二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ひぐらしのなく頃に 輝—第二期—
日時: 2010/01/23 21:51
名前: マユ ◆vars8VB/bg (ID: oq0pGGOm)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=15454

新しい仲間が増えた時
それは新たな惨劇を意味する

新たなカケラが増えた時
それは戦いのループを意味する

それでも私は戦える

たとえ貴方が信じないとしても、私は絶対信じてる———

これが運命だとしても、奇跡は必ず起きるから———ッ!

☆*☆*☆*☆

お初の人も、前作を見てくれた方も、どうもです☆

これで立て直すのは、実は10回目です(汗
まあ、頑張っていこうと思います♪

此方は前作「ひぐらしのなく頃に 歩」の続編です!
・・・それだけです!(オイオイ

前作「ひぐらしのなく頃に 歩」
http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=14018
前前前前々回、プロローグ〜10話
http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=13893
前前前々回、11話〜15話
http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=14084
前前々回、16話〜21話
http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=14230
前々回、22話〜23話
http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=14501
前回、24話〜25話
http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=14568

♪ひぐらしソング&ひぐらし動画♪
「コンプレックス・イマージュ」FULL
http://www.youtube.com/watch?v=4DtEicUihng
「澪尽し編OP」
http://www.youtube.com/watch?v=hj0HAaK0kfU&feature=related
「その先にある誰かの笑顔のために」
http://www.youtube.com/watch?v=XdvOUCeYYZo&feature=related
神画質 「Super scription of data」
http://www.youtube.com/watch?v=hILGMmFHPnY&feature=related
アニメ「ひぐらしのなく頃に解」厄醒し編〜祭囃し編
http://www.youtube.com/watch?v=GRvlA9TSY6Y&feature=related
「why,or why not」
http://www.youtube.com/watch?v=2Y169Ca5sxE
「最終巻絆、PV」
http://www.youtube.com/watch?v=EVUI67P9Es8&feature=related

☆キャラ絵☆
麻由
http://www.kaki-kaki.com/bbs_m/view.html?329197
正月羽入
http://www.kaki-kaki.com/bbs_t/view.html?21639
羽入
http://www.kaki-kaki.com/bbs_t/view.html?14949
ドラクエ小説のために書いたオリキャラです!
因みに中央の人物は麻由と同一人物!
http://www.kaki-kaki.com/bbs_m/view.html?359749
梨花ちゃん
http://www.kaki-kaki.com/bbs_t/view.html?25628

〜*♪此処に来てくれた仲間達♪*〜
ゆずき
うっさー
ユメさん
m,kさん
藍羽さん
瑠留
月乃さん

皆!ありがトゥーッス☆
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

では楽しんで読んでもらえたら光栄です♪

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Re: ひぐらしのなく頃に 輝—第二期— ( No.1 )
日時: 2010/01/23 21:52
名前: マユ ◆vars8VB/bg (ID: oq0pGGOm)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=15454

         26、罪の制裁

—優羽side—
家に着くと、リビングは騒がしく音を立てていた。
予定通り、宏人は母親を家に呼んでくれたらしい。

元々私の両親と宏人の母親は仲が良く、私達を奴隷のように扱ってきた。
そして今日は、その積年の恨みを晴らす時・・・。


「ただいま・・・」
リビングに足を踏み込むと、煙草と香水の臭いが鼻をくすぐる。
両親は「おかえり」の一言も口にせず、黙って働く宏人を見下していた。
まるで嘲笑うかのように・・・。

「おい宏人っ!こんなゴミみたいな紙クズ捨てなッ!」
汚らわしい怒声が、家中に響く。

何がゴミだ、お前の方がよっぽどゴミじゃないか・・・。
私は眉を顰め、心底腹立たしく感じる。


そのことに感づいたのか、宏人の母は私を睨み付けた。
「何やってんだッ!!さっさとお前も働きなッ!!!」
傍にあるを手にとって、私の頭に直撃する。

でも、さほど痛みは感じない。
それどころか可笑しすぎて、喜びで胸を膨らませた。

「「あははは・・・」」
静かに笑い声を零す。


「何笑ってんだ!さっさと仕事を・・・」
「黙れッ!ゴミクズ共ッ!」
私が怒声を上げると、窓ガラスがビリビリと振動する。
普段の私には考えられない暴言に、3人は立ち往生をする。


「今日は、他の仕事があるんだ」
そう言い、隠すように片手で握っていた鎌を揚げる。
すると、その場で恐怖で小刻みに震えた。

「ひ・・・っ!ヒィィ・・・!!」
歩くとは言い難い姿勢で、逃亡を図る。
逃げようと必死にもがく馬鹿共に、鎌を振り上げた。


「ぎゃあああああああッッ!」
飛び散る血を目の当たりにする度に、耳障りな喚き声を出す。

「五月蝿い、耳障りだから」
そんな声も、宏人の母の声で掻き消された。
それとともに、コイツを掻き消したい衝動に駆られた。

そんな宏人の母を、私の両親は見つめていた。
私は両親の場へ行くべく、足音を殺して歩み寄った。

「く・・・来るなぁ!」
狂ったように椅子を振り回し、母は私に向かって椅子を投げつける。
騒々しい音を立てて、私の前を横切った。

「あ・・・ッ」
母親は後ずさりすると私を見つめる。
そんな母を横目で睨み付けると、「ヒッ!」と甲高い声を上げ、表情は恐怖に染まった。
・・・苛立たしさが募る。


残虐に、コイツ等に何度も鎌と斧を振り落とす。
たとえ掠っただけとしても、痛みを感じないはずはない。
その証拠に、武器を振り上げる度に、鼓膜を破きそうな程の耳障りな叫び声が響いた。


