二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボカロ [罪と決別とリボルバー]現在進行中! 【短編集】 ( No.101 )
- 日時: 2012/04/19 21:48
- 名前: 麻香 (ID: mo8lSifC)
- 04 § 罪と決別とリボルバー § 
 「落ち着くんだ‥‥‥美波‥‥‥」
 薄暗くて、何も置いてない殺風景な部屋。
 ゆっくりと一歩ずつ後退する亮介を、わたしは軽蔑の目で見下す。
 「わたしは、落ち着いてる」
 「‥‥‥悪かった。俺が謝るから‥‥‥っ!」
 彼はわたしの手元を直視していた。
 回転式拳銃‥‥光る漆黒のリボルバー。
 大型の軍用銃だけど、多少の力さえあれば女子供でも使える。
 その、凄まじい破壊力を持つリボルバーの銃口は、冷酷に亮介を向いている。
 「あの女とも別れるよ‥‥あいつとは遊びだったんだ‥‥‥‥」
 そんな弁解がわたしに通用すると思ってるの?ただ見苦しいだけ。
 亮介はわたしを裏切った。
 その事実さえあれば、充分なんだから。
 裏切り者には、罰を受けてもらわないと。
 ずりずりと後退りしていた亮介の身体が壁についた。
 亮介は怯えた目で逃げ道がないことを確認し、またリボルバーを直視する。
 「ずっと一緒にいようね、って言ったのは亮介の方だったのにね」
 その言葉を聞いて、馬鹿みたいに浮かれていた自分が恥ずかしい。
 ただ単純に嬉しかっただけなのに。
 ばっかみたい。
 結局、人間の言葉なんて、嘘。
 わたしはもう信じない。
 「う、うわあぁっ!」
 焦った亮介は、無我夢中でわたしの横をすり抜けた。
 逃げるその背中に、わたしは冷静に照準を合わせる。
 今はただ単純に、彼を消したいだけ————。
 「さよなら」
 ————————バンッ
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.102 )
- 日時: 2012/04/17 21:51
- 名前: 麻香 (ID: ucTV.0zG)
- 耳元でガンガンと鳴り響く目覚まし時計が、わたしを覚醒させた。 
 目覚まし時計を叩いて止め、べッドから起き上がる。
 無意識に手で髪に触れて寝癖を直した。
 「ふあぁ〜‥‥」
 大きな欠伸が出る。
 まだボーッとしている頭でキッチンに向かい、オーブントースターに食パンを放り込む。
 『続いて、次のニュースです』
 突然、抑揚のない声が聞こえてきて驚いた。
 リビングにある小型テレビからだ。どうやら、昨日消し忘れたらしい。
 朝のニュース番組で、七三分けに眼鏡という典型的な中年男性キャスターが、にこりともせずにニュースを読みあげる。
 節約時代にテレビの消し忘れとは。電気代はさぞ高いんだろう。
 溜息をつきながらコップに牛乳を注ぎ、オーブントースターの前で待機しながらわたしはちらりとテレビに目をやった。
 『〇〇県△△市のアパートで、黒川亮介さん(23)が何者かに銃殺されているのが発見されました』
 テレビに、茶髪で生意気そうな青年の写真が映る。亮介だ。
 「元」カレの顔をわたしは無感動に見つめた。
 『黒川亮介さんは身体を数発の銃弾で貫かれており、犯人は黒川亮介さんになんらかの恨みがあったものとされています。警察は‥‥‥』
 中年男性キャスターの声が、オーブントースターの音にかき消される。
 ほんのりと湯気がたつトーストにマーガリンを塗った。
 トーストと牛乳を交互にロに運びながら、わたしは再びテレビを見る。
 『また、警察は当時黒川亮介さんと交際していた久遠美波さん(21)を容疑者として取り上げましたが、久遠美波さんは事件当日から行方不明になっており‥‥』
 今度はわたしの顔が映った。
 去年の夏祭り。淡い桃色の浴衣。
 亮介に腕を組まれて、頬も淡い桃色にしながらピースサインをしているわたし。
 本当に、馬鹿みたいだ。
 『警察は続けて久遠容疑者の捜索に当たるとの————』
 キャスターが全て言い終える前に、プツリとテレビを切る。
 口から自然と笑みがこぼれた。
 「容疑者、か‥‥‥‥」
 警察は、今も汗水流してわたしを探してるんだ。
 外国への逃走ルートだとか、誰かに匿ってもらってるとか、調べてるんだ。
