二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師 *二人の旅* ( No.1 )
- 日時: 2009/12/14 21:48
- 名前: 瑠美可 ◆rbfwpZl7v6 (ID: fMybl0cm)
- プロローグ 
 真っ白だった。上も、下も、右も、左も。どこを見ても、何も見えない。ただ白としか表現できない空間だ。
 その空間の中央に、一人の少女が佇んでいた。
 年の頃は十代の前半。黄色と白のチェック柄のパジャマを着ている。眠っているのか、眉は閉じられたままだ。そして肩にかかる程の桜色の髪が、あちこちはねてしまっている。朝起きたばかりの人のようだ。
 「……」
 少女の顔がコクンコクン、と上下に揺れる。どうやら本当に眠っているらしい。しかし立ったまま眠れる、と言うのはある意味ですごい。
 「ん」
 その時、少女の眉間がかすかに動いた。ゆっくりとその眉が重そうに開かれる。眉が完全に開かれると、意志の強そうな金色の瞳が現れた。現れた途端、金の瞳に戸惑いの色が浮かぶ。
 「ど、どこ! ここ!?」
 少女は辺りをキョロキョロと見渡しながら、叫んだ。しかし、見えるのは何もない空間だけである。
 「ゆ、夢! 夢に決まっているじゃん」
 少女はそう自分に言い聞かせる。そして、両手で自分の頬を思いっきり引っ張った。かなり力を込めているらしく、手が少し震えている。
 「ひ、ひはい」
 痛みは現実のものだったらしい。少女の顔が少々歪んだ。その後、さっと頬から両手を離した。
 「う、そ……なんで? これって夢じゃないわけ?」
 少女が呟く。
 「そう。ゆめじゃない」
 その問いに答えるように、声が響いた。透き通っているかなり高い声。
 直接語りかけているのではなく、空気全体を使って伝えているような不思議な声だった。
 「だ、誰!?」
 辺りには誰もいない。人の気配はおろか、何かがいそうな感じすら感じることはできない。
 「みえなくていいの」
 声は落ち着いた口調で言う。言っている意味がよくわからず、少女は声に尋ねる。
 「何で・・・何でよ。どうして『見えなくて』いいの?」
 数秒、沈黙が流れた。声は何を考えているのだろう。目の前に相手が居ないので、表情を伺うことはできない。携帯で話しているときのようだ。声の調子だけが、相手の機嫌を感じられる手がかり。いつもより、余計に神経を使う。
 「今、教えるわ」
 声がポツリと答えた。その刹那。
 「!?」
 少女は、両手首を捕まれるのをはっきりと感じた。人間の手によって捕まれた感覚だった。
 しかし、自分を握っているはずの相手は目の前にいない。ただ白いだけ。透明人間が、目の前にいると言うのだろうか。
 手首の拘束から逃げようと、少女は手に思いっきり力を込めた。そして自分の方に手を引っ張る。
 しかし握られる力はかなり強く、抜け出すことができない。握る力が強くなっていく。手首の痛みも強くなっていき、手首は赤く染まり始めていた。
 「な、なにすんの・・・・・・」
 少女は搾り出すような声で、握っている相手に言った。見えないが、さっきの声の主だろう。
 「たすけてほしいの」
 面をくらい、少女は非難の声をあげる。
 「なんであんたを! それより離してったらぁ!?」
 最後だけ、語尾が上がった。突然足下の感覚が無くなったからだ。床に立っていたはずなのに、それがない。
 足を見やると、足は垂れ下がっていた。本当に床が抜け落ちたらしいことを悟る。
 同時に腕を捕まれていることで、助かっていると言うことも。
 「たすけて。あのせかいを。じゅんびはしてあげるから」
 「どういうことよ!」
 しかし、答えはなかった。今度は動物が唸るような、低い音が聞こえてきた。そして辺りが急に寒くなり始める。
 「さむっ・・・・・・」
 少女は身を震わせた。パジャマは夏用で素材が薄い。冬のような気温では、寒すぎるのだ。
 その時、冷たい空気が自分を撫でていくことに気づく。ぼさぼさの髪が、右に流れていこうとする。
 風だ。風がどこからか吹いているのだ。どうやら声の主の仕業らしい。どこまでもいじわるな性分のようだ。
 「こらっ! あたしに風邪を引かせる気!?」
 返事はない。それどころか、唸るような音はどんどん強くなっていく。やがて突風が、少女を襲う。
 風の強さに、少女は思わず目を閉じる。風が少女を、白い空気を、一気に吹き飛ばしていった。
 〜つづく〜
 次はリオールに入ります。