宏人の母親は蹲るのを我慢して、宏人と私を怯えながら睨み付ける。
「ど、どうして私を殺そうとするのよ!」
「・・・・」
ヒステリックに叫んでくる宏人の母を、冷たく見下してやる。


「「アンタ達が今までやってきた罪の制裁」」
冷酷に言い放つと、奴等は目を見開いた。


「アンタ!私を殺したら許さないよっ!」
「・・・・ふぅん」
軽々しく許さないと言われ、静かに返事をする宏人の隣で、私は鼻で笑った。

「もっとも、そんな大口を叩いて生きれるか分からないけどね?」
「ヒッ・・・!!」
そう告げると、今までの勢いはなくなり、また冷や汗を掻き始めた。


「金輪際、アンタ達と関わりたくないから殺るんだよ・・・?」
そう言い、また鎌を振り上げようとした直後、とんでもない行動に出た。

「お願いします!許してくださいッ!」
恐怖と屈辱を感じながら、こいつ等は土下座をしている。

「何言ってんの?」
今更土下座なんて、無謀すぎる。
所詮はコイツ等の命乞いにすぎない。



「今更反省?謝るのが遅すぎたよね?」
遅すぎたんだ、アンタ達は。
全てが遅すぎた。
アンタ達のせいで、こっちがどれだけ苦労したと思ってんの?

「ごめんね、昔から感じていたことは、覆せないから・・・」
そして、鎌を持つ片手を振り上げる。

「宏人!お前は・・・母親が好きだよね?」
宏人の足を掴み、上目づかいで宏人を見つめる。

宏人はそんな母を鼻であしらい、無表情で告げた。
「俺、アンタの事大嫌いだから」
まるで、裏切られた子供のように、こいつは目を見開いた。


『恨んだりしてないのか・・・?』
そうだよ圭一君。私はコイツを恨んでる。
だから、今からこいつ等を殺すんだよ。


最後の抵抗として、危うい手つきでスコップを手に取る。

「そんなもので斧に勝てるとでも?」
そのドスの効いた声に押され、一瞬動きが止まる。
その一瞬の隙を突き、スコップを払い除け、私は父親の腕を裂いた。

「ぁ"あ"ああ"あああ"ッ!!」
騒音を立てながら、痛みで泣き叫ぶ父の声。
私は小刻みに震える父を見届け、母に目を向けた。

「あ・・・ぁあ・・・!」
母の視線の先に振り向く。
蹲っていた父親は、既に動かなくなっていた。

その無様ともいえる姿を見て、私は嘲笑った。
「次はアンタ達の番」
そして、一歩ずつ近寄る。

母親は、私に言い放った。
「私は優羽の母親でしょ?!」
今頃母親面をされることに腹が立ち、私は母親を見つめた。

「私は、アンタ達を親なんて一度たりとも思ったことはない」
満面の笑顔で、そう吐き捨てた。

「バイバイ」
「ちょ!待・・・!」
私はゆっくりと鎌を振り上げる。
その光景を、宏人の母と私の母は、見届けるしか出来なかった。

「死にたくなッ」
それが、コイツ等の最後の言葉になった。



「随分荒らされたな・・・」
宏人が周りを見渡して、溜息を零す。
私は血を拭いながら、辺りの状態を見渡していた。

鼻を擽る臭いが血の臭いなんて、まったく気にしない。
寧ろ、怒りや憎しみは消え、晴れ晴れとした澄んだ気持ちだった。

「さて、そろそろコレを運ばないとね」
そう宏人が呟き、私も死体となった3人の亡骸を近づこうとした。


「優羽・・・?宏人・・・?」
刹那、聞き覚えのある声が、私達の耳に飛び込んできた。

「・・・幸弥。どうして此処に・・・ッ!」
ハッと我に返り、幸弥の視線にあるものを交互に見る。

血だまりの部屋と、真新しい傷だらけの死体に、血で真っ赤に染まった私達・・・。

「何・・・してんだよ・・・・」
混乱したように、目の前の惨状のワケを理解しようとする。

見られたんだ・・・。
ただそれだけがショックだった。

・・・でも、このまま突っ立ってる訳にもいかなかった。

仲間意識が強い幸弥だからこそ、仲間に告げ口をしかねない。
尚更放ってはおけない人物だった。


「どうして・・・!何でだよッ!」
必死に叫ぶ幸弥の目には、涙が溜まっていた。
私達の裏切りともとれる行為に泣いてるのか、殺されると解って泣いてるのか。


「幸弥」
私は幸弥を呼び、幸弥は肩を弾ませる。

「これは、自分がいけないんだよ・・・?」
そう、見てしまった幸弥が悪い・・・。
そう自分に言い聞かせながら、少しずつ幸弥に近づいた。

「優羽、宏人・・・。元に戻ってくれよ・・・!」
「さよなら」
最期に幸弥に告げたのは、そんな言葉だった。

Re: ひぐらしのなく頃に 輝—第二期— ( No.2 )
日時: 2010/01/23 21:52
名前: マユ ◆vars8VB/bg (ID: oq0pGGOm)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=15454

