二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.29 )
- 日時: 2010/12/14 17:37
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: lScS.l4u)
- 第十三話【キミの秘密】 
 どう話しかけたらいいのか、教えてくれる人なんていなくて。
 冷えた空気が頬や指を突き刺す帰り道。二人並んで歩いているものの、どう話を切り出せばいいのか解らない。話が難しすぎて、簡単に聞ける事じゃないんだもん。
 いきなり"アツヤ"の名前を出す訳にもいかないし…でも、それならどう言えばいいの?
 「あの…桃花?」
 視線を士郎に移す。何故か士郎は、不安そうな心配そうな、とにかく浮かない顔をしていた。きっと、さっきから難しい表情ばかりしている私が、その表情の原因なんだと思うけど。
 「どうかした…?もしかして、サッカー部に入るのが嫌だった?」
 それなら、僕が皆に言っておくよ!
 気を遣ってくれているのか、ふんわりと士郎は、笑った。でも、瞳は暗い。ぬか喜びさせちゃった気分だな。
 「ううん、違うの。サッカー部には、入部させて貰います」
 自然と溜息を零した士郎。それほど部員が増える事が嬉しかったんだ。だから私なんかが入っても、あんなに喜んでくれたんだね。
 心が羽が生えたみたいに、軽く感じる。重苦しい疑問も、今なら聞ける気がした。
 「士郎は…いつからFWもこなすようになったの?」
 しばらくの沈黙の後、士郎は顔をふっとあげた。
 「小学校の…中学年くらいかな?」
 3、4年生くらいかな、中学年っていうと。それって…多分、事故の少し後くらいだったと思う。
 「…そっか」
 「どうしたの?急に」
 「ちょっと気になってね。アツヤに似てたから」
 言い終わってから、私は自分の失言に気づいた。どうしよう、士郎を嫌な気分にさせちゃったんじゃないかな?そう思った刹那、謝らなくちゃと口を開いた。
 …でも、
 「…桃花、すごいね」
 ぽつり、士郎が呟いた。聞き返す間も無く、士郎は言葉を続ける。どこか切なげなその横顔。私は、士郎の言葉を遮る事が出来なかった。
 「他の子たちは、全然気づかなかったのに」
 "気づかなかった。"…って事は、士郎は何かを隠してるの?今まで誰にも知られなかった、何かを。
 「確かに、FWの時の"吹雪 士郎"は、僕じゃない」
 「……?」
 淡々とした口調は変わらずに、ただ少し複雑な表情で、士郎は告白してくれた。
 「——もう一人の僕…"吹雪 アツヤ"だ」
