二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜飛導鈴、登場!〜 ( No.467 )
- 日時: 2011/07/29 22:08
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 参照: 夏休みの宿題とか……(泣)
- 24 適任者 
 「もう終わったのか?」
 「遅かったね、守(以下省略)」
 「おい、以下省略のところ思いっきり聞こえているぞ?って、春奈!」
 修也や秋たちが春奈の方へ駆け寄った。数秒後、ボロボロの夏未を支える茜とアツヤがやってきた。
 「うわ〜すっごいやられっぷりね。夏未」
 「派手に転んだだけよ」
 「しょうがないね、そういうことにしてあげる」
 まずはアツヤがゆっくりと手を離し、その後、茜が椅子に夏未を座らせた。
 「それより、春奈、どうしたの?」
 「また出てきたみたい…そろそろ扱えたらいいんだけど」
 「おい、またってどういうことだよ!?」
 円堂せかすように問う。夏未や修也たちは眉間に皺をよせ、お互いの顔を見合わせたりしている。あまり言いたそうな雰囲気ではない。
 「春奈の体には伝説の水龍が封印されてある」
 「ちょっと、守!!」
 茜が止めようとするが、完全に聞き流し、話を続けた。
 「水星神竜……遠く昔、神に仕えていた召喚獣の一匹だ。それに夏未の中には不死鳥がいる、それも同じだ」
 「それ以上ペラペラしゃべってんじゃねぇぞ?くそ雷…」
 修也が立ち上がり、守の襟元をつかんだ。顔が怒りで歪んでいる。
 もともと上がっている目じりが怒りを強調させている。歯を強くかみしめ、守を睨んだ。
 「テメェは何なんだ?こいつがこの事話されんのが嫌なの知ってるだろ?わざとか…?」
 「いずれバレることだ、それに言われなくても皆知ってる」
 「王族とそれに仕えている兵士だけね。修也、手を離しなさい。ここで争ってもいい事なんてないはずよ?無駄な傷は負いたくないでしょ?」
 夏未の言葉で、修也はつかんでいた守の襟を、乱暴に振り放った。鋭い目つきでもう一度守を睨んだ。珍しく、守は反抗しない。
 振りほどかれ、その小さな勢いで二、三歩後ろへ下がった。
 円堂は彼が右手を強く握りしめているのをみた。守も辛いのだ、心の底では。だったら無理して言わなければいいはずなのに、どうして言おうとしたのだろうか。
 隣では秋が静かに春奈の体に手を当て、何かの魔法をかけているのが見える。
 治癒の魔法で、春奈の傷ついた体を治しているのだ。
 春奈は一向に目を開ける気配がない。
 「今は皆疲れてるだろうから、この話は今度また話しましょ。まずは体を休めなきゃ」
 「同感。僕は美麗を結界から出すのに結構体力使ったんだよね〜ったく、あんな結界によくおとなしく捕まるもんだね」
 グッと天井に向かって背伸びをして、体をやわらげた。
 「何、嫌味?」
 「さぁ〜どうでしょう」
 「……体の傷は大体治った」
 「ご苦労さん、秋。家に戻って休んでていいよ」
 「夏未の傷はどうするの?」
 「こんなの寝たらすぐに治るよ」
 「……春奈、体はいいけど…精神のほうは分からない」
 秋が床に仰向けで寝ている春奈の顔を見下ろした。
 体の傷は治ったが、精神状態が乱れている可能性がある、と秋は言いたいのだ。さっきの戦いで何があったのかは分からないが、相当身も心もダメージを受けている。
 遠くの方で倒れている少年の姿を見れば、どんなに酷い殺し方だったかわかる。
 「あの…音無さんは…」
 「この子は大丈夫…ただ一時的に春奈の魔力をもろに受けたから、拒絶反応がおこっただけ…」
 もう一人の自分に説明をした。
 その言葉で、円堂や鬼道たちはホッと息を吐いた。
 「夏未さん、ちょっといいかな?」
 「基山…ヒロトだっけ?人が多すぎてまだ皆の名前覚えていないんだよね」
 「あっているよ…それで一応もう一度確認のために聞きたいんだ」
 チラッと鈴を見てから、夏未に向き直り質問を始めた。
 「俺たちに魔法は効くの?」
 「何をいまさら……効くに決まってるでしょ?もし効かないんだったら、春奈のアクアロックを通り抜けられたじゃない。でも、音無さんはアクアロックの影響を受けなかった…あれ、矛盾してる?……いいや。それより、魔法が効かない、って誰が言ったの?」
 完全に頭に浮かびあがった質問をめんどくさいため破棄し、次の質問へ移った。
 「冬花姫」
 「冬花」と聞いた守は一瞬ビクッと小さく跳ね上がり、今まで流してきた話に耳を傾けた。もちろん、彼女を侮辱するようなことがあれば、迷いなく刀をむけるつもりだ。
 「あぁ〜やりそうなオーラ出してるもんね〜」
 「魔法が効くのは分かったけど、どうしてそこまでして俺たちをここの世界に連れてこさせたかったのか、気になるんだ」
 「それは、守たちを助けるためでしょ?」
 「だったらパラレルワールドはいくらでもある。別に俺たちじゃなくても、もっと戦闘向きの自分たちを探せばいいじゃないか?」
 確かにそうだ。円堂たちはサッカーはできるが、戦闘に関してはまだまだ初心者だ。刀を持って人を斬ったりするのをまじかに見たのは、この世界に来てから初めてだろう。
 それに、円堂たちをこの世界に呼んだとして、ただの足手まといにしかならない。それなのになぜ、冬花は彼らを呼ぼうとしたのだろうか。
 「確かにそうですね」
 食堂に入ってきたのは、紫色の長い髪をした少女が二人。冬花だった。
 この流れだと、今までの話は聞いていたらしい。
 「冬花…」
 守が小さく呟いた。頬が少し濡れている。また責任を自分一人で抱え込んで、解決しようとしたのだろうか、それを見るたびに心が痛む。
 どうして相談してくれないのかいつも不思議でしょうがなかった。頼られていないのか、それとも信用されていないのか。どっちにしろ深刻な問題を彼女から相談されたことは一度もない。
 倒れている春奈を見て、一瞬顔をしからめたあと、覚悟を決めて円堂を強く見つめた。
 「どうして、俺たちだったんだ?」
 「適任だったからです」
 「適任ってお前、俺たちを道具としか考えてねぇのかよ!?」
 染岡が吼えた。いつもの冬花なら、俯いてしまうが、今は少しも恐れたりはしない。
 「本当はあなた方の世界を含めて、二つ、適任している世界がありました」
 「そんなの聞いていませんよ?姫」
 「アツヤくんたちには言ってないの、このことを知っているのは私と兄様、それと悠也さんだけだから」
 「……そのもう一つの世界というのは、何だ?」
 鬼道が少し躊躇ってから聞いた。あまりいい答えが返ってきそうになかったからである。
 「あなた方の世界と同じ道を歩いていた、似ている世界です。でもそれはエイリア学園の最後の戦い、ダークエンペラーズとの対戦前までです」
 「どういう事だ?」
 「彼らも元は適任者でした。ただ、その後の未来が大きく変わってしまった、それだけです」
 「質問の答えになってねぇじゃねぇかよ」
 綱海がボソッと言うと、ほか多数もうんうん、と顔を上下に動かす。
 「それは、あなた方が
 ——ダークエンペラーズに負けてしまったから」
