二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.5 )
- 日時: 2009/12/31 19:55
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)
- Memory2 ギルドの丘 
 私たちは海岸を離れると、しばらく歩いた。ミニリュウはこの世界に住んでいるだけあって、色々とこの地域の事は詳しいらしい。ギルドに向かう途中に、色々と話してくれた。
 「あ、分かれ道じゃない?」
 話していたから気づかなかったが、いつも間にか広い交差点に出た。ミニリュウは看板を見て、私に説明する。
 「この交差点をまっすぐ行けば、ギルドがある丘に行けるよ。右に行けば、冒険に行けるけど、それは後で説明するね。で、左に行けば“トレジャータウン”」
 「トレジャータウン?」
 聞いたこともない名前に私は反射的に問い返した。
 ミニリュウは笑って説明する。
 「ポケモンたちが色々なお店を開いている広場だよ。銀行や商店、倉庫……みたいに、色々なお店があるんだ。そして、ポケモンたちの広場でもあるの」
 「へえー」
 私は言いながら、人間の世界で言う市場みたいな物なのかなって思った。結構楽しそうだ。
 「じゃあ、ギルドに行こう」
 ミニリュウは言うと、まっすぐ進み、丘を登り始めた。私もすぐに後を追う。人間の姿なら、こんな丘なんてラクショウだけど、足の短いメリープだから大変だ。
 やっと汗を拭って上ると、木で作られた可愛らしい門があった。いかにもポケモンが作ったことを表しているシンプルな門だ。けれど、それなりに花が飾ってあったり「ギルド」という文字まで刻まれている。
 「わあー!」
 門をくぐると、私は思わず歓声を上げた。
 丘は、レンゲやラベンダーなどの美しい色とりどりの花でいっぱいだ。その花々が、風に揺らされてザワザワと音を立てている。そして、さまざまなポケモンの絵が描かれたテントがいくつもはってある。キマワリやドゴーム、ビッパにヘイガニ、チリーンにグレッグル……。それらのポケモンの絵が描かれたテントでは、そのポケモンが生活していると考えられる。ディグダやダグトリオが生活しているような穴まであった。
 そして、一番この丘で大きく、立派なテント……。プクリンとぺラップの描かれたテントだ。テントの入り口には木にランプが吊るされ、旗まで掲げられていた。旗には、許可証と同じプクリンの絵が描かれている。
 丘の中心には、さまざまな探検隊の格好をしたポケモンたちが話に夢中になっている。
 「ここは……」
 私は呆然とあたりを見た。ポケモンは、自分たちでこんな物を作り上げたんだ……。すごい。
 「ここは……。ギルドの広場だよ。さあ、あの一番大きいテントへ行こう」
 緊張した声でミニリュウが言った。私たちは、並んで歩き出す。周囲で話していたポケモンたちが、いっせいにこちらを向いた。
 「あの子たち、可愛いですわー。キャー!」
 「何しに来たんでゲスかねー」
 「ヘイヘイ! 何か親方様にお願いでもしに来たんじゃねーのか」
 ……などと、さまざまな話し声が聞こえてくる。私は体に力を入れすぎないように慎重に歩いた。体に少しでも力を入れすぎると、電気を放ってしまうから、気をつけなければならない。
 私たちはチョコチョコした足取りで、一番大きいテントの前へ立った。
 〜つづく〜
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.6 )
- 日時: 2009/12/31 19:56
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)
- 「ミニリュウ、この大きなテントは何か特別なの?」 
 私は周囲のポケモンたちの視線を気にしながら、ミニリュウに聞いた。ミニリュウも、緊張しているのか焦点の定まらない目で答える。
