二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】−白い絆− last up.091014 ( No.6 )
- 日時: 2009/10/20 20:55
- 名前: 暁月 ◆1pEIfYwjr. (ID: mdybEL6F)
- 日が沈んで辺りが真っ暗になった頃。身体を刺す様な寒さは秋とは思えない程。走った所為だろう、心臓がばくばくいってる。そして体が熱い。 
 突然いなくなった零を皆で手分けをして探しているのだ。松陽先生は今にも寝込んでしまうのでは、と思う程慌てていた。
 そして何分か外に出て目が慣れてきた頃、少し離れた所の気の辺りに人影が見えた。間違いないな、きっと零だ。
 草履と足袋を脱ぎ、裸足で一気に駆け出した。夜露
 がほんの少し冷たい。
 「こんな所に居たのか」
 ぜぇぜぇと息を切らした晋助が零の隣に立った。零は木に凭れ掛かり山座りをして小さくなって泣いていた。初めて会ったときから持っていた刀を抱いて。
 零は晋助を見ると普段は細めの眼をぱっちりと見開き驚いた。晋助はその隣でずるずる力が抜けたように座り込んだ。膝と膝がぶつかるとぱしん、と膝を叩かれ幾つか間を開けられた。
 「何で来たの」
 ずびずびと鼻水を啜って、必死に紡いだ零の言葉。くす、と笑って晋助は
 「今まで俺、銀時達にかくれんぼで負けた事ねーもん」
 先生が心配してる、と零に聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で言った。
 「銀時に何か言われたのか?」
 ぎゅっと自分の着物の橋を掴んで小さくなって顔を伏せる零に近付き髪を撫でながらそう言ってみた。
 しかし銀時と零が話していた事全部、ヅラと一緒に立ち聞きしていたのだが。
 
 「ねぇ………大事なもの、って……ある?」
 ふいに零が口を開いた。ぼろぼろとまた零の瞳からは大粒の涙が溢れ、着物に染みの様に広がっていく。顰めた眉がいかにも追いつめられたかの様だ。
 「あるに決まってんだろ」
 と一言、口調に反してほんの少しだけ微笑んで言った。顔をあげた零の頬に手を添えて。
 「大事なものを失くして泣いて。それでびびって遠ざけてちゃ失くしてるのと同じ。どっちも一緒なら、大事なものが無くなってしまった時に泣いた方がよっぽどマシだ」
 頬に添えた手に力を込め零の顔を固定し、瞳を真っ直ぐ見つめて言った。だから逃げるな、と一言付け足して。そして直ぐ、ぼろりと一際大きく綺麗な涙を一粒溢すとそれきり涙を流さなくなった。
 「ありが、と……ごめん、ね……」
 ごしごしと着物の袖で涙を拭うと、晋助に微笑みかけた。今まで見た事も無いとても綺麗な笑顔。
 「逃げないよ。失くさない為にも、守る為にも。たとえ全てを失くしても」
 指切り、と小指を絡めて固く約束をした。ぽん、と頭を撫でてやると、ぐらりと零の身体がぐらついた。間一髪の所で支え切るとすーすーという寝息が聞こえた。
 このクソガキめ、と一言呟き零を背負って皆の待つ学舎へ歩き出した。
 六、約束
 
