二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- イナズマイレブン 新日本代表選手
- 日時: 2010/08/09 11:41
- 名前: 吉瀬 来駕 (ID: TmxFvEgG)
オリジナルの、かなり暴走するやつです。
暗い部分が入る予定なので、もし駄目な人がいたら読むのはちょっと・・・。そこまで読むもんじゃないし・・・。
一人称が変わったり、話ごっちゃになったり、試合全くしなかったりアニメや漫画と全然違うものになること確実なので、それでもいいという人だけ・・・。お願いします。
あ、それとオリキャラが出てきます。プロローグとかも一切ナシのダラダラです。それでよければ、目を通してやってください。めちゃくちゃですけど。
真面目に頑張ってやろうっと。
- Re: イナズマイレブン 新日本代表選手 ( No.9 )
- 日時: 2010/08/17 11:20
- 名前: 吉瀬 来駕 (ID: TmxFvEgG)
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負けるものかと、逆に円堂は意気込んだ。
「春已!」
昼食中である。
春已はビクリと身体を硬直させ、「な、なにか・・・?」と訝しげに問う。
「いっしょにご飯食べようぜぇ!」
「え・・・あの、その・・・」
戸惑いながら、春已は小さく頷いた。円堂がその隣りに座る。
「うまいな、このご飯!」
「・・・・・・」
「おいしー!」
「・・・・・・」
「おかわり!」
「・・・・・・」
とてつもなく気まずい昼食だ。
春已はほとんど食事に手をつけなかった。
円堂の高いテンションも、なんだか逆にしらけてしまう。
「・・・ごちそうさま」
トレイを片づけて、春已はそのままどこかへ行ってしまった。
食後は、一時間の休憩になっている。
どこかへ出かけるのかと、悪いと思いながらも円堂は残りの食事を掻き込み後をつけた。
「俺も行く」
鬼道と豪炎寺、風丸もそれについてきた。
春已は宿福を出ていく。
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- Re: イナズマイレブン 新日本代表選手 ( No.10 )
- 日時: 2010/08/19 10:49
- 名前: 吉瀬 来駕 (ID: TmxFvEgG)
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春已が向かったのは、円堂達と最初に出会ったあの公園だった。
物陰に隠れて怪しまれながら、円堂達も後をつける。
「とんでもないことをしている気がするんだが・・・」
鬼道と豪炎寺から視線を受け、「いや、あんたらもしてんじゃん」と思うが黙っておいた。
春已は円堂達に全く気づかず、隅にあったベンチに座った。
しばらくして、黒髪の少年、邑楽が現れた。
「やっほー、お久〜。っていうか、二日、せいぜい三日だよな?」
「四日、っていう設定になってると思う」
その会話は、イナズマジャパンのメンバー達とでは交わされたことのないものだった。春已はリラックスしたように、邑楽と話す。
「あぁ・・・やっぱり、オレ達とじゃ違う・・・」
ずぅん、と円堂は沈み込んだ。だが、ちゃっかりベンチの後ろにある花壇に隠れ、耳を澄ます。
「んで?どうしたんだよ、春已」
「う、うん。あのね・・・」
会話はばっちり聞こえてきた。
ベンチに座った邑楽に、春已は突然今にも泣きそうな顔を上げて、
「うわああああああああああああん!!!」
泣き始めた。
「うおっ、ちょ、待て待てぃっ」
抱きついてくるので、邑楽もさすがに周りの目のことを考えて引き剥がそうとする・・・が、なんといっても春已は妹、あ、いや弟分だし、こう素直に泣かれてしまったらなんだかそれも可哀想になってくる。
円堂達もぎょっとしてしまったが、飛び出したら全てがパーになると思い更に耳をとぎすました。
しばらくして春已が落ち着いたところで、
「い、いいか、春已。別に怒ってるわけじゃねえよ?だがな、春已は正直いってだなぁ、その・・・」
と、邑楽は春已を引き剥がして言い聞かせる。顔が真っ赤だった。
「その・・・、春已はちょっとばかし女に見えるからな、だから・・・」
そう。周りから見れば、「男の子が女の子を泣かしている」という構図になり、しかもベンチに2人だけで腰掛けているというシチュエーションではどう見ても、こ、こここ恋人っぽく・・・。
「あー!もう、とにかく落ち着いたな?」
乱暴に自分の考えを追い払う。春已が涙を指で拭いながら、
「うん・・・ごめんね」
と、これまた可愛い女子っぽく言ってくるので言葉にできないっ・・・!
