二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: —D灰 全テノ運命ハ廻リ出ス— アンケ実施中!! ( No.216 )
- 日時: 2010/05/22 20:56
- 名前: アリス (ID: c52Pxlps)
- —第33夜 二人ノ関係— 
 ***
 「嗚呼…やはり弱い…貴様などでは私に敵う筈もない…以前お前を窮地に追い込んだ時に現れた奴はまだ現れないのか!!」
 苛立った様子の夜をスイはイノセンスで押し返した。
 今のスイの力では夜を倒せる程強くはない。
 いくらアクマを数千体倒せても、アクマとノアでは位が違う。
 アクマはイノセンスで簡単に倒せるが、ノアはイノセンスで簡単に倒せる相手ではないと思い知らされる。
 「私に分かる筈もありませんよ!!あの人は私が制御したり出来る相手ではない!!たまに話し掛けられたりするだけの関わりです!!しかも前にってどういうことです!?」
 「私はお前を初めて見た時にお前の背後に回り、お前の意識を失わせた。知っている顔だったからな?お前は意識を失った筈なのにすぐ立ち上がったよ。九条アリアとしてな!!」
 ———そう…あの凛とした表情を浮かばせながら!!
 ***
 私がノアになってから初めて一つの村を壊滅させた。
 伯爵の命令だったし、あまり私は人を殺すことに違和感自体感じなかった。
 だから私は村を破壊した。
 そこにたまたまいた、九条アリア。
 あいつは私が殺した小さな小さな少女を抱きかかえ涙をボロボロと溢していた。
 何故そんな少女の死なんかに泣けるのかが私には理解出来なかった。
 あいつは私に鉄の様な扇———つまりイノセンスを向けた。
 私は負ける筈もないと油断しながら戦いを始めた。
 暫くして私は呆然とした。
 負ける筈もないと思っていた相手に負けてしまい、私は顔の前にイノセンスを突き付けられていた。
 嗚呼…私は死ぬんだろうな…。
 そう思いながら私は九条アリアを見つめた。
 あいつはそっとイノセンスを私の顔の前から退けた。
 そして。
 『私は…貴女を憎みます…けれど更に…私は自分が憎い…!!彼女等を守れなかった自分が…!!』
 涙をボロボロと溢すあいつが、何故か見覚えのある気がして。
 私はいつもなら殺す所だが泣きじゃくるあいつを殺さずにその場を後にした。
 何故かあいつが妙に気になってまた村に戻って行った時だ。
 伯爵があいつの前に立っていた。
 あいつは最早敵として伯爵を見ているのではなく、最後の賭けとして伯爵を見ていた。
 『貴方は敵…けど私は願いたいんです…彼女がまた笑顔で笑いかけてくれるのを………お願いです…アクマとしてでも良い…彼女の心と一緒にいさせて下さい…』
 切に願う、あいつ。
 叶う筈もないのに。
 伯爵が敵の願いを叶えてくれる程優しくないとわかっているのに。
 無駄なのに。
 伯爵はあいつの願いを叶え、少女の魂を呼び戻した。
 そしてあいつの願いも叶わぬまま少女はあいつの体へと入って行った。
 そして、“スイ”が完成した——…。
