二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機 闇元月実、登場&魔法募集中 ( No.538 )
- 日時: 2011/08/30 17:37
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 39 賭け事 
 「「ヒロト(さん)が拘束された!?」」
 一同が驚愕の声をあげた。とくに夏未は椅子から立ち上がり、テーブルに手を置いて、今にでも飛び出しそうな感じに、身を乗り出している。
 「うん、月実の話によると、ヒロトと玲奈は騙されて、王国軍に利用されてたらしいよ」
 呑気にテーブルにあるお菓子を食べながら、鈴は言った。
 「ちょっ、ありえないでしょ!!あのヒロトさんが騙されるわけない!!」
 動揺した感情が頂点に達している夏未。それを両方から抑え込んでいる守と修也。彼女は女だが、力はものすごく大きく、一人で抑え込むには、相当力が必要になる。
 「よく考えなさいよ。ヒロトと玲奈が王国軍に入ったときはまだ八歳よ?まだ幼いのにそこまで考える?それに、嵐王もあの時はまだ正式に王として就任していかったし。このことを知っていたとすれば、前任の王、クロード・フリーグ様。そして、その人はもう亡くなっている」
 美麗の言っている話は事実だった。いくらヒロトの頭が冴えていたとしても、彼はまだ幼かった。それに、今の国王である嵐は、まだフェアリー王国をまとめられるほどの力はなく、よって、前任の王であるクロード・フリード、冬花と嵐の父にあたるこの男が、国を治めていた。今はもう病気で亡くなっている。
 彼がヒロトの力を認め、王国軍へと派遣したのだが、そのことが今回の事件を引きつけてしまった。
 「話からすると、こっちのヒロトが捕まった、ってことだよな?」
 「そうそう、あの人頭いいと思ってたけど、結構簡単に捕まったね」
 「お前が言うな」
 意外と小さな声で言ったつもりだが、春奈には聞こえてしまったらしい。その後から、彼女の刺さるような視線は修也を離さない。
 「黙ってらんない!!王国軍の奴を全員縄で縛りつけて、尋問してやる!!」
 「どこかのSMプレイかよ」
 「なっちゃん、ヒロトさんのことだよ。またヘラヘラして、いつもと同じように帰ってくるはずだよ」
 「……まぁ、玲奈さんもいるしね」
 「……夏未」
 耳を貸せ、と言うように、秋は夏未に無言で手招きをした。疑問を浮かべながら、隣にいる守と修也を蹴散らし、秋の傍までよる。
 「 」
 「…!?」
 「まだ特定してない……だから、まだ言わないで」
 最後の一言を付け加えると、夏未の耳を解放した。後ろにいた守と修也には、話の内容が聞こえなかったらしい。
 「秋、何か言ったのか?」
 「守には関係ない」
 「冷てぇな、お前」
 「あっ、そうだ。円堂くん、ダークなんとか…」
 「「「ダークエンペラーズ!!!!!」」」
 今度は秋だけではなく、その場にいる皆からのツッコミを受けた夏未。ハハッ、と苦笑いをこぼして、左手を申し訳なさそうにヒラヒラさせた。
 「解った解った。とにかく、その戦いに向けて、キーパー技を完成させないと」
 「あっ、そうだな…でも、全然コツがつかめない。だから、m「断る」ケチ…」
 ぶう、と拗ねたように頬を膨らませるが、当然守には効かない。何度も何度もシュートの練習に付き合ってほしいと頼んだが、全部断られてしまった。
 パラレルワールドの命運がかかっているというのに、この少年は知らないふり。自分の国と冬花が安全であれば、彼は余計なことはしない。
 「う〜ん、守はやる気が全くなさそうだから、嫌でなければ、私が手伝うよ」
 「夏未、お前は別の仕事があるだろ」
 「いいじゃん別にぃ〜そういうなら、暇な修也たちがやってよ」
 「結構だ」
 「フンッ、そんな事はこっちからお断りだ」
 そういって立ち上がったのが、染岡。まだ敵対している意識はあるようだ。それに、綱海でさえも、あまり彼らを信用していない。
 当たり前と言えば、当たり前の話だが、円堂は、皆と仲良くしたいと考えている。
 「それはよかった。無駄な争いはあまり好きじゃないからな」
 「円堂、練習に行こうぜ」
 「えっ、あ、あぁ…」
 円堂が立ち上がれば、皆立ち上がり、練習をするため、河川敷へと向かう。春奈は音無にくっつき、ずっと離れない。その場に残ったのは、守や修也たち。いい顔はしていない。むしろ背後を睨んで、彼らを拒んでいる。
 「勝てると思うか?」