         27、悲劇

—麻由side—
「・・・何これ」
寒々しい部屋に、魅音が呟いた。
あからさまにおかしな光景が目に飛び込む。


今日私達は、優羽の家に遊びに来ていた。

『もう披露宴は目前だし、前夜祭っぽくいこうよ!』
『披露宴って・・・。ただの祝賀会じゃん・・・』
『優羽さん、きっとお姉と圭ちゃんのことだと勘違いしますよぉ♪』
『『ええっ?!!』』
『『あははは!』』
『優羽も喜んでくれるといいな——ッ!』


先程までそんな会話をしていた私達は、その光景を目前として、一瞬にして黙り込む。
其処にあった光景は、いつもの広いリビングではなくて・・・。

椅子は倒れ、食器の破片が飛び散り、畳まれていたであろう服は、切り刻まれていた。
テレビは砂嵐でも起こしたようにザーザー音をたてている。

それはまるで、夫婦喧嘩でもしたような有様。
如何にも、争った形跡であった。


「「・・・・」」
飛び散った血を見つめ、私達は黙り込む。
微動だに出来ず、ただ其処に佇む。
途端、張り詰めた空気が漂った。

「そんな・・・」
魅音はそれだけ言うと、口を噤んだ。
魅音の言葉を、羽入が紡ぐ。
「遅かった・・・」


「・・・魅音。今日、優羽と宏人と幸弥は、一緒にいたんだよな・・・」
圭一が再度確認をとるように訊くと、魅音は驚いたように頷く。

その直後、私の思考に爆発のような衝撃が走った。
じゃあ、宏人と優羽は、幸弥は・・・一体何処?

「・・・なきゃ・・」
「え?」
「3人を探さなきゃっ!」
弾かれたように私は部屋を飛び出す。

「ちょっと!麻ぁちゃん!」
私を止めようと、必死に私に付いてくる。
レナが後ろから手を伸ばしたけど、あと一歩の所で届かなかった。



枝のように別れた道を、私は直感で只管進む。

思えばこの数日間、おかしなことだらけだった・・・。
2人は部活を連日休むし、何より怯えた恐怖のような表情も取れた。

友人関係でないなら・・・家庭事情・・・。


坂道を駆け上がり、思い当たる所を探し尽くす。

「ッ?!」
石に躓いて、宙に浮いて、其の儘地面を転がった。
膝から血が滲み出て、私は服の袖で無理矢理拭った。

「こんな痛み・・・!死と比べれば安いものッ!」
そう強く叫び、私はまた立ち上がる。

痛くて痛くてたまらないけど、私は見つけなくてはならない。
もう大切な仲間に、これ以上人を傷つけてほしくないから———。



足が止まった。

あそこなら・・・人目が付かない・・・。
ふと、身に覚えのある場所が、脳裏に過る。

気付けば、足はもう其処に向いていた。
「今までたくさんの時間があったなら・・・!」

何度か訪れた、レナお気に入りのダム現場。
そして、ようやく見つけた一つの人影・・・。

「宏人!優羽!幸弥ッ!」
悲鳴を上げる足と思考を酷使して、私は3人に近づいた。

Re: ひぐらしのなく頃に 輝—第二期— ( No.3 )
日時: 2010/01/23 21:53
名前: マユ ◆vars8VB/bg (ID: oq0pGGOm)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=15454

         28、涙の微笑み

—麻由side—
青青とした空は、いつの間にか夕暮れに変わっていた。
そんな夕日を背に、優羽と宏人はゴミ山の頂上付近に立っていた。

宏人と優羽は、振り返ると少しだけ顔を歪ませた。
薄々は感づいていたようで、私が現れても大した驚きは見せなかった。


「何してんの?」
「「・・・・・」」
刹那、宏人と優羽の間に見えた人影に、私は咄嗟に目をやる。
そして、感じたくもなかった静寂が、私と2人に空気感あるを作る。


不自然な格好で横たわっている身体・・・。
それが一体誰で、何だというのだろうか。
ただ何かを訴え掛けるように、視線を此方に向けていた。


「幸弥・・・」
心の何処かで覚悟していた、それでも・・・受け入れたくなかった。
私の呟く声は、空しくも宙へ舞う。


「3人で何してんのさ・・・。早く皆のトコに行こう?」
「・・・・」
拒絶でもするかのような冷たい瞳は、私ただ1人を映していた。
私達の間に隔たりがあるかのような、空気の違いを感じてしまった。


ゴミ山を登って、頂上にいる2人に近づく。
「な?皆待ってるしさ!」

ブン・・・!

