二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 記憶ノ螺旋 薄桜鬼 ( No.13 )
- 日時: 2010/04/30 16:06
- 名前: 牙暁 (ID: ouG7SBqg)
- ■四個目.... 
 千鶴に案内された部屋では、二人の隊士達が僕を待っていた。
 突き刺す様な視線が向けられて、僕は思わず身を硬くする。
 「トシ、其の娘さんがそうなのか?」
 大柄の人の良さそうな男が、トシと呼ばれた長髪の男に聞く。
 彼は其の問い掛けに静かに頷いた。
 「何と……!
 …あ、あぁ、君も座りなさい」
 大柄な男は目を見開き、手にしていた本を閉じると、僕に目の前に座る様促す。
 僕は無言でお辞儀して、男の前に腰を下ろした。
 大柄の男は、新選組局長・近藤 勇、黒髪の男は、副長・土方 歳三と名乗った。
 「是非、君に新選組に入って頂きたい」
 「…は?」
 何処から出たのか教えて欲しい位の、可笑しな声が洩れてしまった。
 僕が新選組に入れと?
 「お前の噂は、俺達の耳に届いている」
 「だから、其の噂って何なんですか」
 其の言葉に、土方は淡々と其の噂について語ってくれた。
 噂は如何聞いても、僕が中心の物だった。
 聞いてる間、何度も溜め息を吐いた程、明らか僕の事。
 先ず、其の噂が江戸周辺で羅刹が殺された事だと述べられた。
 其の羅刹が此処の隊士らしく、僕が以前殺した奴等だ。
 「其れでお前の腕が必要だと思った訳だ」
 「すまないね。だが此方も人手不足なんだ」
 土方と近藤は、必死に僕を説得しようとしている。
 僕は此処に居ても良いのだろうか。僕は人を殺すし、何よりも人間じゃない。
 其れでも、もう少し此処に居たいと思う自分が居る事に、怖さを感じる。
 「……後で、後悔しても知りませんよ?」
 気付けば、そんな言葉が口から洩れていた。
 僕は慌てて両手で口を塞ぐ。
 何という失言をしてしまったのだろう。
 僕が塞いだ時点で、既に遅かった。
 「後悔何てしねぇよ」
 土方は少し安心した様な顔をして呟いた。
 笑顔で頷く近藤に、僕もつられて引き攣った笑みを浮かべる。
 本 当 に 人 間 は 愚 か な 生 き 物 だ
 「宜しく、お願いします。
 僕は嘉神 雅焔と申します」
 此れが、僕と新選組との出会いだった。