 わたしが、亮介を殺したアパートから100メートルと離れていないマンションに、堂々と住んでるなんて知らずに。
 「ばっかみたい」
 警察も。亮介も。わたしも。
 みんな、みんな馬鹿みたいだ。
 くすくすと笑いながら、わたしはお気に入りのコートを掴んだ。
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.103 )
- 日時: 2012/04/19 21:47
- 名前: 麻香 (ID: mo8lSifC)
- テレビで放映されたからって家でビクビクしているのは性に合わない。 
 もちろん警察には捕まりたくないけど。
 警察に怯えて家に閉じこもるなんて、警察に降参してるのと同じじゃないか。
 ちなみに、最近の好きな場所は公園の桜の木だ。
 ソメイヨシノだから開花も春。花びらが雪のようにちらちら舞うのは見ていて気持ちいい。
 「ふぅ‥‥‥」
 桜の木に寄りかかり、上を見上げた。
 桃色の花の間から漏れてくる光が眩しい。
 辺りには花びらだけでなく、花がまるごと落ちていることもあった。
 ここで豆知識。桜の花がまるごと落ちているのは、スズメなんかが花の蜜を舐めようと、茎を切断するから。
 桜の木を見つめていると、花が一輪落ちてきて、ふわりとわたしの頬にのった。
 スズメの仕業だ。邪魔なので手で払う。
 だがその前に別の手が伸びてきて、桜の花をつまみ上げた。
 「いつもここに来てるよね」
 「!」
 いつからいたのか、口元に微笑を浮かべた若い男が立っていた。
 わたしの頬から拾った花を顔の前で振る。
 「桜、好き?」
 「‥‥‥うん」
 男はわたしの横に並んで桜を見上げた。
 いきなり話しかけてくるなんて、どんな性格してるんだろ。ナンパとかいうやつ?
 だけど、木漏れ日が当たるその横顔はちょっとカッコよくてわたしは下を向く。
 「そっか。俺も好きだよ、桜。俺は渡辺琉衣。君は?」
 そう聞かれた。
 どうしよう。本名を教えたら、彼はわたしがニュースの有名人だって気づくかもしれない。
 でも、黙ってたら余計に怪しまれる。
 「た‥‥‥立花‥‥美波」
 「美波ちゃんか。可愛い名前だね。俺のことは琉衣ってよんでくれていいよ」
 咄嗟に出てきた偽の名字。
 美波なんて名前の子はたくさんいるだろうし、そのまんまでいっか。
 男、じゃなくて、琉衣が桜の花をわたしの頭にのせた。
 ぱっと見たら髪飾りのように見える位置に。
 すらりとした細い指が当たった。
 「ほら、こうしたら似合うよ」
 「‥‥‥‥‥」
 「美波ちゃん可愛いんだから。そんなふてくされた顔してないで、笑ってればいいのに」
 ‥‥‥キザな奴。
 へラへラしちゃって。ばっかみたい。
 「ほら、またそんな顔してる」
 顔を思いっきりしかめたわたしを、琉衣は笑う。
 こっちは怒ってるのに。
 どうしたんだろ。わたし。
 こんな馬鹿男、無視すればいいじゃん。
 まるで、琉衣がわたしの調子を狂わせてるみたいだ。
 でも、なんだか——————懐かしい。
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.104 )
- 日時: 2012/04/21 17:43
- 名前: 麻香 (ID: mo8lSifC)
- それからもわたしと琉衣は桜の下で毎日話した。 
 相変わらず琉衣が愛想よく話しかけ、わたしは適当に答えるという繰り返し。
 なのに、気がつけば足が公園へと向かっていた。
 「今日の夜、川原で夏祭りがあるんだって」
 琉衣が妙に楽しそうにそう言ったのは、たしか夏のはじめの頃だったと思う。
 桜はとっくに散って、木漏れ日には葉っぱの緑色が混じっていた。
 「‥‥‥夏祭り?」
 「そ。花火もやるって。美波ちゃん、行かない?」
 「興味ない」
 ばっさり切り捨てた。
 花火できゃあきゃあ騒ぐのは、子供か単純な女だけ。
 わたしはそのどちらでもないし。
 「またまた。素直じゃないんだから」
 「別に‥‥‥」
 夏祭りは嫌い。
 だって、亮介と行った場所だから。
 消し去りたい思い出の場所だから。
 「ね。行こ?」
 「だから‥‥‥‥‥」
 「決まり。夕方の5時にここに来てくれよ」
 強引に琉衣はわたしの小指と自分の小指を絡み合わせた。
 温かくて懐かしい感触。
