二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン/GO  時空を越えた出会い  更新再開 ( No.45 )
日時: 2011/12/27 18:40
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

8 後悔のシセン

「じゃあ、お前は、“円堂守”なのか?」

突然のことに、試合は一時中断となり、両チームが固まるようにして集まった。
その中心には、突如現れた五人が立っている。

「…え〜と、うん、そうなんだけど…」
「じゃあ、この人って十年後の円堂くん?」

少し黒くなった肌に、髪の毛を逆立たせているが、あのオレンジ色のバンダナはまだつけてある。確かに、よく見てみれば、この円堂から、中学生の姿である、彼を面影に見ることができる。
その隣にいる女の人も、音無春奈にそっくりで、とても別人とは思えなかった。

「監督、どうしてここに来たんですか?」
「よく分からないんだよな〜俺があの変な機械を軽く叩いたぐらいしか…」
「余計なことしなければ、こんなことにはならなかったじゃねぇか…」

ハハッと苦笑いを零すと、聞こえないように紅緋色のロングヘアに頭上にリボンをつけた少女が、ボソッと呟いた。すると、彼女を落ち着かせるように、隣のカメラを持った少女がなだめた。

「私、あとで帝国に行かなないといけないんですけど…」
「ア、アイツなら、大丈夫なんじゃないかな?」
「何気に逃げようとしないでください」

ため息を吐いて、春奈の十年後とみられる人は、チラッと鬼道を見た。

「なんか、兄さんのお姉ちゃんになったみたい」
「……?」

何を言ったのか聞こえなくて、鬼道は少し首を傾げたが、また青年の円堂に視線を戻すと、彼のことを聞くことにした。

「神童たちからも聞いたが、あの変な機械というのは…?」
「それが分かったら、苦労しないよな…」
「相変わらずだな」
「一応雷門の監督やってるんだぞ?中学を卒業してからも、サッカーやってたし…」
「「「勉強は?」」」
「……………してた」

数秒経ってから妙に冷静に応える円堂に、呆れを感じて、本題に戻ることにした。
鬼道が何を話そうか考えていた時に、ベンチに座っていた、夏未が人差し指を立てながら、立ち上がって、円堂に話しかけた。

「だったら、何かあの機械を使わないで、戻る方法があるんじゃないかしら?」
「それってなんだ?」
「知らないわよ!それを見つけるのが、貴方たちの役目ではなくて?」

今までの話がよく分かっていない円堂に、夏未はため息を吐いた。
それを見ていた、青年の円堂は、小さな声で何かを言った。

「あぁ、この時はこうだっけ?」
「何よ……」
「いや、なんでもない。そっかぁ〜なんかあるのかな…?」

変な人、と夏未は呟いてまたベンチに座った。
すると、天馬が割り込むようにして、目をキラキラと輝かせ、元気な声で円堂監督に話しかけた。

「監督!俺たち、さっきまで試合してたんです!」
「あっ、そうなのか?でも、よく受け入れたな、鬼道」
「俺じゃない、どっかのサッカー馬鹿だ」
「あっ、じゃあ俺か」
「「「自覚してるんだ…」」」
「その様子だと、続きがやりたいようだな、天馬は」
「はい!続行してもいいですか?」

彼としては、すぐに続行させるだろう。しかし、この状況で、呑気に試合をやっていられるのだろうか。
う〜んと何かを考えて、神童や天馬たちを交互に見つめる。

「神童はどうする?」
「俺はいいですよ。こんな機会もうないでしょうから」
「いいですか?監督!!伝説のイナズマジャパンの人たちと、プレーしたいんです!!」
「俺に聞くより、鬼道たちに聞いた方がいいんじゃないか?」

なっ、と鬼道や風丸を見ると、彼らは小さく苦笑して、全然変わってないな、と心の中で呟くのだった。



「じゃあ、試合は続行だな」
「十年後のお前の力を見てみたいからな」

鬼道はフッと笑うと、円堂監督はニッと笑って応えた。

「よしっ、お前ら!気を抜くなよ!!」
「「「はい!監督!」」」

Re: イナズマイレブン/GO  時空を越えた出会い  更新再開 ( No.46 )
日時: 2011/12/27 18:40
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

「吹雪!」
「ウルフレジェンドォォォ!!!」

吹雪の強烈なシュートがフィールドを駆け巡り、ゴールに向かう。それを歯を必死に食い縛り、あと一歩のところで、三国は止めてみせた。

今のところ、監督の指示はない。吹雪や鬼道たちの動きを見て、様子をうかがっているようだ。なかでも、彼はある人物の動きをよく見ていた。


———豪炎寺修也だ。


親友だからなのだろうか。神童は最初、そう思っていた。しかし、そうなれば鬼道や吹雪も同じのはずなのに、彼はジッと豪炎寺を無言で見つめていた。
その瞳には、いつもと同じような活気がない。まるで“何か”を悔やむかのような視線だ。一体豪炎寺のどの行動が、監督をそんなに引きつけるのだろうか。

「監督……」
「神童、どうした?」

神童の異変に感じた霧野が顔を覗き込ませて、表情を窺った。

「いや、なんでもない…」
「円堂監督のこと見てたのか?」
「……あぁ、なんか様子がおかしい気がして」

そうか?と首を傾げて霧野も立っている監督に目を向けたが、彼は笑顔を浮かべて、この試合を楽しんでいるようだった。いつもと変わらないはずだが、神童の見る目はやはり変わらない。

