二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブンgo 〜もう一つの物語〜 ( No.8 )
- 日時: 2012/07/22 21:42
- 名前: ぽぽりっち (ID: npB6/xR8)
 「ん・・・」
 狩屋はゆっくりと、重たい瞼を上げた。
 ぼんやりとした視界のなかで広がるのは、床も壁もその他すべてのものが白い部屋。
 薬のようなにおいが広がっている。
 「狩屋!大丈夫?」
 明るい声色で天馬は、そんな狩屋の顔を覗き込んだ。
 狩屋は驚いたように目を見開き、小さく口を開く。
 「ここは・・・?」
 いつもの狩屋とは別人のように、覇気がなく弱弱しい声だった。
 天馬はニコッと笑って「病院だよ」と言う。
 そして心配そうな表情になり、
 「狩屋ランニング中に倒れたんだよ、疲れてるんだろ?寝てたらいいよ」
 「え・・・?」
 天馬の台詞に、狩屋は眉をひそめた。
 怪訝そうな顔つきで、上半身を起こす。
 そして遠慮がちに言葉を紡いだ。
 「俺、ランニングなんてしてた?」
 時が止まったように、天馬は動きをとめた。
 あいまいな笑みを浮かべて、狩屋を見る。
 「・・・してたよ。俺たちと」
 「そうだっけ・・・」
 狩屋はまだ思い出せないのか、右斜め上に視点をむけていた。
 (暑さのせいかな・・・)
 天馬は先ほどの彼の言葉を、夏の仕業と言い聞かせる。
 なんとなく嫌な予感がしたのだが、それを考えないために。
 「狩屋は起きたか?」
 ガラッと音を立てドアが引かれ、神童がひょっこり顔を出した。
 天馬の「神童先輩!」と同時に、狩屋はぺこっと頭を下げる。
 ふたりの様子に、神童は優しげな笑みを浮かべた。
 「よかった。大丈夫そうだな」
 神童の笑顔に、狩屋は嘘くさい笑みで言った。
 「心配かけてすみません」
 そしてベッドに体を寝かせ、ボスッと頭を枕に突っ込んだ。
 今にも寝てしまいそうな狩屋に、神童は静かに問いかける。
 「ところで・・・霧野に会ってないか?」
 狩屋はぐるっと体を回し、神童の顔を見上げた。
 「今日ですか?たぶん会ってないです」
 「たぶん?」
 小首をかしげる神童に、狩屋は苦笑いをみせた。
 「俺、なんか記憶あいまいで・・・あっ」
 突然はじかれたように、狩屋は黄色い瞳を見開く。
 「会いましたよ!今日」
 「本当か!?何時くらいだ?」
 神童は身を乗り出し、狩屋に顔を近づけた。
 「練習行く前だから・・・8時くらいです」
 「8時・・・?」
 神童は、狩屋の言葉を復唱した。
 その顔から冷や汗が流れているのを見て、天馬は神童に尋ねた。
 「どうしたんですか?」
 神童は答えない。
 ただ瞳を驚愕にゆらし、もう一度口を開いた。
 「それは、本当に霧野か?」
 狩屋はむっと眉をよせる。
 「本当ですよ。でもおかしな恰好してました。なんか現代日本じゃないみたいな・・・。それに首にチョーカーつけてて、右手首にはなんか通信機みたいな・・・」
 あいまいな記憶を語る狩屋。
 神童はため息交じりに呟く。
 「それは、霧野じゃないぞ」
 神童の言葉に、狩屋はイラただしげに声を上げた。
 「ピンクの髪にお下げに碧い瞳ですよ!?先輩以外いませんって!」
 「確かにそうかもしれない!っでも」
 神童も珍しく声を荒げた。
 小さくどこか不安げな音量で、だがするどく目をみはって言う。
 「霧野は今日、俺と一緒に雷門中へ向かったんだ。つまりその時間は・・・俺の隣にいたんだよ」
