二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 ( No.181 )
日時: 2012/03/16 16:20
名前: 姫佳 ◆MWOkRuxz12 (ID: vCVXFNgF)
参照: 義務教育、無事に終わりました!!








 「おい、なんでこうなったんだ……?」
「……雷門って今死ぬには惜しい人材が多いんだよね。」
「死なすな、助けろよ!!どうせ原因お前だろ!?」
「は!?僕が自ら面倒事に首を突っ込むとでも?」
「いいから早く助けろ!!コートが半壊するから!!」
「……やだよ?だって僕、痛いの嫌いだし。」

コート際、ベンチに座りへらへらと笑う結祈。
焦りと不安でいっぱいいっぱいの奏始。

「嫌いって……お前、俺のこと平気で殴るくせによく言うよな。」
「そんなに止めたいなら奏始が行けば?僕は行かないよ、痛いの嫌だ。」

軽い口喧嘩と他力本願な自己防衛の傍ら、

         《ピ————ッ!!》



「「あ、」」

空高く鳴り響いたのはキャラバンの運転手、古株の鳴らす試合開始のホイッスル基、



「……結祈、“クラリス家”の名前で業者にサッカーゴール頼め。あと、コート整備も。」
「ん、りょーかい……。」












                       ———コート半壊までのカウントダウン。














         『 双姫恭奏クロアテュール 』




 「いったぁ……。」
「だから言ったのに……怪我するから止めときな、ってね。」

ベンチ横にうずくまり片肘を抑える風丸を横目に、小さくため息を落とした結祈。右手にガーゼ、利き手である左手には消毒液のボトルを持ち、呆れ顔を引き下げながら次の怪我人へと走る。

「……ったく、もうちょっと手加減してやって欲しいものだよ。」

自然と漏れた独白に“やれやれ困ったものだ”、と再度ため息を吐く。お得意の嫌味を含ませて、先程よりは少し大きめに。

すると、

「手加減なんて腐るほどしたわよ、貴方のチームが弱いんじゃないの?」
「そうだよ?まぁ、結祈と奏始がいなかったから当然なんだろうけど!」










 「まったく。十一人の手当てをしないといけない僕の気持ちを考えた上での力加減があれかい?」
「だって……どうやったってコートは半壊するよ!!」
「しねぇよ、馬鹿。」
「結祈ヒドイ!!」


一通りの手当てを終え、というより奏始に押し付けた結祈はペットボトル片手に本日三度目のため息。ちら、と黒味係った青い目に映ったのは至極普通のサッカーコート。
だがソレが約数分前までは役立たずもいいところにまで崩壊していたこと、雷門選手全員が軽い怪我を負ったこと、そして自己防衛の末にマネージャー達の命で手当ての手伝いをさせられたことは忘れていない。



「酷くないわよ、馬鹿は事実なんだから。」
「え……ラティアまで姉に向かってなんてこと言うの!!」

目と鼻の先、手を伸ばせば届く距離で始まった姉妹喧嘩にはあえて突っ込まず先程の試合、と呼べるかは定かではないが思い出してみる。

が、


「……三十秒なんて思い出すまでもないよね。」


目前できゃんきゃんと子犬のように吼える二人の少女を尻目に呆れたように目を伏せる結祈。

美しいエメラルドグリーンの髪をなびかせ冷静に受け答えする少女に、輝く金髪が否応無しに目を引く少女らが引き起こした騒動はあまりにも衝撃的過ぎる反面、時間的にはあまりにも短いのだ。





















「あら、もしかして女だからってなめてるのかしら?」

海の悪魔姫は怒りの含まれた声とは裏腹に恐ろしい程美しく笑った。



「ねぇ、私とラティアは……雷門よりずっと強いよ?」

太陽の天使姫は僅かな好奇心と共にそう宣告した。




そして、そこからの速さは尋常じゃなかった。




時は半刻程前に遡る———

Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 ( No.182 )
日時: 2012/03/16 16:21
名前: 姫佳 ◆MWOkRuxz12 (ID: vCVXFNgF)
参照: 義務教育、無事に終わりました!!



「———ってことだからさ、一回俺たちの相手してくれよ!!」

キラッキラの笑顔でキッチリと死亡フラグを立てた円堂。







 「偶々ね、日本で会議があって。その帰り、近くの河川敷でサッカーやってる団体をティアラが見つけたの。」
「そしたら偶然そこに結祈とかが居たからさ、私びっくりしたよ!」





ファミリーネームに『クラリス』の名を持つ二人の少女が笑う。




「びっくりしたの僕らの方だよ。アメリカはともかく、日本で自家用ジェット機なんて中々お目にかかれないんだから。」

数分前、何の変哲も無く穏やかな陽の下で執り行われていたミニゲーム。そこに当然のごとく姿を現し、あまつさえ決して大きくはないサッカーコート上で低空飛行を行ったジェット機。
頭上から迫ってくるジェット機の恐ろしさといったら半端ではない。加えて低空飛行と言えど地上5メートルから少女二人が命綱も無しに飛び降りて来たときには自然と上がる驚きの声。


そして、

「……この程度で驚いてんじゃないわよ。」

綺麗に着地し、風圧で乱れた髪を掻き揚げつつ少女———『ラティア・クラリス』は独白したのだ。





そこから、紆余曲折を辿り。
最初の円堂の台詞に返り。



「雷門って……案外クズなのね。」

雷門からの十一人対クラリスの二人で手合わせした結果。

「でも、暇つぶしにはなるよね?」

雷門からのキックオフ、のはずがホイッスルと共に火炎が渦巻き。

「だから止めろって言っただろ!?」
「嫌だよ!そんなん君が行けばいいでしょ!?」

大きな波が寄せたと思えば、

「……はい、試合続行不可能ね。」

ボールは白波を伴い、ゴールに突き刺さったのだ。





「……やっぱ、思いだす間でもないよ。」

あの後、まだ試合を続けようとする円堂を一蹴し、消毒液片手に奔走する羽目になったことには未だ納得がいかない。

姉妹喧嘩を止める気にもならず、ただぼんやりとその様子を横目に、結祈は手にしたペットボトルを煽った。





(あら、私に勝てるとでも?ふざけんてんじゃないわよ。)
(地獄の太陽で焼け死にたい?それとも、地獄の海で溺れ死ぬ?)


その後凝りずにもう一試合挑んだ円堂らが同様に叩きのめされ、結祈の施す手当てが小言と嫌味と暴力交じりになったことは言うまでもない。