二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂]拝啓、大嫌イナ神様ヘ。 |5up ( No.38 )
- 日時: 2010/08/22 14:20
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: dNKdEnEb)
- ■はじまりの日 
 「此の子は今日から皆さんと一緒に過ごす事になりました。
 名前は銀時です。仲良くしましょうね」
 ———─銀時。
 そう告げられた酷く華奢な子供は、銀色の髪を隠すように松陽の陰に立っていた。
 「あいつの髪なんであんな色なんだ? 爺さんみてぇ……」
 「眼も赤いぜ」
 部屋の隅に刀を抱えて座る銀時に遠くから子供達の視線が集まる。
 しかし其の視線には新たな仲間を迎えた興味心ではなく、自分達とは異なるものへの畏怖が込められていた。
 「松陽先生なんであんな奴拾ってきたんだよ」
 「俺怖ぇよ」
 (……此処もあそこといっしょだ)
 子供達は小声で話していたが其の言葉は銀時にも届いていた。
 銀時はきゅっと刀を強く抱えて俯いた。
 松陽に連れられてあの屍が溢れる場所を抜けてきた。なのになにも変わらない。
 今自分には眩しい日差しが降っているのにちっとも温かくない。
 「てめーら馬鹿じゃねぇの? あんな天パの何処が怖ぇんだよなァヅラ」
 「ヅラじゃない桂だ! しかし俺も何故銀時を怖がるのか解らないな」
 先程の子供達とは違って間近で聞こえた声に銀時は顔を上げた。
 其処には紫がかった黒髪の目つきの悪い少年と、長髪を高く結った女児のような顔立ちの少年がいた。
 銀時は自分に近付いてきた少年達を見て、目を瞬かせてせている。
 「よォ。俺は高杉晋助ってんだ、宜しくな銀時」
 「俺の名前は桂小太郎だ。いきなりだが其の髪をモフモフしてもいいか?」
 何故か紅潮した桂が銀時の髪に手を伸ばす。
 「っ、やめろォ!!」
 銀時は一瞬にして身を堅くして桂の手を払った。
 パシン、と乾いた音だけが響く。
 「何すんだてめェ!」
 「やめろ晋助!」
 桂は突然の事に驚きながらも銀時にくってかかる高杉を抑えた。
 「お前等こっちくんな……!」
 銀時は子供とは思えないような鋭い目で二人を睨む。
 僅かに震える銀時の手が刀の柄を掴んだ時———─。
 「友に刀を向けてはいけませんよ銀時」
 「せん、せい……」
 松陽の声が静かに響いた。
 松陽はまだ柄を掴んだ侭の銀時に微笑むと髪をゆっくりと撫でた。
 「お前はまだ人に触れられる事に慣れてませんからね。
 只晋助も小太郎も銀時と友達になりたかっただけなんです」
 そうでしょうと高杉と桂に顔を向けるとニ人はコクリと頷いた。
 銀時は目をパチパチと瞬きしながら、松陽を見上げる。
 「ともだち……ってなに?」
 「一緒に泣いたり笑ったり互いの事を大事にする仲間の事ですよ」
 「なかま……」
 ゆっくりと呟き刀から手を離す。
 そんな銀時を松陽はもう一度撫でた。
 「銀時すまない。俺はお前の事を考えていなかった」
 「俺も怒鳴ったりして……御免」
 桂は銀時に深く頭を下げ、高杉は少し目を逸らしながらもはっきりと言った。
 「いい、よ……ともだち、だから」
 銀時はたどたどしく言うと目に涙をためて微笑んだ。
 初めて見る銀時の笑顔に松陽は愛おしそうに目を細める。
 桂と高杉もほっとしたように笑うと銀時の髪へ手を伸ばして触れる。
 銀時は今度は其の手を拒まなかった。
 温かいと銀時は思った———─。
 (はじまりの日)
 銀色は“仲間”という名の温かさを知った。
