二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.22 )
- 日時: 2010/12/22 17:33
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: FLkf3417)
- マイレナとリーシアの互いの背が触れた。 
 (敵の数は、約十倍。実力的には、互角と推定・・・戦闘、可!)
 マイレナはそれだけ考えると、背中を守る戦友を見る。作戦は? と言う、アイコンタクトだ。
 「・・・いつもの通りでいい。
 ただ、プラスで奴らの話し声には注意してくれ。意図を知りたい・・・出来るか?」
 「もち。——さって、運動しますかっ!」
 マイレナはぐるぐる、と自らの剣をまわし、ピタリと止め、中段に構えた。
 「・・・でも、殺しはだめだよ、リーシャ」
 「・・・。努力する」
 二人の会話は、そこで一度途切れた。
 最初に動いたのはリーシアだ。向かってくる恰幅のいい女が持ったフライパンを、爪を使って弾き飛ばす。
 マイレナは、おそらく武器商人であり、その手中にある商品らしきハンマーを持った男を見た。
 動きは素人丸出しだ。マイレナは冷静にハンマーをよけ、相手の背をとり、そこを蹴りつけた。
 そのまま、耳をすませる・・・誰かの話し声がした。
 「——まずいよ。この二人、強い」
 「——くそっ、怪我はさせてもいい、生かして捕らえることだけ考えろ!」
 「——難しいって・・・」
 「——あの親父の食われ様、見たいのか!? それに、レイ——」
 そこで、人の波に呑まれたのか、声は聞き取れなくなった。だが、十分だ。
 マイレナは頭は悪くない。情報整理は得意だった。
 (生け贄かな? 旅人を差し出しているみたいだねぇ)
 マイレナはリーシアを呼んだ。完了、と呟く。
 リーシアは頷き、住民たちの攻撃をかわすと同時に小さなものを群集に向けて投げた。
 「っつ!?」
 ぼぉん!
 それが破裂し、白い煙を出した。
 「さっ催涙ガスっ!?」
 「ご名答」
 素早くマスクを装着したリーシアが、一言だけ言った。
 「ひ、卑怯なっ・・・」
 「不意打ちかましてくれたあんたらに言われたくないな」
 煙が散る。中から顔をゆがめた住民たちの姿が見えると、マイレナは腕を組み、ドン、と足を鳴らした。
 「さ、あ、あ、あっ、て」
 にやりと笑って、(おそらく額に怒りマークをつけて)マイレナは凶悪な笑い声を出す。
 「言ってもらおーかなぁ? 何で 旅人_私ら_ を狙ったのかぁ」
 住民はそろってコクコク頷いた。
 途中途中だんまりを決め込まれ、そのたびマイレナが会話から推測した内容をずばりと言って図星を指し
 また喋らせ・・・を繰り返した結果、ようやく旅人狙いの理由をつかめた。
 事の始まりは、一年半前。
 いたって平和そのもののアインテルスの町に、一人の男が迷い込んだ。
 名はエージェ。
 金髪で、翠緑の眸の色を成した、魔法使いであること意外は普通の青年だったように見えた。
 ・・・見えた、そう、過去形。
 実際は、違った。
 彼の正体は、魔法使いの正体は、
 ——魔物、だった。
 魔物の要求は、年に四度ある祭りに、生け贄を捧げること。
 自ら死のうと思う者はアインテルスにはいなかった。
 悩み、悩み続けたうちに、最初の祭りは来てしまった。
 丁度その日、幸か不幸か、その町には別の旅人が訪れていた。
 町の民は協力して、その旅人を、生け贄とした——以来、それは続いている。
 祭りの近くに訪れたものを、何とか言いくるめ、祭りまで滞在させて——
 「・・・ひどいねぇ」マイレナがフン、と鼻を鳴らす。
 「ひどい・・・です。あの男さえいなければ・・・」
 「あんたらがだよ」
 マイが鋭く睨む。「何も知らない人、見殺しにしてさ。戦おうって気、ないの?」
 「それは」
 町の人がサッと目をそらす。「我々は、ただの一般人なんだ。あんたたちみたいに、強くなんか・・・無いんだ」
 「そうだよ。しかも、あの人がエージェの味方してんだもん」
 「あの人て?」
 マイレナは聞き返した。まさか聞かれていたとは思わなかったらしいおばさんは、盛大に驚いた。
 目を逸らし、縮こまるが、マイレナは容赦ない。
 ぎりぎりまで顔を近づけ、睨み・・・おばさんは、ようやく口を開いた。
 「・・・レイサさんだよ・・・生まれながらの、魔法使いさ」
