二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBOREN!】幻覚花弁。—*angraecum*— ( No.10 )
- 日時: 2010/03/26 11:25
- 名前: むく。 ◆Y1ybAG.6mU (ID: kb49zp4f)
- ◎ #02 ミステリードール 
 たとえ星の数だけパラレルワールドがあったとしても白蘭はその全てを共有してるわけであって、彼に出会ってしまったら運命を変えることはできない——。
 例えば何か特別なルートでパラレルワールドに迷い込んでしまったとしよう。
 そこにいた自分は大学生で、政治家になるために四苦八苦して勉強に励んでいた。
 ——その隣に白蘭がいたら?
 しかもその上、話しかけられてしまったらどうする?
 「僕の元に来てよ」なんて事を。
 けれど自分は政治家になりたいから今こうして勉強している。
 その夢を諦めるのが嫌なのは当たり前の事だ。
 だから何とかして今自分が生きている時間に戻り、「自分は政治家になるんだ!!」と必死に勉強、勉強、勉強。
 そしてまたパラレルワールドへ行く。
 そのパラレルワールドでは既に自分は政治家になっていて書類を片付けている最中であった。
 するとドアを開けて入ってきたのは白蘭で——…
 というような感じで、どんなに”もしも”の数があっても白蘭に出会うのは絶対なんだ。
 私の場合は出会った初日にマリオネットになってしまったけれど。
 私はその”操り人形状態”から解放されるために、自らの意思でミルフィオーレに所属したってわけ。
 白蘭に近づくにはこの方法しかないから。
 そして私は上の空に見回りを続けた。
 そもそもこのアジトは整備が厳重であるため、今まで部外者が立ち入った事なんてないけど。
 と、無駄に長い廊下の突き当たりに来た時、
 「痛っ…」
 何者かに衝突した。
 「おわっ。わ、悪ぃ!」
 私は一歩後ろに下がって顔を上げる。
 「野猿…」
 同じブラックスペルの服を着た同じくらいの背の少年が驚いた顔で見ていた。
 因みに彼とは初対面である。
 何故名前を知っているかといえば…、白蘭の意思で無理にファミリー全員の名前を覚えさせられたから。
 「なんでオイラの名前知ってんだ?」
 「同じファミリーだから」
 野猿は上の方で結んでいる長い髪の毛を微かに揺らしながら、
 「太猿アニキの事も?」
 「うん」
 「γアニキは?」
 「知ってる」
 一問一答に会話を進めて行く。
 質問するばかりの野猿は気まずくなったのか三歩程度後ずさった。
 「お前、なんか謎めいた人形みたいだな」
 「……そう」
 野猿の言った言葉は確かに正しい。
 実際に私は人形なのかもしれないから。
 人間としてではなく、人形としてこの世を彷徨っているのかもしれない…
 「じゃあな」
 野猿の子供っぽい声が私を現実に引き戻す。
 「さよなら」
 私は静かに言い、この場から去ろうとすると、
 「ああっ!」
 野猿が何かを思い出したように声をあげた。
 「一つ忘れてた。お前の名前は?」
 「…中津郁」
 私はボソっと呟いて、振り返らずに歩き出した。
