二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 巡廻。銀魂 ( No.2 )
- 日時: 2011/08/13 03:11
- 名前: 炎火 (ID: e2Ia0l.i)
- プロローグ(長いです) 
 
 とある日の昼下がり。
 江戸は歌舞伎町。その一角の辺りをふらつく男がひとり。
 「あ……っついな」
 
 黒く跳ねた髪を揺らし、黒い着物を羽織った成人男性。
 腰には木刀。すっかりすれた草鞋をそれでもまだ引きずり歩く。
 「あのー、ここいらに坂田って人住んでないですか」
 「坂田? 知らないなァ……」
 「はあ……」
 
 またハズレと言わんばかりに息を吐く。
 「何分歩いたんだ……俺」
 
 疲れきった彼はふと顔を上げる。
 目に飛び込んできたのは、「スナックお登勢」と「万事屋銀ちゃん」の看板。
 「銀ちゃん……か」
 
 「銀ちゃん」の文字を優しげな目で見つめる。
 視線を落とし、彼はここの一階で一息つくことにした。
 「あのーすみません」
 「いらっしゃいませ」
 
 静まり返った店の中から、若い女と老婆の声がした。
 一番手前のカウンター席に座ると、老婆が茶を出した。
 「今丁度うるさいのが出て行ったんだ。ツいてたね」
 「あー……そうなんですか」
 「なんだい、暗いねアンタ」
 「軽く一時間は彷徨ってますから。行方不明の奴を見つけなきゃいけないんで」
 「ッテコトハ、日本中旅シテルッテ事カ?」
 
 猫耳が似合わない緑色の着物を着る女が問う。
 彼は首を横に振った。
 「あいつはここに居る。生きている。何だろう、わかるんだよな。だから来た」
 
 すると、若い女が言った。
 「この上に、万事屋の銀時様がいらっしゃいますよ」
 
 彼は目を見開いた。一瞬己が耳を疑ったが、確かに女は言った。
 「ぎん……とき?」
 「何だいそんな驚いた顔して」
 「その銀時は……坂田か?」
 「そうだけど……まさかあんたが探してるのって」
 
 勢いよく起き上がり、机の上に出された茶が揺れる。
 転がるように前屈みに走り去った。
 隣の階段を駆け上がる。
 息が上がる。着物がはだける。躓きそうになる。
 だが彼は足を止めなかった。
 
 「あの! あの!!」
 「銀さん、僕忙しいので出てください」
 「しゃーねーなあ……はーい」
 目の前のドアを勢いよく叩く。奥から面倒くさそうに返答が来る。
 心拍数が上がる。息が収まらない。胸が痛む。
 
 鍵を開ける音がする。
 
 「はーいどちらさまですかーい」
 「ぎん……とき!」
 
 彼は見つけた。
 幼い頃を共にした、大事な。大切な
 「兄貴……!?」
 「よかった……!!」
 
 弟。
