二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- その10(2) ( No.30 )
- 日時: 2013/03/22 20:57
- 名前: RE ◆8cVxJAWHAc (ID: A7lopQ1n)
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 よし、これでチョコは自分で何とかするだろう。
 チョコへの指示を終えて目を開くと、鎧骸骨は保護魔法を破る気なのか、槍でがしがし結界を叩いている。
 このままで居りゃあ、安全なんだが、生憎、保護魔法は貼ったままじゃ移動出来ない。
 このままこいつを眺めて笑っててもいいんだけど、こいつは諦めないだろうし、その前にあたしが失血で動けなくなっちまう。
 さて、どうすっかな…。
 あたしは槍が振り上げられるタイミングを見計らって、保護魔法を解いて、後ろに跳んだ。
 振り下ろされた鎧骸骨の槍は、そのまま地面に刺さる。
 「…っつぁ」
 脇腹の痛みに、鳥肌が立つ。
 …結構、ヤバいかも。
 「ほう、まだ動けたか。てっきり結界を貼るのが精一杯かと思ったぞ」
 骸骨がまた笑う。
 うるせぇ!!あたしはこんなんでバテるようなヤワな黒魔女じゃないんだよ!!
 骸骨を睨みつけながら、あたしは再び両手に浄化魔法を纏わせる。
 と、その時。
 『こらああああ!!ごじゅうさんばあああん!!』
 いきなり甲高い怒鳴り声が辺りに響き渡った。
 ……な、何だぁ!?
 『今日はキミがワタシの相手する番でしょおおお!約束破るなんて悪い悪い子!!ワタシは怒ると恐い恐いのよお!?』
 なおも響き渡る怒鳴り声。
 そして、それを聞いた途端、骸骨が露骨に慌て出した。
 「なっ、いや、あの、も、申し訳ありません」
 何も無いはずの虚空を見上げ、鎧骸骨は謝罪の言葉を口にする。
 「…ごっ、ご主人様が気に入ったと言ってらっしゃった黒魔女を捜しておりました…もう、見つけましたので、直ちに、戻ります」
 鎧骸骨の主人が、チョコを、気に入った?
 あれの主人ってのは…?
 『…ふざけるな。キミってほんと、要らない、要らないわね』
 響く声は途端に低くなり、恨みのこもった呟きのようになる。
 それを聴いた鎧骸骨は、もう、面白いくらいに慌てた。
 槍を取り落とし、虚空に叫ぶ。
 「ご、ご主人様っ!?わたくしが、失態を犯したというのであればっ、す、直ぐに取り戻させて頂きます、ですから…っ」
 『いいよ、別に。直ぐ戻ってきて』
 響く声は冷たい。
 「!!!…は…っ、かしこまり、ました」
 骸骨は一つお辞儀をすると、落とした槍を拾い上げ、こちらを向いた。
 おっと、やべっ!!
 あたしは黒い焔を消し、再び保護魔法を発動させる。
 保護を張り終わった直後に、目の前に槍が飛んできて、がぃん!と音をたて、弾かれた槍はあたしの前に転がった。
 あたしは、鎧骸骨に笑ってみせる。せいぜい、余裕そうに。
 「ギヒヒヒヒ。ご主人様からの呼び出しだそうだな。めっちゃ怒ってたぞ、どうすんだ?のんびりあたしを狩ってていいのか?」
 すっかり戦意を喪失したらしい鎧骸骨は、うなだれたまま、じろりとあたしを睨む。
 「…黒魔女。幸運に感謝するのだな」
 吐き捨てるようにそう言うと、鎧骸骨はぼっ、と音をたてて、黄緑色の炎に包まれる。
 炎は大きくなり、見上げる位になったとき、途端にふっと炎も骸骨も掻き消えた。
 後に残ったのは、骸骨が投げた槍だけ。
 ……帰った、か?
 「…っおぉ……」
 気が抜けたのかなんなのか、いきなり足に力が入らなくなって、あたしはぺたんと座りこんだ。
 膝ががくがくする。情けなくて笑っちゃうぜ。
 保護魔法を解いて、ため息をひとつ。
 …やれやれ、これじゃ、チョコに体力云々なんて言えないな。
 ふと、目の前に転がっている槍に目をやると、槍先の下に結ばれたぼろきれと一緒に、何かくっついているのをみつけた。
 よく見ると、それは小さくて白い花だった。白い花がいくつか、まとまって付いている。
 骸骨に花、ね。似合わない事この上無いな。
 「……まあ、どうでもいいか」
 とりあえず、モリカワ倉庫に戻らないと。
 「ルキウゲ・ルキウゲ・ムオベーレ!」
