二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: −あまつき−*あの日の初恋* ( No.2 )
- 日時: 2010/08/07 21:44
- 名前: 涙水 (ID: NTE1XV0U)
- 【第二話】朧夢・弐 
 二人で部屋をでて、朝食をとる為に居間へ向かう。
 「ふわあぁ……、それにしても懐かしい夢見たなぁ…」
 鴇時が歩きながら、あくびをして呟いた。
 「夢? 鴇君なにか夢を見たの?」
 瑠璃が首を傾げて問う。
 さらりと彼女の髪が揺れた。
 「んー、あっちの世界にいたころの夢なんだけどね。
 俺小さい頃に川で溺れかけて、同い年くらいの女の子に助けられたんだよ。
 その時の夢でさ、昔はしょっちゅう見てたんだけど最近はなかったから懐かしくって」
 溺れるなんて情けないよね、と照れながら鴇時は苦笑する。
 「でも途中からぼやけて、最後まで見れなかった。
 名前も言ってたんだけど聞き取りにくくて……なんて言ってたっけ。
 確か、…さ……りさ。んー、〝りさ〟だったかなぁ?
 昔見た時ははっきりと聞いたはずなんだけど……」
 「……そうなの。残念だったね。
 でも思っていればきっとまた見れるよ。……きっと」
 瑠璃が微笑む。
 その笑顔が寂しげに見えたのは気のせいだろうか。
 ふと彼女は人差し指を顎にあてて呟いた。
 「私も見てみたいな、鴇君がいた世界。
 〝あまつき〟と〝彼岸〟はやっぱり違うのかなぁ」
 「…あまつきと……ひがん?」
 聞き慣れない言葉に、鴇時が聞き返す。
 瑠璃は一瞬しまった、と言いそうな顔をして目を見開いたが、鴇時の問いに答えてくれた。
 「あまつきは私達が生きているこの世界のこと。
 で、彼岸は鴇君が生きていたあっちの世界のことをいうの。
 …まぁ、一部の人しか知らないことなんだけどね」
 「へえ、そうなんだ。
 でもなんでそんなことを瑠璃が知ってんの?
 瑠璃って確かここ(沙門さんの寺)で住み込みで働いてる普通の女の子じゃ…?」
 鴇時がもっともな疑問を口にする。
 え、と呟いてしばらくうろたえた瑠璃は、ようやく返事を返した。
 「かっ、風の噂で聞いたの!」
 「……ふーん、そうなんだ」
 あまり気にすることなく、鴇時が納得したように頷いたので、瑠璃はそっと息をついた。
 気を取り直して前を向くと、居間の襖がもう目の前にあった。
 同じく気づいた鴇時が、開けようと襖に手をかけた時、すごい勢いで襖が開く。
 「わっ!」 「!」
 驚いて声を上げたのが鴇時で、感嘆符だけなのが瑠璃。
 「遅いぞお前達! 飯が冷めるだろう!!」
 そして、襖を開けた長い黒髪を後頭部で束ねた少女が、男勝りな口調で叱責した。