風を切る音が聞こえ、私の手は払い除けられ、地上へと落ちる。

ガタンッ!ガチャッガラガラ・・・。
たくさんの金属音を耳にし、私の身体は転げ落ちた。


「・・・ッッ!」
所々砂で汚れてしまい、手足が血で汚れ負傷する。
さっき擦り剥いた膝小僧は、先程よりも悪化している。


「邪魔しないで」
優羽の第一声が、ソレだった。
言ってる意味が分からず、見下す優羽を見て、私は厳しい顔付で尋ねた。

「・・・意味が分からないんだけど。どういうことだよ」
「私達の計画を、邪魔しにきたんでしょう?」
私は咄嗟に否定するが、私の声など届かない。

「早く消えてよ」
そんな言葉の数々に、堪らず叫んだ。

「私達は仲間だよッ!」
「お前等の仲間なんて真っ平御免だっ!」


斧で弾き飛ばされた私は、地面の上でうつ伏せになる。
「ぐッ!」
私は咄嗟に声を出し、痛みを耐える。


ねえ、2人共・・・。
目の前に、2人の視線の先にあるものは、2人にとって・・・何?


顔を上げ、強大とも言える2人を見上げた。
その顔を見て、私は顔を歪ませる。


今すぐにでも、2人の顔に付着した血を拭いさってあげたかった。
そうでないと、2人が本物の殺人犯に見えてしまうから———。

あの、冷たい目付き。
それは、私や魅音に鬼が宿った時のように、冷めた目。


私は、どうしたらいいの・・・?



『私達は、仲間じゃなかったのかよッ?!』
『お前等はもう仲間じゃないっ!』

「———」
その時、違うカケラの光景がフラッシュバックする。
これは・・・私がいた鬼隠し編の・・・。

『圭一——』
『ウチのことが嫌いなら・・・いつでも言ってね・・・?』

まだループも何も知らなかった時、圭一を救えなかった。
私は、圭一に、何も出来なかった。

『ごめんね・・・ごめんね・・・』

・・・私、馬鹿だもんね。

『・・圭一・・・』

・・・え?

『圭一、———笑って』


「———ッ!」
・・・そうだよ、此処で負けてはいけない。
私は、優羽と宏人に手を差し伸べるんだ。
微笑んで、手を握ってあげるんだ。


「・・・違うッ」
「・・・!」
突如、急に顔付に変化が現れ、私は目の前を強く睨み付けた。
そう、大切な仲間を想う、強い眼差しを向けて。


「・・・・何で立ち上がる」
目の前にいる2人が、疑心暗鬼に陥った圭一とダブって見える。
助けるんだ、絶対に。
今度は、笑顔を取り戻せるように。


「俺はお前等の所に帰る気はない!」
尚、私を敵視することは変わらず、宏人は叫ぶ。
・・・それでも。

「嘘だ・・・」
2人の気持ちを拒否して、私は2人を見やった。

「そんな嘘八百並びたてたって、私は退かないッ!」
「・・・ッ?!」
驚いたように目を開き、再び冷たい目付きに戻る。


「死にたいの・・・?」
「幾つもの死を繰り返してきたんだ。だから、怖くない」
仲間の為なら、この命、投げ出してやるッ!
私は腹を括り、足を踏み出していく。


「死ねッ!」
斧の背の部分で額を強打され、尋常でない痛みは、私の身体を駆け巡った。
意識が飛んでしまいそうな激痛に、私は握り拳を作って、グッと耐える。

「はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・」
宏人は僅かに顔を歪ませた。

どんなに武器で殴って威嚇しても、立ち上がってくる私に不快感を持ったから。
遂には優羽自身も、私に鎌を振り上げる。


身体が極寒のような寒さを覚えるけど、血が溢れ出る箇所は灼熱のように熱かった。
痛みとはかけ離れた激痛が、私の身体を蝕む。

目が冴えるような、凍てつく寒さと、灼熱の熱さ。
それなのに、急激な睡魔で、意識が遠のきそうな矛盾。
その訳の分からない矛盾に、笑みを零してしまう。

痛かった。
辛かった。
身体が鉛のように重くて、もう眠りたかった。

それでも、私は立ち上がらなくてはいけない。
あの時の圭一のようにはさせないと、心の奥で誓ったから。


・・・胸が疼く。
痛かった?辛かった?
そう尋ねても、答えは出ない。

気付かせよう、私が。
2人が疑心暗鬼に陥った今、助けられるのは、私しかいない。


私は微笑んで、優羽に、宏人に手を伸ばす。

「大丈夫だから。2人が求める世界は、未来は、すぐ傍にあるから」

息を切らして、それでも必死に訴え掛ける。

「辛いなら傍にいてあげるよ。立ち向かってあげるよ。だから・・・」


「あの日に・・・帰ろう——」
「「ッ——」」
傷つき、血で汚れてしまった貴方の手を握り締める———。
もうそれ以上、血で染まらないように———。
ずっとこの手で、支えてるから———。

「・・・・ね?」
合意を求めるように、私は笑い掛ける。


不思議と、慣れというのだろうか、先程までの痛みは無かった。

でも、私の身体は、全神経に痛みを伝え、訴え掛ける。
次の一撃で、もう私は絶命すると・・・。


だからこそ、伝えなければいけない。
この一言で変わるなら、私は最期まで足掻く。


「優羽、宏人・・・。———笑って」

鎌を振り被る音に私の声が掻き消されないように、只管手を握った。
・・・伝わったかな。この気持ち。


悔しいな、今度こそと思ったのに・・・。

梨花ちゃん、羽入、皆・・・。
次の世界では、団結して運命をぶち壊したい。

だから、大丈夫。
こんなことで、挫けるもんか。

信じれば、奇跡は起こるんだから———。

揺らいで見える景色を見つめて、微笑んで瞳を閉じた———。
一筋の涙を、右頬に流しながら———。

そして、全てが闇へ葬られた——。

Re: ひぐらしのなく頃に 輝—第二期— ( No.4 )
日時: 2010/01/23 21:54
名前: マユ ◆vars8VB/bg (ID: oq0pGGOm)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=15454

