二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】真選組女中ですけど。【100話突破】 ( No.435 )
- 日時: 2011/12/14 22:19
- 名前: いちか ◆iK/S6sZnHA (ID: rjNBQ1VC)
 覚悟は出来ている。
 私の行為は、然るべき処分を下さなければならない。
 110)男にはない度胸が女にはあったりする
 「それじゃあ、お大事に銀さん」
 「おうよ」
 ぺこり、と一礼し恒道館を出た。
 …ん? あぁ、こんにちは皆さん。
 さっき、銀さんのお見舞いに行っていたのでありますよ。
 そこで話を聞いてみれば、銀さんは紅桜という妖刀…ていうか化け物と戦ってたらしいね。
 強い銀さんが重傷を負うなんて、本当に強かったんだろう。
 ブーツは洗いなさいよ。じゃあ洗っといて。嫌ですよくさい。くさいから洗うんじゃねーのかよ。
 とか何とかしょうもない話を長々としていたが、そんな中で銀さんが私が船にいた理由を聞いてくることはなかった。
 きっと、何となく分かってたんだろうな。姉に会いに行ってたって。
 …まぁ、そんなことより心に引っかかってるものがあるんですけどね。
 屯所に帰る足取りが、とてつもなく重い。
 ***
 「あ、鈴ちゃん」
 「ザキさん」
 屯所の門をくぐれば、ザキさんとバッタリ。
 いつもなら笑顔で会話をするところなのに、今日のザキさんはいつになく真剣な表情だ。
 「…鈴ちゃん。正直に答えてほしい」
 …あぁ、これは。
 船に乗り込んだあの日のことか。
 (覚悟はしていた。けれど、)
 「…はい」
 「この前、高杉一派と桂一派が衝突した現場の船で、銀色の侍が目撃されてるんだ」
 「……」
 「それと、レジ袋持った甚平の女の子」
 はい、それ絶対私です。
 「…私、です」
 「やっぱり、そうか」
 …俯く私。
 ザキさんの目が怖い。
 何だよ自分、覚悟はしてるのに。
 どれほど危険な現場に立ち合わせたのか、分かってる。
 切腹くらい、当然だって。
 だから固まるな私、震えるな私。
 「一応副長には報告した。…けれど、何でか副長信じてくれないんだよなぁ」
 「…え?」
 「信じられないよ、ホントならすぐ鈴ちゃんだって疑うはずなのに。 でも、鈴ちゃんはマヨネーズ王国の入り口を必死に探してたって言って聞かないんだ」
 ……おいおい、マジでか。
 何だよそのマヨ馬鹿! マジで信じてたのかあのマヨ馬鹿ァ!
 「…だから、このことは鈴ちゃん自身の口から言って欲しい」
 「……分かりました」
 ***
 「土方さん、鈴です」
 「何だ」
 「この間の事件のことで、少し」
 「…入れ」
 スッ—と襖を開き、副長室へ入る。
 畳の上に正座し、土方さんを見据えた。
 「何だよ」
 「あの、えっとッ……」
 ええい、
 こうなったら言ってまえ、躊躇うな。
 覚悟決めろ! 切腹でも何でも受けたらァァ!!
 「高杉さんたちと桂さんたちが戦った、あの事件。その現場にいた甚平女は私です!」
 「あぁ、分かってる」
 ……え?
 なに、分かってるって。どゆこと? は?
 「レジ袋持った甚平っていやァ、てめェしかいねーだろうよ」
 「は、はぁ…ま、そうですけど…」
 あれ? この人、私はマヨネーズ王国の入り口を必死に探してると思ってたんじゃ、
 「よく考えたら、てめェがマヨネーズ王国の入り口を探すほどマヨネーズ好きではなかったことに気付いてな」
 「いや遅いだろそれは」
 ……うん。じゃあ最終的に土方さんは私を疑っているという形でいいんですか。
 …それじゃあことは全然解決していない。
 「何でその現場にいた。まずそれを答えてもらおうか」
 私は、嘘偽りなく全て話した。
 買い物帰りに新八くん見つけて、船乗り込んで、姉に会って、
 「…そうか。船に乗り込んだ理由は姉か…」
 「けじめをつけたかったんです」
 真選組の私、鬼兵隊の姉。
 濃く引かれた境界線を、この眼に焼き付けようと。
 「……でも、私がしたことは切腹物の何物でもありません。覚悟は出来ています」
 ぐっ、と歯を噛み締め俯いた。
 さぁ何処にでも連れていけ。拷問部屋でも何処でもいい。
 殺すなら、はやく……
 「——ったく、何でこういうときは生真面目なんだよ。調子狂う」
 「……は…?」
 「切腹なんて嫌です云々泣き喚いて逃げるかと思いきや。よく分かんねーんだよお前」
 うん、まさに心境はそれなんだけどね。
 そんなのかっこよくないでしょ! 自分でよく分かってる!
 「今回の件は無かったことにしてやる。…近藤さんもそう言ってたしな」
 「え、いや、でも私、姉といえど鬼兵隊の人に会いに…」
 「俺に姉と浪士の区別をつける能力までははない」
 「や、そんな、」
 「ほら見ろ。うちの馬鹿共が一斉に押し付けてきやがった」
 そう言っておもむろに押入れから取り出した箱。
 開ければ、中には小さな紙が沢山入っていた。
 “鈴ちゃんを許してあげてください!”“鈴ちゃんの作るメシが美味いんです”
 など私を許してあげてほしいという隊士らの思いが書かれていた。
 中に、沖田さんの紙もあった。
 “鈴はそこそこ使える奴でさァ、生かしておいて支障はないと思いますぜ。いや少し支障は出るかもだけど”
 「とにかく。てめェは馬鹿みてーに喜んどきゃいいんだよ」
 ……。
 何だよ、何なんだよ土方、コノヤロー…
 よく分からないのはアンタ等だよ……
 馬鹿みたいなのはアンタ等だよ……ッ
 私なんかよりお姉ちゃんの方が良いんじゃなかったのかよォ…!!
 今にも零れそうな涙を拭い、立ち上がった。
 「バカヤロー、真選組大好きだバカヤロー! …ありがとうございます…ッ!!」
 勢いよく頭を下げて、副長室を走り去った。
 ( みんな、本当にありがとう。 )
