちらにせよ…リズが苦しむと分かっていたのに、嫌な役目を兄に押し付け、て…逃げた」
大切な友人たちの生存を喜んだ、でもそんな彼女を利用するしか自分たちの目的は果たせない。
その事実に迷いを見せたガイアに対するウラノスの言葉に、自分は内心喜びを覚えたのだ…その事に絶望した。
「本当の、友達なら…その子を犠牲にする方法なんて、選ばない!あたしは、とんだ下衆よ…」
本当はかつての仲間を自分たちのために使う事を後悔していた、しかしここまで来た以上後戻りなど出来なかったとガイアは苦々しく語る。
「………」
「あの子には…いいえ、貴方たちにも、申し訳無い事をしたわね…今更虫がいいのは理解してるけど、謝らせて頂戴…」
今まで最悪な奴だと思っていたのに、完全に悪に染まりきっていなかったと言う事実を知ったレイシャは無言で睨み付ける事しか出来ない。
そんな彼の心情を察したのかガイアは、途切れ途切れの小さな声で悲しげに微笑みながら謝罪する。
「でも、あたしは…この道を選んだ事は後悔してないわ、だって選んだからこそ、今のあたしが居るのだから」
「…ああ、自分が選んだ道なんだから、後悔する訳にいかないしな」
巻き込んでしまって済まないと思うが、自分で歩んで来た道な以上は遺憾など全く無い。
それを誇らしげに口にするとマーベルも分かるのか、まるで自分に言い聞かせるかのように頷く。
「だからこそ、あたしは…最後まで、リズとムーンと、カヤに…恨まれてなきゃいけないわ、今頃…落とされた、場所で…あの子を見つけているでしょう」
「あの子…?」
「…セレス、セレスタイト・ブルーレースアゲート、の…事、よ」
「「「「ッ!!?」」」」
そしてその為にも…かつての友人たちには、自分が悪だと認識して貰わなくてはならない。
そのために何をしたかを呟きテルスが首を傾げると、ガイアは死んだはずである少女の名前を上げこの場に居る全員を驚かせた。
「生きているの…?セレスも…」
「…ええ、あの後白い連中を退けて、ウラノスお兄ちゃんと他の世界へ…死んだカヤの、お父さんと共に運んでる途中に、目を覚ましたのよ」
まさか彼女も生きているのかとテルスが信じられないと言わんばかりの顔をしながら問うと、緑髪の少女はセレスが生き長らえた詳細を詳しく教えた。
「…一応言っておくけど、今まで捕えてはいないわよ…ちゃんとセレスは安全な世界へ、連れて行って…そこで新しい養父母を見つけて幸せに暮らして、たわ」
ちなみに念には念を入れセレスの今までの環境についても話し、自分たちがもしかしたら監禁していたかもしれないと言う不名誉な誤解をさせないようにはしたが
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.246 )
- 日時: 2015/07/14 16:39
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「あたし、を…リズたちの敵、だと…完全に、認識させるのに、力を貸してくれ…って、頼んだのよ」
「…なるほど、人質としてセレスを捕えて置けば、仲間想いのリズたちは絶対に怒ってお前たちと決別するだろうしな」
リズたちが自分たちと戦う事を迷わせないためにも、ガイアは実父を失った少女に協力を仰ぎ最低に成り下がったのだと思わせようとした。
確かに彼女の言う通り親友たちの性格上、大切な人を傷付けられると言う行為は何よりも嫌う物故に待ち構えているのは—二度と交わる事の無い道だ。
「…ええ、別離してくれた方が良いのよ、そうすれば…もう、あの白い、連中にも…狙われる事も無い、だろうし…」
友人が自分から離れていく事は辛いし怖い、でも彼らが傷付く事はもっと辛くて怖い事をガイアは身を持って知っていた。
だからこそ自分の手を汚しても、自分と言う人物が誤解されても—緑髪の少女はかつての仲間の無事を確保するために動いた。
「…もう少しで、あの子たちも…戻って来るわ、その前に最悪な敵さんは、力尽きさせて貰う、わ…」
「ガイア…」
そうこう話している内に結構時間も経っただろうし、そろそろリズたちが帰って来ると言って目が霞んで来た事に気付く。
ああ、もうあたしに時間は残っていないと実感していると、テルスがぼろぼろと悲しげな表情で涙を流しながら手を握る。
「笑って、テルスお姉ちゃん…あたしは、テルスお姉ちゃんの、笑顔が…テルスお姉ちゃんが、笑っている姿が…何よりも、大好きだから」
「「「………」」」
昔自分が姉を見送った時と似たような状況だと思いながら、ガイアは力を振り絞って出来る限り思いを伝える。
そんな自分を見てマーベルとレイシャとデータ・ファンタジアが痛々しいと言わんばかりに顔を歪めるので、どうしてこうもリズたちの周りは敵にも優しいのだろうと甘過ぎる子供たちに苦笑した。
「…どんな時でも笑っていて、テルスお姉ちゃん…それと皆、姉を…リズを…ムーンを…カヤを…宜しく…ね—…」
「ガイア…ガイア——————ッ!!!!!」
そしてガイア・オルヴィズ・レザレックションウンブラは、6年前にフリーズシティでテルスが言った台詞と仲間を案じ託す言葉を残して…力尽きたのだった。
先らまで弱弱しくテルスの手を握り返していた手から、完全に力を抜けたのを確認したテルスが虚ろなる城中に響き渡る程の悲しい悲鳴を上げる。
—燃え尽きた優しい炎は最後まで後悔する事無く、失ったと思っていた温もりの中で逝った。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.247 )
- 日時: 2015/07/16 15:43
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「うっ、うぅ…が、ガイアぁ…」
「………」
「…よく、頑張った…わね、後はゆっくり、休んで頂戴…私の、大切な…可愛い妹っ…」
例え自分の身を削ろうとも最後まで後悔する事無く、友のために動いた妹をテルスは泣きながら抱きしめる。
そして彼女が眠る前に望んだ—どんな時でも笑っていて欲しいと言う言葉を実現するため、金髪の女性は目を擦った後に出来る限りの笑顔でガイアの頭を撫でた。
「…これで、良かったんでしょうか…?」
「何がだ?」
「この人が完全な悪だと仕立て上げた事です…リズたちに真実を、本当の事を教えるべきでは…」
そんな家族のお別れを邪魔する訳にもいかないので、少し離れた所で待機しているデータ・ファンタジアがぼそりとこのままで大丈夫なのかと呟く。
彼女が言いたい事は分かるが念には念を入れマーベルが問うと、予想通りの内容を口にしたので紫髪の少年は頭を押さえる。
「死んだ人間の最後の意思を捻じ曲げるのはどうかと思うぞ、アイツは覚悟を決めて逝ったんだ…アイツの意思を、心を尊重するべきだ」
「でも…!」
「ファンタジア、お前のその他人を思う優しさは…素晴らしい物だと思う、でも人を傷付ける押し付けの優しさなんていらねぇよ」
「………ッ!」
この子は善意で言っているのだろうが時と場合によると、捻くれ者の代表(?)であるマーベルはため息を吐きながら説明する。
それでもデータ・ファンタジアが納得する素振りを見せないので、少々キツくなるがはっきりとガイアが思っているであろう事を告げると彼女は息を飲んだ。
「マーベルさん!流石に言い過ぎだよ、ファンタジアさんだって悪気があって行った訳じゃ無いんだから…」
「…そうだな、済まないファンタジア」
「…いいえ、あたしも出過ぎた事を言いました」
そんな二人のやり取りをちょっとやり過ぎだと、レイシャが止めに入った事によりある程度重かった空気が緩和する。
確かにそうだとマーベルも反省したのか素直に謝罪すると、データ・ファンタジアも落ち込んだ様子で謝った。
「取りあえず話し合いは終わったか?俺たちは全面的にガイアの最後の願いを尊重する、これで良いか?」
「これで話し合いで済ませるグラ兄が一番凄いよ…俺は構わないよ」
「あたしも大丈夫です」
「それで問題は無い」
「…私は言うまでもありません、皆さん…ありがとう、ございます…」
少し揉めてしまった物のグラッセが全員に最終確認を取ると、レイシャ、ファンタジア、マーベル、テルスの順で頷いた。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.248 )
- 日時: 2015/07/16 22:08
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「グラッセ!レイシャ!マーベル!テルス!」
「噂すれば何とやらだな」
ガイアの意思を汲み取りリズたちには本当の事を告げないと決断していると、丁度タイミング良く—ムーンが闇の回廊で戻って来る。
「うえぇ…ぎ、気持ち悪いぃ…」
「お前のその体質に同情はするが…耐えろとしか言いようがない」
「鬼ぃ…薄情者ぉ…」
紫髪の少年の後には毎度恒例の闇の回廊酔いを起こしたリズが背負われており、そんな彼女を可哀想な物を見つめる目でムーンが慰めるが逆効果だったようだ。
「今はそれ所じゃないだろ、それよりもグラッセ!いきなりで悪いがコイツに回復魔法かけてくれないか!?」
「この子は…」
「セレスだ、セレスタイト・ブルーレースアゲート…リズから話を聞いてると思うが、俺たちの友人なんだ…頼む助けてくれ!」
そんな二人を何時もなら呆れながら見つめるカヤだが、今はそんな事をしている場合じゃ無いと言わんばかりの様子で赤髪の少年を名指しお姫様抱っこしている少女の治療を願う。
オレンジ色の長髪—ならば彼女がガイアの言っていたセレスなのだろうかと、状況からして判断しているとカヤがご丁寧に説明し頭を下げてくる。
「落ち着けってカヤ!グラ兄…」
「ああ、分かってるよレイシャ………癒しを!」
珍しく取り乱す親友にレイシャは驚く物の、それだけ彼女が大切なのだろうと思い将来の義兄を見つめる。(その言い方恥ずかしいから止めろ! byグラッセ)
言われなくても分かっているグラッセは右手に淡い緑の魔力を宿すと、セレスに向けて放ちケアルガを発動させる。
「…大分衰弱していたようだな、暫くは目を覚まさないだろうが…容態は問題ない、ゆっくりと休ませれば大丈夫だ」
「…ああ、ありがとう…本当に…!」
上級魔法の回復を使った事により顔色が良くなったセレスは、安らかに寝息を立て始めるが随分と弱っていた事にグラッセは気付く。
だが今の魔法で持ち直している事もあり、安静にしていれば平気である事を告げるとカヤは嬉しそうに彼女の前に座り込む。
「あー…うん、グラッセ、私からも…お礼を言うわ、セレスを助けてくれてありがとう…」
「…その前にお前も回復が必要だろう、ケアルラ」
そんなやり取りをしている内にリズも少し回復したのか、グラッセに近付くと微笑みを浮かべながら感謝する。
闇酔いによりセレスよりはマシだが結構顔色が酷い少女に、赤髪の少年が頭を押さえながら再び回復魔法を唱えたのは言うまでも無い。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.249 )
- 日時: 2015/07/18 13:00
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「フゥ…流石グラッセ、あっという間に回復しちゃった!」
「お前の生命力が高いのもあるがな、それより…何があった、セレスタイトを背負って来た事について詳しく説明しろ」
赤髪の少年のケアルラによりすぐ元に戻ったリズは、笑顔でお礼を言って来たのでグラッセも微笑み返しながら返事をする。
しかしすぐさまカヤに介抱されているセレスタイトへと視線を移し、我ながら白々しいがこうなった詳細を求めた。
「………分かりやすく言うと、人質になっていたでしょうね」
「人質?」
「俺たちが落とされた場所はセレスが捕らわれていた場所と繋がっていたようでな、リズが発見して救出したんだ…小声で『リズ、あたし…ここにいるよ』って言い続けていたよ…」
するとリズは腕を組みながら険しい表情をしてそう呟いたので、グラッセがその言葉を繰り返すとムーンが駆け寄って来て教えてくれた。
なるほどガイアから聞いて居た通りだと、テルスに抱かれて永遠に眠った緑髪の少女を見つめる。
「グラッセ、何を見ているの………あっ」
「…一体何を…ああ、そうか」
自分の視線を違う方に逸らされた事を目敏く気付いたリズとムーンは、グラッセが見ている方向を見て…ようやくガイアが倒れている事に気付く。
「その様子だとガイアを倒せたようだな」
「…倒しただけじゃない、俺が…終わらせたよ」
「「ッ!!」」
テルスが介抱している事もありムーンがほっとしたように言うが、グラッセが完全に止めたと言う意味で言うと二人は息を飲んだ。
「…そう、嫌な物を背負わせちゃったわね、ごめんグラッセ」
「いいや、俺はレイシャたちを守りたかっただけだからさ」
「…それでもごめんね、こんな酷い奴のせいで…最後まで、最悪だったわ…」
「………」
ガイアは死んでしまったと言う事実にリズはさほど動揺を見せずに、彼女を倒した赤髪の少年に対して謝罪するだけだった。
それに対してグラッセは大切な人を失いたくなかっただけだと答えるが、それでもリズはガイアが最後まで改心する事も無かったと思っているからか頭を下げた。
「…悲しみに沈んでいる中、申し訳無いけど…そろそろ行こう、ウラノスは…この先に居る」
だがリズ自身がこの重い空気に耐えきれなくなったようで、切り替えるようにエントランス(下部)の向こうを見つめる。
「そうだな、ガイアとセレスタイトはどうする?」
「…二人ともⅩⅢ機関に連れて行って保護して貰うわ」
「ダスク!この二人を城に連れて行け!」
『ギギッ!』
そんな少女にマーベルは同意しつつ倒れている二人について話すと、リズとムーンが配下ノーバディを呼び出しセレスたちを連れて行った。
「…さぁ、ウラノス…ガイアは負けた、次はアンタだ…今度こそアンタの息の根を完全に止めてやる」
そしてガイアを死を受け入れた一行は、今頃ウラノスが居るであろう礼拝堂(それか大広間)を目掛けて歩き出した。
…最後にリズが思い詰めた様子で、そう呟いた事に誰も気が付かず
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.250 )
- 日時: 2015/07/19 16:03
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
高楼へ進み礼拝堂へ行くまでハートレスは出て来た物の、こんなにもキーブレード使いが揃っているから楽々と進めた。
しかしその歩き続ける間—誰もが無言だった、これも全てこれから待ち受けているであろう存在…ウラノスのせいだ。
「ハァ…」
「そこため息出すんじゃない…気持ちは痛い程分かるけど」
現にカヤがため息を吐いてしまったのも仕方ないだろう、リズはその行為を咎めつつも同じ気持ち故に同情的になってしまう。
「この先にアレが待ち構えていると思うだけで…正直胃が痛い」
「我が弟ながら、昔から凄かったですからね…」
ムーンに至っては腹を押さえながら唸る始末だ、アレことウラノスの姉であるテルスも引き攣った笑みを浮かべながら語る。
「…そんなに強いの、ウラノスさんって?」
「あー、強いなんてもんじゃない…言っておくけど6年前の時点で相当強かったのは覚えてるよ、私何回雷落とされたっけ…そのお蔭で雷の魔法上達したってのもあるけど」←
「それが6年経過している今…どれだけの物になっているかと、考えるだけで頭が痛いな」
怖い物知らずの姉たちのその姿と態度に、ウラノスの戦闘能力を知らないレイシャは首を傾げる。
それに対してリズは昔の事を思い出したのか乾いた笑みを浮かべ、カヤも頭に自分で作った氷を乗せながら説明する。
「…つまり、はっきり言うとこうか?死ぬ気で行かないと殺られる」
「その通りだ」
「一瞬でも油断したら、ガイアと同じ所に行くと肝に銘じて置くのがいいでしょう…」
何時もはどんな敵だろうが飄々としているリズとカヤの反応に、流石のマーベルも冷や汗をかきながら問うとムーンとテルスから肯定の答えが返ってくる。
「み、皆さん!どんな事があっても諦めちゃダメですよ!」
「…ファンタジア、その台詞死亡フラグ立つからやめなさい」
全員の顔色が失われていく中…データ・ファンタジアが仲間を元気づけようと奮い立たせるが、リズからすれば何だか死にに行く気分になってしまいその言葉を止めさせる。
「…まぁ、でも今から化物相手にするんだから、ある程度気合は入れといた方が良いかもしれないぞ」
「そうかもな、色々と騒いでいる内に着いたようだし」
真っ青になった仲間たちにグラッセは苦笑しながら、データ・ファンタジアの言う事も一理あると話す。
それはマーベルも一緒なのか、何時の間に着いていた礼拝堂への扉を指差す。
「…ついに来たわね、首を洗って待ってなさいッ、ウラノス!!」
この先にあるのは希望か破滅か、どちらなのかは分からない。
それでも進むしか無いのだとリズは鋭い青い瞳でこの扉を睨み付けた後に、高見の見物をしていた緑髪の男を倒すべく扉を開けた。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.251 )
- 日時: 2015/07/20 13:13
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
—バンッ!
