二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 お知らせです ( No.415 )
日時: 2012/05/23 20:58
名前: 姫佳 (ID: L9PtbysF)
参照: テスト3日目終了!!ラスト1日!!

乾いた空気、照りつける暑い日差し。波の音だけが彼らの耳に聞こえてくる。そんな、静かな昼の事。彼らしかいないビーチの奥には澄んだ碧い海と、雲ひとつない蒼い空がただ広がっていた。

「遊んだなーっ!!」

ビーチに広げたテントの下で、いつもはサッカーばかりしている少年——円堂守が大の字に寝転がって笑顔で言う。それに同意して頷く風丸と豪炎寺、そして円堂も髪を濡らしていた。そして彼ら雷門イレブンは水着、言うまでもなく午前中海水と戯れていたのだ。
 思う存分遊ぶ事が出来たのは、ここがプライベートビーチだから。世界一の財閥・クラリス家別荘の〝庭〟なのだ。ここに来る事が出来たのは、クラリス家の御令嬢ティアラ・クラリスととても親しい人物がサッカー部にいてしまったからである。ちなみにそのティアラは、今マネージャーたちと一緒にお昼を作っている。結構前に行ったから、そろそろ終わるはずだ。

「みんなー、サンドウィッチ運ぶの手伝ってー!!」

その声に、ビーチで休んでいた全員が屋敷を振り返る。
金髪に赤い瞳の美少女が、バスケットを持って立っていた。


**

「壁山、食いすぎ。」
「魁渡君は小食すぎッス!」

両手にサンドウィッチ(8個目と9個目)を持つ壁山は、同じペースで食べ続けている。2人のやり取りを見て秋は苦笑し、夏未はため息をついた——ただ、微笑みを浮かべて。彼女は相変わらずおにぎりを上手く握れないが、今回は同じ材料を使ったのだから大丈夫なはずだ。

「!ぐっ…!?」

大丈夫なはずなのに、全員円堂の表情には見覚えがあった。風丸たちが自分たちにも危機が迫っている事を悟り絶句する中、近くにいた瑠璃花が慌てて紙コップに麦茶を注ぐ。ティアラは首を傾げて、水を飲む円堂を見ていた。

「キャプテン大丈夫ですかっ!?」
「だ…いじょ、(この塩加減…絶対夏未だ…!!」
「うーん、その具のチョイスは夏未だけど…」
「あら、私普通に作ったわよ?」

きょとんとする夏未。

「ええっと)きっとキャプテンは美味しすぎてびっくりしたんですよ!!;;」
「そうだな。」

春奈の言葉に、鬼道は冷静に相槌を打つ。円堂は麦茶を飲み込みながら、必死に頷いた。そのフォローに目を輝かせる夏未は、きっと長生きするだろう。

「ねえっ、午後は何する!?」
「サッカー!!」
「「円堂は黙っとけ」」
「キャプテン、せっかくクラリス家の別荘に招いてもらっちゃってるんですよ!サッカーとは少し離れても…」

宍戸の言葉に、それもそうだなと笑顔で頷く円堂サッカーバカ。そのやり取りを見て、瑠璃花が提案した。


「じゃあ…午後は別荘の中で遊びませんか?」

**

 午後は偶然遊びに来た一之瀬と土門、マークが加わった。ディランは用事があって来れなかったようだ。そしてアメリカ組の昔話が始まり、懐かしいと言う事でかくれんぼをすることに。範囲はクラリス家の別荘1階、鬼は別荘に来た事があるティアラと鬼道、一之瀬と土門に決まった。

「じゃあ今から10秒数えるね!」
「「広すぎてどこにも行けないし!!」」
「えー、そんな事無いよ?部屋はこのドアの数見てもらえれば分かる通りたくさんあるし、シャワールームもあるし、図書館もあるんだよ?使った事無いけど(笑)」
「6階にも風呂あったよな…?」
「土門記憶力良いね!」

確かに、まるでホテルの様に部屋数は多い。良く客人が来るとかで部屋はたくさん必要なのだ。

「もちろん部屋に隠れるのもありだよ!制限時間は1時間で良い?」
「逃げ切った奴には賞品があるらしいぜ!」
「「!!」」
「見つかったら私の嫁を1個ずつって事で♪」