ひとつ咳払いしてから、邑楽は「それで、どうしたんだよ」と訊いてみた。
すると、春已は一気に落ち込んだように下を見る。
「お、邑楽君、わ、私ね・・・や、やっぱり・・・」
しゃっくりしながら、懸命に言葉を紡いだ。
「もう、無理だよ・・・」
「早っ!」
邑楽は驚いた。早いっていうか、マッハじゃん!四日しか経ってないんだぞ?
円堂はこれを聞いてとどめの一撃を受ける。
「グハッ」
「円堂、死ぬな」
豪炎寺が慰めてくれるが、キャプテン・ハートはずたずただ。
「・・・んで?なんで駄目なんだ?」
「駄目っていうか・・・」
春已はポツリポツリと話し始めた。
「キャプテンも、他の選手さん達も、とっても優しいよ・・・」
円堂がその台詞に若干回復する。
「で、でも、私・・・怖いの、もう無理だよ・・・」
声が震えた。
邑楽はその理由を知っている。春已は怖いのだ。
人が。
「私・・・がんばって、やろうとしたの・・・キャプテンも、明るい人で、ちょっとドジなところもあるけどいい人だよ。・・・でも、私が逃げちゃうの。“あの人”のことを、思い出す・・・せっかく、邑楽君が応援してくれたのに、ごめんなさい」
また、春已の目からポロポロと涙がこぼれ始めた。
邑楽は春已から目をそらし、公園で遊んでいる子供達を見た。だが、その瞳は違うところを見つめている。
「なぁ、春已」
しばらくして、邑楽は明るく春已に声をかけた。
「あと一週間だ、それだけでもやってみろよ」
「・・・・・・?」
「一週間。それ以上はやらなくてもいい。一週間だけ、イナズマジャパンにいてくれよ」
一週間。
邑楽はその言葉を繰り返した。春已は考え込む。逃げられるのなら、逃げたかった。邑楽以外の人といることは痛みだ。怖い。
だけど、邑楽の台詞には何か強い響きがあった。
やってみてもいいかもしれない。
どうせ一週間だし、と自分に暗示をかけるように呟く。
「・・・うん。わかった」
「よぅし、じゃあ、頑張れよ」
邑楽はさらっと告げると、立ち上がって公園から出ていった。
春已も、来た時より少し晴れ晴れとした気持ちで出ていく。
会話を全部聞いていた円堂達は、休憩時間が少なくなっていることにも気づかず、呆然としていた。キャプテン失格だぁあああ、と円堂は思う。春已の気持ちがわからなかった。あれだけ思い詰めていたとは、わからなかった。
豪炎寺や鬼道もそれぞれの思いに沈んでいる。
その時、
「よぉ、ストーカーさん!」
邑楽が目の前にいた。
「うぉわああああああ!!?」
驚いて飛び上がる円堂達に、
「まぁまぁ、別にいいじゃねえか。ストーカー。うん、いい響き」
訳知り顔で、頷きながら「んで、お前ら」と声音を変えて詰め寄る。
「会話、全部聞いてたんだよな?」
否定できない。
「それじゃ、春已が今どういう状態なのかも知ってるよな?」
肯定できる。
「チームメイトだよな?」
はっきりとうなずける。
「・・・春已のこと、頼むな。期限は一週間だから」
そして、今度こそ去っていった。
混乱していたのは一瞬で、円堂達はすぐに「邑楽が仕組んだ」ということに気づいた。きっと、最初から円堂達が潜んでいたのを知っていたのだろう。
円堂は、今すべきことを見つけた。
どうにかして、春已を助けなければならない。
「よし!みんな帰るぞ!」
意気込んだ時、
「おい、休憩時間、すぎてるぞ」
「・・・・・・え?」
帰ったら問答無用で怒られた。
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- Re: イナズマイレブン 新日本代表選手 ( No.11 )
- 日時: 2010/08/22 11:31
- 名前: 吉瀬 来駕 (ID: TmxFvEgG)
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春已をどうにかしたいとは思っているものの、円堂にはこれ以上どうすればいいのかわからなかった。
春已は、もう一週間耐えることができるのなら・・・と、円堂達と完璧に関わることをやめている。
ショック。
ずしぃん、と落ち込んでしまう円堂だったが、風丸や鬼道や豪炎寺達の助けもあり、どうにか前向きな姿勢になっていた。
だが。
1日目は、試合。アルゼンチン戦だった。
2日目。ジ・エンパイアに敗れたものの、そのおかげでより絆が強まったイナズマジャパン。吹雪が帰ってきて、冬花が倒れ・・・円堂は春已とあまり喋る機会もなかった。
3日目。
変化はその時起こった。
一人の人物が無表情で、宿福の前にいた。
歳は18。青い髪に、黒い瞳を持っている。じっ、と宿福を見つめていたその青年は、恣意音夏已といった。