         29、明かされた記憶

—圭一side—
『隠れるとしたら、ダム現場かもしれない!』
そのレナの第六感を頼りに、俺達はゴミ山に辿り着く。

・・・しかし。
ダム現場に到着した直後、俺達の見る光景は、絶望へと変わった。

嘘だと信じたかった。
それでも、真実は変わらなくて・・・。

優羽と宏人に付着した血が飛び込んできた。
目の前にあった惨状を、俺は思考で処理出来ない。


麻由は、地面に力なく倒れ、微動だにしない。
ただ瞼を閉じて、薄らと一筋の涙を流して、深い眠りについていた・・・。

仲間の死を目前として、俺達は微動だに出来ない。
狼狽することも、怒鳴り立てることも、ましてや泣くことなど以ての外。
呼吸がしづらくなり、ようやく俺達は、叫んだ。


「「麻由ぅぅうううッ!!!」」
声を限りに、怒声に近い声質で叫ぶと、弾かれたように麻由へと走り出す。
無残にも、抱き抱えると、身体は冷たくなっていた・・・。

「・・・ッ」
桃達は、目を背けていた。
「駄目だよ。目を背けちゃ・・・!」
そう伝えるレナにも、怒りと悲しみが露わになっていた。


幾つもの傷があり、それは殆ど致命傷のものばかりだ。
額が割れ、腹部も刺されて、腕と脚は骨が軋むほどなのに・・・。


麻由は、微笑んでいた———。


涙を零しながら、それでも尚、幸せそうに笑っていた。

「麻由・・・!」
梨花ちゃんと羽入が、今にも泣きそうな顔で麻由を見つめる。
涙を拭ってやると、涙は温かいのに、頬は冷たかった・・・。

きっと、最期に伝えたいことを伝えられて、嬉しかったんだと思う。
麻由は、最期まで挫けなかった。
優羽達に手を伸ばし続けたんだ。


『あの日に・・・帰ろう——』

『優羽、宏人・・・。———笑って』

「———ッ」
静寂に響いた、麻由の伝えた言葉。
それは、優羽達に伝わって欲しいと、本気で思った。

「・・・麻由ぅぅッ!うわぁあぁああぁあッ!!」



『——笑って』

「え———」
突如、俺の頭から聞き覚えのある声が響く。
この声は・・・・麻由?
ノイズだらけの記憶を探り、思考に集中させる。


『遅いぞー!早くしねーと遅刻だ!』
『よーし!じゃあ走るか☆』
『『オー!!』』

此処は・・・雛見沢・・・?
楽しそうに笑う、俺とレナと麻由の姿がある。

『はいはい!では罰ゲーム!!』
『うー!制服メイドはセコイー!!』
『圭一のエンジェルモートの服よりはまし!』
『お前なー!!!』
『『あははははッ!』』

楽しそうにババ抜きをやる俺達の表情には、いつか見た笑顔。
それは、ずっとこの先も続くと信じていた、あの幸せな日々。


『オヤシロ様の祟りって、何なんだろうな』
でも俺は、興味本意であんなこと言って、自分から幸せを崩してしまったんだ・・・。


自分を襲ってくる村の人々、俺の敵となる仲間達・・・。
・・・そうだ、思い出した。
俺は大切な人達のことを勘違いして、自分から拒んでしまったんだ!

魅音やレナと麻由は、俺を気にかけてくれるけど、俺は余計に3人を拒んだ。
帰り際も、お見舞いの時も、おはぎの時も、みんなみんなッ!!


『圭一はいいのか?このまま1人でいいのかよ?!』
『関係ないだろ・・・』
『私達は、仲間じゃなかったのかよッ?!』
『お前等はもう仲間じゃないっ!』
俺は麻由を、仲間面していると感じてしまったッ!
そして、仲間なんかじゃないと、冷酷に吐き捨ててしまったんだ!


『圭一をおぶってくるの大変だったんだぜ!何度も転んでさ!』
『・・・・・・・』
俺が視線を移せば、見えるのは麻由の腕の怪我。
でも俺は、それすらも偽善に思えてしまって、顔を背けてしまう。

そんな俺を、麻由は悲しそうに見ていた。
それでも、麻由は元気づけようと笑う。


『お粥作ったから、ちゃんと食べてね?』
『・・・早く出てけよ・・・・』
俺は馬鹿かよッ!!
仲間が自分のために頑張ってくれたんだぞッ?!

『明日は、部活で大騒ぎしような!』
麻由は言われた通り、ゆっくりと腰を上げ、襖に手を掛け、足を止める。
麻由の悲しそうに俯く姿が、痛々しい・・・。

『圭一、私のことが嫌いなら・・・、言って——?』
俺は、そんな麻由の言葉に、耳を傾けられなかった・・・!
疑心暗鬼になって、麻由が気味の悪い笑みを見せていると思い込んでしまったんだ!