「来たわよウラノス!面見せなさいっ!!」
「何処の悪役だ、お前は…」
乱暴に礼拝堂への扉を開け主人公とは思えない台詞を吐くリズに、呆れた様子で毎度恒例のツッコミをグラッセは決める。
「—全くだな、本当に緊張感の無い奴だな…」
「不本意だが同意だけはしてやるぜ、ウラノス」
それは礼拝堂の真ん中で待ち構えていた緑髪の青年—ウラノスも一緒だったようで、頭を掻きながらヤレヤレと言わんばかりの態度を取る。
敵が何言ってんだと言いたくなる物の、リズに関しては否定出来ないのでムーンも頭を押さえながら頷く。
「アンタら私を何だと思ってるのよ…!ムーンは後で覚えておきなさい、ウラノスは…今から悲惨な目に合わせてやるわ」
「おやおや、俺のかつての友人は随分と物騒な思考をお持ちなようで」
「お前が言うな、お前が!!」
ムーンとウラノスの酷い言い様にリズは青筋を立てながらキーブレードを突き付けると、ウラノスはクスクスと笑い出しながら怖いと言う反応をするのでカヤが叫ぶ。
「そうだな、俺もリズに負けず危険な思考の持ち主さ—今からお前たちを消そうと思っているのだからな…俺はガイアほど甘くないぞ?」
「あの人は甘くなんて無かった、最後まで自分に恥じないような戦いをして…逝ったさ」
物騒と言う点では心当たりがあったのかウラノスは更に笑みを深くし、電撃を纏いながらスパークチャクラムを出す。
そして妹の名を出しながら武器を突き付け返すと、レイシャがガイアの事を言いながらキーブレードを構える。
「そうか…お前たちが来た時点で想像は付いていたが、あの子は逝ったのか…まぁ、元々魔力を使い過ぎたせいで寿命を削って、今まで生きていたのが不思議だったしな」
「…何で、そう平然とした様子で言えるの…?ウラノスッ!あの子は私と貴方の大切な妹でしょッ!!?ふざけないで頂戴!!!」
レイシャの口から妹の末路を聞かされた事により、ようやくガイアを死を知ったウラノスはああと納得したように呟くだけだった。
その薄情とも言える態度にテルスが痺れを切らし、今までの穏やかな態度は何だったのかと思えるぐらいで怒り狂う。
「この人怒ると怖いな…」
「ええ、怒らせないようにしましょう…」
テルスの意外な一面を見てマーベルとデータ・ファンタジアが、引き攣った顔をしながら後退したのは余談である。
「ああ、大切な妹だよ…だからこそアイツを殺した、てめぇらは地獄に行かせてやるって言ってるんだよ!!」
自分を怒鳴り付ける姉にウラノスは当然だと答えながら、妹を消したグラッセたちを睨み付けスパークチャクラムを持ちながら飛び込んで来た事により—世界の命運をかけた戦闘が始まった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.252 )
- 日時: 2015/07/21 13:39
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「ライトニングレイ…!」
「させるか!守りを!」
飛び込んできた勢いを利用して、最初にウラノスが放ったのは雷を纏った突進攻撃
しかしそれは当たる前にグラッセが強力なバリアを張り、緑髪の青年の攻撃を反射し彼にダメージを返す。
「ナイスだ、グラッセ!そして俺も解放させて貰おう!キングダムハーツよ、お前からの力を使わせろ…ウンブラモード解除!」
親友の判断をムーンは褒めると同時に、自分も大いなる意思から託された力を解き放つ。
すると青い光と黒い光が彼の身体を包み込むように発生し、その二人の光はムーンのキーブレードに宿る。
「…喰らいやがれ、バーサクの混ざった一撃…狂気・闇ぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」
「ッ!!」
そして次の瞬間—紫髪の少年は某ⅩⅢ機関の参謀のように暴れ出し、当たったら唯では済まないであろう月と闇の衝撃波をウラノスに向けて飛ばす。
「それだけじゃ済まないぜウラノス!俺の授けられた力も見せてやるよ!大いなる心よ、我に汝の能力を与えたまえ!アイシクルモード!!」
そんなムーンに加勢するかのようにカヤもキングダムハーツの力を解放し、全身が青くなり精霊…いや母と同じく立派な召喚獣の姿と化す。
「レイシャ、決めてやろうぜ!」
「うん、アレだね!任せてよ!」
「「サウンドオブアイスッ!!」」
それからレイシャの名を呼ぶと彼も頷き、二人は武器を合わせると前から考えていた連携技をウラノスにぶちかます。
「…こんな技ぐらい、簡単に耐えられ—ッ!?」
「甘い、俺たちの狙いはお前じゃ無くて—お前の武器だぁ!!」
ムーンとカヤとレイシャの技が飛んで来る中でも、ウラノスは余裕を崩さず防御の姿勢を取ろうとするが二つの技が飛んで来たのは…手元だった。
まさかと緑髪の青年が顔色を変えるとその考えの通りだと言わんばかりに、レイシャが叫ぶとスパークチャクラムは持ち主の手元から離れ
「はぁっと!回収完了だな」
瞬間移動を使ったマーベルの手元へと行く、これでまずはウラノスの武器を奪う事で戦力を下げる事が出来た。
「…なるほど、最初から俺の武器が狙いだったのか」
「貴方の武器からは結構な魔力を感じますからね、それを取れは少しは弱体化するのでは無いかと思ったのです!」
「…唯の考え無しに突っ込んでくるような、馬鹿どもでは無かったようだな」
スパークチャクラムを盗られた反動で両手に力が入らなくなり、ウラノスは今更彼らの作戦に気付いた事に舌打ちしながら呟く。
それにデータ・ファンタジアがマジックスピアを構えながら、作戦について教えると緑髪の青年はしてやられたと言わんばかりに苦々しい顔をした。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.253 )
- 日時: 2015/07/22 21:50
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「…確かに俺のスパークチャクラムには魔力が宿ってる、それが俺の力を補助している面もあるから…お前たちの言う通り俺は弱体化したようだ」
「ようだ…って、何故他人事なんです!?」
見事な頭脳プレイをしてくれた子供たちに、ウラノスはしてやられたと言う訳かと言わんばかりの反応を取る。
しかし本人も認めた通り出し抜かれたと言うのに、やけに余裕綽々たる態度で居る彼に不安を覚えたデータ・ファンタジアが問う。
「だって—俺の武器、スパークチャクラムだけじゃねぇもん」
「「「「「「「「ッ!!?」」」」」」」」
どうして攻撃方法を奪われたと言うのに冷静で居られるかは、それはウラノスにはまだ違う武器と言う隠し球があったからだ。
まさかの想像もしていなかった言葉に全員が息を飲むと、緑髪の青年はそれはそれは楽しそうな笑みを浮かべながら右手を上げる。
「アンタ、まさか…」
「良い事教えてやるよ、俺は純粋な光の心と純粋な闇の心を集めて…ついに手に入れたんだよ、コイツをなァ!!」
その構え方に覚えがあるグラッセが真っ青な顔で呟くと、ウラノスは自分の目的の一つである伝説の鍵—χブレードを出したではないか
「嘘!?何で!?」
「レイシャの純粋な闇の心は奪われたが、リズの純粋な光の心はそれを作るほど取り出せなかったはずだ!!?」
真のキングダムハーツを呼び出しその扉を開ける事が出来る唯一の物を、既に手に入れているとは思いもしなかったレイシャとカヤが叫ぶ。
「ああ、そうさ…お前たちの言う通り純粋な光の心に関しては圧倒的に足りなかった、それでいて純粋な闇の心もだ」
「それじゃあ、何でχブレードを作れた!?」
親友コンビの正論をウラノスは肯定しどちらの心も少なかった事を告白したので、マーベルがどうやって制作したと叫ぶと彼はニヤリと笑いながら
「…純粋な心を持つのは、お前たちやセブンプリンセスだけじゃ無いって事だ」
「え…?」
「何だと…?」
リズやレイの姉弟、そして光の世界を支える7人の特別な人物以外にも、純粋な光や闇の心を持つ人物が居ると言う事を口にした。
ヴェンのような例外が他にも!?とブラックノーバディ二人が、一体誰なんだと言わんばかりの眼差しでウラノスを見つめる。
「俺たちさ、俺が純粋な光の心を持ちガイアが純粋な闇の心を持っているのさ…レザレックションウンブラ家は代々純粋な心を持って生まれる家系なんだよ!!」
「なっ…!!?」
「そんな!?私、そんなの聞いてませんよ!!?」
それにウラノスは自身を指差すと—自分たち兄妹が純粋な心を持つ一族であると衝撃的な発言をし、ムーンと同じ一族なのに何も知らないテルスが絶句した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.254 )
- 日時: 2015/07/25 13:22
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「そりゃあそうだろうな、テルス姉さんは純粋な心を受け継がずに生まれたパターンだ…オカンが婿養子に来たオトンに似たんだろうとあえて口にしなかったんだ」
『(オカン!?オトン!?)』
自分の一族の秘密について知らなかったと叫ぶ姉に、ウラノスはテルスが父親に似た故に特徴が遺伝しなかったから何も言わなかったのだと言う。
しかし他の皆は—あの緑髪の青年が両親の事を意外な呼び方をしていた事に驚きを隠せず絶句していた。(オイ
「そ、そんな…!じゃあ貴方は、貴方たちは自分の心を抉ってまでχブレードを完成させたの!?」
「そうだよ、それに元々頂いていたリズとその弟の心を合わせて…何とか作り上げた、これさえあれば…俺たちの目的は達成させる!!」
まさか己の心を使ってまで伝説の鍵を作るとは思いもしなかったテルスは、信じられないと言わんばかりの表情で問う。
それにウラノスは肯定の答えを返した後に、χブレードをリズたちに突き付けながら宣言する。
「まず手始めに…そこに居る赤髪の男、そして紫髪の…男か女か分からん奴、そして緑と青が混ざった髪の女を始末してくれようか!!」
「「「ッ!!!」」」
そしてウラノスはグラッセ、マーベル、データ・ファンタジアの事を指差し、駆け出して来たので名指しされた3人は息を飲み構える。
「と言うか、男か女か分からん奴ってどう言う意味だ!?俺は女じゃねぇぇぇっ!!!」
ヤバい、殺られる—とマーベルは冷や汗を流す物の、自分がまたしても性別不明扱いされた事の怒りが勝り彼はメガフレアを放つ。
「甘いな…」
「なっ!?」
だがχブレードを手にしたウラノスは何とモーションも無しに、Xディスチャージを発動させメガフレアを相殺するだけじゃ留まらずこちらにもダメージを与える。
「ヴァニヴァニでも時間を掛けて使う技を、何事も無かったかのように使いやがった…!!」
「ヴァニヴァニって何だよ!!?」
「ヴァニタスの事だよ、カヤ!!水よ、ウォタガ!!」
あの技の厄介さを身を持って知っているリズは真っ青になりながら、あり得ないと思っているとカヤからのツッコミが入る。
それを代わりにグラッセが答えると同時に、彼は広範囲に水を吹き出す上級魔法を使い取りあえず時間稼ぎをする。
「リズ!」
「キングダムハーツよ…私に力を貸して!ウィングモードッ!!」
赤髪の少年がこちらを向きながら名前を呼んだ事により、何を求めているかを悟ったリズは大いなる意思から託された力を解放しウラノスに向かって走った。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.255 )
- 日時: 2015/12/15 11:37
- 名前: リラ (ID: OAZcGWI8)
「風よ!トル…!!」
「お前の得意技であるトルネドは使わせないっ!!」
キングダムハーツの力によって青い左翼を出したリズは駆け出し、風の上級魔法を唱えようとすると—それを悟っていたウラノスに妨害される。
彼女は絆巡る疾風ことヴェントゥスと深い繋がりがあるが故に、風属性の術などは通常の魔法より威力が高いので使わせないに限ると知っているからだ。
「雷よ!サンダー!」
「うぐッ!」
リズが使うトルネドは発動させようとする最中ですら無防備になる物、だったらそこを突け狙うだけだとウラノスは最初は弱めの雷を打ちリズを痺れ状態にする。
「リズッ!妨げる物を解除せよ—ッ!!」
「エスナも使わせねぇよ!」
リズが動けなくなっている事に目敏く気付いたグラッセが、状態異常回復魔法をかけようとするがまたしても彼の方が早かった。
「消えろ赤髪!雷電迅雷ぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」
「ぎゃあああああああああああっ!!!!!?」
ウラノスはグラッセを目掛けて雷を宿したキーブレードを振り下ろすと何度も斬り付け、最後には雷の檻を作り彼を感電させ続ける空間を作り出したではないか
「グラッセ!?」
「私が解除しますっ!ディアステイトロッド!」
痛々しい悲鳴を上げる親友にムーンも思わず立ち止まると、テルスが自分の武器を取り出し赤髪の少年の元へ行こうとする。
「闇よ燃えろ、ダークファイガッ!!」
このままでは黒焦げと化してしまう彼を助けるべく、テルスは闇の炎を作り出し放つが
—バシュンッ!
