二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- †・BR・†「最後まで伝えられなかった気持ち」 ( No.2 )
- 日時: 2010/08/05 08:24
- 名前: 夜琉 ◆nFgGo2zKeY (ID: CUrDDjil)
- †☆ 第一章「最後まで伝えられなかった気持ち」 ☆† 
 story1〔悲しき現実〕
 「というわけで、明日からレギュラーは強化合宿だ。油断せずにいこう」
 『はい!』
 部長である手塚の声に、大きく返事する部員達。
 手塚の横では副部長の大石が立っていた。
 いつもと変わらない日常、いつもと変わらない行動。
 青春学園男子テニス部、一年ルーキーの越前リョーマ。それ、俺のこと。
 アメリカ・ロサンゼルス出身で、テニスの大会では四大会連続優勝という経歴を持っている。
 周りからは生意気とか、目つき悪いとか言われてる。
 けど、実力は誰にでも負けるつもりないケド。
 青学男テニは少し変わっている。
 少し変わっているところは、男テニなのに女子が居ること。
 もちろん男装はしている。
 そいつの名前は美那浦麗rei minaura。
 女子の格好していれば、普通にそれなりに可愛い。
 男装すれば、イケメン男子並みにカッコイイ。
 そんなところから行くと、むかつく。
 おまけに俺の得意技のツイストサーブも軽く打つ。
 それに色んな人のコピーとか俺とすっごい似てるし。
 何故か、性格も似てる。
 生意気なところとか、クールなところとか。
 ちょっと毒舌なところとか。
 もう一つ似てるところって言ったら顔。
 なんかそれぞれパーツが似てるんじゃなくて、雰囲気が似てる。
 目つき悪いとことか、背が小さいところとか。
 別に顔自体が似てるわけじゃない。
 俺は、そんなことを思いながら麗を軽く睨んだ。
 麗もそれに気づいたようで、睨み返してくる。
 それを見た桃先輩が俺達の間に割って入った。
 「喧嘩はいけねーぜ? いけねーよ」(桃)
 「「喧嘩なんてしてない」」(リョーマ&麗)
 声がハモる。
 思わず俺は麗を睨んだ。
 今度の麗は、少し悲しげに俯く。
 俺には理由なんて分からなかった。
 「では、明日に備えてゆっくりと休養を取るように」(手塚)
 手塚の声でハッと我に返る。
 だが、麗のあの表情が頭から離れようとしなかった。
 「解散」と手塚が言い、部員達が散らばってゆく。
 その中に、俺も混ざっていた。
 しかし麗はその部員の中には入っていない。
 ……何やってんの?
 先生と何やってんの?
 顔暗い、いつもの生意気じゃない。
 何かあったの?
 何でか目に付く麗の姿。
 消えない、消えない、消せない。
 自分でもよく分かんない。
 何だこれ? 何それ。
 意味分かんない。
 とか思いながらも、俺は家へと向かった。
 翌日。
 快晴な空の下、小鳥の囀りが聞こえる。
 何故かその声で目が覚めてしまった。
 今日から合宿となると、妙に気持ちがむずむずするのだ。
 今日から合宿……。
 強化合宿……、きついのかな。
 とかちょっと思ったりもする。
 そんなことを思いながらも、行く準備をする。
 それなりに用意はしているものの、忘れ物がないか心配。
 中身をチェックしたが、特に忘れ物はなし。
 荷物を持つと、リビングでご飯を食べて外へと出た。
 快晴の空の下……、赤い夢が始まる。
 何故か俺はそう思ってしまった。
 すると向こうの方から声がする。
 「おーい、越前!」
 「あ、桃先輩」(リョーマ)
 「“あ、桃先輩”じゃねーよ! 何でそんなテンション低いわけ? 今日から合宿だぜ? 海だぜ?」(桃)
 そのテンション低い理由の一つが、海だからなんですケド。
 海とか暑いし日焼けするし……、嫌なことばっかだし。
 正直言って何がいいか分からない。
 うん。ごもっともな意見。
 「……すっげぇ、嫌そうな顔してる」(桃)
 「だって、実際嫌だから」(リョーマ)
 キッパリと言い放つ。
 「あは、ははは……」と桃先輩も苦笑い。
 しかし本当のことを言ったまで。
 嘘などついていない。
 実際にインドア派であって、海が好きじゃないというだけである。
 本当は海が嫌いってわけじゃないケド……。
 外の天気が気になるっていうか……。
 まぁ、そんな感じなだけで。
 そんなこんなで、学校への道のりを歩く。
 二人の楽しい会話が途切れることはなかった。
 しばらくすると学校が見えてくる。
 「お、もうすぐだぜ。越前」(桃)
 「分かってるっスよ。桃先輩」(リョーマ)
 門のところで、一人の者が立っていた。
 少し近づくと誰だか認識できた。
 あの男装少女の、麗だ。
 何故か校舎を見上げている。
 その顔はいつもよりかなり曇っていた。
 昨日からおかしい……。
 絶対何かある。
 俺は行動にでた。
 スタスタと歩くと、麗の肩を叩く。
 「何してんの?」(リョーマ)
 「……今日で、校舎も見納め……」(麗)
 麗がふとその言葉を口にした。
 今日の麗は不思議だ。
 __今日デ、校舎モ見納メ?__
 どういうことだ?
 だって、今日で俺達はいなくなるわけじゃない。
 合宿に行くだけであって戦いをするわけじゃない。
 なのに、何故?
 麗の言った言葉が、心に響く。
 何故か頭から離れない。
 すると麗が我に返ったようで、リョーマに言う。
 「あ、き、気にするなよ」(麗)
 「そんな嘘だって分かってるから、信じるつもりないケド」(リョーマ)
 麗がまた、不安そうな顔をする。
 俺はふと肩に置いた手をどけた。
 それと同時に、麗が歩きだす。
 俺に声をかけることは出来なかった。
 何故? 何故そんなこと言う?
 おかしい。何かがおかしい。
 俺は……狂ったのか?
 それとも、麗が?
 違う。きっと違う。多分、きっと。
 「なぁ越前。麗はなんて言ったんだ?」(桃)
 「……今日で、学校も見納め……って言った」(リョーマ)
 「はぁ? 何だよそれ。変な奴だな」(桃)
 桃先輩が「ははっ」と笑う。
 俺には、そんな簡単なことには思えない。
 麗は冗談をあまり言わないから。
 絶対それはない。
 きっと裏に何かがある。何かが——……。
 そんなことを思いながらも、俺は部長のところへと向かう。
 いきなり歩き出す俺を見て、桃先輩も歩き出した。
 赤い夢は今、始まりだした。
