二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボーカロイド─IMITATION BLACK─ ( No.2 )
- 日時: 2010/03/21 11:24
- 名前: 涼香 (ID: F35/ckfZ)
- 第壱話「悪の化身」 
 「こっ、この無礼者!!王女の何者だ!?」
 「ミレイ?帰ったよ。どこにいるんだい?」
 「レイ様ね?いいわ、通しなさい」
 「ということなんで。いいですよね?」
 「しっ、しかし、通行許可証もなくっ…」
 「私がいいと言っているのです。入れなさい」
 「ですが女王は!!」
 「私の命令が聞けませんか?」
 「っ…。はい…。さぁ、さっさと通れ」
 王女は恐ろしい。可愛い声と綺麗な顔だが、性格は悪魔に等しい。
 「どうも」
 にこやかな笑顔で通り過ぎる。この男も、王女のどこが気に入ったのか…。
 「ミレイ、逢いたかったよ」
 さっきよりも愛嬌のある笑顔で、少し顔を朱に染めた美男子。
 「お帰りなさい、レイ様。お怪我は御座いませんか?」
 愛らしい声で聞いてくる。その顔に笑顔はないが、それでも狂いそうなほどに愛おしかった。
 「あぁ、無事だよ。ミレイは変わりなかったかい?」
 「母様が倒れたの。心配ですわ…」
 「そうか…。女王様に会わせていただけないかい?
 「申し訳御座いません。それは無理なこと…」
 「そうか…」
 召使が焦ってミレイのもとに駆けてきた。
 「王女様!!大変です!!!」
 「どうしたの?」
 「女王様が、女王様が亡くなりました!!」
 「…そう。母様の死を民に伝え、私が女王を継ぎましょう。ですが、女王と呼ばないで。私はまだ母様のように王女と呼ばれて相応しい者ではありませんから」
 レイ様は驚いていらっしゃったわ。昨日までは優しい笑顔でいた母様が急に亡くなられたのだから。
 「ミレイ…。悲しくはないのかい?」
 「泣いている暇はありません。私は国を動かさなければならないのに、私事で泣いているわけにはいきません」
 「ミレイ…。強がらなくていい、泣いていいんだ…」
 ミレイを力強く、それでいて優しく抱き締めた。
 「レイ様…」
 面倒なものです。愛されていると勘違いしている男は。
 女王の死は、誰もが悲しんだ。後継者となるミレイは誰からも納得された。彼女の本性を知らない召使以外は…。
 「退屈ですね…。誰でも構いません。武に秀でた者達で戦闘を開始しなさい。相手は民です。手加減する必要はありません、全力で向かいなさい」
 王女は暇になると殺戮を開始する。沢山の血が流れるのを見て、満足そうな瞳をしていた。
 あるいは、
 「この銃は射程距離が広いのでしょう?使ってみましょうか」
 と、無造作に遠くを歩いている民を狙い撃つ。
 ほかにも、
 「この剣は切れ味が良いのでしょう?使ってみましょうか」
 と、適当に民を選んで残酷なまでに切り刻む。
 当然、民は王女を恐れ、家から出てこなくなった。
 それを無理矢理引き出しては殺戮を開始するという残酷な王女の遊びは始まる。
 王女にとっては殺戮など、ただの「お遊び」にすぎないのだ。
 しかし、それでもレイはミレイを信じた。「母を失った悲しみで一時的に精神が狂ってしまった」と…。
