二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 名探偵コナン —最後の銀弾(シルバーブレッド)— ( No.30 )
- 日時: 2012/08/10 20:47
- 名前: 未熟な探偵シャーリー ◆CwIDAY6e/I (ID: vf.KGARd)
- File06 アリスの生い立ち 前編 
 「なぜ、あなたがAPTX4869を持ってるの?」
 「それも含めて、私、哀ちゃんとコナン君に全部話そうと思ってたの」
 哀の問いにさっきまで呑気そうに笑っていた愛莉ことアリスの顔は真剣そのものになった。
 「まあ話すことは……あんまりないんだけどね」
 力なく愛莉は微笑んだ。
 「話してくれないか」
 「ええ、いいわ……」
 アリスは自分の経験した———ほんの一ヶ月前の事———出来事を2人以外に聞こえないように、最初から淡々と語り始めた。
 —アリスの生い立ち—
 アリスの両親はアリスが産まれてすぐ、交通事故で亡くなった。
 10歳離れた兄、アルフィオ・グウェイザーと共に叔父叔母の家に迎えられた。
 時は過ぎ、アルフィオは国家試験を受けて晴れて念願の警察官になった。
 少しでも犯罪を無くそう。昔の自分たちのような可哀想な子供が増えないために。その純粋な気持ちで受けた試験だった。
 それから四年の歳月が立ち、アリスの高校の入学式が迫った時だった。
 学校からアリスが帰ると、家から炎があがっていた。
 レスキュー隊、消防隊の力も虚しく、骨も灰になりかけた叔父と叔母の姿があったと知らされた。
 焼け跡からでは証拠は何も検出されず、放火犯も捕まえられず事件は迷宮入りとなった。
 その頃から兄の様子がおかしくなったのは。
 いつもどこか不安を拭えないような顔、疲れた顔をして仕事から帰ってくることが多くなった。
 日に日にやつれていく姿を見て、アリスは耐え切れず、学校を休みアルフィオをつけていった。
 叔父と叔母の家にいる頃から探偵ものにハマりだし、兄のあとをつけていく自分がかっこいいと少々優越感にひたっていた時。
 アルフィオは人気のいない倉庫が立ち並んでいる場所に行った。
 アリスは心の中に不安がうまれるのを感じた。
 そしてアルフィオは暗闇の中にいる男らしき人物と会話をして、何かを受け取っていた。
 相手の姿は見れなかったが、受け取っていた物はしかと視界に捕らえた。
 ドラッグだ。
 アリスはショックのあまり、気づかれず家に帰っても泣く事すら出来なかった。
 受話器をとり警察に電話しようとしてもどうも踏み込めない。
 いや、踏み込みたくなかった。
 唯一の頼れる存在……。
 結局アリスは警察には連絡せず、本人に聞くことにした。
 帰ってきたアルフィオはいつものようにゲッソリしていた。
 『アル』
 『何だ?』
 静かにしてくれ、と言わんばかりの口調にアリスは泣きそうになった。
 そしてアリスはおずおずと勇気を振り絞って、今日の見た出来事を話すと兄の顔は見る見るうちに青ざめていった。
 それからアリスは覚えてないぐらい、怒鳴られた。
 叱られたのか、ただ感情まかせに怒鳴られたのか、見当がつかない。
 覚えているのはとにかく自分が泣いているという事と、兄はソファーの上に座り込み何かを考え込んでる様子だった。
 どこか絶望的な姿にも見えた。
 アリスは部屋に戻り、声を押し殺してずっと泣いていた。
 あんなに兄が怒るのをはじめて見たからだ。
 しばらくすると、ドアのノックが聞こえアルフィオが入ってきた。
 決まり悪そうな、ぎこちない表情をしていた。
 『さっきは……すまなかった。かなり驚いて』
 『驚いて、ですまされると思う?』
 しゃくり上げながら噛み付くように言った。
 アルフィオはアリスの頭を優しく撫でながら言った。
 『悪かったよ、アリス。本当のこと言うと、怖かったんだ。奴等に見つかってしまったかもしれないって思えば……』
 『奴等?』
 眉をひそめてアリスは言った。
 探るような目つきからアルフィオは逃げるように視線をポケットにやった。
 そしてそこから何かを取り出した。
 黄色の小さいポーチだった。
 『いいか、これは肌身離さず持ってろ。もし、怪しい大人がお前を付けねらって危険な目に合わせようとしたとき……どうにかして、隠れてこれを飲め』
 アルフィオはポーチの中から赤と白の色をしたよく見るような薬のカプセルをアリスに見せた、
 『この効き目に、奴等は気づいていない』
 『ねえ、奴等って何なの?アルはそいつ等の仲間なの?それとも仕事?この薬は何なの?』
 『悪いな、これ以上は言えないんだ。お前にもっと危険な目にあわせてしまうかもしれないんだ。もし俺に何かあったら……』
 『何かあったら、なんて言わないで!これ以上私の前から誰も消えないでよ……』
 むせび泣くアリスをアルフィオは優しく抱きかかえた。
 『すまない……。だけどこれは大事なことなんだ……』
 アルフィオはそう言って部屋から出て行った。
 アリスはしばらく声をあげて泣いた。
 翌日、休日で学校が休みだったアリスは部屋にあるテレビを見て過ごしていた。
 休日なのにも関わらず、アルフィオは仕事でいなかった。
 面白い番組がやっていなく、しばらくチャンネルを変えてたがすぐに消した。
 その直後、玄関のドアが開く音がした。
 何かコソコソしたようなそんな音で、すぐに兄ではないと感じたアリスはすぐさま音を立てずに大事なものをバッグの中にいれて窓から外に出た。
 昨日のことがあって、アリスは家の中に入ってきた不法侵入者に立ち向かう気になれなかった。
 全速力で逃げて、近くのコンビニに逃げ込んだ。
 しばらくコンビニで時間を潰した後、なにやら外が騒がしくなった。
 外に出ると、自分の家から炎が上がってるのが見えた。
 恐怖に身をよじらせその場を走り去った。
