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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: その歌の意味を ( No.5 )
- 日時: 2009/12/19 17:33
- 名前: 雪子 (ID: Gb5QJ608)
- 四 
 重いドアを開ける。暗く狭い室内。二人でギリギリのスペースだ。
 彼女の姿は暗い事からもいないとわかった。
 けれど、いつもの事だ。彼女にもプライベートはあるしアルバイトもある。
 ベースを置いて、椅子に座る。
 しばらくぼっとして、コーヒーを入れに台所へ向かった。
 「ただいま」
 扉が開いた音がして、彼女の声が続いた。
 「おかえり」
 義務的に答える。椅子に座っていたので─座っていると扉が斜め後ろに来るのだ─、振り返りながら。
 彼女の微笑みがいちいち気になる。
 「どうだった?」
 彼女は自分の前の椅子に座り、ライブの事だろう事を聞く。
 カーテンが揺れ、夕日が差し込める。
 「ボーカルの調子が良くてね、それに客がちょっと多かったよ。自分もそんなにミスはしなかったつもりだけど」
 素直に答える。ベースがさほどうまいと言われた事は無いが、ミスも多いと言われた事もなかった。
 「そうか、よかったね」
 笑顔。腰を浮かせ、自分の頭に手をおいてくる。
 手のぬくもりと間近に見える笑顔。
 美しく、眩しい。夕日がそれを演出している様だ。
 そこまで考えて、自分が子供みたいで、気恥ずかしくなった。
 「ありがとう」
 手を上げて彼女の手首をつかみ顔の所に持ってきて手の甲に軽くキスする。
 「ふふ」
 その笑顔は、とても心地が良い。
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