魁渡の朗報。クラリス家からの賞品には、期待が膨らむ。
結局1分数える事になり、数え終わった鬼達が振り返ると誰もいなかった。

「じゃあ俺は土門と部屋を探すから…」
「俺は反対方向に行こう。」
「全員見つけたら嫁何個かなぁ…♪」

こうして、かくれんぼが始まった。


***

参加者:円堂・豪炎寺・風丸・松野・壁山・少林寺・影野・栗松・半田・宍戸・染岡・瑠璃花・魁渡・マーク
鬼:ティアラ・一之瀬・土門・鬼道

Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 お知らせです ( No.416 )
日時: 2012/05/23 19:59
名前: 姫佳 (ID: L9PtbysF)
参照: テスト3日目終了!!ラスト1日!!

「皆さんこんにちは、別荘に勤めさせていただいておりますメイドです。1階にある部屋をご紹介させていただきます。
 まずかくれんぼのスタート地点は中央に位置する入口です。そこから左に行くと1番奥には厨房、執事室がございます。執事室は大きく2つに分かれていて、1つは仕事をする部屋、もう1つは着替え等をする部屋となっています。その執事室の前の別れ道を進むと、図書館がございます。その他の部屋はお客さまをお迎えする部屋です。
 入口から右に行けば、1番奥はプールの様に広いお風呂が自慢のシャワールーム(?)となっています。その近くには洗濯機やロッカーがある更衣室があり、その他はほとんどお客さまをお迎えする部屋です。また入口付近に広い部屋が1つあり、そこは会議等に使用されます。
 実はティアラお嬢様達の部屋も1階にありまして…最上階にもありますが。後は試合記録等をおいてある部屋もあります。素晴らしい記録ばかりですがどれも似たような物なので、退屈になられるかもしれませんね。」


上の説明はかくれんぼのフィールドを説明しています!さてさて、皆はどこにいるのでしょうか!?



〜ティアラ姫

「まずはクレープ食べてからにしよ!」

 景気づけに、とティアラは厨房へ向かった。パティシエに頼めば、すぐ彼女が好きなクレープが出てくるのだ。それから見つけに行こうか、と考えながら厨房へ続くドアを開けると、冷たく甘い香りが彼女の鼻をくすぐった。首を傾げながら入ると、パティシエの声がする。

「これで良いかな?」
「うゎぁっ!すごく美味しそうでやンス!」
「感謝するっス!」
「へえ、珍しいアイスクリームだね。」

「……見ーつけた!まずはクレープ4個食べられるねっ!」

*栗松・壁山・松野発見*



〜一之瀬・土門

「それじゃあ、俺達は部屋を片っ端から見ていこう。」
「りょーかい。」

 2人は手分けして、両側のドアを1つずつ開けていった。誰もいない。ベッドの中に隠れてたりするかもしれないが、考えないでとりあえず全部開けていく。何個も何個も開けていき、そして次に土門が手にかけたドアノブの先は資料室。双子姫が出場した試合の記録などが整理されている部屋だ。

「うわ、ほとんど前半で終わってる…」
「マーク達もやられてるな…」

「…お2人さん、今は隠れなきゃいけないんだぜ?」

「「…あ。」」

クリアファイルから顔を上げた2人のサッカーバカが、顔を見合わせて苦笑した。

*円堂・豪炎寺発見*



〜鬼道

 携帯電話を閉じず、鬼道はドアを開けた。メールは2件、ティアラと一之瀬から。それぞれ誰を見つけたという報告である。

(2人はこちら側をまだ探していない…とすると。)

「…メールしなくてはな。」

ドアを開けた先はシャワールームという名の大浴場。そこで立ち尽くす3人は、鬼道の声に振りかえった。

「…ここ、異常な広さですよね?」
「風呂とプールの区別が、ついてないんじゃ…」
「いや、こんなプール見た事無いぜ…?」

3人の感想。この大浴場に勝る風呂は、恐らく世界中どこを探しても見つからないだろう。
鬼道は、笑みを浮かべて答えた。簡潔に。


「これが、クラリス家だ。」


*宍戸・少林寺・染岡発見!*



〜一之瀬・土門

「でも本当2人はすごいな!!」
「すごいどころじゃないけどな;;」

円堂の声に、土門が冷や汗を浮かべながら返事した。そして一之瀬と豪炎寺は、静かに同意する。
4人は入口の方へ向けて歩いていた。発見された人は、入り口横にある大部屋に集められる事になっているからだ。それは急きょ決められルールの時話せなかったため、一之瀬が紙にマ○キーで〝入室禁止〟と漢字で書いた物が貼ってある。ティアラは首をかしげていたが。