 「うん。なんたって、このギルドの丘で一番大きいテントだからね。このテントには、親方様のプクリンと、その一番弟子のぺラップがいるんだ」
 「ふうん。じゃあ、この目の前にある落とし穴みたいな網は何?」
 足元にある穴を指差して私は言った。プクリンたちのテントの入り口の前には、ポケモンが一匹は入れるくらいの大きな穴がある。きちんと網が張ってあって、乗っても落ちないようになっているけど、何か怪しい。まさかとは思うけど、私たちを落として捕まえる気じゃないのかな……。
 「これは……、何ていうか、見張り番がいない代わりにあるものかな。この網に乗ると、地下にいるポケモンが乗ったポケモンの足形を見るんだ。そして、許可証を求めてくる……。じゃあ、私がさきに乗るね」
 ミニリュウは息を吐くとストンと網の上に乗った。不意に地下から声が聞こえてくる。ミニリュウがビクッと肩を震わせる。
 「これは、ミニリュウの足型! ミニリュウの足型! 何の用? 何の用?」
 「わっ、私、探検隊になりたくて……」
 勇気を振り絞ってミニリュウが言う。また、地下から声が聞こえた。
 「わかった。まず、そばにもう一匹いるポケモンも網に乗れ」
 私の事を言っているみたいだ。しかも、私はポケモン扱いされているらしい。姿がポケモンだから仕方が無いのか……。
 「ミーシャ、網に乗れって」
 ミニリュウが私を振り返って言った。仕方なしに私も網に乗る。一人で網に乗っているのが怖かったのか、ミニリュウは、私がそばにくると安心したように一息ついた。
 「この足型は……。えっと、メリープ? ……ま、いっか。足型はメリープ! 足型はメリープ!」
 「おい! 何がま、いっか、だよ。全然よくないぞ!」
 地下で何やらもめているらしい。しばらくもめ事は続いたようだが、私たちが困っていると声が聞こえた。
 「すまなかったな。探検隊になりたいんだって? なら、許可証を網の隙間から落としてほしい」
 「うん。わかった」
 ミニリュウは答えると、許可証を網の隙間に押し込むように落とした。コトン……と石の許可証が落ちた音がし、すぐさま声が飛んでくる。
 「許可証確認! 許可証確認! 入っていいぞ!」
 ようやくテントに入れるようになって、私たちはほっとした。入るだけでも、これだけ大変なんて、よほどプクリンという親方は厳しいのだろうか……。
 「ミーシャ、入ろうよ」
 ミニリュウが急ぐように言う。私はごくりと喉を鳴らすと、テントにするりと入った。
 〜つづく〜
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.7 )
- 日時: 2009/12/31 19:58
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)
- 「うーん。やっぱり、見かけは大きくても中は狭いね」 
 私はテントの中に入ったとたん、騙されたような気になった。やはり、所詮テントの中。見かけから強いポケモンがたくさんテントの中にいて、よほど広いものかと思っていたからなおさら騙されたような気分になる。
 「た、確かに狭いけど……。でも、よく見て。ここは、このテントの玄関みたいな物らしいよ。だってほら、地下に穴が続いているもの」
 ミニリュウが宥めるようにゆっくりと言う。私はその言葉に誘われて、じっと地面を見つめた。テントの狭さだけに気を取られて、足元の方に目が行かなかったが確かに地下深くに穴が続いている。そして、きちんと穴から地下へ降りれるように木の梯子まで穴の奥へ続いていた。
 「じゃあ、このテントはギルドの丘での県庁所在地みたいな物だね」
 私はポケモンたちの文化に感心しながら言った。聞いたこともない言葉を私が言ったので、ミニリュウは首を傾げる。
 「県庁所在地?」
 「ううん、何でもない。さっ、降りてみよう。私がさきに梯子を降りるね」