「ッ!?闇が掻き消された…!?」
「違う…テルスさんの力が足りないんです!ウラノスさんの雷が強力過ぎてテルスさんの闇では打ち消せないんです…!!」
闇が雷へと当たる物の何事も無かったかのように電撃の中へと消えてしまったので、テルスが驚いているとデータ・ファンタジアが震えながら魔力が負けているからだと口にする。
「そ、そんな…わ、私っ、そんなに弱って、しまった…の…?」
「誤解させるような言い方をするなファンタジア!要はテルスの力が弱ったんじゃ無くて、ウラノスの力が強くなり過ぎたせいで雷を消せないんだ!!」
「そうですっ!テルスさん、ごめんなさい———っ!!」
何気ないデータ・ファンタジアの毒舌によりテルスがへたり込むと、マーベルが怒鳴るように叫びながら説明をし発言した本人も慌てて謝罪する。
「漫才してる場合かぁぁぁ!!このままだとグラ兄、本当に死ぬだろうが———っ!!!!!」
ある意味緊迫した状況なのに戦闘中とは思えない行動を取った3人に、義兄が消えてしまうかもしれないと焦っているレイシャの怒りの籠ったツッコミが木霊したのは言うまでも無い…
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.256 )
- 日時: 2015/07/29 21:57
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「—大丈夫だよ、アイツはこれぐらいで死ぬようなタマじゃねぇ」
「ムン兄!?何を根拠にそう言えるの!!?」
グラッセが雷の檻に捕らわれ殆どのメンバーが焦る中、彼の親友であるムーンは心配いらないと言い出す。
しかし痛々しい悲鳴を上げている事と言い、感電した事により怪我が増えている事と言い…何処をどう見ても危ない状況にレイシャが叫ぶ。
「グラッセはこの中で誰よりも魔法に関する耐性があるし…それに何よりもアイツが居る以上、まんまとグラッセを死なせる訳が無いだろう」
「荒ぶる風達よ!トルネドォォォォォォッ!!!!!」
だがムーンはグラッセが確実に助かると言う確証があるようで、自信満々にそう告げると—通常のトルネドとは違う竜巻を周囲に呼び出す魔法をリズが起こす。
「ぐぅっ!!?」
「うわっ!?…っと!!」
予想外の竜巻の使い方にウラノスは飲み込まれていると、近くに居たグラッセを巻き添えにして風は舞い続ける。
しかしこの魔法のお蔭で少しだけだが雷の檻が弱まり、尚且つこれを発動した術者の意識が逸れたため
「今だ!レイジングストーム!!」
グラッセだけの力でも炎を全身に纏う事で撃ち破る事が出来て、赤髪の少年は即座に仲間たちの元へ後退する。
「グラッセ!無事で良かったです…!」
「今回復してやる!癒しを、ケアルラ!!」
これにはデータ・ファンタジアもほっと息を吐き、マーベルも駆け寄りながら中級の回復魔法をかけて傷を癒す。
「ありがとうマーベル!心配かけてごめん皆」
「当然の事をしたまでだ…それよりも」
「…リズの奴、見てみろ」
すぐに効果もあり痛みが無くなったのでグラッセは笑顔で礼を言うと、マーベルは気にするなと言いつつウラノスの方を見る。
それはカヤも一緒で前方で一人、緑髪の青年に立ち向かっている少女に視線を向けた。
「ウラノスてめえぇぇぇっ!!!何グラッセを殺そうとしてんだゴラァァァッ!!?」
「敵なんだから当然だろ!そこをどけリズっ!!」
「誰がどくか馬鹿野郎!お前こそ敵に何言ってんだ!その言葉を返してやる———っ!!!」
大切な人を酷い目に合わせた事によりマジ切れしたリズが、ウラノスに対して…全力で飛び蹴りや魔法や技を喰らわせていた。
非常に低レベルな争いをしつつもその戦いの技術は高い、目を見張るものだ…愛の力はここまで偉大なのかと思い知らされる。
「このッ…分からず屋が!こうなったら…いでよ、大いなる意思…キングダムハーツッ!!!」
何が何でも抵抗し続けるかつての友にウラノスも痺れを切らしたのか、χブレードを天へと掲げ—真のキングダムハーツを召喚した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.257 )
- 日時: 2015/07/30 18:13
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「来やがったな…ッ!!」
「あれが…真のキングダムハーツなのか…」
「本物の大いなる心か…綺麗だが、莫大な力を感じる」
χブレードの力によって出現した水色のハートの形をした存在に、リズはまた見る事になるとは思わなかったと舌打ちする。(前に見たのはグラッセたちと旅をしていた頃)
そして初めて見たレイシャとカヤの親友コンビは、美しくもあり強いエネルギーを持つ心を集合体に見惚れる。
「お前たちが熱心に見つめる気持ちは分からないでもないが…アレは人が手を出してはいけない領域だ」
「構えろ二人とも…これから来るのは、とんでもない物だぞ…ッ!!」
二人の心情は痛い程に分かるムーンであるが、彼はこれの恐ろしさを知っているが故にキーブレードを構えながら注意する。
それはグラッセも一緒で険しい表情をしながら、カヤとレイシャに対して警戒する事を促しつつ自分も守りの魔法を唱え始める。
「ほう…お前たちはどうやらキングダムハーツの力の凄さを知っているようだな、まぁ…俺たちが調べた通りなら当然か!」
「………………」
真のキングダムハーツを見ながら冷や汗を流すグラッセとムーンに、ウラノスは流石体験した事のあるだけはあると高笑いする。
この言い草に苛立ちを覚えるマーベルだが、あの二人が身を構えている事と言いリズでさえ無言で成り行きを見守っている事と言い…正直嫌な予感しかしない。
「それでは敬意を示して…一発殺っとくか」
—パチンッ!
暫く笑い続けていたウラノスが真顔になり、不吉な台詞と共に指を鳴らすと
—バシュゥゥゥゥゥゥンッ!!!!!
「うぎゃあっ!!?」
「うわぁっ!!」
「うおっ!!?」
「ぐあっ!!?」
「ひぎゃあっ!!」
「あぐっ…!!」
「きゃあああああああああああっ!!!!!?」
高威力と言う言葉では片付けられないほどのエネルギーがこの場をしめ、次の瞬間リズたち全員の悲鳴が木霊す。
「アッハハハハハハ!流石は真のキングダムハーツと言った所か、力がみなぎって来る…腹の底から!!」
「(何処の、悪役だぁ…!って、リズ同様にツッコミ…決めたい、のに…声が、出ない!!)」
解き放たれた力によりウラノス以外のメンバーが倒れ伏す中、緑髪の青年の笑い声が聞こえて来る。
それにグラッセが叫びたくなる物の声が出せないようで、身体も動かせずただ意識がある状況だった。
「どうやら皆してこの一撃でやられたようだな!じゃあ早速一人、一人と息の根を止めてやろう…!!」
そしてそれをウラノスも悟っているようで、彼は邪悪な笑みを浮かべると同時に真っ先にグラッセを見た。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.258 )
- 日時: 2015/07/30 22:42
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「そこの赤髪の男、名は確かグラッセとか言ったな…お前はこの中でも一番気に喰わないから—真っ先に消してやるよ」
「———ッ…!!」
誰もが倒れている中で一人χブレードを持ちながら立つウラノスは、先らグラッセに視線を向けたのが間違いでは無いと証言するかのように彼へ近づき出す。
これにはグラッセも真っ青になりながら抵抗しようとするが、相も変わらず身体は重く動けないため他のメンバーも焦る。
「グ…ラッセ…!逃げ…ろ…!!」
「お願、い…立って、あたし、の…足…!」
このままではグラッセが殺されるとマーベルが必死に呟き、データ・ファンタジアも助けようとする物の手すら伸ばせない。
「やめ、ろ…!俺の、親友に、手を出すなぁ…!!」
「畜生ッ、何でこんな、時に…限って、俺は、無力…なん、だ…!」
ウラノスの足は止まらずただ進む一方だ、ムーンが途切れ途切れに悲痛な声で叫びカヤも自分の力が足りずにこんな状況に陥った事を嘆く。
「—初めて会った時から、お前は何よりも憎かったよグラッセ…何せお前は俺とガイアが何よりも欲していた場所を簡単に手に入れていたのだから」
「(何を…?俺が…)」
常人なら思わず足取りを止めてしまう声をウラノスは無視し、グラッセの元へ歩きながら恨み言を呟く。
どうやら緑髪の青年は自分が羨ましかったらしい、何よりも自分が求めた人物たちの傍にいたから
「…本来だったら俺たちが隣にいるハズだったのに、お前がそれを奪った…絶対に許さない、何が何でもここでお前だけは—」
「—殺させ、無い…わよ…ッ!!」
それは嫉妬とも取れる感情あり何よりも孤独で後悔してばかりだった彼らが、何よりも欲した存在であったのだ…リズとムーンとカヤは
それの殆どを手に入れたグラッセを消すと忌々しそうな表情で、ウラノスがχブレードを構えようとした瞬間—目の前に影が差す。
「…リ…ズ」
「…レイ、シャ…?」
それは金髪と栗毛が混ざった二人組—リズとレイシャの姉弟で、グラッセとカヤがそれぞれの友の名を呼ぶ。
「何、ボサっと…して、いるんだよ!皆…立ち上がるんだッ!!ここで負けたら…世界の皆が、俺たちの、大切な人たちも居なく、なっちゃうんだぞ!!」
その声を聞いて全員意識はあると判断したレイシャが、後を振り向くと満身創痍になりながらも戦う意思をその瞳に宿していた。
「人の弟に、この中で一番年下だってのに、ここまで言わせて…おいて、良いのかしら?」
強い目をしながら立ち上がる弟を見て成長したわねと思いつつ、リズは仲間に不敵な笑みを浮かべながら煽る。
「どんなに、辛かろうが…痛かろうがッ、諦めるな!私たちが立ち向かわないで、誰が愛しい人たちを守るって言うのよ!!」
そして自分だって立つのですら大変だろうに、それでもリズは大切な人を守るために、この選択を後悔しないために…這い蹲ってでも立ち上がった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.259 )
- 日時: 2015/07/31 21:20
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「…ハッ、流石だな…リズ、その生命力には、完敗だぜ…」
自分の恋人にここまで言わせておいて立ち上がらなければ男が廃るでは無いかと、グラッセは苦笑した後に気合で回復魔法をかけるとリズの隣へと移動する。
「喧嘩売ってるなら買うわよ、グラッセ?」
「—冗談、俺まだ死にたくない…お前と共にこれからも生きるつもりですから」
だが彼女は失礼な事を言われた事に腹が立っているようで、黒い笑顔を浮かべながらキーブレードを構えているでは無いか
ヤバい、後で絶対殴られるな…と身構えつつ、グラッセは恥ずかしい事をサラりと口にしながら同じく武器を構える。
「これで俺が惚れたのも分かっただろ皆?こんな良い女は中々居ないからな、俺の愛する人は誰よりも強く諦めが悪いんだ」
「…戦闘中に惚気るんじゃねぇよ、ったく…ご馳走様と言っておくぜ」
倒れている仲間たちにグラッセはウインクしながら彼女自慢をすると、呆れたようにツッコミを決めながらムーンも立ち上がる。
「その辺の話は後でたっぷりと聞かせて頂きますよ、グラッセ…あたし、俄然気合が入って来たんですから!!」
「女って奴は…どいつもこいつもこう言う話が好きだよな、オイ…!」
段々と目的が変わりつつある物のデータ・ファンタジアやマーベルも、それのお蔭で立ち上がる事が出来たので結果オーライだろう。
「お前らよく敵の目の前でやれるよな…まっ、気が楽にはなったがな」
「カヤ!これで全員復活だ…仕返しするぞぉぉぉっ!!!」←
最後のカヤも文句を言いつつも何だかんだで復活し、レイシャが嬉しそうに微笑んだと同時に先らの攻撃の反撃が幕を開けた。
「…チッ、あの一撃で沈めたと思ったのに…!」
「甘いわね!私たちはどんなにやられようが絶望しようがッ、何度だって復活するのが得意なんだッ!」
「普通は復活の所が立ち上がるだと思うが、今回は強ち否定出来んから訂正しないで置くぞ…っと!」
ウラノスも皆が立ち向かって来るのは予想外だったらしく、驚いた顔をする物のすぐさま元通りに戻しχブレードを振り下ろす。
それをリズとグラッセの二人係で受け止め、それぞれの思いを叫ぶと彼らは手を握り合い
「「これが…諦める事を知らない人の力だぁ!!シャインアワーァァァァァァッ!!!!!」」
「ぐわっ!!」
ウラノスに目掛けて光の柱をまるで豪雨のように振らせる連携技—シャインアワーを解き放ち、彼を地へと叩き付ける事に成功したのだ。
「ナイスだ、リズ姉ちゃんにグラ兄!トドメは任せろぉ!!」
それが最大限の攻撃を決める隙となり、レイシャは高く宙へと飛ぶと強大な闇をその手に宿し
「終わらせてやる…!!リズ姉ちゃん直伝ッ、ジョーカージェクトクロスッ!!!」
姉から教わった闇の衝撃波を鎌の形で解き放つ奥義を発動させ、ウラノスはその死神のような闇へと飲み込まれた。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.260 )
- 日時: 2015/08/03 11:49
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「っ…!おのれぇぇぇっ!!!」
「まだ立ち上がるのかよ!どれだけ体力あるんだよ、コイツ…!!」
レイシャが放った闇の衝撃波によりウラノスは地へと叩き付けられる物の、気合で堪えて這い上がって来た。
この根性にマーベルは感心しつつも、いい加減静まりやがれと思いながらホーリーを放つ。
「いや…今ので大分削られてはいる!その証拠に動きが少しだけ鈍い!!」
「いけます!!ブルータルブラスト!!」
「ぐわっ!!」
もはや化物レベルの耐性を持つウラノスに見えたが、彼の友人であったカヤは気付いていた…緑髪の青年のスピードが先らより遅くなっている事に
確かに言われてみれば隙があるとデータ・ファンタジアも気付き、ウラノスを打ち上げると回転攻撃を喰らわし吹き飛ばす。
「よし来た!ガイアブレイク!」
「野球でもやってんのか、お前らは!!?」
飛んで来たラスボスにムーンは打ち返すかのように、ジャンプ攻撃を仕掛けた後に巨大な岩を出し刺す。
ある意味えげつない攻撃方法に、思わずグラッセがツッコミを決めたのは言うまでも無い。
「…貴様らぁぁぁ…!!もう、許さねぇ…!!」
「まぁ、これだけコケにされれば切れるのも当然よね」
「そうだね」
「何冷静に分析してんだ、このアホ姉弟———っ!!!」
そしてこの茶番のようなやり取りで攻撃を受けたウラノスが、マジ切れしない訳も無く尋常じゃない殺気を出しながらχブレードを構える。
怒って当たり前だなと変な所でクールなリズとレイシャが頷いていると、カヤが焦った様子で二人を後退させるが—時既に遅し
「…グラアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
—ウラノス・オルヴィズ・レザレックションウンブラ、ついにキングダムハーツの力を爆発させる。
何故今まで使わなかったかと思わざる負えない威力だ、だが先らのエネルギーよりはマシなのでグラッセとマーベルもリフレガで防ぐ事が出来る。
「あーらら、ウラノスってば何時もに増して怖い顔してるわね」
「いや…誰だってあそこまで散々な扱い受けたらああなるって」
爆発音が舞う中—マイペースさを完全に取り戻したリズが、呑気そうに呟くので彼女の肩を掴んだグラッセが当然だろと言う。
「でも…怒ってるにしては攻撃の方法が、ワンパターンと言うかおかしくないか?」
『え?』
だが次の瞬間何気なく言ったムーンの台詞により、全員が驚いて紫髪の少年を見つめる。
「…いや、普通あんだけ怒り狂ってるなら、とにかく強力な技を放って俺たちを消そうとするだろ、それなのにウラノスの攻撃は爆発だけじゃないか」
皆の視線を受けてムーンは居心地が悪そうな顔をする物の、我を忘れるほどの怒り方をした経験談がある故に話を続ける。
「…もしや、ウラノス…キングダムハーツの力を押さえきれなくなって、暴走してるんじゃ…?」
そこまで聞いたリズが予想ではある物の、強ち間違いとは言えない答えを導き出してしまった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.261 )
- 日時: 2015/08/07 14:30
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「あはは…暴走、暴走かー…それは危ないね、危険だね、ヘタすれば全員死んじゃうよー…」←
「現実逃避するなレイシャ!!気持ちは痛い程分かるがな!!」
姉の導き出した嫌な答えに弟は乾いた笑みを浮かべるので、今にも壊れそうな親友を何とかカヤが肩を掴んで正気を保たせる。
「キングダムハーツの暴走…助ける方法などあるのでしょうか…?」
「知らん、俺に聞くな!知ってたら苦労しないっ!!」
