二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*質問等受付中! ( No.232 )
- 日時: 2011/09/30 22:31
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
- 第24話 勝利の女神 
 ハーフタイム。
 割り当てられた部屋で、雷門イレブンは休憩していた。重苦しい空気…それを如何にかしようと天馬が声を張り上げる。
 天「まだ同点です!!後1点取れば勝て(剣「るとでも思ってるのか?」
 壁に寄り掛かっていた剣城が割り込んだ。何、と天馬が反抗心丸出しの声で言う。
 当然だろう。彼は敵、そして同点ゴールを決めた隼と同じシード。その事も踏まえて剣城は雷門が勝てない根拠を並べた。
 神童が化身を使いこなせない事、一方で隼は完全に化身を操り強力なシュートを持っている事。
 そもそも負け試合で士気が下がっていた雷門イレブンには強力な打撃だった。
 剣「お前たちみたいなザコがフィフスセクターに逆らっても、何も変わらない、何も変えられない。雷門の敗北は決まってる事なんだよ。」
 剣城がそう言った瞬間、空気はさらに重くなり雷門イレブンは落胆の表情を見せた。
 と、今までドア付近で静かに立っていたソフィアが何か言おうとした。それを天馬の「そんな事、」という言葉が遮る。
 円「誰が決めたんだ?」
 月乃とソフィア、橘が円堂に視線を向けた。
 円「言っただろ?誰だろうと、勝負の前に結果を決める事なんて出来ない。」
 ソ「いえ、1人だけいるの…」
 高ぶる感情を抑え込んだソフィアが言う。雷門イレブンはその言葉に顔をしかめた。円堂が彼女の顔を見る。
 少しだけ微笑んで。
 月「勝利の女神。ただ1人だけ、この世の勝敗を決める事が出来る…」
 ソ「——勝利の女神、アテネーただ1人。それも、本当に勝利を目指す者にしか決して微笑まない。両者共に勝利を諦めていたら別だけど。…ねえ、貴方達は勝てるだけの力を持ってるの。」
 ハッとした様に神童がソフィアを見た。倉間が何か反論しようとして口を閉じる。
 射る様な視線だった。ソフィアは反論を許さない。
 ソ「今さっき言った言葉、忘れたの?そう、今の貴方達は勝てるだけの力を秘めている。その秘めている力を出すために必要な物が欠けているだけ。」
 天「足りない…物?」
 円「サッカープレイヤーの本能。」
 天馬が尋ねると、円堂が三国の居る場所まで、少し歩く。歩きながら、彼等に言葉を掛けた。
 どんなシュートでも、止めてみせる。
 どんな相手でも、ドリブルで抜いてみせる。
 誰よりも、強いシュートを打ってみせる。
 そして、勝ってみせる。
 剣城が、苦々しい表情で円堂を見つめる。勝つ気の無くなったはずの選手達に勝利を諦めさせようとしない。
 さっさと勝利を諦めれば良い物を。
 円「それが、みんなが持っているサッカープレイヤーの本能、想いだ!」
 ソ「…」
 目を見開いて、ソフィアは目の前の円堂の背中を見た。——すごい、彼女が初めてそう思った人間だった。
 円堂が振り向いた。月乃たちに微笑む。そもそも部外者である筈の彼女たちの立ち入りを許したのは円堂だった。
 ソフィアが、彼に言ったのだ。
 「私は、勝利の女神よ。」
 信じるはずが無い、と橘が止めたが、彼は笑顔で立ち入りを許可した。
 やがて校長と理事長が入ってきた。面倒、と言った顔でソフィアが出ようとドアに手を掛ける。
 天馬が彼女の背中に声を掛けようとした気配を察知して、振り向いた。タイミングがあったのか、少し驚いている。
 何も言わない。ソフィアは、じっと彼の瞳を見つめて微笑した。
 *
 ソフィアと橘が出て行くと、校長&理事長VS円堂監督の戦いが始まった。
 否、戦いと思っているのは見ている側と理事長達だけかもしれない。円堂は戦いの砲撃が止むのを静かに待っていただけなのだから。
 「フィフスセクターに従い、この試合は負けると言え!」
 最後に理事長が言った。
 ホーリーロードは次の聖帝を決めるための大切な…云々、学校の立場が…云々。
 円「言いたい事は言いました。」
 つまり、負ける気はないという事だ。
 部屋を出た円堂に続いて、理事長達も部屋を出た。残されたイレブンと月乃は、その騒ぎ様にしばらく固まっていた。
 ハ、として月乃が神童達を振り向く。目を見開く神童を見て、それから全員をちら、と見て口を開いた。
 月「…私は、支配するサッカーで皆さんが満足しているとは思えません。」
 呟くようにそう言えば、全員が月乃に視線を向けた。
 月「この試合の勝利は、皆さんの為になるんじゃないですか?」
 剣「それは結果的にフィフスセクターに逆らうという事だ、雷門中やサッカー部がどうなるか(月「コワス?出来ますか、今。」
 剣城が顔をしかめた。意味が分からない。
 月「…勝利の女神は、勝つために必要な事を導きました。」
 部屋を出るとき、彼女はそう呟いた。
 *
 試合は、キーパー三国が逆らう側に付いた事で動きを見せた。
 化身のシュートを3人がかりで止め、更に神童が奏者マエストロのハーモニクスで追加点を挙げた。
 月乃は安堵したように穏やかな表情で、隣の賑やかな仲間達を見る。ティアラと鈴音は勝利を喜んでいた。
 ラティアとソフィア、歌音も硬い表情を崩している。——唯一、橘はぎこちない笑顔。
 歌「杏樹、良かったわね。」
 月「……私下に行ってきます。先に解散してて下さい。」
 観客席を立ち、月乃は雷門イレブンの居る場所へ向かう。ソフィアも少し慌ただしく後を追った。
 どうしたのかと不審がるティアラ達は橘が外へ誘導した。また次の試合も見に行こう、と約束をかわして。
 橘「…好きだなぁ。」
 歌「?」
 青空を見上げて、唐突に彼女が呟いた。
 橘「う〜ん…みんな好き!下から見る青い空も、ティアラさん達も歌ちゃんも!」
 歌「!う、歌ちゃ…///」
 歌ちゃん、というあだ名は、帰宅後散々からかわれる事となった。
 *つづく*