「俺、いつかあの2人のシュート止めてみた((「「「死ぬぞ」」」

そう呑気に会話をしている時、突然背後でズルッという音がした。
4人は振り向かず、視線で会話する。

(な、何だ今の音…)
(クラリス家の別荘には、幽霊でもいたのか…?)
(そんな話聞いた事ないけど…)

「誰だっ!!」
「「「!!?」」」

勇気のある(いや、KYな)円堂が振り向いた。

「「「「あ…」」」」

「何だ、影野か!」

にっこりと笑う円堂と、笑えない3人がいた。

*影野発見*



〜鬼道

 放心状態から少し回復した染岡達を部屋に行くよう命じてから、鬼道は更衣室に向かう。すると、メイドが洗濯物を入れたかごを持ってドアを開けようとしていた。ドレスが何枚か見える。

「!鬼道様。」
「そのドレスは?」
「ティアラ様がお召しになられる物です。あ、更衣室にご用があるなら私は下がっていますね。」

お先にどうぞ、と譲られた鬼道は更衣室へ。早く見つけてしまおうと意気込みながら、ロッカーを1つ1つ見ていく。

(…いないな、ここには誰も隠れなかったのか。)

あと更衣室内で見ていないのは洗濯機だけだが、多少大きめに出来ているとはいえ中学生が隠れられる訳が無い。
と、携帯電話が震える。メールが1件、一之瀬から影野を見つけたという内容だった。これであと見つかっていないのは?そう考えた時、1人の人物が鬼道の頭に浮かぶ。洗濯機の中には、雷門のジャージ。

勝ち誇った笑みを浮かべて、洗濯機のドアを開ける。

「…さすがスモールサイズ。」
「誰がチ…ぶごぁっ!!」

スモールサイズ(魁渡)が居た。鬼道の方を振り返ろうとして、洗濯層の小ささから頭をぶつける。

「今日からあだ名はスモールサイズだな。」
「っるせ、そんなに身長の事言ったら怒るぞ!」
「既に怒ってるだろう。」

と、鬼道は口角を上げた。魁渡が顔をしかめると、見逃してやっても良いぞ、という言葉。

「…見逃す?」
「ああ、恐らく洗濯機を探す奴はいないだろうから…ほら、頭を入れろ。」
「??」

鬼道の優しさなのかとクエスチョンマークを浮かべながら、魁渡がもう一度洗濯機に隠れる。すると鬼道はドアの外に向かい…

「洗濯機回していいですよ。」
「殺す気かっ!!!」

*魁渡、発見!*
(…ん、メイドがいない?)


〜ティアラ姫

「ん〜、結構見つかってるなぁ…」

 2つめのクレープを味わいながら、ティアラは携帯の画面を見つめる。そろそろ私も探しに行こう、と厨房から出ると、荷物を抱えたメイドが目の前を走り去っていった。少し呆然として、それからメイドが走っていった方向を見る。執事室だった。中から騒ぎ声が聞こえる。

「?どうかしたの?」
「ティ、ティアラ様!!」

静まり返る執事室。何だか面白そうだと感じたティアラは、断りも入れずに執事室に入った。すると、一面薄ピンク色に染まる。そのカーテンには、影が揺れていた。2〜3人のメイドと、もう2人誰かがいる。

「ね、何してるの??」
「…実は、お客様の中に可愛らしい方がいたので。」
「「可愛くないっ!!!」」
「あっ、そういう事!じゃあ出来たら見せて♪」
「ティアラも乗るなッ!!」

右から左へ、声は通り抜けていく。
抵抗も空しい。2分後、ドレス姿の風丸と半田がお披露目された。そう、鬼道と会ったメイドが持っていたドレスである。

「……」
((あ、意外と薄い反応?))
「メイド。」
「はっ、はい!」

あまり良い反応では無い事に緊張して、メイドの1人がティアラに近寄る。すると彼女は振り返って。


「余ってるから、このドレスは2人にプレゼントしちゃって☆」
「はいっ、喜んで!」
「「ティアラァァァァ!!!!」」

*風丸・半田発見!*



**

「残りは瑠璃花とマーク…」
「マークの居場所なら大体分かるから任せて☆」
「そうか。でも瑠璃花はどこにいるか…」

鬼道、ティアラ、一之瀬と土門は終了時間15分前になると一旦集合して作戦会議を開いた。見つかっていないのはマークと瑠璃花のみ。マークと幼馴染のティアラは自信ありげに答えるが、ここに来た事のない瑠璃花はどこに隠れるか分からない。