大いなる心の暴走など前例が無いので解放出来るのだろうかとデータ・ファンタジアが首を傾げると、頭を押さえながらマーベルが当然の返答を返す。
確かに分かっていたらここまで悩んでいない、何せ相手は前代未聞とも言えるキングダムハーツなのだから
「私たちってどれだけキングダムハーツの被害を受ければ良いのかしらね」
「一生じゃないか?」
「シャレにならない冗談は止めてくれ」
トラブルに巻き込まれるたびにあのおっちゃんが裏で関わっている気がすると、リズはため息を吐いているとグラッセが末恐ろしい事を口にする。
これにはムーンが嫌そうな表情で、ツッコミを決めたのは言うまでも無い。
「そうね、これが終わったらキングダムハーツを更に締め上げなきゃいけなくなるから」
「貴方たちの会話の方が、私は怖いです」
「そう?」
それはリズも同感なので頷くと同時に危険な事を口にしたので、テルスが引き攣った笑みで物騒な思考を抱くようになってしまった友人を見たのは余談である。
「まぁ…世界の大いなる心様が相手だろうと、やってみなきゃ分からねぇだろ」
「何事も無さそうに言える辺りが、お前らしいよなリズ」
嘆いていたって状況は変わらないのでやってやると、リズはキーブレードを構えると駆け出す。
その度胸に乾杯だとマーベルは何の策も無しに突っ込む少女を、愚かだと思いつつも自分もその仲間なのだと思い走り出す。
「ウラノス・オルヴィズ・レザレックションウンブラァァァァァァッ!!!!!」
そしてリズはかつての友人のフルネームを叫びながら、キングダムハーツに飲まれかけているウラノスの元へと走る。
「もう私たちは戻れない…だからこそ、友人だった私が…いや私たちがお前を止めてやるよ…!息の根を止めると言う形で!!」
元より覚悟は決めていた、ウラノスを手に掛ける事は…でも本当は心の中で、昔の優しい彼に戻ってくれる事を期待していた自分も居たのだ。
その感情を今完全に捨て去る事が出来たと、リズはウィングモードで宙へと高く上がった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.262 )
- 日時: 2015/08/08 11:49
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「ウィングモードの完全覚醒を解除、解放せよ!」
ガラス状の羽根の力を利用し高くまで飛んだ後に、リズは上記の内容を叫ぶと—ウィングブレードの羽根が青から緑色へと変化する。
「ッ!!?」
「お、おいファンタジア、あれは何だ!!?」
「あたしも知りませんよ!?キングダムハーツからそんな事は一切聞いてません…!!」
色が変わった事にグラッセが息を飲んでいると、ムーンが大いなる心の託した力について一番詳しいであろうデータ・ファンタジアに問う。
しかし彼女にとってもこれは予想外と言うか、知らされていなかった事らしく信じられないと言わんばかりの表情をしている。
「完全開放を解除、解放せよ…って、リズ自身が言っていた辺り、アイツは知っていたようだ」
「恐らくキングダムハーツのおっちゃんさんが、リズ姉ちゃんには教えていたんだと思う」
「おっちゃんさんって…レイシャ、お前な…」
だがマーベルはリズの言い分からして彼女だけは分かっていた事を悟ると、レイシャが天然発言をしカヤからツッコミを受ける。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
「—ウィングブレード、最大の力を解き放て」
暴走した反動で叫び続けるウラノスには理性も無く、リズの存在に気付いた物のただ爆発を起こし続ける。
大技を決めやすくて何よりだとリズは黒く微笑んだ後に、両手を上げ上空から地面へとガラス状の羽根では無く剣を突き刺す。
「光の陣よ、その力を拡散させ…闇を薙ぎ払え!!」
すると剣を刺した所から魔法陣のような物が現れ、そこへと左手を降ろした瞬間—浄化の光が辺り一面を包み込む。
「——————…ッ!!」
それを発動した事により天使のような羽が舞う中、ウラノスは声にならぬ声を上げ倒れ伏す。
その姿をリズは無情にも冷たい眼差しで見下ろし、キーブレードを構えながら近付いて行く。
「人を利用して手に入れた力に飲まれ、暴走して何の意思も無くなった…アンタには相応しい末路かもね」
我ながら悪役らしい台詞を吐きながら、倒れて動かなくなったウラノスを見る。
キングダムハーツに飲み込まれたが故は彼は白目を向いていた、正直な所面白いと思うが今の内にトドメを刺すのが良いだろう。
「テルス、良いわね?」
「…分かっています、そう言う約束ですから」
最後の確認を彼の姉に取ると彼女もリズとした契約があるため、けして許されない事をしでかした弟の手を握りしめた後に手を離す。
「—お別れよ、ウラノス…さようなら」
せめて一撃で終わらせようと楽に逝かせるために、リズは彼の急所目掛けてキーブレードを振り下ろした。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.263 )
- 日時: 2015/08/09 11:06
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「—そうはさせないよ、リズ姉ちゃん」
「ッ!!?」
これで全てが終わるとリズはウラノスを目掛けて力一杯武器を振り下ろしたハズなのに、聞きなれた声が響き渡った瞬間—手が軽くなる。
それと同時に痛みが発生したのでまさかと後を向くと、案の定そこには自分のキーブレードを持ったレイシャが居た。
「レイシャ!?一体何を…」
「何をって見て分からないか?リズ姉ちゃんのキーブレードを奪った」
突拍子も無い行動を取った親友にカヤが目を見開いていると、レイシャはそれに改めて今自分が何をしたのかを実感させるべく語る。
「レイ、返しなさい」
「嫌だ」
「アンタだってコイツが何をしたのかを知っているでしょう、身を持って」
弟の行動に正直リズも驚いていたがすぐ落ち着きを取り戻し、彼に向かって手を差し出すと拒否される。
珍しいレイシャの反抗に久しぶりの我儘来た…と思いつつ、物分かりの悪い子供を諭すかのように話す。
「ああ、俺はコイツのせいで散々な目にあったよ…心を抉られるわ、アイズを行方不明にするわ、謎の光の中に閉じ込められて永遠に目覚められなくなりそうになるわで…最悪だよ」
確かに彼女の言う通りウラノスのせいでレイシャは酷い目に合いまくった、良い例が今言った上記の内容である。
「だからこそ、こんな奴のせいでリズ姉ちゃんの手をこれ以上汚れさせる訳にもいかない」
「………」
責任感の強い姉の事だから—必ず自分で決着を付けようとしている事をレイシャは分かっていた。
なので止めたのだ、こんな大馬鹿野郎のためなんかに罪を背負う必要などないのだと
「コイツの境遇には同情する、俺もコイツと同じような感情を抱いた事はあるから」
ウラノスの人生を知れば知る程に不憫だとは思う、事実レイシャも彼と似たような事を考えた事があるので余計同調する。
「でもコイツがやった事は…世界を揺るがす程の犯罪だ、それをウラノスは生きて償わなきゃいけない」
そう気持ちは痛い程に分かる、分かるが…彼が起こした罪を同情と言った感情で許す訳にはいかないのだ。
ガイアのように死んで終わりと言う訳にはいかない、この騒動の首謀者なのだから…ウラノスは何が何でも生きて貰わなきゃ困る。
「倒して終わりと言うやり方じゃコイツが楽な道へと進む手助けをしているだけ、だから俺は何が何でもウラノスさんを助ける、キングダムハーツの暴走から解き放ってみせる!!」
けして逃げる道へなど進ませない、その思いを込めてレイシャは両手を伸ばすと—闇の音符を作り出す。
「…さぁ、奏でようか…しがらみを解放する歌を…謳うっ!!」
その音符はウラノスの周辺へと動いたので、レイシャはキーブレードを彼の元へと置き—謳い出した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.264 )
- 日時: 2015/08/11 13:40
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「—月明かりも届かない、暗闇の中を彷徨い歩きながら—恐くて怯えていた」
「ッ!レイ、その歌は…!」
一体レイシャは何をするつもりなのだと全員が息を飲んでいる中、本人はその視線を気にせず聞いた事も無いメロディを奏で始める。
だが彼の姉であるリズはその歌が何なのかを知っているようで、かなり驚いた顔をした後に引き攣った笑みを浮かべる。
「…まさか、これでウラノスの心を呼び戻すつもりか?」
「—空で星が優しく瞬いて、僕らのことを暖かく見守ってくれてた—ありがとうって呟く、光が優しく微笑んだ」
レイシャが何故歌い出したのかをその理由が分かったようで、リズはキングダムハーツ相手に効くのかこれ?と言わんばかりの顔をしながら悩む。
姉が困惑しているのは分かっているだろうに、それを無視してレイシャは歌を続行させる。
「—暖かく照す太陽(ひかり)も、優しく包む夜の暗闇も—僕は奏でるよ、歌いきってみせる」
「…リズ、お前レイシャが何をするつもりなのか分かっているんだろ?」
「俺たちにも理解出来るように説明してくれ」
聞いて居て暖かい気持ちにもなり悲しい気持ちにもなる音に、グラッセとカヤは唯一レイシャがやろうとしている事を知っている少女に問う。
「えーとね…まずあの歌から説明しなきゃいけないんだけど、アレは私とレイが幼い頃に一緒に作った思い出の歌でもあるの」
「自作であの上手さかよ…」
「突っ込む所が違うと思います、マーベル」
何処から言えば良いやらとリズは苦笑した様子で、取りあえずレイシャが奏でている歌詞は自分たちが幼少時代に作った物である事を告白する。
それを聞いたマーベルが珍しくボケたので、データ・ファンタジアからのツッコミを受けていたが
「それであの歌と言うか…レイシャはね、歌を歌っている時に特殊な魔力を音符として出しているのよ」
「ああ、さっきウラノスを包み込んだ闇色の音符だろ」
「そう、それ」
そしてレイシャが謳う曲には特別な力が宿っている事を告げると、ムーンはつい先ら緑髪の青年の周りに動いた黒い音符かと聞くと肯定される。
「それが…どんな原理かは分からないけど、人の心を解放する力が備わっているの」
「心を解放する?」
「キーブレードでハートを回収するのと似たような物だよ、歌で捕らわれた心を元の帰るべき場所に返すって感じ」
「「「「「ッ!!!!!」」」」」
その音符がリズもよく分からないがキーブレードと似たような力を持っており、本来あるべき場所に心を戻す事が出来るのだと口にすると全員が驚いた。
「じゃあ歌を歌い続ければ…或いは!」
「ええ、ウラノスを戻す事が出来るかもしれないわね」
レイシャが謳い続ければ緑髪の青年がこちら側に帰ってこれる可能性がある事に、グラッセが気付くとリズも成功する確率は低いが彼を死なせずに済むと頷いた。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.265 )
- 日時: 2015/08/13 13:31
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「歌を歌うと言っても…レイシャ以外に魔力を乗せる事は出来ないけどね」
「お前でもか?」
「リズでも駄目なんですか?」
「…アンタたち私を何だと思ってるのよ、私にだって出来ない事はあるわよ」
早速レイシャに加勢しようと考えた物の、歌へ魔力を乗せる力は彼しか使えない物なので無意味である。
それをリズは出来ないのかとマーベルとデータ・ファンタジアが問うて来るので、人を何でも出来る超人扱いするなとツッコミながら否定する。
「でもレイシャに俺たちの魔力を分け与える事が出来れば…」
「手伝う事は可能だろう?」
だがグラッセとムーンが自分たちなりに出来る事はあると呟く、謳い続ける少年へと魔力を注ぎ始める。
「二人とも大正解♪私たちもやるわよ!」
「任せろ!」
流石私の親友たちであるとリズはウインクをしながら頷き、カヤと共に弟へ魔力を分け与える。
「私の魔力も貰って下さいレイシャ!」
「俺のも行け!」
「届いて下さい…!ウラノスさんにあたしたちの思いを!!」
自分たちに出来る事がはっきりと分かれば実行のみである、ディアステイトロッドを構えたテルスとマーベルとデータ・ファンタジアも力を託す。
「ありがとう皆!皆の力が凄い漲って来る!!これなら行ける!!」
「当たり前よ、とんな事だろうと屈しなかった私たちの力なんだから!」
自分に流れ込んでくる力の大きさにレイシャは驚く物の、それからは暖かい光のような物を感じたので使う事に恐怖を感じなかった。
だからこそ笑顔で振り向くとリズは自分が大好きな優しい笑みを浮かべていたので、尚更気合が入ったレイシャは歌を歌い続ける…ウラノスの心を解き放つために
「—月明かりも届かない、暗闇の中を彷徨い歩きながら—恐くて怯えていた」
「—空で星が優しく瞬いて、僕らのことを暖かく見守ってくれてた—ありがとうって呟く、光が優しく微笑んだ」
「—暖かく照す太陽(ひかり)も、優しく包む夜の暗闇も—僕は奏でるよ、歌いきってみせる」
「—大切なものたちと歩きたい、宙(そら)の下」
我が姉とその知人たちのお蔭で魔力に困る事は無い、だからこそ一気にレイシャは歌う事が出来る。
「ぐぅ…ぐあああああああああ…!!!」
少しずつだがレイシャの歌と皆の想いはウラノスに届いている、その証拠に彼は人間らしい悲鳴を上げ始めたではないか
「戻って来て、ウラノス…!!」
「私たちはここだッ!!ウラノス———ッ!!!」
「………………ッ!」
テルスが両手を握りしめながら祈りを捧げ、リズも大声で叫ぶと—緑髪の青年の身体が光り出した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.266 )
- 日時: 2015/08/14 12:36
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「あ、あぁ、あああああああああ…!!!」
恐らくキングダムハーツの呪縛から解き放たれている最中なのだろう、それを決定づけるかのように光が空へと解き放たれて行く。
「これは…」
「キングダムハーツの光よ、多分本来あるべき場所に帰るんでしょうね」
まるで太陽のように光輝く存在にデータ・ファンタジアが首を傾げていると、リズが天へと昇って行く光を見ながら説明する。
「…綺麗だね、それでいて暖かい」
「ああ、まるで優しく包み込まれている気分だ」
闇に最も近しいレイシャとムーンでさえ、この光を見ていて清々しいと言わんばかりの顔をする。
「そうか?俺はこの光を見ていると…何か無性に苛立つ、嫌と言う程見覚えがあって」
「珍しいな、お前が光の力を嫌がるなんて」
だがグラッセからすればこの光は—かつて純粋な闇と融合したリズと戦い、そして勝った後に発生した物と似ているからか顔を歪める。
そんな事情を一切知らないカヤは、滅多にない友人の思考に少々驚いたようだった。
「…まー、色々とあるのよ、ねぇマーベル」
「何故俺に話題を振る、俺はその辺に関しては全く知らんのだが?」
グラッセの内心を唯一察したリズは引き攣った笑みを浮かべ、逃れるようにマーベルへと話を振ると当然のツッコミが返って来た。
「ウラノス、ウラノスッ!ああ、良かった…!!」
そんな微妙な空気など気にせずテルスは倒れる弟の元へ駆け寄ると、嬉しそうに泣きながら抱きしめる。
「美しき姉弟愛ですね…」
「…美しいのか、アレ?」
「知らん」
「美しいよ、あれだけお互いを思い合っているなんて…」
「その言い方だと誤解を招くからやめとけ」
「と言うか、レイシャも似たような物だろ」
「流石シスコンだな」
「誰がシスコンだよ!!?」
その光景を眺める一行は上からデータ・ファンタジア、リズ、マーベル、レイシャ、グラッセ、ムーン、カヤ、レイシャの順で話す。
「………………うっ」
「ウラノス、気付いたのね…!!」
騒いでいたからか緑髪の青年が目を覚ましたようで、テルスが支えながら起こした瞬間
「…触るな、どけっ!」
「きゃあっ!」
ウラノスは目を見開いたかと思えばテルスを突き飛ばし、最後の悪あがきをするかのように立ち上がった。
「なっ!」
「もう勝負は付いたはずだろ!!?」
「チッ、やっぱりこう来るか!!」
まさかまだやるのかとグラッセとレイシャが焦る中、ウラノスが掛かってくる事態を想定していたのかリズだけはキーブレードを構えて彼の元へと駆け出した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.267 )
- 日時: 2015/08/14 22:08
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「リズ!」
「全員そこで見てろ!これは私とウラノスの戦いだ!!」
ウラノス目掛けて走り出す少女にカヤが慌てて名前を呼ぶが、リズはそれだけを叫ぶとキーブレードを振り下ろす。
