二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 《銀魂》凛として咲く花の如く ( No.295 )
- 日時: 2010/09/24 21:18
- 名前: 月兎 (ID: 3ePGpESz)
- 第二十二訓「正夢でロクなことなんてない」 
 『駄目じゃ、いけない、止めないと…』
 その日の夜、恐ろしい夢を見た。
 ワシの大切な場所が、大切な思い出の場所が、大切な人が紅く染まる、燃える…
 でも火を放ったのは、
 それは、ワシにとってそれは何よりも哀しいこと。
 「おいおいおい、嘘だろこりゃ」
 朝起きたら煙が上がっていた。
 万事屋から遠く離れたところ、昨日だ…昨日訪れた依頼人の屋敷が燃えていた。
 「ヤバいアル、燃えてるヨ」
 大きな音で早起きした万事屋が起きて最初に目にしたのは煙の上がる方を黙って見つめる雪羽氷の姿だった。
 「よかったな、大嫌いな場所が燃えて」
 でも、そのときなんとも無神経なことを言った奴がいた。
 神凛である。
 その言葉にキッと睨みつけるようにして振り向いた雪羽氷の眼には涙が浮かんでいた。
 『お主には関係ないじゃろ!』
 「神凛さん!?」
 「おいっ!やめろ」
 「月兎族娘、なんてこと言うアルか!」
 一斉に神凛を見て罵倒をする。
 彼女はいつになく無表情で、何も言うことなく部屋を出て行った。
 「雪羽氷、気にすることないアル!あんな奴のこと」
 神楽は雪羽氷に近づいて言う。
 『…夢を見た』
 「?」
 『屋敷が燃えていた、どんどん火が回っていく…火を放ったのはあ奴だった。
 椿幸の部下じゃ』
 雪羽氷の言葉に不思議そうな顔をする。
 「夢…」
 「でも分からないアル!雪羽氷が言ってるんだからネ」
 その通りだ。
 誰もが、もう一度煙の方を見てから、外へ出た。
 — —
 『ごくろうだったな、揺義』
 顔を赤くしながら眼の前の部下に笑いかける椿幸。
 朝だというのに酒を飲んでいるのようだ、場所は酒場だ。
 『椿幸様、屋敷は全焼しました。…がこれからは?』
 『あの万事屋と雪羽氷が来ることは絶対といっても過言ではない』
 椿幸が揺義の前に差し出す、揺義は酒をそそぎもう一度一気飲みを果たした主の顔を見上げる。
 『お前の出番だ、もう人働きしてくれるか_』
 — —
 「トシ、総悟、こりゃどういうことだ?」
 久しぶりのゴリラである。
 真面目に登場したゴリラ…え?呼び方やめろって?
 ゴリラもとい局長、もとい近藤が両隣りにいる土方と総悟に話しかけた。
 「彪樫家の屋敷でさァ、火元は不明」
 「早朝の巡回中に真選組の隊士が屋敷が燃えているところを発見」
 息ピッタリで事情を説明する。
 それに近藤は頷き、今消火活動が行われている屋敷を見る。
 その時後ろから声が聞こえた。
 聞き慣れているが、よく思い出せない、ちょっと影の薄い声。
 『旦那、どうしてここに?』
 『おう、ジミー君。久しぶり、頑張ってる?』
 地味な声、真選組隊士である山崎 退の声に応えたのは【旦那】こと万事屋、坂田銀時の姿であった。
 「おいおい、テメーか」
 土方が昨日ぶりの顔に近づいていく。
 「全部焼けちゃってんだろーが。何してんだヨ」
 神楽は屋敷の前景も跡形もないものを指さす。
 「うっせーな、来たときにはもう燃えてたんでィ」
 「ゴリさ…近藤さん、神凛さん見ませんでした?」
 新八は少しさみしげな近藤に話しかける。
 顔がパァっと明るく、なる筈なかった。
 「今ゴリさんって言おうとしたよね、新八君!新八君までそう言う事言うの?」
 「すいません、姉上がいつも話しているもので」
 新八は頭を下げる。
 「え!お妙さんが俺の話を!?」
 今度こそ明るくなった、ゴリラになった。
 ストーカーの。
 「いえ、愚痴だったり呪いの言葉だったりですけど」
 どんな話を!?そう期待される前に早口で答えると新八はもう一度聞いた。
 「すいません、神凛さん見ませんでしたか?」
 「…神凛?あぁ、あの万事屋にいる子のことか?あの子なら見かけたな。
 確か、あの屋敷の隣のとこに入ってった筈だ」
 屋敷の隣には燃えてしまった屋敷をそのまま小さくしたような、少し形が違う家が建っていた。
 火は燃えうつっては無いようだ。
 「あそこに?」