 思わずぼうっとしてしまい、わたしからさっと離れた琉衣の行動に反応が遅れた。
 「じゃ、ばいばい」
 「あ、ちょっ‥‥‥」
 琉衣はわたしに手を振ると、そのまま逃げるように公園から出て行ってしまう。
 これが琉衣の狙いだったんだ。
 強引に約束させて、夏祭りに一緒に行く。
 わたしが、約束を絶対に破れない性格だって知ってるんだ。
 「もう‥‥‥‥」
 くだらない、と思った。
 男と一緒にどこかへ出掛けたって、なにも面白くないし。
 それにわたしは、もう恋はしないって決めた。
 恋心なんて、人間の一時的な感情の乱れでしかない。
 どうせ裏切られる恋なんて、しない。
 「ばっかみたい」
 誰にともなく、わたしほそう呟いた。
 ☆★☆★☆
 部屋の奥から浴衣を見つけた。
 淡い桃色の浴衣。裾の辺りに色とりどりの桜模様がある。
 何年か前、お母さんがバーゲンで買って送ってきたやつだ。
 わたしには似合わない。雰囲気が明るすぎる。
 それでもちょっと苦笑しながら、真紅の帯を巻いた。
 待ち合わせ場所、桜の木の下にはもう琉衣が来ていた。
 わたしを見つけてはにかむ。
 夜明けの海のような深い藍色が、よく似合ってる。
 「美波ちゃん、桜の模様、似合うね」
 「‥‥‥‥早く行こ」
 琉衣が、笑いながらわたしの浴衣姿を褒めることは予想できていた。
 でも少し照れくさくて、わたしは先に歩き始める。
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.105 )
- 日時: 2012/04/23 21:58
- 名前: 麻香 (ID: vLlTyC08)
- 小走りに追いついてきた琉衣と、並んで歩いた。 
 やがて、夏祭りに行くのであろう人々が現れ始め、同じ方向に向かっていく。
 騒がしい人ごみの中で、しかし今日の琉衣は静かだった。
 ふと、前を歩いているカップルが手をつないでいるのに気づいた。
 お互いの存在を確かめ合うかのようにがっしり。
 変なの。なぜそんなことをする必要があるのかな。
 手をつながなければ離れて行ってしまう恋人なんて、邪魔なだけじゃない。
 なんとなく琉衣と喋るのが気まずくて、道沿いに建っている屋台を見た。
 ラムネ。チョコバナナ。りんごあめ。フランクフルト。
 美味しそうな食べ物が並んでる。
 少し考えてから、割りばしに刺した綿菓子を買った。
 「美味しそうだね」
 琉衣がキラキラした気持ち悪い目で見てくるので、綿菓子を半分ちぎって渡す。
 まったく。子供みたいな奴だ。
 履きなれない下駄にそろそろ足が痛くなってきたころ、川原に着いた。
 べンチは全て埋まっていて、川の前のなだらかな坂くらいしか座れるところがない。
 できるだけ湿っていない場所を選んで座ると、琉衣も隣に座った。
 「‥‥‥‥‥‥」
 2人でただ黙々と綿菓子を食べる。
 口の中に砂糖の強めの甘さが広がり、子供時代を思い出させる。
 だが、近くでまたカップルが肩を抱き合い、ひそひそと夢でも見ているような口調で話すのを聞いていると、その甘みも重くなった。
 突然、パン、という破裂音がした。
 リボルバーの銃声を連想させて、一瞬身を固くする。
 だが人々の間であがるのは悲鳴じゃない。歓声だ。
 「お、始まったね」
 琉衣の言葉に、わたしは顔を上げる。
 目の前が黄色く染まった。続けて、バァン、と一際大きい破裂音。
 「花火‥‥‥‥」
 大輪の花が、夜空に咲いていた。
 赤。黄。白。緑。空が色とりどりに染められるたびに、あがる歓声。
 次々と色が変わる花火に、若い女は吐息を漏らし、アニメのキャラクター花火に子供たちは興奮して叫ぶ。
 咲いてはすぐに枯れてしまう花火。
 それが次々と打ち上げられる度に、わたしの心に波紋が広がっていった。
 「綺麗だね」
 「‥‥‥‥‥‥‥」
 琉衣の言葉にわたしは答えない。
 なんだろう。この気持ちは。
 せつなくて。寂しくて。逃げていくものを必死で追いかけてるのに、届かなくて苛立つような、懐かしい気持ち。
 ふと、右手が温かくなった。
 琉衣の左手が、わたしの右手に重ねられている。
 反射的に引っこめようとしたけれど、さらに強く握られた。
 戸惑いと疑問で、わたしは琉衣を見る。
 だけど琉衣は優しい笑顔で花火の方を見ていた。
 これでいい、と思った。