「まぁ、急に飛ばされてきたんだから、混乱してるんじゃないか?」
「……そうだよな」

小さく呟く神童の肩をパンと軽く叩いて、霧野は元の場所へと戻って行った。
気のせいだよな、と自分に言い聞かせて、神童も試合再開の準備に取り掛かった。


「監督、何か指示はないんですか?」
「…あぁ、うん。そうだよな」
「見てるだけじゃなくて、ちゃんと指示しないと、この時代の兄さんに怒られますよ」
「なんかさ、あいつ等の顔がすごく懐かしくて……天馬たちもそうだけど、鬼道とか吹雪とか風丸たち…それに豪炎寺のあの表情、スゲェ生き生きしてるんだ」

懐かしそうに目を細めて、円堂は広大なフィールドを見渡した。管理サッカーの指示、革命の責任によって、天馬たちは楽しんでサッカーをやる、というのはあまりなかった。いつも試合の時は、表情がこわばっていて、絶対に勝たないといけない。その思いが逆に彼等を縛りつけていた。

「…本当にそうですね。こんな日が早く来ればいんですけど…」
「あぁ」

そう返事して、円堂はフィールドに立っている一人の少年を見つめた。


「天馬!!」

剣城にボールが渡ったとき、神童はすぐに“神のタクト”を発動させた。
選手のマークがいない天馬に一先ずボールをパスさせ、その後から、信助の技でシュートを決める。
無事に天馬にボールが渡ったのを確認して、神童は予定通りの指示を出そうとする、しかし、風のような速さで吹雪が走り、天馬のボールを奪い去った。

「うわっ」
「もらい!」
「よし、吹雪!豪炎寺に渡せ!」

高く蹴り上げたボールが豪炎寺の元へと渡っていく。だが、その目の前には信助がすでにマークについていた。

「跳べ、空に向かって!!」

信助は大声で叫んで、足に力を入れた。同時に豪炎寺もボールを取ろうと跳びあがる。小柄な信助に対して余裕かと思われたが、予想以上に彼のジャンプ力は高かった。
負けまいと豪炎寺がボールを奪おうと思ったとき、信助がその数秒前にボールをヘディングでカットさせた。

「……ッ」
「天馬ッ!!」

左足で信助のパスを受け取って、天馬が化身を出現させようとした時だった。
突如、ピッピィーという笛の音が大きく響き渡り、驚いた天馬は体制を崩してしまった。何が起こったのか、と音の鳴ったところを見ると、秋が手を振って大声で叫んだ。

「いいところだけど、もう時間よ!」
「えっ」
「試合終了!時間が過ぎたの!」

未だにポカンとしている選手たちに呆れて、秋は怒鳴るようにして右手に持っているストップウォッチを指差した。

「「「えぇ————!?」」」
「って、どうして監督まで驚いてるんですか!」
「いや、だって俺たち来てまだ…」

はぁとため息を吐く葵の隣で、腕にある時計の針を見てみた。しかし、針はなぜか止まっている。

「あれ?壊れた?」
「本当ですね、止まってる…」
「おっかしいなぁ、さっきまで動いてたのに…」

コンコンと軽く腕時計を叩いてみるが、やはり動く気配はない。

「あっ、私のも動かない…」

茜が円堂と音無の腕時計をのぞいてみると、同時刻で針は止まっている。水につけたりもしていないし、ぶつけた気配もない。電池切れにしては、二人同時はないだろう。

「壊れてない…と思う」
「止まってんだぜ?二人同時に壊れたんじゃないか?」
「う〜ん、でも水鳥さん、二人同時に壊れるって、そんなことありますか?」
「この世には“偶然”ってもんがあるだろ?」

水鳥が長い髪を揺らして、人差し指をビシッと指し、かっこよく決めつけた。

「まぁ、こんなの考えても仕方ないし。元の世界に戻る方法を考えないと…天馬たちもうすぐ試合だろ?」
「うわっ…そうだった…」

声を上げたのは天馬だけだが、神童たちの表情がとてもこわばっていた。試合の日までに元の世界の戻れるのだろうか。それとも、このままずっと———

「あっ、お昼作ってあるよ。もちろん、神童くんたちの分も」

試合中に姿が見えないと思っていたら、食堂で円堂そして、神童たちの分も作っていたらしい。そのありがたさに、神童以外にも霧野や狩屋たちも礼を言っていた。

「じゃあ、後でまた練習すると思うから、ボールとかそのままでいいよ」

そういって秋は走って食堂へと戻って行った。冬花や夏未の姿もいつの間にか消えているのだから、おそらく彼女たちはもうそこで準備をしているのだろう。

「秋姉の料理、すっごくおいしんですよ!!」

そうやって先輩たちに無邪気に教える天馬の瞳はキラキラとしていた、とても楽しみにしているみたいだ。

皆が食堂へと向かう中、鬼道は立ち止って十年後の春奈と円堂を見つめていた。
動こうとしない鬼道が気になって、豪炎寺は話しかけたが、彼は、先に行ってくれ、と短く答えるだけだった。

「円堂…少し、話がある」
「俺?話なら、この時代の俺に言った方が…」
「いや、お前に用がある。二人で話さないか?」

あまりにも真剣な鬼道の表情をみて、円堂はその場で立ち止まった。