二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.126 )
- 日時: 2010/05/25 17:30
- 名前: るりぃ (ID: F/ANFiDr)
- 参照: http://アフォ小説家?
- 『愛が殺せと叫ぶから』中 
 私が小さくそう呟くと彼は驚いたように聞き返してきた。
 「え?」
 「あ、いえ。助けてくれて有り難う。」
 思わず呟いた一言に、私は自分でも驚いて。
 慌てて彼に礼を言うと立ち上がった。
 私の後を追うように立った彼は黒のスーツに身を包んだビジネスマン風の服装で、黒縁の眼鏡をかけていた。
 私を助けるときに放り出したであろう皮の鞄を拾い上げ、砂を払う。
 「ご無事で何よりでした。あんな物が当たれば即死だ。」
 「ええ…。」
 私は彼の言葉にやわらかく微笑んで返すと、彼も微笑み返し、口を開いた。
 「しかし、こんな鉄骨がそう簡単に落ちるはずはないんですがね。…何か心当たりでも?」
 探るような視線に私が首を横に振ると、彼は表情を和ませて「そうですか。」とだけ言った。
 その後責任者が降りてきて謝罪を受けたが、別に怪我をしたわけでもどこが汚れた訳でもないので、それで事を済ませた。
 本当なら警察に連絡するなりした方がいいのだろうが、鉄骨が落ちたのは彼らのせいでないことは解っていたから。
 そう、これが初めてじゃないのだ。
 ここまであからさまなのは確かに初めてだったが、ここ数日、私は誰かに命を狙われている。
 それが解っていて手を打たないのも、毎日外出するのも、理由はあの言葉に集約されるのだと思う。
 『当たればよかった。』
 私は、死にたがっている。
 「お茶でも、いかがですか?」
 工事現場の人間と話が終わった後、ビジネスマンがそう言った。
 少し驚いたが、相手は命の恩人だ。
 断るわけにはいかない。
 頷くと、彼は駅の裏の、私がよく足を運ぶ喫茶店へ入った。
 そして、知っていたかのように私の一番気に入っている席を勧める。
 もちろん、偶然に過ぎないのだけど。
 挽きたてのコーヒーの香りと、出窓から射すやわらかな陽に心を和ませながら正面を見ると、彼は視線に気付いて優しく笑った。
 そういえば、名前も聞いてなかったと思い立ち、口を開く。
 「あの…もし差し支えなければ名刺をいただけませんか?」
 「え?」
 彼は、私の言葉にきょとんとした表情を向けたかと思うと、すぐにくつくつと喉を鳴らして笑った。
 何か可笑しいことでも言っただろうかと怪訝に首を傾げる私に顔を近付けにやりと口を歪める。
 「まだ気付かない?俺様だよ、俺様。」
 「………ッ!佐…ッ!」
 『佐助』と叫ぼうとした私の口を素早く押さえて、彼は人差し指を立てると楽しそうに笑いを堪えた。
 雰囲気があまりに違うので気付かなかったが、目の前の男はかつて殺人鬼として名を馳せ、私を今の生活に追いやった張本人に間違いない。
 「ちょっとー、でかい声出されちゃ困るよ。俺様一応指名手配犯なんだから。ね?」
 「…殺人鬼からストーカーに転身したわけ…?」
 「んー、まあそんなとこかな?」
 口を押さえる手をひっぺがして睨みつけると、佐助は肩をすくめてきつい視線を誤魔化した。
 そしてすぐに伝票を取り立ち上がる。
 「俺様のことが知りたきゃ、ついて来なよ。」
 「…行くと思うの?」
 未だ睨みつけたまま私が問うと、彼は伝票をひらひらさせながら自信たっぷりに笑った。
 「まあね。君には幕を引く仕事が残ってるから。」
