二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ヴィンテルドロップ
日時: 2012/08/04 20:31
名前: めた (ID: UcmONG3e)

さあおいで。

昔話をしてあげる。

だれも知らないお話だよ。

それは冬の終わりのお話だよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お母さんお話して!」

というと、ほとんどの親はこのお話しをする。

ヴィンテル王国の一番有名なお話にして、実話とされている不思議な話。

このヴィンテル王国を建国した女王様のお話である。

『冬の厳しい気候を持つヴィンテル王国。
 建国したときからどの季節もふゆでした。
 なので、冬と言う名をイリジウム女王はつけました。
 そんなある日、イリジウム女王が谷を歩いていると、
 真上で太陽と月が喧嘩した。
 それまでは月と太陽は一つで、交互に夜と昼とを照らしていました。
 けれど、このときからばらばらになりました。
 そのとき、しずくが一つイリギウム女王めがけて落ちてきました。
 うけとると、それは太陽と月の涙でした。
 片面は静かに燃える月の、もう片面は激しく燃える太陽の涙。
 女王がそれをなでると、たちまち虹色の宝石となり王国の雪は解けて
 冬は消え去りました。
 そして3つの季節が出来上がったのです。』

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Re: ヴィンテルドロップ ( No.85 )
日時: 2013/04/05 01:18
名前: めた (ID: FY5Qqjua)

「クローロスから手紙だ」

季節に関する研究をしていたブランドの元に鳩がたずねてきたので慌てて窓から招き入れる。

その鳩はカラスのように黒い模様の鳩で、人なれしている気の良い鳩らしく、フレンドリーに肩の上にちょこんと座った。

ブランドはポケットにあった胡桃を苦労して割り、それを報酬として鳩から手紙を受け取った。

肩の上でもぐもぐ胡桃を食らう鳩を気にせず、ピッケルにはまっていたアルミのサッシを引き抜き、小さな手紙を読む。

どうやら元気らしく、ホットため息をつくブランド。

だが読み進めるうちに眉根が自然とよって来る。

「ほんの数時間前に、暗殺者に襲われただって?!なんだそれ!!」

すぐさま妹の元へ駆けつけるつもりで手紙の最後を簡単に読み流す。

だがそこに、暗殺者は監禁されて、自分は今旅団の真の本部にいて、厳重に守ってもらっている、と書かれていた。

そしてこれからは簡単に手紙が出せないことと、身体に気をつけるようにと書いてあった。

本部が何処だかわからず、いらいらと研究室の中を歩き回ったブランドは、黒い鳩を引っつかみ、不安をぬぐうように撫でた。

鳩は気持ちよさそうに瞳を閉じて大人しくしている。

「大丈夫かな、クローロス・・・僕も傍についていてあげたいのに」

真の本部がどこかわからない。

手紙もコレきりこないと覚悟した方がよい。

この鳩を返したら、もう連絡手段は途絶えるということになる。

ならば・・・とブランドは黒い鳩を見つめた。

黒い鳩も見つめ返してくる。

ブランドは目を細め、口元に優しげな笑みを浮かべた。

だが、鳩は怯えたように羽毛を逆立てた。


Re: ヴィンテルドロップ ( No.86 )
日時: 2013/04/19 19:09
名前: めた (ID: 8.g3rq.8)

クローロスは不安げにソファの上に座っていた。

本部にたどりつき、閉鎖空間のコンクリート固めの一室で、かすかに震えている。

ウウィントはそんなクローロスを見て、首をかしげる。

「寒い?」

だがふるふると彼女は首を振る。寒くはないのだという。

だだ、酷く心細げにソファに一掃身をちぢ込めた。

「返事が来ないのです」

「あぁ—大学で研究中の三男か」

ウウィントがなるほどと納得すると、クローロスがゆっくりと頷く。

唯一といって良いほど、クローロスの身を案じる肉親なのだ。

他の兄と母親は次期女王という身分でしか彼女を見ていない。

クローロスの心の支えの兄は、いまや遠いところにいる。

その返事は少なからずクローロスを励まし、遠く離れていても元気付けてくれたのだが—あれほど絶え間なく送り返してきた手紙が、ぱたりと途絶えた。

自分が暗殺者に襲われたことと、何か関係があるのではないか?