—ガキンッ
「…はぁ、はぁ…!!」
「—ようやく化けの皮を剥がした様だな」
だがウラノスは一歩手前の所で武器を出し防ぐと、彼が持っていた物を見た瞬間リズはニヤリと笑いながら口を開く。
そう彼はスパークチャクラムでキーブレードを受け止めたのではない、スターホワイトチェーンとぶつかりあっているのは—金色の雷をモチーフとした鍵のような武器だ。
「う、嘘だろ…!?キングダムハーツとの融合は解かれたはずだ!ならキーブレードは使えないハズだ!!?」
「これが答えなんだよ、グラッセ…コイツは隠していたようだが、正当なキーブレード使いなんだ」
見間違えでなければウラノスが扱っている物は、自分たちが使う伝説の武器—キーブレードである。
大いなる心を持っていない今…彼に呼び出す事など不可能だと赤髪の少年が驚く中、色々と想定していたリズは冷静にウラノスを見つめながら語る。
「その通りだ…俺は、キーブレード使いの一人でも、ある…ちゃんと継承は受けてるな」
「誰から継承を受けた?」
「一言で言うならネズミだ、人間では無かったが俺と同じ金色のキーブレードを使う人だった…」
「「「(間違いない、例のあの人だ!!!)」」」
ご名答だと言わんばかりにウラノスは苦笑すると、キーブレードマスターから正式に受け継いでの事だと呟く。
コイツにキーブレード使いとしての実力を見出すなど何者なんだと思いながら問うと、紛れも無い大物の人物が出されたのでその人物と縁があるグラッセ、ムーン、レイシャは叫ぶ。
「あー…確かに寛大なあの人ならやりかねない、ったく…何やってんのよ、王様ぁ…!!これほど伝説の武器を授けちゃいけない相手なんて居ないのにぃ…!!」
「王様?そう言えばうるさいアヒルと犬にもそう呼ばれていたな…」
「本名すら知らない関係でキーブレードを継承されてたのかよ!!?」
リズもその人物の事を聞くと引き攣った笑みを浮かべた後に、手で顔を仰ぎながら今頃城の中で仕事をしているであろう知人にツッコミを決める。
するとウラノスはマスターの名すら分からなかったようで、天然発言をしたのでマーベルから当然の内容を叫ばれる。
「…後で王様に手紙送るべきだな、貴方が継承したキーブレード使いが世界を滅ぼそうとしましたと」
「止めないぞムーン、と言うか寧ろ手伝ってやる、100枚でも送ってやれ…!!」
原因の一環を勝ったネズミ様にムーンは真顔でそう呟くと、グラッセも青筋を立てながら同意したのだった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.268 )
- 日時: 2015/08/15 13:44
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「何だ、お前らもあの人の知り合いだったのか」
「…不本意ながら俺の実父が、その人と友人関係なんだよ」
「俺の両親とも友達だ、だから結構会う機会は多かった」
ウラノスのキーブレードの師とも呼べる存在が王様であった事に、ネズミ様の関係者である4人は頭を押さえる事しか出来なかった。
その反応を見た緑髪の青年も驚いた様子でそう問うて来るので、疲れ切った様子でムーンとグラッセが答える。
「そうか…ならあの人には申し訳ないが、このキーブレード—ゴールデンライトニングで知人を消させて貰おうか…!!」
「自分の師匠とも言える存在の知り合いと分かってもこの態度ですか!!?」
予想外の繋がりにウラノスも少々戸惑った物の、すぐさま残虐さを取り戻したのか金色の稲妻…ゴールデンライトニングを構えながら駆け出して来る。
これにはデータ・ファンタジアも何と言う男だと、憤慨しながらツッコミを決めたのは言うまでも無い。
「させないわよ!全く…こっちは寧ろ余計生かして止めなきゃいけなくなっちゃったじゃない!!王様の関係者を消す訳にもいかないし…!!」
そんなウラノスを待ち構えるかのようにリズは立ち塞がり、キーブレードで受け止めながら叫ぶ。
幾ら破壊神と言えども流石にあの人の知人に手を下そうとは思えなくなったようだ、親友の父の友達と自分の知り合いと言う事もあるが故に
「…何だかんだ言って、お前も底無しレベルで人が良いよな」
「やかましいマーベル!!」
末恐ろしい思考に辿り着く事が多いリズではあるが、大切な人が傷付くと言う事が一番嫌いだからこそ甘い所もある。
結局今回もそうなってしまい呆れた様子でマーベルが呟くと、返す言葉が無いからか上記の文句を言われるだけだった。
「ったく…ウラノスこの戦いが終わったら覚えてろよ!王様の元へ連れて行って土下座させてやるからなぁぁぁっ!!!」
「ふざけんな!寧ろ俺が土下座させてやる!と言うか跪かせてやるわぁぁぁっ!!!」
こうなったのも全て目の前に居るこの男のせいだと、リズは苛立ちながら叫ぶとウラノスも同じく叫び返してくる。
「…先らまで緊迫感、何処行った?」
「もはやこの戦いに恐怖すら感じられなくなってきた」
世界の命運をかけ戦いでは無くただの友人同士の喧嘩に見えてきた戦闘に、グラッセが遠い目をしながら問うとムーンもため息を吐く。
「それがアイツの戦い方なんだよ、緊張感も何も無い…真っ直ぐぶつかり合う戦闘だ」
唯一リズの弟子であるカヤだけが苦笑した様子で、あの二人の戦いを称しながら見守るのだった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.269 )
- 日時: 2015/08/16 22:09
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「だぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
ウラノスのキーブレードとリズのキーブレードが、お互いの絶叫と共に金属音を立ててぶつかり合う。
二人とも自分の信じた道に対して迷いが無いため、太刀筋も良く両者が一歩も引かない戦いっぷりであった。
「…ッ、リズ一つ聞く!お前は後悔しなかったのか!!」
「何を、よ!」
「フリーズシティが襲撃されたあの日の事をだ!俺はあれから死ぬ程…後悔していた!!」
このままでは埒が明かないのでウラノスは間合いを取ると、スターホワイトチェーンを構えているリズに叫ぶ。
一体どういう事なのだと少女は問うと緑髪の少年は舌打ちをした後に、戦火に飲まれた故郷の出来事についてだと語る。
「あの街の惨状は俺たちレザレックションウンブラ家が起こしたも同然の物だ、あの時俺に力があれば皆を守れたんじゃないかって…ずっと思っていた」
「………それは私も一緒よ」
フリーズシティを壊滅させたのは自分たちと言っても過言では無い、強ければあのような事が起きなかったのだとウラノスは悔やんでいた。
そんな物はリズだって思っていた事だ、あの時の事があったから—強くなろうと決心して今の自分の居るのだから
「いいえ、私だけじゃない…あの時、あの場所に居た全員が恐らく同じ事を思っていたわ」
そして自分さえ強ければと言う思いは、フリーズシティに関わっていた誰もが考えた事であるとリズは呟く。
「…そうでしょう、カヤ、テルス」
「…ああ、何度も思った事だ」
「生き残ってからずっと思っていましたよ…何故私はこうも無力なのだろうと、強さが欲しいと」
その事を確認するために当時の関係者である二人の名前を呼ぶと、カヤは拳を握りしめテルスも悲しげな表情で頷く。
「なら…後悔していたと言うのなら、俺に力を貸せ!皆の無念を背負って奴らに復讐を—」
「勘違いしないでくれる?私はずっと後悔していたとは言っていないわ」
今でもその気持ちがあるのなら同じ境遇同士として報復するべきだと、ウラノスが感情的になろうとした瞬間—リズの冷静な声が響く。
「確かにあの後は後悔をしたよ、それでいて奴らを憎んだ…でもそう考えるたびに、私に残ったのは空しさだったわ」
暫くは立ち直る事など出来ずに居た、ウラノスのようにアイツらへの憎悪を宿らせもした。
だけどその後に襲い掛かる衝動は…喜びでも無く悲しみでも無い感情だった。
「後悔をするのを止めたのはついさっきだけれど、貴方と同じように復讐を考えていた時期は一ヶ月も無かったのよ」
私とウラノスは大して変わりが無いのかもしれない、でもそれでも私は—彼と同じである事を敵として否定しなければならないのだとキーブレードを構えた。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.270 )
- 日時: 2015/08/17 22:07
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「…何故だ、何故そこまで、お前は真っ直ぐで居られる」
自分たちを殺そうとした集団たちの事を既に区切りを付けて、6年前の時点で前を見ていた少女にウラノスは憎々しげな眼差しで呟く。
「私が真っ直ぐ?何言ってんだ、私はどう考えても捻くれ代表だろうが」
「本当に捻くれてる奴なら…復讐を考えているさ、俺みたいにな」
緑髪の青年の言い分が理解出来ないリズは首を傾げながら否定する物の、ウラノスはキーブレードを持ちながら悲しげに言う。
「何でだよ!恨めよ!憎めよ!」
「………」
「こんなのおかしいじゃないか!理不尽過ぎるじゃないか!!何故、何故俺だけがこうして苦しまなきゃいけない…!!」
もはや様々な感情が混ざって冷静に考える事など出来ないのだろう、その証拠に彼が叫んでいる内容は滅茶苦茶な物だ。
「ウラノス、貴方は私に…いいえフリーズシティの関係者たちに立ち上がって欲しかったのね」
でも彼が言った言葉により—本当の意味で何を言いたいのかは知る事が出来た。
ウラノスはフリーズシティの住人たちと共に、光の集団と戦って自分の過去と打ち勝ちたかったのだ。
「…支えが欲しかったのね、自分たちを殺そうとした集団へ復讐するためでは無く…忌々しい思い出を乗り越えるために」
緑髪の青年は孤独だった、だからこそ仲間と言う存在が傍に居て欲しかった。
そして自分たちの暗い過去である襲撃の事件を昇華したかったのだ、かつての友人たちが居れば闇に飲まれる事も無いだろうからと
「ウラノス…」
「お前…」
「貴方って子は…」
ウラノスの本心をリズの口から知ったカヤ、ムーン、テルスのフリーズシティに関わりがある人物たちは悲しげな表情で彼の名前を呼ぶ。
「相変わらず不器用なのは変わっていないな…そう言う所は、私やムーンと一緒ね」
6年前から変化の無い部分にリズは腕を組みながら、微笑ましいと言わんばかりの顔をして近寄ろうとすると
「黙れ…黙れ黙れ黙れッ!!!!!」
まるで小さな子供のようにウラノスは癇癪を起すと、ゴールデンライトニングに雷を宿す。
「ッ!この魔力は—ッ、マズい、皆逃げろ———っ!!!!!」
その力の恐ろしさに魔力に敏感なグラッセは真っ先に気付き、慌てて全員に退避する事を叫ぶが
「もう遅い、リズ…いいや、この場に居る全員が消えろ———!!雷電・雷鳴ッ!!!」
召喚獣イクシオンのような物を出すと同時に、絶対に逃れられないような雷が幾つも主にリズに対してだが落ちたのだった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.271 )
- 日時: 2015/08/18 21:09
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「守りよ、リフレガァァァッ!!!」
「ダークシールドからの…ダークブロック!!」
「ダークリフレガ!!」
これを喰らったら一溜まりも無い—と言うか確実に死ぬのが目に見えるので、グラッセ、ムーン、テルスの順で壁やバリアを作り出し防御する。
「な、何ですか、この魔力…普通の人間が使う物では無いですよ…!」
「ああ、これはまさか…召喚獣イクシオンと同じ魔力、か…?」
「いや…確かにイクシオンの力と同じように見えるけど、あくまで似ている物だ」
「偽物の紛い物の力って言うの、これが…!!?どう見ても人が扱える魔力じゃ無いよ…!!!」
3人の守りによって何とか逃れる事が出来た物の、強大過ぎる魔法にデータ・ファンタジアが驚きを隠せずに呟くとカヤが召喚獣の魔力ではと悩む。
だがその力について一番詳しいグラッセが否定した事により、あくまでウラノス自身の魔力である事が発覚しレイシャが絶句したのは言うまでも無い。
「それよりも…リズッ、大丈夫か——————っ!!!!!?」
騒ぐ仲間たちをムーンは一瞥した後に、術の中心に居たリズを心配し彼女の名前を呼ぶ。
「無駄だ!この魔法を喰らって生きている訳が無い、ははっ…ははははははは…!!!」
リズの安否を確認しようとしたムーンに、ウラノスは余程自分の魔法に自信があるのか高笑いしながら宣言する始末だ。
「—自信があるようで何よりだ、確かにこの技は相当強いし痛いし…普通だったら死ぬわな」
「ッ!?なっ…!!」
だがお忘れだろうか?リズと言う少女は相手が強ければ強い程に、戦闘能力が上がり—それでいて生き残る事が出来るフラグクラッシャーであると言う事を
今回もそうやって立ち上がって来たようで、緑髪の青年は何処からか聞こえるリズの声に辺りを見渡す。
「けど、残念な事に…私には通じないのよねぇ、何せ私—訳あって死ねませんから♪」
「ッ!!!!!?」
するとリズは何時の間にか移動していたのか、ウラノスの懐に入りながら笑顔でそう言う物だから彼の顔色は真っ青になる。
「と言う訳で、てめぇの撃った魔力をお返ししてやるよ!!アクア直伝ッ、リフレクカウンターッ!!!!!」
人を殺そうとした報いを受けされるために、リズは今までにない良い笑顔を浮かべると同時に某絆繋ぐ舞水様から教わった魔法をお見舞いする。
「ごうっ!!!!!」
名前からしてその効果は言うまでも無いだろうが、魔法攻撃を倍に返す物である…そう、先ら渾身の力で放たれたであろう雷の魔力を二倍で
その威力はきっと計り知れない物なのだろう、喰らったウラノスは気絶してしまったのだから—随分とあっけない末路であった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.272 )
- 日時: 2015/08/19 13:22
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「アクア師匠からの教わった魔法でトドメって…お前えげつないな」
「あの人が開発する魔法って大抵こんな物だから、馬鹿なウラノスには丁度いいでしょう」
「………そうかい」
自分たちの師とも言える青髪の女性から伝授された魔法でウラノスを倒したリズに、ムーンは引き攣った笑みを浮かべながら冷や汗を流す。
だがリズも緑髪の青年がここまでやらかさなければやるつもりは無かったようで、ヤレヤレと言わんばかりにため息を吐くので何を言っても無駄だと悟った。
「…これで、本当に終わったのか?」
「ええ、終わったようです…その証拠に、あたしの身体も消えつつあるようですから」
「ッ!!?お前、その身体…!!!」
「ファンタジアさん!」
いまいち実感が沸かない終焉にマーベルは複雑そうな顔で呟くが、データ・ファンタジアは嬉しそうに微笑みながら—消えかけている右手を差し出す。
これにはマーベルだけでは無くレイシャも驚きを隠せずに、慌てて駆け寄ってくるがそれでも彼女は笑っている。
「なるほど…キングダムハーツの奴、この件が終わったら身体が消えるシステムでアンタを作っていたのか」
「ええ、あたしは本来データの存在です…それを大いなる心の力で実体化していたに過ぎません」
カヤはデータ・ファンタジアが消えかけている理由が分かったようで、腕を組みながら語るので少女は同意する。
「そんな…折角友達になれたのに…!」
「そう言って下さるだけでもあたしは幸せですよ、レイシャ…本当にありがとう」
いきなり永遠の別れを突き付けられたレイシャは泣きそうになる物の、データ・ファンタジアは自分にその気持ちを向けてくれただけで十分だと笑う。
「光が強く…ファンタジアさんっ!!」
「皆さん今までありがとうございました、あたしは貴方たちが知る本物の【ファンタジア】では無いと言うのに優しくして下さって」
話している内に更に彼女の身体を包む光は大きなっていき、薄れていた身体も更に実態が見えなくなっている。
そんなデータ・ファンタジアにテルスが名前を呼ぶと、彼女は【ファンタジア・ミックスブルース】では無い自分と居てくれた事を例を言う。
「…ファンタジア、貴女は貴女よ…本物とか関係無い、貴女は【ファンタジア】なんでしょう?だったら貴女も本物の存在よ」
最後に悲しい事を言ったデータ・ファンタジアにリズは近付くと、頭を小突き君は偽物では無いと優しく微笑む。
その目に涙が溜まっている事を【ファンタジア】だけが気付いていた、ああ…あたしはこんなにも思われていたのかと嬉しくなる。
「…ありがとう、大好きだよ—リズ、あたしのたった一人の…家族」
「うん、私も貴方の事が大好きよ、私の大切な家族であり…娘のような存在」
ファンタジアはリズの身体を抱きしめると同時に涙を流し、最高の笑顔でお互いの想いを告げあうと—光となって消えた。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.273 )
