二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.1 )
- 日時: 2009/12/04 18:09
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: 0inH87yX)
- Memory1 必然の出会い 
 「待って、行かないで! 私は嫌だ!」
 喉の奥から、私は搾り出すように声を出した。誰かが離れていく。同じ場所へ行くはずだった誰かが、離れていく。真珠のような涙がなぜか溢れてくる。目が水道のの蛇口になってしまったみたいだ。もう、止める事なんて出来ないくらいに。
 私から離れていく誰かが大声で叫んだ。必死に聞こうとしたけど、よくわからない雑音が混じって聞こえない。声は、鳴き声のようにも聞こえる。
 ピィィィ———ン!!
 耳を貫くような音が聞こえ、私の視界は暗くなっていった。
 *
 ザザザザァァァァン……
 美しい波の音が聞こえる。私はどうやら寝込んでいるらしい。起きようと、瞼を動かしたが開かなかった。体が重い。体を少し動かすと、砂がこすれあうような音が聞こえた。私が寝ているのは、砂の上?
 しかも、体がモコモコしているような気がする……。でも、私は気にせず、気づかないうちにまた眠りについた。
 ———————
 「ねえ、君ー君ー。大丈夫?」
 女の子の声が聞こえた。ちょっと弱虫そうな、おとなしい声だった。
 「ん……、なあに……」
 私は硬い体を動かして、やっと起き上がった。そして、目を開けると、ミニリュウが私を覗き込んでいる。ミニリュウは、小さな竜の体をしている。美しい青と薄紫の混ざった色の体だ。耳は小さな羽根の形をしていて、目はビー玉のように可愛らしい。
 おかしいな。人間の私からしてみれば、ミニリュウなんてとっても小さいはずなのに、今は自分と大して大きさが変わらないような気がする。
 「よかったあ。君、ここで倒れていたんだよ。私、すっごくびっくりしちゃった。アハハ」
 ……と、しゃべったのはミニリュウだった。おかしい。私は夢でも見ているのかな?
 「アンタ、ポケモン? コスプレでもしているの?」
 私は焦る自分の気持ちを抑えるように、わざとふざけて言った。すると、ミニリュウはクスリと笑う。
 「コスプレってなあに? 私は正真正銘、ポケモンのミニリュウだよ。君だってポケモンのメリープなのに、変なの」
 「違うよ。私は立派な人間だ……もん」
 言いながら、自分の体を見て、天と地がひっくり返ったような気分になった。驚いて、声も出ない。
 体が綿飴のようなふわふわな体だ。しかも、二本足ではなく、四本足で立っている。体にキュッと力を入れると、自分が電球になったかのように電気が放出された。お尻の方に、違和感があると思ったら、尻尾まである。
 「この体は……本当にメリープだ……。どうしよう、私、人間だったのに……」
 思わず涙ぐむ。ミニリュウは、心配そうに尻尾をくねくねと動かした。
 「人間? 本当に? いつからポケモンになったの? どうしてここに来たの?」
 このミニリュウ、質問魔だなーと思いながら、私は過去を思い出そうとした。けれど、頭の思い出のページは真っ白。何も書かれていない。書かれているのは、自分が人間であったことと、自分の名前……。
 「私、思い出せない」
 私は頭を抱え込もうとした。だけど、手が短くて出来ない。ミニリュウは、うーんとうなると、思いついたように聞いた。
 「じゃあさ、名前は? 名前はなんていうの?」
 「私の名前……」
 私の名前は美沙(みさ)。そして、あだ名がミーシャだったっような気がする。
 「私は、みさ。ミーシャって呼んで」
 「みさ? ミーシャ? なんかいい名前だね」
 ミニリュウは微笑みながら、私をじっと見つめた。そして、思いつめるように海を眺める。
 〜つづく〜
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.2 )
- 日時: 2009/12/01 20:46
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: WCufagws)
- 「ミーシャと出会って、気持ちがスッキリした。ありがとう」 
 ミニリュウは海を涙目で眺めながら言うと、何かをそっと取り出した。そして、夕焼け空に掲げる。
 何しているんだろう、と思っていると空が朱色に染まり、夕日が海を輝かせた。海に金色の九弱が羽を広げた姿が映ったように見えた。
 私がすごいなあと思っていると、風が吹いた。その風がミニリュウの掲げた何かを連れさらい、海に投げる。
 「ちょ、ちょっと。あれは何?」
 なぜだか許せないような変な気持ちになって、私は聞いた。ミニリュウは苦笑いをしてこっちを見る。
 やっぱり涙目だ。あれは、大事な物に違いない。
 「あれは、ギルドへ入るための許可証だったんだ」
 「ギルド?」