 いや。なにを言ってるんだ。わたし。
 これでいいはずがない。これでは、まるで恋人同然。
 もう恋はしないって決めたのに————。
 でも、琉衣に手を握られた途端に、感じていた悲しみや苛立ちが消えていた。
 わたしは気づく。
 恋人は、お互いを引き止めていようと手をつなぐんじゃない。
 ただ、安心するんだ。自分の居場所を感じれるから。
 この一瞬だけ、嘘をついていない本当の「自分」が見えるから。
 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
 恋はしない。
 でも、もう少しだけこうしていたい。
 少しだけ。ほんの少しだけ。
 だけどわたしは、越えてはいけない一線を踏んでしまっていたことに、気づかなかった——————。
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.106 )
- 日時: 2012/04/25 22:00
- 名前: 麻香 (ID: RXnnEm2G)
- そして、また何ヵ月か経って————。 
 桜の葉は紅に色づき、タ暮れの景色と同化していた。
 カラスが一際大きく鳴いて、わたしはやっとそれに気づいた。
 夕焼けの赤も一緒に吸い込むように深呼吸をする。
 「もうこんな時間‥‥‥」
 そっと呟く。
 独り言のつもりだったけど、隣で琉衣が、本当だ、と同調した。
 「さすがに暗くなるのが早くなったな」
 「そうだね‥‥。まだ5時なのに、もう薄暗い‥‥‥」
 腕にはめた淡い桃色の時計を見る。
 琉衣が、わたしにプレゼントしてくれたやつ。
 ぼんやりと薄暗い所で見ると、夜桜みたいで綺麗。
 「ちょっと寒いな‥‥‥。美波は、大丈夫?」
 琉衣が少し震えながら聞いた。
 そういえば、彼は最近わたしの名前を呼び捨てにする。
 けど、いつから呼び捨てになったんだろ。
 ごく自然に、いつのまにか「美波」と呼ばれてた。
 「わたしも‥‥‥ちょっと寒いかな。そろそろ帰る」
 素っ気ない、あまりにも単純な別れ。
 これでいいんだ。琉衣は「男友達」であって、「彼氏」じゃない。
 それ以上や以下の関係では、わたしが許せなくなる。
 琉衣に軽く手を振って、背中を向ける。
 これまでとなにも変わらないはずだった。はず、なのに。
 「待って」
 琉衣に手を掴まれた。
 どうしたの、と問う前に、温かいもので全身が包まれる。
 「る、琉衣‥‥‥なんの‥‥‥‥」
 耳が、火を当てられたように熱い。
 琉衣の大きな手がわたしの背中に回り、静かな吐息が首筋にかかる。
 強く、優しく抱きしめられて、わたしは固まった。
 恥ずかしいとか照れくさいという気持ちよりも、焦りが浮かぶ。
 ここにいちゃいけない。わたしには、ここにいる価値なんかない。
 「俺は、美波のためならなんだってしてやる」
 琉衣の声が耳に響いた。
 震えてるけど、芯はしっかりした声。
 「美波は可愛いよ。でも、そんなものに俺は引かれたんじゃない。美波は他の女とは違うんだ」
 「‥‥‥‥‥‥っ」
 「他人を拒絶してるっていうか‥‥回りから孤立して、凛々しくて儚い、すごく不安定な美しさ。そう思った」
 拒絶。孤立。不安定。
 わたしが知らないうちに作っていた冷たい壁を、しかし琉衣はちゃんと見ていた。
 「そんなに拒絶しなくていい。もっと安心して笑ってほしいんだ。俺が美波をそうさせてやる。だから‥‥‥だから、俺とずっと一緒にいてくれないか」
 琉衣の静かな目は、わたしの心の中————過去の出来事まで見ているような気がした。
 すごく冷静で。優しくて。強くて。
 でも、わたしはどうなの。
 琉衣のことをどう思ってるの。
 わたしは。わたしは、琉衣のことが————。
 「っ、ごめんなさいっ!」
 わたしは琉衣を突き飛ばした。
 よろめいた琉衣の腕から力が抜け、わたしは抜け出す。
 苦しげな息を漏らす口をなんとか抑えて、走った。
 わたしは、琉衣と一緒にいることなんてできない——————。
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.107 )
- 日時: 2012/04/26 12:38
- 名前: 闇色グラフィティ(元神咲 祐) (ID: 59tDAuIV)
- 初めまして! 