- 日時: 2015/08/19 16:46
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「…随分と後味が悪い別れ方だよ、まっ、いきなり現れたアイツらしいがな」
「そう言いつつも寂しいんじゃないの?寂しがりやなマーベル君♪」
「誰が寂しがり屋か!!…まぁ、確かに悲しいとは思ったが、な」
笑顔で消滅したデータ・ファンタジアにマーベルは、突然現れて突然去るとは何事だと言わんばかりにため息を吐く。
だがそう言いつつもその顔が切なそうな物になっている事にリズは気付いており、ニヤニヤと笑いながらからかうと彼はツッコミを決めつつも寂しい事を認める。
「先らまで居た仲間が居なくなって寂しいと思う事は当然だろ、リズ」
「そうそう、だからそうからかうなよ」
「分かってるわよー」
相も変わらずマイペースな行動を取るリズに、グラッセとムーンが呆れた様子で注意すると彼女も返事を返しながらマーベル弄りを止める。
「あれだけ激しい戦いをしたと言うのに、何であんなに元気にはしゃげるんだよアイツ…」
「リズ姉ちゃんだから、諦めてカヤ」
「…その言葉だけでも、何故か凄い納得出来るんだよなぁ…」
元気に騒ぐリズたちを見て弟子のカヤは底無しの体力を持つ彼女にツッコミを決めると、レイシャのとある一言により嫌でも理解させられてしまう項垂れる。
「あはは………ねぇ、カヤ」
「何だ?」
「………お別れなのは、ファンタジアさんだけじゃ無いんだ」
「え…」
そんな親友の仕草にレイシャは苦笑しつつも、何処か思い詰めた表情で俯きながらカヤの名前を呼ぶ。
もちろんすぐに反応を返すと次の瞬間—彼から語られた衝撃的な内容に、カヤライト・クラッシュドアイスは硬直する。
「…俺も皆と永遠にさよならするつもりだ、もう二度とリズ姉ちゃんにも…カヤにも会う事は無いと思う」
「な、何で…だ?」
レイシャもファンタジア同様にここから居なくなる選択をしていた、それは何故なのかとカヤは問うと
「…アイズの居場所が分かったんだ、だから俺も彼女の元へと行こうと思う」
「なっ…それなら、俺だって!!」
「駄目なんだ!カヤは来ちゃいけない…!!」
行方不明になったもう一人の親友の手がかりがついに見つかったようで、それ故に行かなければならないのだとレイシャは呟く。
アイズが見つかった、ならば自分も一緒に同行を申し出ようとして…力一杯否定される。
「…一度行ったら、二度と戻れなくなる…一方通行で帰る方法が無いって、キングダムハーツが言ってたんだ」
「なっ…!!」
「カヤはこの世界で生きて居たいだろう…?リズ姉ちゃんや、セレスタイトさんや、テルスさんやウラノスさんも居るから」
「………ッ」
彼が頑なにまでカヤと共に行く事を拒否した理由、それは戻る事が出来ないからだと言う事を知らされた水色の髪の少年は息を飲む事しか出来なかった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.274 )
- 日時: 2015/08/19 21:02
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「………済まない、その通りだ…」
アイズが二度と戻って来れない世界へ飛ばされた、そしてレイシャもそれを承知で行こうとしている。
今までのカヤだったら何の迷いも無く彼に着いて行っただろう、しかしこの世界には自分にとって大切な人が沢山居るのだ…だからこそ彼の問い掛けを否定出来ない。
「…俺は最低だな、親友であるお前たちを優先する事なんて出来ない…俺はセレスを放って置けない、生きて居たと分かった以上は」
「それで良いんだよ、セレスタイトさんはカヤにとって大切な人なんだろう?だったら傍に居てあげるべきだよ」
ずっと友達だったレイシャとアイズを見捨てたのだと、カヤは自嘲するかのような笑みを浮かべる。
彼は何も悪く無いと言うのに優し過ぎる友人にレイシャは微笑み、カヤの特別な女の子である少女を守るべきだと促す。
「それに…カヤが嫌な物を背負わないように、俺の記憶は全てリズ姉ちゃんに消して貰うから」
「え?」
「…リズ姉ちゃんも記憶を操る能力があるんだよ、少しだけね」
このまま行ってもカヤを苦しめ続けるのは目に見えているので、レイシャはこの世界の自分が存在していた証すら姉の手で消し去るつもりだと語る。
それを聞いたカヤがどう言う事だと目を見開くと、レイシャは姉によく似たウインクをしながらリズを見る。
「ってな訳で、話は聞いてたよねリズ姉ちゃん!早速だけど—」
「…本当に後悔しないのね、レイシャ・ブラックノーバディ」
何事も無かったかのようにレイシャはリズへと話しかけ、要件を伝えようとすると真剣な表情をした姉に問われる。
これで良いのかと—自分の記憶が大切な人たちから消えても、けして悔やまないのかと
「うん、後悔はしないよ…これは俺が選んだ事なんだ、自分で選んだ道を後悔なんてしない、しちゃいけないってリズ姉ちゃんも言っていただろう」
「そうよ、自分で決めた事なら最後まで悔やむ事無く…進まなきゃいけなんだ」
リズの質問にレイシャは胸に手を当てながら頷き、何時の間にかこんなにも大きくなっていたのだろうと思うぐらい…凛とした顔で語る。
もう私や父さんが教える事は何も無いと、少し寂しく思う物の…これからアイズちゃんを守らなきゃいけない事を考えるとこれぐらいが良いのだと思う。
「よしっ、アンタの覚悟は受け取った…グラッセ、ムーン、これ…取ってくれる?」
「…ああ」
「分かった」
レイシャの想いに姉として答えるべきだとリズは笑った後に、親友二人の名前を呼ぶと左腕のノーバディの刻印が付いたアームレットを差し出す。
そしてこれを壊すように頼むと、グラッセとムーンは魔力を宿し…言われたがままにそれを外した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.275 )
- 日時: 2015/08/20 14:54
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「これは…?」
「封印の一種よ、私の記憶を操る力を封じるね」
「なっ!!?」
リズの腕から外されたアームレットを見たマーベルが、特殊な金属で作られている事に疑問を覚えると彼女はサラリととんでもない事を口にする。
記憶を操る能力を受け継いでいたのはレイシャだけでは無いのか、そもそも封印ってどう言う事だと様々な言葉が思い浮かぶが話せない。
「私が母さんから受け継いだ記憶を操る能力は…母さんやレイ以上に危険な物だったのよ」
「危険…?」
「…ヘタすれば他人の心を壊しかねない力、我ながら怖い力を持っていると思うよ」
そんな心情が顔に出ていたのかリズは苦笑した後に、自分が持っている記憶の力に関して語る。
確かに記憶を操作する時点で危ない力ではある物の、あの破天荒が自ら言う程であるのかと若干失礼な事を思ってると彼女は末恐ろしい事を話す。
「…ちなみにどんな力なんだ」
「他人の記憶を—砕く力だ、マーベル…けして戻す事など出来ない強力な力だ」
心を壊すってどれだけヤバい力なんだとマーベルが盛大に顔を引き攣らせると、その内心を察したグラッセが分かりやすく説明する。
「砕くって」
「文字通りの意味だ、アイツは他人の記憶を操ったり書き換える事は出来ないが、何故かその記憶を永遠に思い出させなくする事が可能なんだ」
「それをする過程で記憶の鎖を壊すんだよ、だから砕くって言っている」
聞いた事も無い記憶の能力にマーベルは首を傾げると、リズの能力について詳しいムーンとグラッセが交互に話してくれたお蔭で理解する事は出来た。
「…つまり一度実行したら、二度とその人物に関して思い出す事が出来ないんだな」
「うん、実際使った人物は未だに誰も思い出していない…と、思う」←
「使った事あるのかよ!?それでいて発動させたお前自身にも記憶は残らないのか!!」
「そうよ、だからそれだけ強い力だから封印していたんじゃない」
記憶を砕けばもうレイシャの事は何も分からなくなってしまう、そんな凄い力であり怖い力を宿すリズを見てやっぱりコイツは普通じゃ無いとマーベルは思った。
そう思っても彼女に対して恐怖とかは湧かないが、現に問題発言をしたリズにツッコミを決めている状況であるのだから
「—記憶の鎖よ、我が元へ現れよ…私が砕く記憶のその名は…レイシャ・ブラックノーバディ」
—ジャララッ
全て話し終えたのでリズは力を発動すべく両手を前に出すと、何処から出しているか原理は分からない物の—金色の鎖を出した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.276 )
- 日時: 2015/08/20 21:47
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「金色の鎖…?」
「リズ姉ちゃんが記憶を操る能力を使う時に出る奴、ちなみに俺も銀色の鎖を呼び出す事が可能だよ」
「…そんな事、今更と言うか最後の最後に知りたく無かったわ」
何処からか取り出したかも分からない線状の物を両手で構える師に、カヤは初めて見るリズの能力に目を見開く。
そんな親友に対して自分も同じ事が出来ると同じ事を告げると、何を思ったかは分からないが遠い目をしながら呟いた。
「そっか…でも最後も俺たちらしくて良いんじゃないか?無理に悲しい雰囲気を作るよりも」
「…そうだな、俺たちらしく別れよう」
嘆く親友に上手い事が言えないレイシャは悩む素振りを見せる物の、自分たちはそれで構わないのだと笑顔で言う。
確かに彼の言う通り自分たちらしかぬ行動を取るのもどうかと思う、最後だからこそ…何時ものように終わりたい。
「…楽しそうに話してる所、悪いけど…準備は出来たわ」
「そう」
「これを砕けば皆…貴方の事を忘れる、世界の理から外れたアイズちゃん以外はね」
親友の会話を行う二人の邪魔をするようで申し訳ないとリズは思うが、記憶を砕く手順が整ったので話しかける。
するとレイシャは怒る事無く頷いたので、最終確認と言わんばかりに少女は記憶を砕く事に関して説明する。
「アイズはちゃんとレイシャを覚えているのか?」
「もちろんよ、アイズちゃんは現在異世界へ飛ばされているから流石にそこまで私の力は作用しない」
全員の記憶を砕く力と言えども行方不明になっている状態の人物には効果が無いようで、驚いたようにカヤが問うとリズは肯定の答えを返す。
「そうじゃなきゃ…俺がアイズの元へ行く意味が無くなっちゃうじゃないか、カヤ」
「………確かに、な」
アイズが覚えて無ければ俺はどうすればいいとレイシャが苦笑すると、彼の言う通りだとカヤも我ながら冷静さを欠いて情けないと苦笑する。
「…早速やるか!って…言いたい所だけど、最後に皆に言いたい事があるんだ」
いざやらんと言わんばかりにレイシャは腕をあげようとする物の、永遠のお別れなので仲間たちに一言告げる事にした。
「マーベルさん、今までお世話になりました…これからも家の手のかかる姉をお願いします」
「…任せろ、アイツと出会った時点で既に迷惑しかかけられていないから」
「あははっ!それもそうでしたね」
まずは藍髪の少年から口を開き散々姉に巻き込まれている彼に対して、お礼を言うと同時にリズの事を頼むと彼は優しく微笑みながら頷いた。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.277 )
- 日時: 2015/08/20 22:09
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「テルスさん、貴女と過ごせたのは…ほんの少しでしたが楽しかったです、貴女がリズ姉ちゃんの友達で良かった」
「こちらこそ貴方のような素敵な人と出会えて良かったわ、ウラノスの事と言い…本当に感謝してもしきれないわ、ありがとう」
「それこそこちらの台詞ですよ、そこで寝ている男に関してはノーコメントですが」
「あらあら」
2人目は金髪の女性でたった2日しか共に居れなかったが、知りあえて良かったと語るとテルスも嬉しそうにお礼を言う。
途中で気絶している緑髪の青年の話になって、前者は複雑な顔をしており後者は苦笑していたが
「ムン兄、同じ闇を扱う者として共感する事は多かったよな」
「…ああ」
「それにムン兄は何処かカヤに似た面があったから扱いやすかったよ」
「どう言う意味だ、それ…」
3人目は紫髪の少年で彼とは同じ属性故に気が良く合った、それでいて彼は親友と同じく捻くれていたから分かりやすかったと語る。
流石にカヤと同じように言われるのはムーンも嫌なのか、一緒にしないでくれと言わんばかりの空気を出された。(カヤは捻くれている以前の問題だから)
「グラ兄、貴方には本当のお世話になったよ…出来ればリズ姉ちゃんとの結婚式とか子供とかを見たかったな、後グラ義兄ちゃんって呼びたかった」
「…お前は、最後まで恥ずかしい事を言うな」
「エヘヘ、だって本当に思ってた事なんだもん」
「全く…俺だって見せたかったよ、リズとの愛を交わす所とか子供を抱かせたかった」←
4人目は将来の義兄こと赤髪の少年で彼と姉の生活をもっと見守りたかった、最終的には正式に義兄だと言いたかった事を口にする。
相も変わらず顔が赤くなるような内容を話す義弟に、グラッセはツッコミを入れつつも願望が混じった内容を語り合う。
「…アイツら凄い会話をしているけど、止めなくて良いのか?」
「…滅茶苦茶見ていて止めに入りたいけど、耐えるわ…」
聞くに堪えない内容を話す兄と弟のコンビに、カヤが引き攣った笑みを浮かべながらリズに聞く。
問われた本人もかなり顔を真っ赤にしつつも、あの二人の話を邪魔する訳にもいかないと言う理性が残っていたため必死に堪えていた。
「…カヤ」
「…何も言うな」
5人目は親友の水色の髪の少年でレイシャが名前を呼ぶと、カヤは切なそうな笑みを浮かべながら首を横に振る。
「お前の言いたい事ぐらい分かるよ…お前の想い、嫌って言う程に伝わって来ている」
「………」
「初めて出会った時は鬱陶しい奴だって思ってた、後綺麗ごとを語る甘ちゃんって…これは今も変わらないな」
ずっと一緒に居たが故に—彼の口にしたい事、思っている事は分かるとカヤは苦笑する。
そして最初に会った時の事も話し出し、後半に至っては結構傷付く事も言われる。
「でもそこがお前の良い所なんだって知ってる、だからお前はその考えを貫け…最後まで」
「…うん」
「けして…俺のようにだけはならないでくれよ?」
「大丈夫、絶対ならないから」
そんな所も含めてレイシャ・ブラックノーバディと言う人間である事を、カヤは知っているためその思考を忘れないで欲しいと祈る。
それでいて自分に似ないでほしいと言う冗談を言い合い、二人は最後の握手を交わしたのだった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.278 )
- 日時: 2015/08/20 22:31
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「リズ姉ちゃん」
「何だ、レイ?」
そして最後は大好きな姉であり誰よりも強い金髪と栗毛が混ざった少女で、彼女の事を呼ぶと普通の反応を返される。
「俺さ…リズ姉ちゃんの事、凄い尊敬している…だって俺じゃ出来ない事をやり遂げて来たから」
「………そう」
「でも同時に…羨ましいと思ってた、妬ましいって…ずっと嫉妬してたんだ」
「………知ってる、よ」
そんな所も姉らしいとレイシャは苦笑しながら、成し遂げれないような事を成し遂げる彼女に憧れを抱いていた事を話す。
それでいて憎らしさを覚えていた事も語ると、偽りのリヴィネタウンでの出来事を思い出したリズが複雑そうに頷いた。
「俺とは違い純粋な光の心を持ち、狙われる壮絶な幼少期を送っても歪む事無く成長して、グラ兄やムン兄だけじゃ留まらず友人を作った」
「それでいてキーブレード使いとしては立派で、強い父さんの血を受け継いでいるだけはある実力者、俺は母さん似だったからキーブレード使いとして誇れる実力は無かった」
「唯一誇れると思った記憶を操る力さえ使いこなす事も出来なかった、しかもリズ姉ちゃんも記憶を操る能力を持っていると来たもんだ」
「そして何度も消えそうな目にあって、死ななきゃいけなくなっても…絶望する事無く前を見ていた、大切な人のために全てを投げ出せる心の強さもあるなんてって、俺がどれだけちっぽけな存在かを認識させられたよ」
生まれてからずっと今まで見て来た姉の人生と自分の人生を振り返って、同じ環境に生まれたと言うのに…これほども違う人生を生きた姉を羨んだ。
それを聞いたリズはそこまで思われていたのかと、盛大に顔を引き攣らせ少々落ち込んでいたのは余談だ。
「…アンタって見た目に反して、結構ずけずけと物を言うわよね…」
「俺をそう鍛えたのはリズ姉ちゃんだろ」
「ははっ、違いないな」
何時までも項垂れる訳にはいかないので復活した後に、散々失礼な事を言ってくれた弟に文句を言う。
