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早朝。
屯所の門を入ってすぐの庭で、俺は一人素振りをしていた（ラケットの）。
すると、門を通って入ってくる人物が一人。
…鈴ちゃんだ。


121)嘘をつくと目が泳ぐ


「あ、鈴ちゃん!」
「!?　あ、ジミー…じゃなくて、ザキさん」

今ジミーって言ったよね?と突っ込もうとしたが、止めた。
それより、何か気になるところがあったから。

何で今、声かけた瞬間ちょっと驚いたんだろう。
普通なら、「またミントンですか」って呆れるのに。
…はっ、もしかして。

「そんなにまで、俺の影薄くなってる…!!?」

だから驚いたの!?　素振りする音すら聞こえなかった!?
すると鈴ちゃんは、いつもの呆れた表情で俺を見る。

「…何言ってるネ…んデスカ、影薄いのは元々でショウ」

ひでェェェェェ
そこは「そんなことないですよ」って言うところだろ、お世辞でも!

「ていうか鈴ちゃん、何かカタコトだね?」
「なッ…!　そんなことないですヨ、いつも通りデス」




　＊＊＊




ふー…。色々とヤバそう、意外と。
門でジミーと遭遇してから、何とかごまかして無事鈴の部屋までたどり着いたけど…疲れた。

畳に寝転がり、適当に転がってみる。
…あれ、私、屯所来て何するんだっけ。
鈴と入れ替わったんだから、いつも鈴がやってることやればいいの?

鈴って何やってるんだっけ……


あ、そうそう、女中だ。
女中なら私、前にやった!　姉御と一緒に!
なんだ、じゃあ大体やること分かる!


「何でもやっとくべきアルなぁ!　きゃっほォォォい」


起き上がって、軽く飛び跳ねる。
…そしたら、いきなりバンッて開かれた。
部屋の襖。


「うるせェ!　つか戻ってたなら報告しやがれ馬鹿」

瞳孔かっ開いたマヨラー。
そうか、鈴、昨日勝手に屯所出て万事屋来てたんだ…悪い子ネ!
でも今その悪い子の皮を被ってるのは私…

本来なら、馬鹿って言われたことに言い返すけど、私も賢いヨ。

「すみませんデシタ。ただちに報告しにいきマス!」
「いやもう遅ェよ!!　…じゃあ早く仕事しやがれ、昨日の分もな」
「…昨日の分も?」
「たりめーだろ、昨日サボったんだからよォ」

…な、そんな、そんなの……

「濡れ衣アル!　何で私が…!」
「……アル?」


マヨラーが、眉間に皺を寄せる。
………あ、これピンチっぽいアル。



（あ、ちょっと最近、チョー可愛い神楽ちゃんに憧れてて!　口調うつっちゃったんデス）
（…ふーん。あ、そう。へぇ…）