「実は、鬼道の方の部屋はまだ少ししか見てないんだ。」
「それは仕方が無い、広いからな。」
「でも瑠璃花って本とか好きだよね。図書室は?」

鬼道と一之瀬は、首を横に振る。まだ見てない、という意味だ。

「あと居るとしたら…ま、有人達に任せるよ☆」
「それじゃ、マークはティアラに任せるか。」
「時間になったらまたここに集まるって事で。」
「了解☆3人共、しっかりよろしくね!クレープがかかってるんだから!」

バタリ、とドアが閉まる。

「…見つけないと、命にかかわる予感がする。」
「…瑠璃花が相手なら、そこまで行かないんじゃないか?」
「とりあえず、探しに行くか…」

見つかった軍団のにぎやかな声を背に、3人も席を立った。


* to be continued!! *

「…このドレス、どう脱げばいいんだっ!!」
「円堂達と合流できない…(風丸は分かるけど、何で俺まで…)」
「風丸、半田、カードゲームやろうぜっ!!」
「「Σ見つけるなー!!!(魁渡めッ!!!)」」

Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 お知らせです ( No.417 )
日時: 2012/05/23 19:59
名前: 姫佳 (ID: L9PtbysF)
参照: テスト3日目終了!!ラスト1日!!

「…いないな。」

 てっきり図書室に居ると思っていたが、誰の姿も見当たらない。高い本棚に隙間なく詰められているたくさんの本が、不必要だと思われるほどの広い空間を狭く思わせる。しんと静まり返った図書室に、俺の足音だけが響いていた。
見つかっていないのは、マークと瑠璃花。俺は瑠璃花を探して図書室に来たが、人の姿も気配すらない。恐らく、ここには俺以外誰もいないのだろう。となると、瑠璃花は一体どこにいるのか…ふと目にとまった第二次世界大戦の本を手に取り、めくってみる。この図書室にあるのは英語で書かれた本ばかりで、この本も例外ではなかった。

「…ん?」

本を戻そうとすると、後ろの壁にわずかな隙間が出来ている事に気付く。一見何の変哲もない壁だが…押してみれば、音も埃も立たずに開いた。その先は薄暗い、石造りの通路。目をこらすと、両脇にドアが見えた。

「…隠し扉、という訳か。」

音も埃も立たなかった、つまり最近開けられたという事だ。瑠璃花が開けたという可能性もゼロでは無い。
俺は本を棚に戻して、通路を進んでいった。




『ティアラ、この部屋は?』
『うーんと…あ、思い出した!ここにはお客様から貰ったりした大切な物とかが仕舞ってあるんだ。』
『だからこんな隠し通路に…』
『そう、盗まれたら大変だって。有人は遊びに来て良いからね!』
『…このセキュリティなら、盗まれる心配は無いんじゃ…』

そう言えば、この部屋には来た事がある。この別荘に来た時、ティアラに案内してもらった部屋の1つだ。クラリス家の別荘などに来た有名人や財閥関係者が贈った貴重な品物の他、その人の肖像画や写真も何枚もあった。…大切にされている印象は無かったが。

「一応見ておくか。」

ドアを開けると、明かりが点いているらしく、視界が一気に明るくなった。ああ、ここにいたのか。

「!鬼道さん‥」

振り返った瑠璃花。声をかけようとして、彼女が見ていた物が視界に入る。
——1人の女性がバルコニーから見守る中で、4人の子供たちが噴水で遊んでいる1枚の絵。ただ、その子供達も、女性も全員有名人だ。流星姉弟と双子、そして橙色のロングヘアーが風に揺れる女性は…。

「瑠璃花、この人は…」
「…私の母です。」

流星桜花、確か……瑠璃花に聞いた話では一家心中しようとした時、薬によって死亡したと。
瑠璃花の胸元で握られている右手は、震えていた。表情も寂しげで、やはり母親の死が辛かったのだと推測できる。俺も分からない訳ではない。