 闇色グラフィティと申します。一応、こちらのほうで二次小説を書かせていただいています。以後お見知りおきを。
 初めてきたばかりで図々しいですが、歌詞募集ということで、グダグタですが、載せさせていただきます!
 「さようなら」
 君が旅立つ前に交わした最後の言葉。
 君は笑顔で遠い国へと旅立った。
 手元に残した二人の写真。
 バカみたいに笑ってた。
 「こんにちは」
 それが交わした最初の言葉。
 僕はシロツメクサを持って
 君に笑って話しかけた。
 まだ幼い頃の二人。
 日がくれるまで遊んでた。
 でも、僕の視界に君はもういない。
 君はきっと、遠い異国の空のしたで笑ってる。
 それが地球の裏側でも構わない。
 それでいい。
 君が帰ってくるその日まで。
 写真と、思いでと、シロツメクサと共に。
 一緒に笑おう。
 「……またいつか」
 うわ〜………ナンデこんなことに。
 駄作ですみません。
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.108 )
- 日時: 2012/04/26 21:10
- 名前: 麻香 (ID: RXnnEm2G)
- 初めまして! 
 あの、ごめんなさい‥‥‥。
 歌詞は募集してなくて、ボカロの曲を募集してるんです。
 わかりにくかったみたいですみません。
 でもすごく綺麗な歌詞です!!
 シロツメクサって可憐な表現ですね。
 もし私が音痴じゃなかったら、自己流に作曲したいところです^^
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.109 )
- 日時: 2012/04/26 21:20
- 名前: 闇色グラフィティ(元神咲 祐) (ID: 0M.9FvYj)
- あ、なるほど。 
 歌詞ではなくて、募集しているのはすでにあるボカロの曲だったんですね。
 いや〜すみません。早とちりしたみたいで。
 申し訳ないです。
 なら、からくりピエロなんか素敵ですよね。
 でも、あれってストーリー物なのかな?
 なんか微妙なところです。
 あ、だったら時忘人なんかの方がストーリー性あるかもしれません。
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.110 )
- 日時: 2012/04/27 21:16
- 名前: 麻香 (ID: RXnnEm2G)
- 「からくりピエロ」「時忘人」ですね。 
 なんとか時間を割いて聞いてみます^^
 リクエスト感謝します!
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.111 )
- 日時: 2012/04/27 21:59
- 名前: 麻香 (ID: RXnnEm2G)
- 今日こそ、桜の木のところに行って彼と話そう。 
 そう思ってはみたものの、玄関から一歩を踏み出す勇気がなくて数ヵ月。
 琉衣に会うのが怖かった。
 あの静かな瞳を真正面から見るのが怖かった。
 だけど、そろそろ外に出ないと。
 食べ物も尽きて、ここ数日なにも食べてない。
 ちょっと出掛けるだけ。
 近くのコンビニに行って、お弁当を買って、帰るだけ。
 簡単なことだ。琉衣に会うことはない。
 手を震わせながらコートを掴んで着る。
 何ヵ月かぶりに浴びた日の光は眩しくて、目を細める。
 「————それは、本当ですか?」
 「っ!」
 ふいにそんな声が聞こえて、わたしは身を固くした。
 反射的に壁の後ろに隠れ、そっと覗く。
 マンションの庭で2人の人間がコソコソと話をしていた。
 マンションの大家さんである中年女性と、紺色の服の青年‥‥‥警察官だ。
 「そうなのよ。ほら、1年くらい前に、男の子が殺された事件あったでしょ。あれの容疑者になってた、久遠美波って子」
 「久遠容疑者に似た人物が、このマンションに住んでいると?」
 「そうそう。名前は立花美波って言ってたから別人だと思ったんだけど。今考えたら、それって偽名じゃないの?」
 ‥‥‥どうかしていた。こんなことを忘れてたなんて。
 そうだ。わたしは、殺人者なんだ。
 琉衣のことばかり頭にあって、自分が何者か忘れてたなんて。
 早く、ここを逃げ出さないと。
 わたしの正体がバレてしまった。どこか遠くの町へ逃げなきゃ。
 琉衣を、置いて————?
