二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 好きだなんて言ってないからっ!【銀魂】 ( No.36 )
- 日時: 2010/03/13 17:59
- 名前: 夕詠 ◆NowzvQPzTI (ID: hzhul6b3)
- 参照: http://id45.fm-p.jp/347/yuu0626/
- 【第八訓:彼女の瞳に涙が浮かぶ、】 
 「———・・・桃」
 ———なんだろう・・・暖かい。
 「———桃、しっかりしろ!!」
 あたしは目を覚ました。
 視線の先には、鉛の空をバックにかがんであたしを覗き込むような姿勢の晋助。
 ・・・何、鉛の空っていうことは、真白に淀んだ太陽が砕けて、耳鳴りを尖らせるとか、そういう感じってことですか。曇天ってことですか。
 「・・・違ェよ。よくこの雰囲気でそれ言おうと思ったな、お前」
 「ある意味尊敬するぞ」
 あれ?ヅラいたの?
 「ヅラじゃない桂だ。結構前からいたぞ。その手当てをしたのも俺だ」
 ホントだ。包帯が巻いてある。
 「———・・・一応、礼だけは言わない事も無い・・・」
 「ったく素直じゃないのう。もっと素直になれとお前のお師匠さんの狂夜も言っておったじゃろうが」
 いつの間にかいた辰馬が口を開いた。
 「・・・そうだ、師匠は!?」
 その場の3人は無言で地面を見た。
 そこには未だ師匠が倒れていた。
 「・・・そういう、こと・・・か・・・」
 「・・・桃・・・」
 晋助たちは心配そうにあたしを見つめた。
 あたしは必死に笑顔を作る。
 「だ、大丈夫だよ・・・っ!!心配しない、で・・・っ」
 大丈夫。さっきからその言葉とは裏腹に、溢れる涙が頬を伝って止まらない・・・。
 「・・・高杉、俺たちで狂夜を運んでくる」
 「あぁ、頼んだ」
 ヅラと辰馬が師匠を運んでいってから暫く経った。
 あたしは未だ膝を抱えて泣いていた。
 すると突然体に自分の体温とは別のぬくもりが感じられた。
 ・・・え、嘘、後ろから抱きしめられてるっっ!?
 「え、ちょ・・・ちょっと、しんす・・・」
 「———泣いてんじゃねーよ」
 振り払おうとしたのに、晋助の言葉が耳に掛かって・・・。
 「・・・な、泣いてないしっっ!!」
 「そんな強がりだと可愛くねぇぞ?」
 「余計なお世話よ。・・・それに師匠は可愛いって言ってくれたもん」
 さっきから頭を廻るのは師匠の事ばっか・・・。
 晋助と話してても、それは変わらない。
 あたしにとって師匠ってどれだけ大切な存在だったのよ・・・。
 師匠置いてかないで下さいよ。
 ———・・・寂しいじゃないですか。
 「また狂夜かよ。どんだけ大好きなんだって話だぜ」
 しょうがないじゃんか。それだけ大切だったのよ。
 多分、今日の事は一生忘れられない記憶として刻み込まれるんだろうな・・・。
 「・・・じゃあ、俺が記憶を上書きしてやるよ」
 「は・・・?」
 晋助があたしの顎を晋助のほうにむけたと思ったら、その瞬間にキスをされた。
 やっと口が離され、晋助があたしを見て妖しい笑みを浮かべた。
 「ななな、な、何すんのよっっ!!」
 「何って、記憶の上書きだろ。初キス記念日に変えてやろうと思ってなァ」
 一瞬だけ晋助の笑みが影を帯びる。
 「・・・これからは、俺が守ってやるよ」
 「・・・か、勝手にすればっ?」
 あたしはそれから攘夷戦争を戦い抜いた。
 攘夷戦争後には攘夷活動をやめ、真選組に入ったっていうわけ。
 「・・・で、あってますよね?師匠」
 「ったく・・・俺が説明するって言うてんのに」
 っていうか、師匠。
 何で生きてるから説明するって言ってませんでしたっけ?そこのところ何も触れてないですよ?
 「そこは企業秘密ってことで。後のお楽しみぐらいに思っとき」
 は、はぁ・・・。
 そういえば師匠は今、何をしてるんですか?
 やっぱり攘夷活動ですか?
 「俺はまだ鬼兵隊におるんや。晋助は俺の弟子のファーストキスを奪った奴やからなァ。しっかりマークしとかへんとアカンねん」
 し、師匠、なんでそのことを・・・!!
 「晋助に聞いた」
 ———高杉、後で覚えとけよっっ!!
 「桃、晋助って呼ばんくなったんやなァ」
 「・・・ええ、昔と今とはちゃんと割り切ってるので」
 ———昔は昔、今は今。
 そう思ってないと、やってられないんです。
 特に、今回みたいな仕事は。
 「———それって、どういう意味や?」
 「あたし達、真選組が今追ってるの———」
 「高杉・・・晋助なんです———」
 その言葉を聞いた師匠の顔は、笑っていなかった。