「瑠璃花…」
「っ…私は思い出したからと言って、いつまでも立ち止まりはしません。」

深呼吸をして落ちついてから、ジャージの胸元を握りしめ、ゆっくりと瑠璃花は自然な笑顔を作る。するとジャージの下に隠していた何か——ペンダントを外に出して、そっと右手で覆った。俺の脳裏に、少し前の思い出が蘇る。
——南国の暖かな風と、舞う蛍。

「今私には、鬼道さんが居ます。それに、」

——沖縄で俺が買って渡した、ホタルガラスのペンダント。
顔が少し熱くなるのを感じつつも、やはり少し嬉しいという思いはあった。

「もう過去にたくさん泣いてお母さんの話をしました…だから、私は、」

“これからは、笑ってお母さんの話を出来るはずです。”

「…なら、俺に話を聞かせてくれないか。」
「はいっ!」

笑って返事をする瑠璃花の胸元には、碧いガラスが揺れる。
…やはり、彼女には笑顔が合っている。笑顔を見せながら話をする彼女を愛おしく思いながら、俺もまた微笑んでいた。

**

「マーク、みーつけたっ!」

 その声が降ってきたのと同時に肩をたたかれて、突然の事に驚いたマークが肩を震わせる。それまで見てたアルバムが音を立てて床に落ちて、広げられたページには何枚もの写真。手に取ると、私のアルバム。

「…もしかして、隠れてる間ずっと見てたの?」
「ティアラがなかなか見つけに来なかったからな。」
「だってマーク、いつも隠れる時この部屋だから後でもいいやと思って!」

それは寂しいな、と苦笑するマークの隣に座る。久し振りに見たアルバムを最初のページから見る事にした。ここは私の部屋…と言っても、別荘で長期滞在する機会もなかなか無いから(静かで仕事がはかどるというラティアは良く来てるらしいけど)あまり物は置かれてない。ただ別荘での思い出として写真は良く撮ってたから、アルバムは1冊埋まってる。
それがさっきマークが見てたアルバムで、小さい頃の私とラティアと一緒に、マークやディランが色んな表情で写っている。

「懐かしいなぁ…」

気付けば、笑顔になってたんだ。
初めて別荘に来た時、船に乗ったら大荒れでマークとディランが顔色を悪くしながらもピースをして撮った1枚。門の前で、笑顔の1枚。すごく豪華なクレープを見てすっごい笑顔の私と、目を丸くするマーク。マーク、すごいびっくりしてるなぁ…ページをめくりながら、小さな笑いがこぼれた。

「わぁっ、マーク覚えてる!?ここでっ……マーク?」

プール(大浴場)の1枚を指さして声をかけると、反応が無かった。マークの顔を覗きこむと、慌てたように何でもないと顔をそらされる。…何だろ。追求しようか少し考えて、結局軽く流すことにした。
アルバムは、とうとう最後のページ。

「ティアラは変わらないな。」

ほら、流してもマークはすぐ声をかけてくれるから。

「そうかな?」
「でも成長してる。昔はあの本棚に全然届かなかったけど、今は余裕だ。」

指差された本棚は、確かに小さい頃は手を精一杯延ばしても届かなかった。別に入ってるのは難しい本だから取る意味もなかったけど…何となく立ってみたら右手が簡単に触れる。本当だ…私、背伸びたなぁ。

「でもマークも背伸びたし…もっとカッコ良くなったよね!」
「・・・・・・」

…あれ、どうしたんだろこの沈黙。
よく分からない不安が芽を出して、マークと同じ目線になる様にまたしゃがんだ。すると、急に暖かくなって。

「…ティアラ、」
「なっ…何?」

ビックリして、声が上ずった。だけどマークの腕の中が暖かくて、離したくない今の幸せ。

「これからも、ずっと一緒にいてほしい。」

優しく響く声と、私が考えてた言葉が重なった気がして。
これは偶然でも奇跡でも無い、必然って言葉が合うんだと思う!

「私も同じこと言おうと思ってたのに!」


( これからも、ずっと笑顔でね! )

**
「瑠璃姉とティアラ、見つかったのか…?」
「何にも連絡ないなー。」

((…悟れ、サッカーバカ共。))