すると彼は笑顔で否定出来ない事を言って来たので、原因は私にあるかとリズも苦笑した。
「アンタだけが羨んでいたとか妬んでいたとか思っているようだけど」
「うん?」
「…私も似たような物よ、アンタの事を羨ましいって…妬ましいかなって思ってたわ」
「え」
だがこれだけは言わせて貰わなければ困ると、立ち直ったリズは首を傾げたレイシャに指差しながら話す。
それは自分も同じ事を考えていたと言う物で、まさかの言い分に先らまで文句を言っていた彼も驚いて硬直した。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.279 )
- 日時: 2015/08/21 22:27
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「私もアンタの事を誇りに思ってるよ、私にはもったいない弟だって思うぐらいにはね」
「………」
自分もレイシャの事を羨ましい妬ましいと思っていたと言う、衝撃的な告白をしたリズに弟は絶句するしか無い。
しかもこんな自分をここまで褒めてくれて、金髪と栗毛が混ざった少年は無言になる。
「でもさ…本当に時々レイシャのようになりたいと思った」
「何で?俺はリズ姉ちゃんに尊敬される所なんて…」
「あるよ、沢山」
固まる自分の心情を察したのかリズは苦笑しながら、レイシャの手を握り心の底から思っていた事を告げる。
あの姉が思う程に自分に良い面などあっただろうかと本気で悩むと、少女は悲しそうに微笑みながら頷く。
「私、幼少時代の頃はレイシャのように純粋な闇の心が欲しいと思ってたのよ?その理由はアンタも言っていた通り…純粋な光の心を持つ私は狙われていたから…本当は辛くて苦しくて投げ出したくて、アンタと私の立場が逆なら良かったとさえ思っていた」
「それでいてアンタは素直で他人を心の底から労わる事が出来る、私は相手を傷付けるかもしれないと分かっていても…不器用にしか言えないからね、それで余計自己嫌悪してた」
「私も…唯一誇れると思ったキーブレード二刀流をアンタは何事も無く使いこなしていて、しかも私がけして使いこなせない記憶の力をアンタは操れると来た物だ」
「そしてアンタはどれだけ闇側の生贄にされそうになろうとも、肉体を乗っ取らせそうになっても私に恨み言を何も言わなかった、寧ろ戦う私の容態を心配する始末で…私がどれだけ弱く情けない者であるか実感させられたよ」
レイシャは昔から襲われていた私が歪む事無く成長していたかと思っていたが、実際は弟の目の前で見せたくなかっただけだ…自分の至らない所を
彼にそんな姿を見せて狙われる恐怖を抱かせたくなかった、それが原因で闇に堕ちるかもしれないと思って…弟に立派だと思われる姉になりたかったから頑張っていた。
でも弟は私なんかとは違い強く穏やかな性格で、一応女の子だった私はそんな彼が妬ましいと思った。
「リズ、姉ちゃん…」
「これが私の本心なの、私がアンタが思うような人間じゃ無いんだ、私も所詮ただの人間でしか無いんだ…いやノーバディか」
リズの弱音とも言える呟きにレイシャは呆然と姉を呼ぶと、彼女は複雑そうに笑いながら自分も普通のノーバディなのだと語る。
「リズ姉ちゃんも…結構ずけずけと物を言うじゃないか」
「当たり前でしょ、何せ私はアンタを鍛えたらしいですから」
お互いの本音を知ってしまった今のブラックノーバディ姉弟に出来る事は、二人揃って苦笑しながら語り合う事だけだった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.280 )
- 日時: 2015/08/22 14:00
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「…言いたい事も言えたし、もう十分だよ…やってくれ、リズ姉ちゃん」
「そう…それじゃあ、行くわよ」
この場に居る全員に自分の想いを言い終え満足だと、レイシャは微笑むとリズに対して記憶を砕く事を頼む。
迷いが無い良い目をするようになったと弟に視線を向けつつ、金色の鎖を強く握り始める。
「—我は記憶を操る力を継ぐ者なり、今を持ってレイシャ・ブラックノーバディの記憶を…永遠に砕く」
チャラチャラと金属の音が響き渡る中、リズは金色の鎖を光らせると同時にレイシャへと巻き付ける。
「…アイズの記憶は俺が消しておくから、アイツの記憶も俺が持っていくから…皆は気にしないでね」
その光景を全員が泣いたり顔を歪めて見ている中、唯一レイシャだけは笑顔でアイズも自分の事も心配する必要は無いと告げる。
「…月明かりも届かない、暗闇の中を彷徨い歩きながら—恐くて怯えていた」
「空で星が優しく瞬いて、僕らのことを暖かく見守ってくれてた—ありがとうって呟く、光が優しく微笑んだ」
「暖かく照す太陽(ひかり)も、優しく包む夜の暗闇も—僕は奏でるよ、歌いきってみせる」
「大切なものたちと歩きたい、宙(そら)の下」
リズが記憶を砕く作業をしている中、レイシャ・ブラックノーバディが…この世界で生きて居た証拠を残すべく…少年は奏でた。
昔姉と二人で作った思い出の曲を、その曲を謳っていると勇気が湧いてくるのだ、恐怖も感じなくなる程に
「(—もう俺は大丈夫だよ、皆今までありがとう…)」
「—レイシャ・ブラックノーバディのこの世界に残る記憶を粉砕する」
「…大好きだよ、皆—俺はここに生まれて良かった、純粋な闇の心を持って生きて来て良かったよ」
「記憶の鎖…砕破(さいは)ッ!!!」
—キィィィィィィンッ!!!
恐れる物はもう無い、アイズと共に進み二人で生きて行くと言う決断をしていうと、リズの記憶を砕く工程が終わりに近いのか光が一層に強くなる。
何もかもが見えなくなる前にレイシャは満面の笑みで、幸せだった事を告げた瞬間—鎖が粉々に砕け辺り一面が白くなった気がした。
「う、うぅっ………一体、何が…?」
「あれ?私たち…何故倒れているのでしょう、か?」
「疲れたからなのか?確かにこの場に居る全員が大怪我を負っているが…」
—そして光が収まり目を開けるとそこには先らまで居た存在がおらず、何でか皆地へと倒れ伏していた。
どうしてこうなったか分からないグラッセ、テルス、マーベルが首を傾げる。
「一刻も早く戻って傷の手当てをした方が良いな」
「これも連れてな…急ぐか…って、リズ?」
「うん?何?」
藍髪の少年の言う通り皆がボロボロで立っているのもやっとな状態なので、カヤが帰る事を促しムーンも気絶しているウラノスを指差す。
それでいてリーダーであるリズの名前を呼んで、彼女がこちらを振り向いた事により紫髪の少年は驚く事になる。
「お前、何で泣いているんだ?」
「えっ………あれ?何で…涙が、涙なんか流しているの、私…?」
それもそのハズである、やっと戦いが終わったと言うのに—リズは泣いていたのだから
本人も言われて気付いたようで何故と、泣いた原因を思い出せないために戸惑うだけだった。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.281 )
- 日時: 2015/08/23 11:44
- 名前: リラ (ID: VbQtwKsC)
—χブレードを求めるガイアと、キングダムハーツを求めたウラノスとの戦いがやっと終わりを告げた。
あの後私たちは存在しなかった世界へと戻り、ⅩⅢ機関のメンバーが歓喜の声を上げる中を治療をしながら笑い合った。
「それにしても…俺たちよく7人で挑んで勝てたよなー」
「ああ、正直な所キングダムハーツ相手となると自殺行為だったからな」
存在しなかった世界の治療室にて集中治療室へと運ばれた(何気に重傷だったらしい)ウラノスを余所に、ムーンとマーベルは戦いを終えて気が抜けたからか珍しく微笑みを浮かべながら語り合っている。
確かに私、グラッセ、ムーン、マーベル、カヤ、テルス、ファンタジアだけで勝負を仕掛け、大いなる心とχブレード相手に勝てたのは奇跡に近いと思う。
「ガイア…さようなら、どうや安らかに静かにお眠り下さい…っ」
「お休みガイア、せめてあの世では何の曇りも無い笑顔で浮かべて欲しい」
「アンタの兄貴と姉貴に関しては任せろ、ちゃんと見ててやるからよ」
「俺はお前の友人であった事を誇りに思う」
そして亡骸として運ばれたガイアを身を清めた後に、彼女の故郷とも言えるフリーズシティへと連れて行き墓へと埋めた。
生きて居る私たちに出来る事は彼女が天国で笑っている事を願う事だ、それでいて私たち自身も前を向いて生きる事だ。
—Precious friend Gaia・orviz・RezaLektionUmbra l sleep in peace
「大切な友、ガイア・オルヴィズ・レザレックションウンブラ安らかに眠る、ですか…皆、ありがとうございます」
「何お礼言ってるのよ、友達なんだから…当たり前の事をしただけよ」
私たちがガイアの墓へ刻んだのは友と言う文字で、あんな事があっても友人として妹を扱ってくれる私たちにテルスは心底感謝した。
そう言われても当然の事をしただけだから余り実感が沸かない、確かにガイアの事は憎いけど…それでも大切なのは変わりが無いからだ。
「リズー!ムーン!カヤ!」
「セレス!」
「もう動いて大丈夫なのか?」
「病み上がりですから余り動くなよ、バカセレス」
「何をー!何時も無茶していたリズとカヤにだけは言われたくないっ!!」
「私今回関係無いよね!!?」
あっ、そうそう私たちが助け再会したセレスは、あの後ちゃんと家族の元へと戻した。
物凄い勢いで養父と養母さんたちに頭を下げられお礼を言われた、元はと言えば私たちのせいなような物なので非常に困ったのは内緒だ。
彼女は意外にもレイディアントガーデンの復興最中の場所に暮らしていたようで、行った事も無い見た事も無い地形だったので道理で生きて居ても見つからない訳だと思った。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.282 )
- 日時: 2015/08/22 15:08
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
セレスの義理の両親はこの地で【宝玉のカフェ】と呼ばれる喫茶店を営んでいるらしく、彼女は将来ここの跡を継ぐと意気込んでいた。
生存を知った以上これからは何時でも会えるので、未来へと帰って来たらまた来る事を約束した。
え、どうして未来へと帰って来たらって?私たちは未来へ戻って来ているのにと思うよね?
—あの件が終わった以上は暫く未来に滞在する意味なんて無いから、過去の世界に戻って来たんだ。
ちなみに戻る前に意識が戻ったウラノスと共に、私たち全員でフリーズシティの仇を打つべく白い連中の拠点を叩き壊滅させた。←
「き、貴様らあの時の…!!ぎゃあああああああああああああああああっ!!!!!?」
「やかましいわ!あの時はよくもやってくれたなこん畜生!!」
「6年越しの仕返しに来てやったぞ…!!てめぇら、絶対に一人残らず滅ぼす!!」
「死なない程度にやれって言っただろウラノス、コイツらには生きて地獄を背負って貰わなきゃ困るんだよ!!」
相も変わらず喚いていた奴らは私たちの生存にかなり驚いたらしい、マジックアワーとサンダガとダークファイガが行き交い悲鳴が木霊す中—驚愕した声も響き渡っていた。
「…復讐は蜜の味ってか、末恐ろしい連中だ」
「そう言いつつも進んで氷の魔法放っているのは、何処の誰だよカヤ!」
「全く、本当に皆して物騒に育っちゃったんだから!!」
主に大暴れしている私たちに呆れた様子でカヤが呟く物の、そう言う彼が何気なく上級魔法を一番連発していた。
だからこそグラッセとテルスがツッコミを決めつつ、4人のフォローや回復に専念していたとの事だ。
「や、やめろ!私たちは正しい事をしたまでだ!貴様らはその生贄になったにすぎん!!」
「アンタが親玉って訳、へぇー…メルムって言うんだ」
「ラテン語で災いを意味する単語か、コイツにはある意味ピッタリな名前じゃないか!」
見つけた白い集団のボスは中年の男性でそこそこ魔力を感じられる物の、今の私たちの敵では無い…と言うか殺気立っているウラノスの敵では無い。
律儀にも名前が書かれたバッチを付けていたので、私とムーンはそれで少々からかった後に
「「「フリーズシティの怒りを思いしれぇぇぇっ!!!!!」」」
「これは俺の親父の分だ、このクソ野郎がァァァッ!!!!!」
「私の傷の分も受けて貰いますよっ!!!」
「貴様ら覚えて居ろぉぉぉぉぉぉ—…!!!ぐああああああああああ!!!!!?」
盛大にタコ殴りを—いやボコボコにしたと言っておこう、表示をしたら結構えぐい感じになるので
そしてカヤとテルスも表面上は冷静だったのに、やっぱり怒っていたのか遠慮無しにフルボッコにしていた。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.283 )
- 日時: 2015/08/22 17:47
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
こうして白い集団を壊滅させ後始末をⅩⅢ機関と然るべき組織に任せ、私たちは再び過去へと戻ったと言う訳である。
ちなみに再び帰ってすぐに、私たちはトワイライトスクールの生徒として復活し生活していた。
ただ少しだけ変わった事があるんだ、それは—
「俺の授業で寝るとは良い度胸だな、リズティクスト・ブラックノーバディ…!!!」
「ゲッ!!ご、ゴメン、ウラノス!!悪かったからそのスパークチャクラム収めて…って、ぎゃあああああああっ!!!!!?」
私たちと敵対していたウラノスも同じく過去の世界へ来ており、トワイライトスクールの教師として毎日を過ごしている事だ。
しかも私に対しては知り合いと言う事もあり、本当に色々と遠慮が無い…正直な所怪我が絶えない、攻撃するたびに痛いので訴えるぞこの野郎と思っている。
「ウラノスの授業で寝るとか、リズの奴…度胸あるな」
「いや、ただの救いようの無いバカだろ」←
「…バカと言うより怖い物知らずと呼んでやれ…」
「あ、あはは…(どうなっているんだ、この学校!!)」
その様子をグラッセとムーンとマーベルが呆れた様子で見ており、新しくトワイライトスクールの仲間となった—私の弟子でもあるカヤも苦笑していた。
カヤはセレスの傍に居ると思ったのだが、意外にも私たちの傍で共に学ぶ事を選択したのだ。
どうやら元々色々な知識を身に付け学びたかったらしい、そう言えば彼も学校には通ってなかった事を思い出した。
—あの戦いが終わった後…私たちの活躍と噂は世界中に広がり、ノーバディの評判も着々と上がり始めた。(何せ世界の危機を救ったため)
それと同時に人間との和解も広がりつつある事とフリーズシティの出身者であるカヤが世界を救った事は、世界中に散らばっていたフリーズシティの住人を再び呼び寄せる鍵ともなったのだ。
そのお陰で少しずつだかフリーズシティが復興されつつあると、元の美しい世界へ戻るのは時間の問題だと未来の父さんから連絡があった。
そして私たちは世界を救った英雄として崇められるのが面倒だったので、即座に過去の世界へ戻って来ていたと言う訳である…面倒事は嫌いなので避けるに限る。
「校則違反は許さないわよ!待ちなさ———いっ!!!」
「謝りますから闇の魔法放つの、止めて下さいテルス先生———っ!!!」
ちなみにウラノスの姉であるテルスも、トワイライトスクールの教師になって居る。
死んだガイアの冥福を祈りつつサボる生徒の指導していて、その光景は生徒に向かって普通に闇の技放っているから面白い。
ただ追いかけられる側からすれば面白く無いだろう、寧ろ危険なのだろうなと何処か他人事のように思った。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.284 )
- 日時: 2015/08/29 13:43
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
—そんな充実した毎日をまた送れるようになって楽しい、そう…とても楽しいハズなのに
「—ただ、何か一つ…忘れているような物足りないような気がするんだよな、何だろう…この胸の中を締める空虚感と言うか喪失感は…?」
「ああ、俺もその気持ち分かる…何だか大切な事を忘れているような、何かやらなければならないような事が…あった気がするんだ」
とても大事な事を…私たちは覚えていないのではと言う気がしたのだ。
ただ1つだけ何か足りない—そんな思いが渦巻いており昼休みの屋上にて、カヤに相談してみると彼も同じだったようで私は驚いた。
「えー!カヤがフリーズシティの復興以外に何かやらなきゃとか言い出す日が来るなんて…!!成長したね、師匠として嬉しいよ…」←
「余計なお世話だぁ!!!俺だって大切な事ぐらいあるわ!!!!!」
何かやらなければならない事—それは何だか分からない。
だがカヤが街の事以外にそんな事を言うとは思わなかったので、弟子の精神の成長に喜び本人に怒りのツッコミを決められていたら
—リズ姉ちゃんっ!!カヤー!
