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　　　　　*°　第5話　一人　*°

　司令部に戻り、手早く仕事を済ませて家に帰宅した。
鞄を放り投げ、ベッドの上に倒れ込む。一気に力が抜けて行った。

『その時のショックで、部分的な記憶を失ってしまったのかもしれません』

「……私は……何をしているんだろう……」

　確か……あの時……あの時……。

必死に思いだそうとするが、そのたびに頭痛と吐き気が私を襲う。
　慌てて袋をひっつかんだ。

「うぐ……っ……。うがぁっ……」

　トゥロー。私は何をしているんだろう……?
君はもういないというのに、君の面影ばかりを探している。

　もう一度。もう一度でいいから——会いたいよ。

「……なーんて、ね」

　一人笑ってみせる。ふと私は、机の上にあった新聞を手に取った。

「……リオールの暴動、ね……」

　日付はだいぶ昔の物だ。こんなの読んでも、意味はない。

「トゥロー。私は何に頼ればいいのか……分からないよ」

　ゆっくりと目を閉じた。そしてそのまま、眠りの世界へと引きずり込まれていった。