血塗れの部屋で、俺は構わず金属バットを振り被る。

『私を信じて———』
そうレナが伝え、それでも俺は動きを止めない。

麻由は、断末魔を目前にして、泣いていた・・・。

『魅音・・・ッレナ・・・ッ』
『圭一ぃ・・・ッ!』
魅音とレナ、そして俺の姿を見て、麻由は幾筋もの涙を零した。
麻由の気持ちと想いが、痛いほど伝わってくる。


——貴方の腕が振り落とされる度に、涙と血を零れ落とす。

——身体が極寒のような寒さを覚えるけど、血が溢れ出る箇所は灼熱のように熱かった。
——痛みとはかけ離れた激痛が、私の身体を蝕む。

——目が冴えるような、凍てつく寒さと、灼熱の熱さ。
——それなのに、急激な眠気で、意識が遠のきそうな矛盾。

——・・・胸が疼いて、堪らない。

——貴方の瞳から零れた涙が、私の顔に降り掛かる。

・・・それでも。

——つきつけられた、残酷な日々・・・・。
——でも私は諦めない。
——いつか元に戻る。そう信じてる・・・。
——だから、私は頑張る。

——明日になっても、また笑いあえるように———。
——私は圭一が笑顔になれるように、頑張るから———。

こんなに俺を想ってくれて、激痛にも耐えているのに・・・!どうして俺はっ!

『・・圭・・一・・・』
精一杯の震えた声で俺を呼び、俺の手が一時的に止まる。
そして血塗れの足で、俺に歩みより・・・。
そして、バットを持つ俺の手を、優しく握った。


『圭一、———笑って』
——傷つき、血で汚れてしまった貴方の手を握り締める———。
——もうそれ以上、血で染まらないように———。
——ずっとこの手で、支えてるから———。

「——ッ!」
握り締めてくれた手は、信じられないほど温かい——。
なのにどうして俺は・・・信じられなかったんだよぉぉッ!

『大丈夫・・・。大丈夫だから・・・』
まるで小さい子を宥めるように、麻由は俺に笑い掛けてくれる。


『うわあああッ!!!』
俺は奇声を上げ、麻由の手を思い切り振り払う。
麻由は壁に激突して、咳き込む姿も見せない。

——心臓の周期的な鼓動が、先程より大きく聞こえる。
——先程の矛盾が生じて、目の前の惨状がおぼろげに見えてくる。
——周期が段々と遅くなっていることに気付き、悟った私は笑みを浮かべた。

・・・そうだ。麻由は、死ぬことを分かっていたじゃないか・・・。
それでも、身体を庇わずに・・・!


俺は大きくバットを振り上げると同時に、麻由の手が頬に添えられる。

——でも、最期にこれだけは貴方に伝えたい——。
『圭一』
——圭一の頬に手を伸ばし、涙で濡れた頬を撫でた。

『仲間でいてくれて、ありがとう———』
勢いよく振り落とされるバットと共に、麻由の微笑む姿が見えた・・・。

——振り落とされる金属バットと、貴方の悲願の顔を目前にして、私は笑った。
——突如、目の前が真っ暗になるような感覚を覚える。

——揺らいで見える貴方を見つめて、微笑んで瞳を閉じた———。
—— 一筋の涙を、右頬に流しながら———。

気付けよぉぉおおッ!!
魅音もレナも麻由もあんなに俺を助けようとしてくれてたッ!
3人は、信じ続けたんだッ!俺をッ!
それなのに、俺は信じられなかったんだ・・・!


今の2人は、あの時の俺と同じなんだ。
疑心暗鬼になって、何もかも信じられないんだ。

——じゃあ、俺は優羽も宏人も救う!
2人の気持ちを、絶対に変えて見せるッ!
あの日、梨花ちゃんの言った運命を変えて見せたように、また打ち破る!

俺は顔を上げ、2人を見据える。
俺の顔付が変わっていたことに、多少は顔を顰めた。


そして・・・。
途轍もない怒りの矛先が、俺達に向けられた・・・。

Re: ひぐらしのなく頃に 輝—第二期— ( No.5 )
日時: 2010/01/23 21:55
名前: マユ ◆vars8VB/bg (ID: oq0pGGOm)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=15454

         30、受け継ぐ意志

—圭一side—

グシュ・・・!

突如、俺の見る光景が、一体何を表わしているのか理解出来なかった。
感じるのは、不安・・・。
それを掻き立てるように、気味の悪い、何かが張り裂ける音が響いた。

何の音・・・・?
そう自分の頭で現状を解釈しようとした時、事態の深刻さが思考に刻まれた。
ボタボタと、真っ赤で鮮明な血が、レナの身体から滴り落ちる。
それは、優羽がレナの腹部に、鎌を突き立てた音だった・・・。

