二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.96 )
- 日時: 2011/06/11 09:23
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)
- 異常に多い魔物を退け、四人は異様に薄暗いその港町についた。 
 「・・・・・・・・・・・」四人、再び沈黙。この世界に来てから皆口数が減っている。
 「・・・ここ、明らかに、ポスタミアだよね」
 「・・・・・・あぁ」
 霧が暗い。近くに見える海も黒い。
 だが、どう見ても、その町は、ポスタミアである。
 「・・・どういうこと?」
 「さぁ・・・?」
 リーシアとレイサがマイレナを見る。どうやら、町の名前を一応聞いて来い、ということらしい。
 リーシアはもともと人と話すのが好きではない性格だ。が、レイサは絶対そうではないだろう、と思ったが、
 ティルスまで知らん顔しているので、マイレナは渋々ながらも住民と思しき男に町の名を聞く。
 「ここですか? 港町ポスタミアと言えば、世界指折りの大国グラデンヘルゼに最も近い町です」
 「・・・つまりここ、ポスタミア?」ややこしい説明に、マイレナは仏頂面で問い返す。
 「えぇ、そうですよ」
 「・・・で、近くに、グラデンヘルゼ王国があるの?」
 横から問うたのはレイサだ。結局来たのかよ、とマイレナ。
 「えぇ、この町から船で行けますな。いい所ですよぉ。私みたいな、財産のあるものにはね」
 「・・・・・・・・・・・・」
 リーシアがこの場にいたら即刻 空爆呪文_イオ_ あたりを唱えていただろう。
 実際レイサも、この男今ここで 火炎呪文_メラミ_ の餌食にしてやろうか、と思っていたところである。
 「・・・で、・・・どういう意味?」
 “いい所”の意味を、とりあえず尋ねる。
 「ふっふっふ、それはですねぇ——うおっ」
 「あ、失礼」
 ティルスが、あまり実感のこもっていない口調で謝る。通り過ぎざま、肩をぶつけたのだ。だが、それだけではない。
 そのまま何食わぬ顔で通り過ぎたティルスを、リーシアが追い、耳元でささやく。
 「——で? 今、何を盗んだ?」
 「・・・げっ、バレてんの? かなわねぇなぁ・・・これだよ」
 ティルスは若干引きつつ、素直に盗んで見せたものを取り出す。いつの間に隠したのだろう。
 本物_プロ_ だけあって、やはり違うものだな、と微妙にずれた感心をする。
 ともかく、ティルスが出したものだが・・・それは、一枚のカードだった。
 「・・・身分、証明書・・・?」
 「ん? ・・・あぁ、悪ぃ。逆だ。・・・こっちだよ。グラデンヘルゼの通行書」
 「あ、そう。——通行書ぉ?」
 なんとなく納得した後、リーシアが何とも嫌そうな声で訊く。
 「そ。——どーやらこっちの世界でも、通行書なしで城ン中には入れねーっぽいな」
 「・・・“こっちの世界でも”って・・・つまり、“あっちの世界”でもそれ、必要なわけ?」
 「必要」ティルスは至極あっさりと答える。「ちょうど同じものだ。こりゃますます変だな、この世界」
 「そ・・・そう」リーシアは、さっと視線をずらした。
 「俺らのことを知っている奴はいない・・・てことは、住民まで同じってわけじゃなさそうだし・・・
 一体何だってんだ?」
 確かにね、と答える。四人は、いきなり現れた魔物を“あっちの”ポスタミアで退けたそれで
 住民からは顔を覚えられているはずだ。だが、彼らは誰も四人を知らないようだった。
 「・・・でも、なんとなく、見たことある顔もあるんだよな・・・ま、今考えても埒開かないし」
 リーシアは肩をすくめ、ようやく戻ってきたやつれた顔のマイレナとレイサを見て、続いて財布を覗いた。
 「宿でもとってくる」
 