ブランド兄さんはもしや暗殺団に捕まってしまって・・・?

「兄さん・・・」

皮製のソファに体操座りしていたクローロスは、か細くつぶやいた。

Re: ヴィンテルドロップ ( No.87 )
日時: 2013/05/11 11:26
名前: めた (ID: 9KPhlV9z)

「あの宝石は山脈のずっと奥、極寒の地にあるよ」

そう確かにあの青年は言った。イオーデスは体中に力がみなぎるのを感じた。

あの宝石は始祖の大切な宝。娘の命よりもよっぽど大切な一品。
挿げ替えの効かぬ、どんなものより大切なもの。

イオーデスはすっと立ち上がると、部屋を出た。

故イリジウム—始祖の使っていた代々女王が住まう部屋を出ると、そのまま世界地図のある倉庫へ向かう。

くらくかび臭い印象の部屋だが、必要な情報はここですべて補充できる。

ランタンを掲げて探し出した世界地図をすぐに広げて、極寒の地を指で追う。

山脈の向こう側、極寒の地・・・。

傍聴用の地図であるこの世界地図には、普通の地図には載っていないものまで書いてある。

指の下には、はっきりと書かれている。

赤の盗賊団兼暗殺団本部。

「あらあら、いまどき珍しい子だこと」

ふっと頬をほころばせた女王は笑みを浮かべる。

「わたくしがウソをついているかもしれないのに、こんなやすやすと本部のことを教えてしまうなんて・・・まるで潰してほしいみたいじゃない」

微笑んだ女王は、もとより回転の速い頭脳をさらにフル回転させた。

「暗殺団ねぇ・・・そうねぇ・・・」

凶暴な笑みを浮かべた女王は、その地図の緯度と経度を地図の切れ端に書き込み、そこをちぎった。

そしてそのメモを携えて、ある部屋に足をはこぶ。

自分が産み落とした、息子達の居る部屋へ。

Re: ヴィンテルドロップ ( No.88 )
日時: 2013/06/01 16:26
名前: めた (ID: 9KPhlV9z)

「おい、ブランド—あれ?」

調べてほしいと頼まれた季節についてのレポートがまとめ終わったので、大学生の友人が彼の研究室を訪ねるが、彼は居ない。

おっかしいな、と友人は頭をかき、部屋を後にする。

もっと良く部屋に入り調べたら、床中にはとの羽毛が散っているのと、少ない荷物が少し消えていることに気づいただろう。

その日、夜になってやっと、ブランドの行方が消えたことが大学に知れ渡った。


「そうだ、妹さんがいたはずなんだけど・・・行方を知っているかもしれない」

ブランドの友人が部屋中をくまなく探して、妹の所在を調べる。

ブランドがたまに妹から手紙が来たと喜んでいるのお目にしたことがあるからだ。

その住所に尋ねれば、ブランドの居場所を知ることが出来るかもしれない。

Re: ヴィンテルドロップ ( No.89 )
日時: 2013/06/19 17:48
名前: めた (ID: TZiA0BVR)

ブランドの友人はさっそく手紙を探し始め、研究材料や分厚い書物たちを押しのけて、その下に眠る一通の書きかけの手紙を見つけた。

それはブランドが書いたもので、宛先は妹の居るであろう地名がかかれていた。

幸い、それはここからあまり遠くないところで、まぁ名の知れた地区である。

「手紙を出さずに消えたなんて・・・妹さんも心配してるだろうな。いや、緊急の用事でもできたのかも?」

何かヒントがあるかもしれないと、友人は書きかけの手紙に目を通した。

そこには今の研究内容の進み具合と、奉公先で何か困ったことは無いかと心配する内容ばかりだった。

妹思いだなと感心して手紙を読むのをやめようと思ったのだが、ある決定的に異常な一文を見つけて体がかたまった。

”兄さん達が、暗殺者を送ることがないといいんだけど、もしものときは奉公先の人に頼りなさい。僕もすぐに駆けつけるから”

その先はだいぶ余白が余っており、何か書く予定だったのだろうが・・・それよりも。

「暗殺者って・・・え。もしものときは駆けつけるって事は、ブランドの妹さんに何かあって・・・?」


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