 言いながら、恐る恐る梯子に足をかける。まったく、ポケモンになるならもうちょっとマシなポケモンがよかった、と思う。例えば、伝説や幻のポケモンになっていたら、すっごくよかったのに。まあ、そんな都合のいい話はないと思うが。梯子を降りる時も、この足の短さは不便だ。
 ミニリュウは、くねくねした体をうまく梯子に巻きつけて降りれるから、うらやましい。
 「よいしょっと」
 梯子を降りると、そこはもう別世界だった。
 地下なのに、そこは広い。そして、さまざまなポケモンたちが、探検の身支度(みじたく)をしている。また、大きな掲示板が二つあってそれを眺めているポケモンもいた。
 「さっき、探検隊になりたいと言って来たのは、おまえたちだな?」
 賑わう中、声が聞こえた。ビクッとして、私たちはきょろきょろする。見ると、偉そうに胸を張っているぺラップがいた。顔が音符の形をしている鳥ポケモンだ。翼の色は驚くほどカラフルで、オウムに似ている。
 「あ、こんにちはっ」
 ミニリュウが緊張して何も言わないので、私が挨拶をした。人間の世界で挨拶は嫌というほど言わされてきたから慣れている。
 「私は情報屋のぺラップだ♪ そして、親方様の一番弟子。おまえたちの先輩ってことだ。よく覚えておきな」
 やけにテンションの高いポケモンだ。機嫌がいいらしく、ニコニコしている。
 「あの、私たち、探検隊になりたいんだけど……平気、かな?」
 ようやくミニリュウが小さく声を出した。ぺラップがやけに驚いた表情になる。
 「えっ! 本当に? おお、いまどきそんな子がいたとは……。ギルドの修行が嫌で、脱走するやつもいるのに……」
 「そ、そんなに厳しいの?」
 「い、いやいやいやいやっ! そんなに厳しいことはしないさ。さ、そうと決まったら、親方様の所へ行こう。さあ、私についておいで♪」
 ぺラップは不意にあわてて羽を激しくバタバタすると、すたすたと歩き出した。あわてた時に羽をばたつかせるのは癖らしい。
 私たちは顔を見合わせながらも、ぺラップの後へついていった。ぺラップって、なんだか怪しいやつだなあ。
 〜つづく〜
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.8 )
- 日時: 2009/12/31 19:58
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)
- ぺラップは、もう一回梯子を降り地下二階まで来た。まったく、何階まで地下があるのって思ったら二階までだったみたい。 
 地下一階は大きな掲示板があったりポケモンたちが身支度をする場だったが、地下二階はガラーンとしている。あまりポケモンはいないし、目立つ物といえば二つくらいだ。
 一つは大きな穴だ。穴の奥には太い木の蔓が続いていて、蔓をつたって降りれるようになっている。この蔓は梯子代わりになっているらしい。穴があるから地下三階まであるのかと思って降りようとすると、ぺラップにさっそく怒鳴られた。この穴は地下へ行くものではなく、テントの入り口にあった網のかかった穴に続いていてその穴から網の上に乗ったポケモンの足型を見極める、とのことらしい。
 二つは、やけに大きく豪華な扉。木で出来ていてふちは黄色、他は赤で塗られた扉には、「ノックをしてから入ってね。じゃないと、ビックリしちゃうから」という文字が雑に刻まれている。
 ぺラップは、その扉の前まで来ると、こちらをクルリと振り返った。
 「ここが親方様のお部屋だ。いいかい、変なまねするんじゃないよ。……親方様ー、ぺラップです♪ 入りますね」
 ぺラップは言うと、くちばしでコンコンと扉を叩いた。ノックのつもりらしいけれど手ではなくくちばしでやるのを見て、私は思わずぷっと笑う。すると、ぺラップがキッとこっちをにらんだ。私とミニリュウは「ひっ!」と声をあげる。
 「静かにおし!」
 言った後はコロッと態度を変えて、扉を開け親方様の部屋に入る。なんという二重人格……。
 私たちも、引っ張られるようにして部屋に入る。
