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第三十二訓【捨て猫】

「しかし、よく降りますね？櫻さん。」

「そうだね…。早くやんでほしいな…。」

未だ、屯所の帰り道を歩いてる二人。

すると…近くの店から声が響いた。

「お前にうるもんなんざねぇ!!さっさと消えな!?」

「うるせ—。こんな店のもんなんか誰が食うか！！」

「黙れ。金もねー綺麗でもねー小娘を雇ってやっただろ！！」

そこにいたのは、店の店主に押し飛ばされている小柄な女の子だった。

「き、紀新君！！あれ。」

「何事でしょう？。櫻さん、行きましょ。」

「は、はい。」

櫻と紀新は、その場に倒れこんでいる女の子を抱き上げた。

「大丈夫ですか？」

「…。」

その問いかけには、返事はかえらなかった。

「と、とにかく。この人を連れて帰りましょう。」

「そうだね。紀新君…。」

そう言うと、紀新はその女の子を背負った。

「大丈夫？荷物持つね。」

雨の中、二人が出会ったのは捨て猫のように体を震わせる。

「———可愛い子———。だね。」