今、イナズマジャパンは練習中で宿福にはいない。
そのことを知らない夏已は、宿福の扉に手をかける。
「・・・どちら様ですか?」
その手が止まったのは、音無からかけられた声のせいだった。
振り向くと、音無が首を傾げながら警戒心のない顔でこちらを見ている。
「・・・・・・・・・・・・」
夏已は睨むように音無を見、
「・・・春已の、兄だ」
と冷たい声で答えた。
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- Re: イナズマイレブン 新日本代表選手 ( No.12 )
- 日時: 2010/08/23 12:27
- 名前: 吉瀬 来駕 (ID: TmxFvEgG)
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練習が終わり、イナズマジャパンのメンバー達は宿福に戻ってきた。
今日も春已との距離が縮まらなかったなぁ、という思いは、間柄を知らない他人から見れば恋愛っぽく見えるのだが、そういうわけでは決してない。
木野は、音無がスポーツドリンクを補給しに行き、戻ってこなかったのを心配していた。
「あっ、先輩!」
その音無は、元気良く帰ってきた木野達に声をかけ、
「あのですね、咲禰さんのお兄さん、っていう人が来たんですよ」
「・・・え?」
春已が小さく声をあげた。
「邑楽か?」
円堂が無邪気に尋ねる。兄貴分の邑楽なら、兄と名乗ってもおかしくはない。
「おうら?誰ですか、それ」
だが、邑楽を知らない音無は首を傾げる。「あ、そうだった」と円堂は頭を掻き、
「それで、どこにいるんだ?」
「食堂に。待っててもらってますよ」
靴を脱ぎ捨てた円堂は、食堂に走っていった。木野の口うるさく言う声が聞こえるが、無視する。
しかし、食堂にいたのは邑楽ではなかった。
夏已である。
「・・・?」
見覚えのない顔に、円堂が戸惑う。
そのすぐ後、春已が食堂に入ってきて夏已を見た。
「っ!」
夏已の冷たい目が、春已を捕らえる。
「・・・・・・なん、で」
春已の顔に、恐怖が浮かぶ。
「・・・なんで、」
次の瞬間、濁流のように記憶が蘇ってきた。封印していた記憶が、痛みを引き起こし過去へと自分をさらっていく。
痛み。
春已の意識は、そこで途切れた。
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- Re: イナズマイレブン 新日本代表選手 ( No.13 )
- 日時: 2010/08/30 09:42
- 名前: 吉瀬 来駕 (ID: TmxFvEgG)
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常に、自分は痛みといっしょだった。すぐ近くにいるのが痛みで、ずっとずっと、痛みが友達だった。
記憶の中には、痛みしかない。だけど、邑楽と出会ってから、邑楽の仲間と出会ってから、きっと痛みのことを忘れていた。そう。自分が痛みから逃れられるはずなんて、なかったんだ。
「お前のせいだ」
と、母さんは言った。それから、何度も何度も叩いたり殴ったり蹴ったりして、痛かったけど、でもそれが日常だったから苦しくなかったし、当たり前だと思っていた。
何年も何年もそうしていたから、それが普通だと思っていた。
だけど、違うんだよと教えられた。保護されたんだよ、とその人は言った。もう怖がらなくてもいいんだよと、温かい手で頭を撫でてくれた。
それから、邑楽に「お前が、オレの弟だ」って言われて、その瞬間から母さんのことも忘れた。
でも、違う。忘れてなんかいないし、逆にそれは恐怖となっていつまでも付きまとう。
戻ってしまうのが、恐かった。邑楽達以外の人は信用できなかった。いつ傷つけられるのかと思うと、母さんのことを思いだしてしまう。
それは、兄さんだって同じだった。
邑楽のお母さん、つまり、自分の新しいお母さんがずいぶん経ってから教えてくれたこと。
前の母さんは離婚して、母さんは自分を引き取って、父さんは兄を引き取った。まだ自分に兄弟・・・邑楽とは違う意味の、血の繋がった兄弟がいることを知った。
一回だけあったことがあるはずよ、とお母さんは言った。
入院していた時、微かな記憶だけど、母さんにそっくりな人を見て泣きじゃくったことがある。男の人だったけれど、母さんのように冷たい目をしていて、母さんのように青い髪をしていて、母さんのように自分を見ていたように思う。
恐い。
痛い。
恐怖と苦痛と。
逃げられないのか。
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