鎌を即座に抜き、レナは血を流しぐらりと傾く。
そして、流れのままに、地面へと倒れた。


「「レナぁぁああッ!」」
弾かれたようにレナに寄り添う。


「ぐ・・・ぅ・・ッ」
レナが唸り声を上げ、地面で縮こまる。

「ゆ・・うちゃ・・・ゲホッ!!」
激しく咽込むレナの口からは、幾筋もの血・・・。
途端、レナの吐息が聞こえ、絶命に徐々に近づいてることが分かった。


「うあぁああッ!!」
桃の叫び声が響き、忽ち振り返る。
桃は、右手を斧で攻撃され・・・血が沸くように溢れだしていた。

「どうしちゃったの優羽ちゃん!」
「・・・・優羽ッ!」
綾も桃も呼び止めるが、優羽の耳には届かない。


「レナさぁぁんっ!」
沙都子が必死にレナに呼び掛けていた。
その呼び掛けに応えるように、レナは軽く頷く。


「け・・いち・・・く・・」
俺の裾を掴み、必死に訴え掛ける。

「まぁ・・ちゃんも・・、優羽ちゃん・・達を、助け・・ようと!最期・・まで、手を差し・・のべたんだと・・思う・・!」
「・・・ッ!」
「だ・・か・・・ら・・」
スッと、俺の頬に手を添える。


「優羽ちゃんと宏人君を、よろしくね———」
優しい綺麗な発音だった。
最期に朗らかにレナが笑い、血塗れの手を下し、静かに瞼を閉じた・・・。


「・・・レナッ!」
魅音がレナの手を握り締め、止め処なく涙を零す。

「嘘だよ・・・。こんなの嘘だぁっ!優羽が麻由もレナも殺すなんて!」
魅音が頭を左右に降って、今という現状を拒絶する。
それでも、何も変わりようはない。

もう俺達の周りは、惨状と化していた・・・。


「・・・危ない梨花ッ!」
羽入が懸命に叫んだ。
宏人が、梨花ちゃんの後ろから、斧を振り上げていた・・・!

「梨花ぁっ!!」
「来ちゃ駄目よ!沙都子ぉッ!」
瞬時に沙都子が駆けより、梨花ちゃんを庇うと動く。
ぐっと梨花ちゃんを腕で包み、・・・沙都子の背中に斧が突き刺さった・・・。

「沙都子ぉぉぉおおおおッ!」
沙都子は梨花ちゃんから手を離すと、地面に力なく倒れた・・・。

「沙都子ぉぉおッ!」
「り・・か・・とは・・、もっと・・・一緒に・・・」
「嫌よ!沙都子ぉおッ!」
沙都子は、最後の力を振り絞り、梨花ちゃんの指輪に自分の指輪を当てる。
そして安心した表情で、ふっと意識を途切れさせた・・・。

親友の断末魔を見届け、梨花ちゃんは涙を零す。

その直後だった。


「「危ない・・・っ!」」
刹那、綾子と桃の声が聞こえ、俺は身体を突き飛ばされる。

・・・そして。


「綾!桃っ!」
目の前には、斧と鎌が突き刺さり、血塗れとなった綾子と桃の姿があった・・・。

「あれ・・・、私達、一緒に来たんだ・・・?」
「助けたいって・・・感じたからね・・。麻由ちゃんも、きっとそう思うよ・・・」
そして、泣き笑いを見せ、2人で朗らかに笑っていた。

「圭一君・・・」
綾子が俺を呼ぶと、小さく口を動かし、手を上げる。

「宜しく」
僅かながら、嗚咽が漏れた声だった。
涙を目に浮かべながら、しっかりと、俺の目を見て伝えた。

そして、手をパタリと地面に落とし、朗らかに笑った儘、目を閉じた———。


優羽と宏人が、俺達に向かって攻撃態勢を取っているのは明らかだった。
その状況を見て、魅音は俯く。

魅音は、血で汚れた片手にもう片手を添え、そっと撫でた。
まるで、愛しいものでも守るかのように・・・。

そして、決心がついた顔を見せると、俺の前に立ち上がった。

「魅音ッ!」
「・・・圭ちゃん」
俺が呼び止めると、魅音は顔を曇らせる。
・・・しかし、直ぐ俺に向き合い、振り向き際に言い残した。

「私、ちょっと行ってくるね」
ニコリと微笑む魅音が見えて、魅音は優羽の前へと駆けていく。
俺達を守るために、魅音は命を張って駆け出したのだ・・・!

「部長として、仲間として、しっかり守るよ」

「下らない。戯言だね」
優羽はそう吐き捨て、魅音に袈裟懸けに斬った・・・。
止め処なく溢れる血は止まらず、魅音は膝から落ちる・・・。

魅音は言葉を発すことなく、最期の最期に、笑った———。


「自分から死ぬなんて、馬鹿だね」
唇に付いた血を舐めながら、優羽は赤の雫が滴る鎌を、俺達に向けた。


仲間を守り、皆救う・・・。

———もう仲間を助けることに、一切の迷いなどなかった。

俺は、2人を助ける。
そう約束したから———。


遂に、俺にも魔の手が下される。

「へっ!判決は有罪・・・。仲間の変化に気付けなかった罪で死刑かよ・・・!」
半分おちゃらけて言うが、それは事実だった。
仲間の変化に全く気付けなかった自分に、反吐が出る。

宏人が俺に、ギラリと光る斧を見せた。
其処に映るのは、恐怖・・・!