 ☆★☆★☆
 部屋の中は、台風でも吹き荒れたみたいに散乱していた。
 それをわたしは気にする余裕もなく、荷物を大型バッグに詰め込んでいく。
 「っ」
 慌てるあまり転びそうになるのを抑える。
 琉衣がくれた淡い桃色の腕時計をバッグに放り込んだ。
 次は、押入れだ。無駄なもので溢れかえっていて、整理しながら荷物を詰めるのは憂鬱だったが、その中には大切なものが混じっているかもしれない。
 まずは手前にあった古新聞をどけ、押入れから物を出していく。
 物を捨てられない性格のわたしは、今その性格を初めて呪った。
 「‥‥‥‥‥?」
 押入れの奥から、見慣れない箱が出てきた。
 それほど大きくない。ありふれた、真っ白な箱。
 こんなものあったっけ。
 軽い気持ちで蓋を開ける。
 ただの好奇心だった。でも世の中には偶然なんてものはないから、きっと必然の出来事。
 「あ‥‥‥‥‥」
 今日、12月24日。クリスマス。
 サンタさんからのプレゼント。
 漆黒のリボルバー——————。
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.112 )
- 日時: 2012/05/04 21:45
- 名前: 麻香 (ID: RXnnEm2G)
- 夜の桜の下————彼が立っていた。 
 呆然とした暗い視線を、花も葉もついていない裸の桜に向けて。
 まるで、秋のあの時からずっとそこにいたみたい。
 公園に1つだけある電灯に照らされた彼の顔が、こちらを向いた。
 白い顔に驚きが走る。その口元にいつもの微笑はない。
 「‥‥‥‥美波」
 わたしと琉衣の視線がぶつかり合う。
 そのまま、数時間もの時が経った気がした。
 最初に動いたのは琉衣。わたしの方へと歩きだす。
 「来ないで」
 わたしは背中に隠し持っていたものを琉衣に向けた。
 琉衣の足が止まる。無表情で、わたしの右手————回転式拳銃、リボルバーを見る。
 「‥‥‥‥‥‥‥」
 わたしの髪がふわりと風に浮いた。
 わたしに残された時間はわずか。すぐに警察に捕まってしまう。
 話さなくちゃ。わたしの全てを。わたしの中の「悪」を。
 「‥‥‥わたしは一年前、黒川亮介という男を殺した。プロポーズも亮介からだった。その時、ずっと一緒にいようね、って亮介は言ったの。‥‥なのに亮介は他の女を好きになった」
 亮介は簡単にわたしを裏切った。
 わたしが浮気を指摘しても、反省なんて微塵もない態度で、亮介の方から別れ話を切り出した。信じられなかった。
 「わたしは、亮介のことが好きなわけじゃなかったの。‥‥ただ、亮介が満足するならいいや、って思ってただけだったのに」
 「‥‥‥‥‥‥」
 「‥‥‥亮介がわたしを裏切った時、言いようのない嫌悪感を感じた。わたしの数年間はなんだったの。亮介にとって、そんなに薄い数年間だったの‥‥?わたしの‥‥‥全てが拒絶されたみたいだった。消えてしまいそうだった」
 わたしの頬に、熱い涙が伝っていた。
 このまま泣いていたかった。リボルバーなんか放り出して、泣きじゃくってしまいたかった。
 「なんで‥‥なんで、あんな男にわたしの人生を壊されなきゃいけないの!?これはわたしの人生なのにっ!!誰にも邪魔なんかさせない。‥‥‥だから、亮介をこのリボルバーで殺したの」
 亮介を撃った時、わたしは泣かなかった。
 あんな男は死んで当然だったんだ。
 でも、琉衣は‥‥?