 私が裏返った声で訪ねるとミニリュウはうん、とうなずいた。横顔が悲しげに見える。
 「ギルドはね、一人前の探検隊になるために修行をする所なんだ。私、ずっと前から探検隊になりたかったの。冒険とか、そういうの大好きだから。だから、頑張ってギルドに行って、試験を受けて、許可証をもらったんだけど……。私、弱虫だから、許可証をもらったとたん、一人じゃ怖くなって逃げ出しちゃった」
 「に、逃げ出したって……」
 「うん。逃げ出した後にこの海岸に来て、会ったのがミーシャ。明るくて、ちょっと不思議なミーシャをを見ていたらスッキリした。だから、許可証は捨てたの。どうせ、私みたいなポケモン、無理だから。こんな私がギルドに入門しようなんて、千年早いよね」
 そう言って、ミニリュウはにっこり笑った。
 どうして、あんなにニッコリしていられるんだろう。ずっと前から探検隊になりたいという夢を、持っていたのに。いまさら捨てるなんて……。
 「その許可証って、どういう物なの?」
 私が聞くとミニリュウはビクッとした。
 「どういう物って……。小さな石に、プクリンの絵が書いてあるのが許可証だけど……」
 「わかった」
 私は言うと、即座に海にジャブジャブ入った。やっぱりポケモンの姿は泳ぎにくく歩きにくいけれど、ミニリュウのために。
 初めて会ったポケモンだけど。ついさっき知り合ったポケモンだけど。自ら夢を捨てるなんて、私は嫌だ。
 〜つづく〜
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.3 )
- 日時: 2009/12/01 20:46
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: WCufagws)
- 「ミーシャ! 何してるの? もういいよ」 
 ミニリュウが私の後を追いかけて来る。
 でも、私は動きにくい体を動かして必死に許可証を探し回った。人間なら、このくらいの水の深さなんて、踝くらいまでなのに、メリープになったからもう体の半分が水に浸かっている。
 ゴボッ……!
 急に底が深くなって、必死だった私は水に飲まれた。水が私をぎゅっぎゅっと強く包む。息が出来ない。苦しい。苦しいけれど、許可証を探すんだ。私がポケモンになって、初めて会って、まだ信用できるってわけじゃないけれど、ほうっておけない。
 水の中で何か光るものが見つかった。見ると、プクリンの絵が刻まれた石だ。これだ! 許可証を見つけた!
 「ミーシャ!」
 水の中でも平気なミニリュウが、スイスイと体をクネクネさせて泳いできた。そして、私を水から救う。
 「お願い。あきらめないで。だって、まだギルドに弟子入りをして失敗したわけじゃあないんでしょう? やる前からあきらめるなんて、絶対ダメ、ダメだから!」
 「ミーシャ……。ありがとう、ありがとう」
 ミニリュウは目をうるうるさせてそう言うと、石を大事そうに受け取った。やっぱり、あきらめたくはなかったんだ。探してよかった、と私は思う。
 「不思議だね。初めて会ったのに、こんなにもミニリュウの事を気にするなんて。でも、あきらめてほしくなかったんだ」
 私はそう言って、ポケモン世界に来てから一番最初の飛び切りの笑顔を見せた。ミニリュウもつられるように笑って、それからはっとする。
 「ミーシャに会ってよかった。自分の夢を捨てないでよかったって、思えたから。私、ミーシャは人間だった時もすごく、いい人だったんだと思う。ミーシャに会ったから、夢を捨てないで済んだ。だからね、私といっしょに探検隊をやってくれないかな?」
 「え……。でも……」
 私は突然のミニリュウの言葉に声を詰まらせた。
 ニリュウはとってもいいポケモンだ。それは私が、よく知っている。でも、私は人間だった。
 「でも、私は人間だから……。どうして、ポケモンになったのか、調べなくちゃ」
 「人間にやっぱり、戻りたい? どうやって調べるの?」
 「うーん……」
 確かにどうやって調べればいいんだろう。ミニリュウの他に、知っているポケモンはいない。もう選択肢は一つしかない。
 「わかった。私、探検隊をやってみるよ」
 「ほ、本当?」
 ミニリュウは瞳をキラキラさせた。二つの瞳は、希望の詰まった宝石のようだ。
 「ありがとう。ありがとう。じゃあ、まずはギルドの親方の所へ行こうよ」
 「親方?」
 私が問い返すと、ミニリュウは許可証をバーンと見せる。
 「この石に書いてあるプクリンが親方だよ。すっごく、おっかないって話だけど……。だけど、もしかしたらミーシャが人間になったこととか、何か知っているかもしれない」
 「本当?」
 「多分ね。じゃあ行こう!」
 ミニリュウはそう言うと、海を背にして歩き出した。
 私もなれない足取りで歩く。足元の砂がシャリシャリと音を立てた。
 人間の頃の事は何も覚えていないけど、今をしっかり生きよう、と私は強く思った。
 ———これから、このミニリュウが大切な物を気づかせてくれるとも知らずに。
 〜Memory1終了〜