 部屋には大量の大きくおいしい種類のりんご“セカイイチ”が置かれ、二つのロウソクがプクリンを挟むように置かれていた。プクリンはピンク色のウサギの体をしている。ただし、耳以外の体は普通のウサギより大きくおにぎりを崩したような体に顔があるみたいだ。ロウソクの火がプクリンの体をオレンジに染める。プクリンの顔をよく見ようと目をこらすと、プクリンは後ろを向いていた。
 「あのー、プクリン……さん?」
 ぺラップもプクリンも何も言わないので、ミニリュウが探るように言った。すると、プクリンがくるりんっと振り返る。そして……。
 「やあ♪ ぼく、プクリン。このギルドの親方だよ。君たちは、ここに何をしに来たの?」
 「え……。あの、その……」
 親方様と言うからものすごくおっかない人かと思ったら、まるで小さなお子様みたいなポケモンだ。
 想像していたのと違いすぎて私もミニリュウも声がでない。そんな私たちを見て、ぺラップがささやいた。
 「おい、親方様の質問に答えな」
 そう言われて、やっと目が覚めた。ミニリュウはまだ驚いているらしく、プクリンをじっと見たまま何も言わないので私が言う。
 「私たち、探検隊になりたいんです」
 「オッケー。じゃあ、探検隊として登録するから、チーム名を教えてくれないかな?」
 「チーム名……」
 これはさすがに私一人では決められない。探検隊をいっしょにやっていくのはミニリュウだから、ミニリュウの意見も取り入れないとだ。
 「ミニリュウ。探検隊のチーム名は、どうする?」
 私が話しかけると、今まで寝ていたかのようにミニリュウがはっと目を覚ました。そして、うーんと悩む。
 「チーム名とかは考えていなかったよ。だけど、キセキを起こすような……すごい探検隊になりたいなあ」
 キセキ……? キセキを起こす探検隊……。「キセキ」とくれば、もうチーム名は決まったようなものだ。
 「あの、『キセキーズ』でいいですか?」
 ビー玉のようなクリンクリンの丸いプクリンの目を、私はじっと見つめる。プクリンはうなずいた。
 「うん、いい名前だよ。本当にキセキを起こせるような探検隊になれるように頑張ってね♪ じゃあ、ぺラップ。ギルドのメンバーを連れてきて」
 ぺラップに命令する。なぜかがっくりとうなだれながら、ぺラップは部屋から出て行った。
 〜つづく〜
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.9 )
- 日時: 2009/12/31 20:00
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)
- しばらくすると、ギルド全員のメンバーを連れてぺラップが戻ってきた。なぜかみんなうかない顔をしている。もしかして、私たちが弟子入りするのが嫌なの……かな。 
 「じゃあ、みんな自己紹介。ぺラップとぼくはさっきしたから、もうしないよ。まずは、ミニリュウたちから」
 プクリンは、楽しそうに踊りながら言った。
 ミニリュウが緊張しながらぺこりとお辞儀をする。
 「私、ミニリュウです。えっと、ずっと前から探検隊にあこがれていました。よろしくお願いします」
 言い終えると、私の方をチラッと見る。私もゴクリと喉を鳴らす。こういう自己紹介って苦手だ。ポケモンたちの目線が怖いというか、緊張するというか。
 「えっと、私はミーシャ。この世界に来たばかり……じゃなくて、この世界のことはあんまり詳しくないから色々と教えて下さい。お願いします」
 余計な事は話さないように気をつけて言った。私たちの自己紹介が終わると、まずドゴームが私たちの前に出る。紫色の体をしていて、手や足は短く体のほとんどが口だ。その大きな口からは、大きい歯が見えている。
 「ドゴームだ。朝、ギルドのメンバーを起こしに来る。よく覚えておくんだな」
 普通にしゃべったのだと思うが、ものすごく馬鹿でかい声だ。普通に話しても怒鳴っているような声なのに、本当に怒鳴ったらどうなるんだろう。