 「んなわけねぇよ。無駄な足掻きだ。サッカーで世界を救おうなんざ、無理な話だ」
 「はい、そこ〜。なんか、暗い話するのやめなさい。変な雰囲気になるでしょ」
 人差し指で、暗い会話をしていた修也と守を指した。快楽主義者の夏未にとって、二人の会話は気に食わない。
 「ん〜そうだ!条件付きで〜一つ賭け事しよっか」
 「「賭け事?」」
 「そ、円堂くん達が負けたら、アンタ達の護衛仕事は外して〜ランクの昇格。でも、勝ったら、サッカーの練習に付き合うこと。もちろん、円堂くん達が元の世界に帰っても、やってもらうから」
 「どうしてそんなに俺たちにサッカーをやらせたいんだ?」
 守がずっと思っていた疑問。この前は、一回だけ、と条件付きで思わずボールを蹴ってしまったが、その後も円堂にはシュートを撃てと頼まれるし、夏未にはやれ、と言われる始末。つきまとわない、と言うのも条件だったはずなのだが、完全に聞いていない。
 「いいじゃない〜」
 「「よくねぇよ」」
 「こういう時に限って、息がぴったりなんだから」
 わざとらしく夏未は顔を膨らませた。
 「それにそんな条件信じられるか。昇格試験を受けない限り、ランクを上げるのは無理な話だと知ってるだろ?」
 「う〜ん、じゃあ、私が王と交渉する」
 なかなか諦める気配がない夏未に、修也と守はため息をつくことしかできなかった。
 「あっ、そうだ」
 何か思い出したのか、夏未は少し表情を変えた。諦めの悪いものから、どこか黒い笑みを浮かべ、守を睨む。
 それを見て、守は何歩か後ろへ下がった。こういう時は、あまりいことを期待しない方がいいことは、彼は夏未と会った日から知っている。
 「守さぁ〜、円堂くんにシュートしてた時、本気出してなかったでしょ?」
 「なっ…だ、出していました」
 「おっかしいな〜秋もあれぐらい撃てるのになぁ〜」
 「ほ、ほらぁ〜その前に特訓をしてて、体力が……」
 守が一歩下がるたびに、夏未は二歩前へ進み、彼の逃げ場をだんだん無くしていく。
 「ど〜いうことなかな〜?」
 「ご、ごめんなさい…」
 その後、修也や秋たちは逃げるようにその場から無言で立ち去った。もちろん、守を置き去りにして。
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機 闇元月実、登場&魔法募集中 ( No.539 )
- 日時: 2011/08/30 17:37
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 「ゴットキャッチ!!」 
 シュンッ、と風を切るような音がすると、炎を纏ったボールはゴールへと入った。
 「また失敗…」
 「そう焦るな円堂、お前ならできる」
 両肩を落とす円堂に、鬼道は精一杯の慰めの言葉をかける。
 円堂は立ち上がると、両頬を叩き、腰を落とし、豪炎寺に合図を送ると、たちまち彼は強烈なシュート技を撃つ。
 「……」
 影からは黒いフードをかぶった人物が彼らの様子を見ている。身長は円堂くらいだろうか、大人ではないが、幼くもない。
 「エンドウ…マモル……」
 「ん?」
 「どうしたの?春奈?」
 「なんか、今、変な気配が…」
 「気配?」
 「う〜ん、気のせい……かな?」
 「……」
 ニコッと明るく笑うもう一人の自分に、涼しい表情を返した。しかし、ピカピカに輝いているその笑顔はちっとも崩れていない。
 (でも、この気配……知ってる気がする……ずっと、昔に…)
 あの冷たくて暗い気配は一体何なのだろうか。魔物のではない。どちらかというと人間の方が近いだろう。しかし、さっきの気配はほんの少しの温かみでさえ、感じられなかった。本当に生き物のものなのだろうか。
 また、バシッと音が響いた。円堂が虎丸のボールをがっちり両手でキャッチした。
 どうやら、ゴットキャッチ取得の新しい練習法らしい。
 表情は誰も真面目で険しいが、どこか楽しそうに彼らはボールを追いかけている。本当に円堂たちは心からサッカーを愛していることが伝わってくる。ここに来てからも毎日毎日サッカー三昧。よく皆は円堂のことをサッカー馬鹿と称するが、ここにいる全員がそうなのではないだろうか。
 そんなことを考えている内に、あの気配のことなど、とうに頭の中にはなかった。今はただ、円堂たちを見つめ、サッカーというものが、どうしてそこまで彼らを引きつけるのか、考えてみようではないか。自分の脳でどこまで理解できるのか分からないが、きっと解る日が来ることもあるだろう。