宏人は鎌を振り上げる・・・。
瞬時に攻撃をかわそうと試みるが、俺の腹目掛けて攻撃を仕掛ける。
そして、俺がかわそうと身体を捻ると、腕に激痛が走った。

「ぐぁあッ!」
腹部に衝撃な程の熱が帯びる。
まるで釜茹でにされているような、例えようもない熱さ・・・。

・・・でも。

「このぉッ!」
「・・・・・!」
感覚さえ麻痺するような激痛に、俺は歯を食いしばる。


麻由は、そんなことでは挫けなかった。
レナは、こんな痛みでも止まらなかった。

俺は、2人の意志を受け継ぐと決めたんだ。


「・・・」
宏人はただ顔を歪め、再び
風を切り、宏人は俺に向かって斧を振り上げる。

血しぶきが舞い、俺の身体は血で彩られた。
痛くて痛くて堪らない・・・。
肺が苦しくて、呼吸もしづらかった。


ドサリと、近くで地面に何かを打ち付ける音が聞こえる。
それは、真っ赤に染まった梨花ちゃんと羽入の姿だった・・・。

「どうして、叫ばないの?」
「・・・」
2人を見下すように、優羽は視線を落とす。
そんな優羽を、羽入は冷酷な表情で見つめる。
「そんなの・・・」
優羽の問い掛けに答えたのは、梨花ちゃんだった。


「貴方達を救うと・・・、決めた人達がいるからに決まってるじゃない・・・・」
皮肉さを込めて梨花ちゃんが説く。
しかし、既に梨花ちゃんは、虫の息と化していた・・・。

其処で、優羽は笑みを零す。
唇が弧を描いた、なんて表現は合わない程、その表情は冷たい。
まさに冷笑だった。


「・・けい・・・いち・・」
「?!梨花ちゃん!!」
途切れ途切れ深い呼吸をする梨花ちゃん。
その規則正しい呼吸は、時期に不安定になっていく。

「戦った・・・皆のためにも・・、どうか・・・この惨劇を・・・終わらせてください・・・」
「圭一なら・・大丈夫・・・。頼みましたの・・で・・す・・・」
そっと、俺の手に力強い手が繋がれる。

「梨花ちゃんッ!羽入ッ!」
俺が呼び掛けた時には、もう2人の意識は無かった・・・。
その代わり、しっかりと手が握られ、それが応えとなっていた。


砂利を踏む音が聞こえ、俺は瞬時に振り向く。
しかし、斧の背の部分で、頭部を叩き割る程の衝撃が襲う・・・!

「がぁああ・・・ッ!」
途轍もない痛みで、堪らず叫んだ。

もう、全身に痛みが駆け廻り、俺は意識さえ遠のいていく。
激痛なんて、二文字で例えられる痛みではなかった。

それでも俺は2人に近づかなきゃならない。
麻由とレナと梨花ちゃん達、皆の意志を受け継ぐ為にも——。


「仲間なんて、軽々しく口にしないで」
これ以上立ち向かうなという忠告なのか、優羽は俺に言う。

「ただ皆が騒がしくそう言ってたから、私も従っただけのこと」
「違う・・・っ!」
俺は、震える声で否定した。


「優羽は嬉しかったはずだ・・・!」
幾筋もの涙が零れ落ち、ぐっと拳を握る。
信じて・・・、信じてほしかった。

身体が極寒のような寒さを覚えるけど、血が溢れ出る箇所は灼熱のように熱かった。
痛みとはかけ離れた激痛が、俺の身体を蝕む。

目が冴えるような、凍てつく寒さと、灼熱の熱さ。
それなのに、急激な睡魔で、意識が遠のきそうな矛盾。

灼熱を帯びた俺の身体は、血が内側から湧き出して、もう限界だった。


——それでも。

俺や2人を助けようとした麻由は、このくらいで負けなかったから———。
だから、俺も挫けない———。

皆の意志が、俺の力になる。

「目を覚ましてくれよ・・・!」
「・・・・・・」
「思い出してくれよ・・・っ!幸せだった、あの日々をッ!」
俺は声を荒げて訴え掛ける。

「「・・・・」」
優羽と宏人の額に、僅かながら皺が寄る。
それは、苦悩と揺らぎを表していると、信じたかった・・・。

そんな俺に、鬼のような形相で武器を振るった。
「・・・ッ!」
袈裟懸けに斬られ、真新しい鮮血が、偏口から溢れ出る。
既に俺は、声を出すことさえ困難な程に、意識が遠のきつつあった。


俺は宏人と優羽に歩み寄る。
隙を見て間合いを詰める2人に、俺は言葉を掛ける。

互いが、信じあえるように・・・。

「俺達は、いつまでも———」

「優羽も宏人もそうだ。麻由だって!レナだって!皆皆ッ!」

優羽が俺目掛けて鎌をゆっくりと振り上げる。
それでも、俺は構わなかった・・・。


「俺のかけがえのない——仲間だ———」


風を切る音が聞こえ、急に周りの景色が朧げになる。

・・・俺は、死ぬんだな。
それを理解することに、大して時間は掛からなかった。


ごめんな麻由、レナ、梨花ちゃん。
俺、2人を止められなかったよ。
仲間だって言ったのにな・・・。

ごめん・・・。

そして、意識が途絶える直後、風景が変わる。
真っ白の世界に、3人の姿があった——。

——圭一
——圭一君
——圭一

麻由、レナ、梨花ちゃん・・・。

——ありがとう

皆が仲間と共に笑った気がして、俺も微笑む。

もう眠ろう。
明日もまた笑って皆を迎えられるように———。

そして、ゆっくりと、瞼を閉じた———。


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