二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 時間 【鋼の錬金術師】 ( No.20 )
- 日時: 2010/07/02 19:13
- 名前: 魁菜 (ID: DqcsCYhG)
- *° 第6話 夢 *° 
 『ねぇ見て、トゥロー! 私、国家資格取ったよっ!』
 『すごいじゃないか! 流石、ラウナだな!』
 長い金髪の髪を三つ編みにしながら、ラウナは言う。その金色の瞳に、しっかりと私が映っている。
 私も、大きくうなずきながら微笑んだ。トゥローも優しく微笑んでくれた。
 『ねぇ、トゥロー。今度、お父さんとお母さんのお墓参りに行きたいんだ』
 『ラウナのお父さんとお母さんの? 分かった、一緒に行こうか』
 三つ編みをくくり終えたトゥローが、微笑みながら答えてくれた。
 ……あれ? トゥローは……生きていたんだっけ? トゥローは……もう……?
 『どうした、ラウナ』
 『あ、いや……。その……トゥローは……』
 その刹那、視界がぐらりと揺れた。トゥローが見えなくなっていく。私は思わず手を伸ばした。
 「トゥロー!!!!」
 ……自分の声で目が覚めた。目が覚めた……。夢、か。にしても……微妙な夢を見たな。
 ベッドからのっそりと起き上って、シャワーを浴びる準備をする。今の時間は、5時00分。外は薄暗い。
 赤い髪をほどいて、軍服をハンガーに掛ける。もちろん銀時計は、机の上に出しておく。
 風呂場に入った私は、その時は気がつかなかった。
 自分の頬が、濡れている事には。
 「……トゥロー……。全く、今日は最悪な夢を見たな〜」
 あの金色の髪が、よみがえってくる。シャーシャーとシャワーを浴びながら、私はトゥローの事ばかり考えていた。
 「……いつまでこんなことをしているのだろう」
 私は……記憶がない人間だ。それも、大事な記憶の欠片。
 私は……その記憶を求めなければならない。トゥローに、己に何があったのか。
 シャワーを浴び終えると、ゆっくりと風呂を出た。
 タオルでてきぱきとふいて、服を着て行く。今に戻って、青い、青い軍服を着た。
 記憶を探す、もう一つの理由は隠して——。