 次にヘイガ二があいさつする。ザリガニのような体で、その手はハサミになっていた。体は赤くつるつるだ。
 「ヘイヘイへーイ! おいらはヘイガニ! 別に覚えてもらわなくてもいいぜー。以上!」
 ……と、やけにかっこつけた声で言うと、キマワリと入れ替わる。キマワリは、コホンと咳払いした。顔は黄色い花だ。目は細い。体は茎で、手は大きな葉になっている。
 「わたくしはキマワリですわー。自己紹介なんて、照れますわー、キャー。弟子入りの祝福として、花をどうぞ」
 言うと、黄色い顔を薔薇色に染めて舞を舞いだした。キマワリの周囲から桃色の花びらと粉が溢れ出る。<はなびらのまい>の技だ。キマワリは舞を終えると、礼儀正しいチリーンと入れ替わった。チリーンは風鈴の形をしていて、全体的に水色だ。頭のてっぺんにベルらしきものがついている。ただし、一番下は赤い。
 「私はチリーンです。食事の支度を毎日させていただきます」
 そして頭のベルを一回鳴らしてから、ディグダとダグトリオと入れ替わった。二匹同時に私たちの前に出て、ダグトリオがあいさつする。ディグダはモグラの形をしていて、鼻が大きく赤い。ダグトリオは、ディグダを三個くっつけた姿みたいだ。
 「私たちは親子だ。息子のディグダは、ギルドの入り口の網に乗ったポケモンを見極める見張り番を、私は掲示板の情報の更新をしている」
 次に、やけにニヤニヤ笑うグレッグルがあいさつした。青紫色のカエルで、目がニヤニヤしている。何が面白いのか、くくっと笑い声を上げるのをこらえている。
 「わしはグレッグル。ま、特に目立ったことはやっていないな」
 最後に、少しおどおどした様子でビッパが挨拶した。ビーバーが細長く長方形になった体をしていて、毛並みは茶色だ。尻尾はフワフワな小さな綿菓子のようで気持ちがよさそう。出っ歯が可愛らしい。
 「えっと、あっしはビッパでゲス。君たちが来るまでは、あっしが一番後輩だったんでゲスが、あっしにも弟子ができて嬉しいでゲス」
 ビッパが戻ると、ぺラップが冷や汗を流してうつむきながら言った。
 「えー、では、新しくギルドの仲間に入ったこの者たちの祝福に、お、親方様の<ハイパーボイス>を一人一人受けてもらいます。ではまず、ドゴームから」
 ここは空気を読んで、何も言わずにドゴームがプクリンの前へ出た。ドゴームは、きゅっと縮こまる。
 プクリンが、大きく息を吸った。
 「いくよ♪ 祝福、祝福、タアアア—————!」
 「わ—————ッ!」
 一瞬、部屋の中に雷が二回落ちたような感覚がし、プクリンの口から光の輪が風といっしょにいくつも出てきた。ものすごいパワーで、見ているこっちまで頭がクラクラしてきた。祝福が終わると、ドゴームはフラフラした足取りで「うー、強烈」と言って戻る。
 「な、何か、私たちギルドに入ってよかったのかな……」
 全員が<ハイパーボイス>を受けた後にミニリュウがぼそりと言った。プクリンがにっこりする。
 「心配いらないよ。こうすることによって、みんなの頭にはしっかりと君たちの事が刻まれたから♪ おめでとう。君たちもこれから探検隊だよ」
 そう言って、私たちにバッグと、二つのバッジ、古ぼけた地図を差し出した。
 「これはトレジャーバッグ。君たちが活躍すればするほど大きくなる、不思議なバッグだよ。この二つのバッジは、探検隊バッジ。そして、この地図は不思議な地図。この世界のすべてが載っているよ」
 「ワアアア! ありがとう!」
 ミニリュウは言うと、遠慮せずにそれらを受け取った。そしてバッグの中に地図を入れて、肩からかける。バッジも胸につけた。私もなんとなくバッジをつけてみる。結構、ポケモンにしてはよく作られたバッジだった。卵のような形に、小さな羽根が付いている。
 「じゃあ、後はよろしくね、ぺラップ」
 プクリンは言うと、クルリと後ろを向き山のように詰まれたセカイイチに夢中になってしまった。ドゴームたちの弟子たちも、ゾロゾロとプクリンの部屋を出て行く。