 あの時、琉衣はわたしに言った。
 ずっと一緒にいてくれないか、って。
 「あなたも亮介と同じことを言って、わたしを惑わせた。なんでわたしをそんなに困らせるの?わたし、わかんないよ。‥‥怖いの。わたしの世界を乱すあなたが怖いのっ!!」
 「‥‥‥‥‥‥‥」
 「お願い。死んで‥‥。わたしが自分勝手なのはわかってる。でもわたし、どうしたらいいのかわかんない。‥‥‥お願い。わたしの為に、死んでよ‥‥‥‥」
 リボルバーの撃鉄を起こす。
 人差し指を引き金にかけて、照準を琉衣に合わせた。
 身体が震えるのを止められない。
 “リセット”をするのは簡単だ。
 ゲームでだって人生でだって、人差し指だけで“リセット”できる。
 また、最初からやり直せばいい。
- Re: ボカロⅠsing for you [罪と決別とリボルバー]編 ( No.113 )
- 日時: 2012/05/05 17:28
- 名前: 麻香 (ID: RXnnEm2G)
- 怖かった。 
 人を撃つのを、これほど怖いと思ったことがなかった。
 突然、ふわりと暖かい風がわたしを包み込んだ。
 琉衣がまたわたしを抱きしめていたのだ。涙が琉衣の服に染みこんでいく。
 恥ずかしい、とかそういうのは感じない。
 ただ、悲しくて。こんなに近くにいるのに、寂しくて。
 琉衣との一年間は、亮介との数年間よりずっと温かかった。
 春に桜の下で出会った。あの時から、わたしは琉衣のことが好きだったのかもね。
 夏にいっぱい思い出を作った。花火が綺麗だって、心から思ったんだ。
 秋にわたしと琉衣の心が一つになった。本当は、嬉しかった。告白されて。
 そして、冬。全てを“リセット”させる————。
 「俺は死んだっていいよ。美波がそれでいいなら」
 琉衣は笑ってた。
 これ以上ないくらい、楽しそうに。
 なんで笑ってられるの。
 あなたは、これから死ぬんだよ?わたしはあなたを裏切ったんだよ?
 なんで‥‥‥‥なんでそんな優しい顔をするの‥‥っ!?
 「なんで‥‥‥意味わかんないよ‥‥‥‥っ」
 「‥‥‥俺は死んだっていい。でも、美波はそれで笑ってくれるのか?美波が人を‥‥殺したことは知ってた。あの日にニュースで見たんだ。でもそんなこと関係ない。ただ純粋に、美波の笑った顔を見たかった」
 そんなことのために。
 そんなくだらないことのために、わたしと一緒にいてくれたの?
 わかんない。なにもかもわかんなくて、怖い。
 「美波は一人じゃない。怖がらなくていいんだ」
 これ以上聞きたくない。
 でないと、わたしは自分がなにをしてるのかわかんなくなる。
 琉衣と作った思い出が浮かんだ。あれを捨てようとしているわたしが、わたし自身が、わかんなくなる。
 自分を見失ってしまう。やめて。やめて。これ以上は————っ!
 「俺は美波とずっと一緒にいるから————」
 ————————バンッ
 響いた一発の銃声。
 手が温かい血でびしゃりと濡れて、琉衣の全体重がわたしにかかった。
 「ごめん‥‥‥‥ごめんね‥‥‥‥‥‥」
 言葉を発さない、ただの人形となってしまった琉衣に、わたしは謝っていた。
 琉衣の身体は重くて倒れてしまいそうだったけど、これがわたしが消してしまった命の重さなんだ。
 足をふんばって、必死で耐えた。
 あぁ。なんでこんなことになってしまったんだろう。
 もし‥‥‥もしもやり直せても、わたしはたぶん同じことをしてた。
 でも、また2人で夏祭りに行きたいな。
 ごめん。無理だよね。そんなこと無理だってわかってるんだよ。
 どうしちゃったんだろうね。わたし。
 「桜‥‥‥‥‥」
 一瞬だけ、桜の花びらが目の前を舞ったような気がした。
 桜の花言葉。美しい精神。純潔。
 わたしと矛盾してる。でも、たとえ純潔で美しくいられなくても、最後くらいは素直でいたいよね。
 わたしは銃口の向きを変えた。
 本当に、わたしはどうかしてる。なにしてるんだろ。
 わたしも。琉衣も。本当に。本当に————。
 「ばっかみたい‥‥‥‥」
 ————————バンッ
 ☆★☆★☆
 クリスマスの夜に響いた2発の銃声。
 それは2人の男女の心臓を正確に撃ちぬいていた。
 1人は一般市民の若い男。
 1人は殺人者と恐れられた女。
 2人の顔は、和やかで美しい笑顔だったという。
 そして、今年の春も、満開の桜が公園を彩っている————。
 —END—