—リズさーん!カヤー!!
「へ…?」
「誰、だ…?」
誰かが—自分たちを呼んでいる声が聞こえ、頭の中では金髪の少年とピンク色の髪をした少女が自分たちを呼んでいるような気がしたのだ。
思わず慌てて振り向く物の、そこには誰も居ずに風が通り過ぎただけだった。
「ねぇ、カヤ…私、何か弟と妹みたいな存在に呼ばれているような気がしたんだけど…疲れてるのかな?」
「お前弟や妹みたいな奴なんか居たか?俺の記憶では…そんな奴少なくとも存在しないぞ、お前一人っ子だろう?」
「そう…だよね」
何だか自分には大切な存在が二人居たような気がして、不安げな眼差しでカヤに聞くと案の定否定された。
そうだ、私に家族は父さんと母さんしか居ないと、ぎこちない返事で返しているとチャイムがなったので二人は教室へと戻る。
そしてそんな二人に連動しているかのように、過去のリヴィネタウンでは—
「ただいまレイー…って、アレ?何してるの?」
「手紙を書いてるんだ…届く確率は低いだろうけど、リズ姉ちゃんとカヤと父さんたちに」
「…そう」
レイと同棲を始めたアイズの家では買い物から帰ってきた少女の声が響き、居間へと入るとそこには羽ペンで何かを書いているレイが居た。
一体何をと聞くとレイシャが離ればなれになった大切な人たちに、手紙を書いてるんだと笑顔で言われその笑顔にアイズは思わず
「…ごめん」
「…?何で、アイズが謝るんだ?」
顔を俯かせながら謝罪してしまった、謝る事は…レイの覚悟を否定するも同然なのに謝るしか出来なかったのだ。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.285 )
- 日時: 2015/08/22 21:26
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「だって、あたしのせいでレイは…家族と二度と会えなくなったんだよ!?後悔してるでしょ!?それなのに無駄な努力もさせて…!!!」
「—無駄な努力じゃない、この世界に無駄な事なんて無いんだ」
彼がここに居るのは全てあたしのせいだとアイズは悲痛な声で叫ぶ、だがそんな彼女に反してレイシャは冷静な声で呟く。
その台詞は彼の覚悟と強さを表している物で、その姿が彼の姉と父と重なり眩しい者を見る気分になった。
「家族と二度と会えない、それは俺が決めた道であり…後悔なんてしちゃいけないんだ…リズ姉ちゃんが居たらこう言うと思うぜ?」
「…何って?」
「『男なら1度決めた道を貫き、アイズちゃんを守りなさい!』ってな」
「ッ!ぷっ…」
アイズが黙ったのを確認してからレイシャは自分が決めた事だ、悔やむような事は絶対にしないと真剣な表情で語る。
そしてウインクをしながらきっとリズが言うであろう言葉を、声も真似て言うとそれがそっくりだったためアイズは少しだけ笑った。
「そう、その笑顔だ…それを忘れないでいてくれ」
「え?」
この世界に来てから見れなかった彼女の微笑みをようやく見れた気がし、レイシャは嬉しそうに指摘するとアイズはきょとんとした様子を見せる。
「…俺は信じたいんだ、数少ない可能性を—もう一度アイズと二人でリズ姉ちゃんたちと出会える事を」
「レイ…」
「だからそう泣きそうな顔するなよ、俺の大好きな顔が台無しだぜ?」
「ッ!!!///バカレイ………」
到底無理な事かもしれないがリズたちともう一度巡り合える事を願いたいのだと、レイシャはアイズを見つめながら優しい顔で話す。
そんな彼の想いを自分も信じたくなっていると、恐らく天然で口説き文句まで言われてしまい顔を赤く染め…恥ずかしいから台所へ行き調理を始める。
「あー、ゴメンゴメン」
「…顔が笑ってる、悪いと思うなら歌って…その何時か出会える人たちのためへの歌を」
何だかその姿は面白くてレイシャは笑いながら謝ると、不貞腐れた顔で包丁を持ったアイズが機嫌を直す条件を突き付けると彼は承諾し歌い出す。
「…この世界の何処かへいる貴方へ、全てのすべての悲しみが消えるようにとか、すべての心がつながるようにとか、願うだけでは届かない想いを叶えるために私は進もうと思っています」
それはカイリが書いていた手紙をレイシャがアレンジしたもので、きちんと歌声は着いておりとても優しい歌だった。
「…新しい旅立ちは、意外に簡単なことなのかもしれない…もしかしたらそれは、もう始まっているのかもしれない、この空がつなぐ世界で辿り着く場所は一緒だと信じています…」
その歌は—彼が会いたいと望み願っている人物に届く。
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.286 )
- 日時: 2015/08/22 21:53
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
「—思い出せば遥か遥か、未来はどこまでも輝いていた」
授業中にも関わらずリズは歌を歌っていた、通常なら教師がグラッセ辺りが注意をする所だが今日は止める気も起きずクラスメイトの誰もが耳を澄ませている。
「きれいな青空の下で、僕らは少しだけ怯えていた」
その歌はまるで誰かに捧げているような—何だか懐かしさを感じる悲しい歌だった。
「懐かしい色に窓が染まる、前を向いてればまた会えますか、未来はどこへでも続いてるんだ」
「大きな看板の下で、時代の移ろいを見ていたいな、二度会えぬ人に場所に、窓を開ける」
「思い出せば遥か遥か、未来はどこまでも輝いていた、きれいな青空の下で、僕らはいつまでも眠っていた」
リズは…何を思ってこの歌を歌っているのだろうと、グラッセは思って彼女の方を振り向く。
その瞬間—彼は固まった、てっきり楽しそうに歌っているかと思えば…その瞳からは何故か涙が溢れていたからだ。
「り、リズ!涙、涙が…!!!」
「取りあえずお前が落ち着け、今は触れないでおけ…歌わせておいてやれ」
急いでリズの元に駆け寄ろうとした親友をムーンが即座に止める、彼女をそっとして置いた方が良いと思ったからだ。
「(ありがとうムーン…私もどうしてこの歌を歌っているのか、分からないけど…何だか歌わなきゃいけない気がしてさ)」
そんなムーンの行動に気付いていたリズも目でお礼を言い、何でこの歌を歌っているとこんなにも悲しいんだと思う。
そう思うのなれば止めれば良い…そう頭では理解出来るのに、止める事が出来なかった。
何故こんな気持ちになる、だけどそうなる理由を今は知ってはいけない気がする、そう思う原因を思い出せれば良いと思ったので彼女は更にテンポを上げる。
「(…今はどうすればこの悲しさの原因を思いだせるのかは分からない、でも何れ思い出してみせる—だからその時まで待っていてくれるかな?)」
自分の気持ちなハズなのに分からないのは心がむず痒いと思いながら、リズはこの悲しみの正体を突き止める決断をしていた。
「(俺はこの世界で生きていく、アイズと共に—でも、何れ会いたいと思う、いや世界を超えてでも会うんだ、そしてその時—)」
一方別世界の過去のリヴィネタウンに飛ばされたレイシャも、ここで過ごす決意を改めると同時に大切な存在との再会を願う。
—きっと、私(俺)たちはこの胸の中の思い—後悔と遺憾を背負い、キミと出会う—
世界が違ってもリズとレイシャの心は繋がっている、その証拠に上記の事を同じタイミングで考えていたのだから…
—キングダムハーツ リグレットストーリー・完—
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.287 )
- 日時: 2015/08/22 22:14
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
やっと…やっと、キングダムハーツ リグレットストーリー完結です!!!(涙
いやー!結構歳月が掛かりましたが、無事終わらせる事が出来ました!
皆様の応援があったからです!!心からお礼を言わせて下さいませぇぇぇ!!!
リズ「ホーリーライズ、ダークインパルス、マルチボーテックスゥゥゥッ!!!」
レイ「マジックアワー、ダークインパルスゥゥゥッ!!!」
どぎゃあああああっ!!!!!?いきなり、リミットカットって私を殺す気ですか!!?(滝汗
リズ「当たり前だろうがクソ作者!!てめぇこの終わりは何なんだぁぁぁっ!!!!!」
レイシャ「結局ガイアは死ぬわ、俺はアイズと共にリズ姉ちゃんたちと永遠のお別れとかふざけてんのかぁぁぁっ!!!!!?」
失礼な!ふざけてなんか無いよ!
グラッセ「余計タチ悪いわ!!」
前からライヤさんと相談して決めた結果ですからね!?元々アイズは異世界へ行き二度とこちら側へ戻れないと言う話にしますって感じで!!
ちゃんと承諾は貰いましたよ、じゃないとこんなの書けないですし…
ガイア「そう言う問題で済むと思っているのかしら…!!(マジ切れ」
ウラノス「待ちに待ち望んだ、てめぇを甚振る機会だ…!!存分に殺ってやろうじゃねぇかぁぁぁ…!!(χブレード装備」
テルス「私たち一族の恨みを思い知らせてあげましょう…!!(闇のオーラ全開」
カヤ「おう、俺たちも参加するぞ(良い笑顔」
アイズ「うん、後書き設定で本当に久しぶりに登場する事が出来たからねぇ…!!(拳ポキポキ」
マーベル「最後のフルボッコタイム、開始と行こうか…!!(魔法構築中」
ファンタジア「ええ、本気で行きましょう…!!(アタックマジックモード」
え、ちょ、タンマ…ぎゃあああああああああああああああああああっ!!!!!?
リズ「誰が待つか、こんの大馬鹿作者ァァァァァァ!!!!!」
レイシャ「行くぞ皆ッ、今こそ恨みを晴らす時だぁぁぁ!!!!!」
—オオォォォォォッ!!!!!
—盛大に作者に対する逆襲タイムが繰り広げられています、暫くお待ちください byグラッセ—
グラッセ「—と言う訳で再起不能になっているコレ(作者)は放置してっと…」
リズ「長くに渡りましたがリグレットストーリーこれにて完結です!」
レイシャ「もうここでの俺たちの活躍は見れないけど、別の場所では続いているから見つけたら是非見てくれよ!」
カヤ「大変な事もあったが楽しかったぜ」
アイズ「エピローグも次に投稿するので是非見てね!」
ムーン「後悔と遺憾の行く末のお話らしいが…」
マーベル「よく分からんのだが…」
ファンタジア「以下同文です」
ウラノス「見れば分かるって事だろ」
ガイア「ウラノスお兄ちゃん、そんな投げやりな…」
テルス「それではご覧あれです!!」
- Re: キングダムハーツ リグレットストーリー ( No.288 )
- 日時: 2015/08/22 22:35
- 名前: リラ (ID: sEySjxoq)
—エピローグ—
「…あれから、どれほどの月日が流れたんだろうな」
世界を行き来する闇の回廊内で…一人の少年がぼそりと呟く。
少年と言っても—中身はもはや想像も出来ない歳を重ねている、金髪と栗毛が混ざった髪型をしているこの人物は
「ははっ…今日で87の月日だったな」
彼の名はレイシャ・ブラックノーバディ、かつて異世界へと言った将来の妻を追って大切な人物と別れた。
そして彼女と共に生きて過ごし、子を設けて…幸せに暮らしていたが、妻を失い子も大人になり…彼はそこから姿を消した。
彼は旅に出たのだ、もうあの子たちに自分は必要ない—あの子たちには支えてくれる存在が居る。
「ならば…俺も自由に生きていいよな、そして…ここまで辿り着く事が出来た」
今彼が居るのは世界の狭間とも言える場所で、ここを潜れば…もうあちらへと戻る事は出来ない。
彼は行こうとしている場所は…本当の故郷とも言える世界なのだ、こちらに未練はある物の…足を進める。
—シュンッ
「ここ、は…」
故郷の【世界】へと足を踏む入れレイシャが降り立った場所は—黄昏の街・トワイライトタウン
あれからかなり進歩したのだろう、相も変わらず夕日が綺麗だが街中の建物など文明が発展していた。
「間違いない…俺は戻ってこれた、のか…」
久しぶりに拝めた本当の世界にレイシャは涙が溢れる、もちろん悲しみの涙では無く嬉しさ故の涙だ。
「—全く、相変わらず泣き虫ね、そんなんでアイズちゃんを守れたの?」
「ッ!!」
「まぁ…守ったから戻って来たんでしょうけど、守れてなかったらぶっ飛ばしてる所ね!」
この場に誰も居なくて良かったと少年が思う中、自分がけして忘れられない声が響く。
この声の主は本来ならもう居ないハズだ、嘘だろうと思いつつも期待に胸を膨らませて後を振り向くと…彼女が居たのだ。
「リズ姉ちゃん…!!って、ええ!!?」
「久しぶりね!」
「残念だったな、感動の再会だろうが…俺も居るぜ」
「私も居ますよ」
「更には俺もさ!」
彼女の名はリズティクスト・ブラックノーバディ、レイシャのたった一人の姉である存在だ。
更にはムーン、テルス、ウラノスもひょっこりと出て来る始末で、少年はポロポロと泣きながら走り出す。
「会いたかったよ…!!」
「…私もよ、会いたかったわ…!!」
抱き付いた先は大切な存在の元で、もうこの姉弟が離れる事はけして無い。
後悔と遺憾を背負い生きて来た彼らに訪れた物は—仲間と過ごす幸せな日々と賑やか過ぎる様々な騒動の日々だ。
—END—