 「お前たち、私についてきな。初仕事だよ」
 何をしていいかわからなくて、私たちがウロウロしているとぺラップが声をかけた。私たちは、初仕事と聞いて期待をしながらぺラップに歩み寄る。
 「ねえ、ぺラップ。初仕事ってどういうのなの? もしかして、もう探検とかするのかな!」
 ミニリュウが期待と興奮で瞳をキラキラさせて言った。期待するのはいいけれど、もしハズレだったらショックが大きいからなー。多分、初仕事だから探検なんてやらせてくれないだろう。私はあまりハードな仕事でないことを願おう。
 ぺラップは、ミニリュウの質問には答えずに地下二階から地下一階へ上がった。そして、二つの掲示板のうち、やたらと字が多い紙は張ってある掲示板の前に来る。掲示板にはいくつもの紙が張ってあった。依頼書のようだ。
 「うーんと、新米のおまえたちにはこれがいいかな。ほれ、見てみ」
 掲示板から一枚の紙をはがすと、ぺラップは私たちに差し出した。ミニリュウがその紙を興味津々に受け取る。紙には、ナゾノクサからのお願いが書いてあった。
 《こんにちは。私、ナゾノクサです。ある日、私が森を散歩していたら、大事な大事なオレンの実を風にさらわれてしまったのです。病気がちな妹に食べさせてあげようと思っていたオレンの実。どうしても探し出したいのですが、森のどこにあるかわかりません。しかも、その森の奥は不思議のダンジョン。怖いポケモンや森の主もいるって噂だし、そんな所へは探しに行けません! どうか探検隊のみなさん、オレンの実を取って来て下さい。その森は、剣のような冷たい風が吹くことから、“剣風の森”と呼ばれています。よろしくお願いします》
 読み終えると、私はほっと胸をなでおろした。いきなりハードな依頼だったらどうしようかと思っていたが、大丈夫そうだ。私はポケモンになったばかりだから、技の出し方とかよくわからないからなおさらよかったと思う。
 しかし、ミニリュウは依頼を読み終えると、不満そうに顔を上げる。やっぱり期待していた分、ショックが大きいらしい。
 「これって、ただ落し物を拾ってくるだけじゃないの! もっと探検隊らしい事がしたいよ」
 「おだまり!」
 ぺラップが声を張り上げた。ミニリュウが「ひっ」と声をあげる。
 「いいかい、よく聞くんだよ。新米のおまえたちには、大事な財宝がかかっている探検なんてさせられるわけがない。地道に努力して、探検が出来るくらい上達するんだな」
 そして、コホンと場の空気を切り替えるように咳をすると、話を変えた。
 「で、オレンの実をナゾノクサが落としたという森は“剣風の森”と呼ばれている、不思議のダンジョンだ」
 「不思議のダンジョン?」
 あまりに変な名前が出てきたので、私は問い返した。すると、ミニリュウが説明する。
 「うん。不思議のダンジョンっていうのは、もともとはちゃんとした森や川だったものが、昼と夜が狂い始めてきた影響で迷路のようになった場所を言うんだ。しかも不思議のダンジョンは、入るたびに地形も変わるし、そこで倒れると道具も半分くらい減少して、入り口に戻されるっていうとっても不思議な場所。おまけに、暴走したポケモンが襲ってくるしね。だけど、そういう不思議な場所だから、お宝みたいな新しい発見が見つかるんだよ」
 「なんだ、よくわかっているじゃないか♪」
 ぺラップは、自分の説明する手間がはぶけて喜んでいる。けれど、不意に脅かすような顔で言った。
 「でも、剣風の森には恐ろしい森の主がいるって噂だ。新米のおまえたちには厳しい。だから、ヘイガニをいっしょに連れて行かせるからな。心配はいらない」
 やっぱりこういう展開になるんだ、と思った。しかも、ヘイガニって……あの「ヘイヘイヘーイ!」とか言ってるやつの事? 頼りないな。
 私がうんざりしていても、ミニリュウははりきる。
 「わかったよ。私たち、ちゃんと行ってくるからね! キセキーズ出動だよ、ミーシャ!」
 そう言うと、ミニリュウはバッジを高く掲げた。
 〜Memory2終了〜
