二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.15 )
- 日時: 2011/08/21 17:35
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: Xn5/gwB3)
- 了解。更新しまーす ´◇` 
 青年が立っていたのは、道らしい道の見当たらない草原。それが、セルファイテスの大陸。
 青年はまっすぐ南を目指した。マレイヴァの国へ行くために。
 一歩進むごとに、手が汗ばむのを感じる。一歩進むごとに、体がわずかにびくりと震えるのがわかる。
 マレイヴァまでは近からずとも遠からずな位置にあった。焦るように高鳴りする心臓を押さえ、青年は国へ入った。
 辺りは静か過ぎた。遠くの風の音、波の音さえ、耳に運ばれてくる。
 何の気配も、何の生気も感じられなかった。
 成年は両手を胸の前で組み、人さし指と中指だけ立てて交差させた。“祈り”をあらわす。
 ゆっくりと歩き、城下町の中を進んだ。
 やがて青年は、一つの像の前で止まった。荒れ果てたこの地からは想像できないほど美しく、不思議な石像だった。
 それだけは、どこも朽ちることなく、壊れることなく今でも輝き続けていた。
 青年は目を細めた。この国を哀れんだ。
 逆なんだ、と青年は思った。この国が滅びたから魔族が滅びたのではない。
 魔族が滅んだから、いや、正確には、
 魔族が完全に滅びる間際、この国は滅んだのだ——。
 青年は膝を折り、頭_こうべ_を垂れた。
 「・・・古に存在せし真の勇者よ。数多の苦難を乗り越え、幾度となく邪を退けた正義の魂よ・・・
 我は遺志を継ぐもの、唯一無二、血を受け継ぐ者。我、儀式に基づき、全てを後に語り継ぐことを誓う」
 青年は目を伏せたまま、口をほとんど動かさずに言い切った。しばらくの静寂が、町を支配する。
 失敗したかな、と青年はふっと思った。もう一度やってみようかと、両手を組みかけた時。
 『汝の儀式——受け入れた』
 無人のはずのそこから、声が響いた。青年は驚く様子もなく、すっくと立ち上がる。
 『汝の求めるものは』
 「古の世界の経緯を知る事」
 “正しき答え”を言う。
 『了承した・・・』
 聞いたとおり、割とあっさりした[性格]だ。とやかく言われないのは助かる。
 青年の考えはどうでもいいものである。“声”が、重苦しく響いた。
 『古の真の経緯』
 『数百の時を経ても直 忘らるる事なき光の申し子』
 『神の使者』
 『世界樹人の子孫』
 『汝の子孫に——再び、真実を与えよ』
 目の前がカッと熱く白く光った。元から目は閉じていたが、無意識のうちにぎゅうと瞑りなおしてしまった。
 ——どれくらい、経っただろう。
 青年は薄れ行く自分の意思に、目を開けてみろ、と小さく言った——・・・。
