二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜参照3000突破!!〜 ( No.470 )
- 日時: 2011/07/31 21:06
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 26 一筋の光 
 私のワガママのせいで彼らに迷惑をかけてしまった。
 私が余計なことをしなければ、彼らを傷つけることがなく、彼らは自分たちの夢にまっすぐ進めるはずだった。
 でもしょうがなかったのだ、守たちを助けるには彼らが必要だったから、彼らのあの強い心が必要だったから、彼らを犠牲にしてしまった。
 私はなんて極悪人でズルい人なんだろう。国の王女だから皆に守られてばっかりで、ずっと逃げてばっか。
 でも、今回は逃げたくない。目を伏せてなかったことにはしたくない。自分の最愛の人たちをどうしても失いたくはなかった。だから知らず内にあんな行動をとってしまった。
 ——彼らを異世界に連れてくること。
 結果的に守たちは救われた。この世界も平和になった。でも、彼らはどうだろう。
 自分の家に帰れなくて、自分の家族や友達に会えなくなって、悲しいのに、苦しいのに、辛いのに………私はなんてことをしてしまったんだ。
 思うたびに両目から涙があふれてくる。
 今、走っている時も涙と汗が止まらず、流れている。
 —悔しい
 どうして私はこんなにも弱いのだろう。
 —悔しい
 どうして私は人に頼ってばかりなの。
 自分問うても答えは返ってこない。当たり前の事。当たり前なのになぜかものすごく虚しく感じる。
 「ハァハァ…着いた」
 そう考えてたうちに私は神官の王室の扉の前までやってきた。
 この姿を見られたら、また兄様に叱られる。
 急いで両手で頬の涙を拭き取って戸を叩いた。
 室内に戸を叩かれた音が響く。
 「どうしたのですか?」
 悠也のあの穏やかで優しい声が返った。
 「あ、あのぅ冬花です」
 「姫?どうぞ、お入りください」
 室内に入ると、悠也は机に何やら難しそうな本を広げて、こちらを向いた。
 「その…悠也さんに相談があって、ちょっとお時間いただけますか?」
 「王には相談しないんですか?」
 「だ、だって、兄様絶対に反対すると思うから…」
 「フフッ、いいですよ。僕も少し姫に話があるので」
 と言って、開いていた本を閉じ、本棚の空いているところに押し込み、冬花を椅子に座られると、自分も彼女の方を向くように、椅子を正面に直した。
 「あの…私に話っていうのは?」
 「たいしたことではありませんよ。それより、姫の話からどうぞ」
 優しく笑いかけて、冬花の緊張を解いた。少し目が赤くなって腫れているのを見ると、また泣いたのだな、とすぐにわかったが、裾が少し濡れているということは、涙を拭いた、つまり触れてはほしくない、と彼女は思っている。本当は力になってあげたいが、あえて触れないようにした。彼女をこれ以上悲しませたくはない。
 「えっと…円堂くん達の事です」
 「その子たちに何か?」
 「はい、私が彼らの世界に行く前、もう一つの世界に行ったの覚えてますよね?」
 いきなり何を言い出すかと思えば、円堂たちが関係している話だとは思いしなかった。しかし、例のもう一つの世界と円堂たちに何の関係があるのだろうか。
 「その世界にもう一度行きたいんです、円堂くん達をつれて」
 「あの世界はもう助けようがありません。すでにアルティスの手に墜ちています」
 「あ、アルティス!?あの人と何の関係が…」
 「本来彼らは円堂さんの世界と同じ、あの石の野望を打ち砕き、勝つはずでした。しかし、その世界の運命はアルティスによって変えられてしまった」
 目の色を優しさからどこか厳しそうなのに変え、冬花を正面から見つめ直した。
 その瞳に強さに圧倒され、少しだけ両手に力を入れた。
 「僕が姫をどうして円堂さんの世界と、その例の世界にしか行っていけない、と言ったのは、なぜだかお分かりですか?」
 「もう消えているから…ですよね?」
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜参照3000突破!!〜 ( No.471 )
- 日時: 2011/07/31 21:06
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 悠也がコクンと頷いた。 
 ——消えている。いや、ほかの世界はもうパラレルワールドの概念から無くなっていると言うのが正しいだろう。存在はしている。しかし、何もかもが壊され、破壊されもう世界と呼べるものではない。つまり、今はもう滅ぼされているのだ。
 その時まで、自分たちの世界、円堂たちの世界、それともう一つ酷似した世界。これらはまだ、被害が少なかった。
 そのことを知っていた悠也は冬花に危険をさらさないために、別の世界へ行くのを拒んだ。もちろん、理由もつけて冬花に伝えたため、彼女はすぐに承諾をした。
 冬花が異界へ飛んだあと、悠也と嵐は必死でその真相を探った。なぜ、こんなにも多くのパラレルワールドの世界が滅ぼされているのか。そして、見つけ出したのが——アルティス=スロードの存在。
 冬花がその世界に着いた時には、もう手遅れだった。アルティスが支配し、円堂たちはダークエンペラーズの一員として、政府や全国のサッカー部の破壊活動を始めた。
 「彼はパラレルワールドをすべて自分の物にしようとしている。だから、守さんや春奈さんを捕まえて、あの石を渡した」
 「でも、その石を渡したところで、パラレルワールドに何か干渉でもあるんですか?」
 「そう…問題はそこなんです」
 悠也は椅子から立ち上がり、窓の方へと向かい、遠くの方を見つめた。
 「あの石…円堂さんの世界ではエイリア石と呼ばれているんですよね?」
 「はい」
 「そのエイリア石は人体のパワーを急激にアップさせる力を持つ、しかし、その力は大きすぎて、耐え切れなければ、体を破壊することだってある」
 「…」
 息をのみ、悠也の言葉の一言一言を聞き入れていた。それはすべてアルティスと関係のあるものだった。パラレルワールド、エイリア石、守たちの監禁……
 「彼はエイリア石を彼らに渡して、何をしたかったのか…それはおそらく『力の権力』というものでしょう」
 「力の…権力?」
 「えぇ、多くのパラレルワールドにその石の秘めた力を見せ、押さえつける。あるいは、それを使い、力を求めている者をこちらへおびき寄せる…つまり餌代わりです」
 「餌…そんな…」
 「彼は多くの人々を苦しめ、あの石でさえも餌代わりにする…この世に彼よりも闇に染まっている人がいるとすれば、それはもう人間ではない…」
 いつもニコニコしている悠也からはとても想像のつかない表情だった。凍った氷の様で、とても冷たくて怖い。声もまるで悪魔みたいだ、顔がもう少し嵐みたいにクールであれば、完璧に冬花は怖気づいていた。
 「円堂くん達をそこへ連れて行くことは……」
 「燃え盛る炎の中に飛び込むようなものです。今の円堂さん達ではあの世界の自分たちを倒すことはおそらく無理でしょう。それに、アルティスはそれを狙っている」
 「狙っている?」
 「アルティスは姫の秘めた力そして、円堂さんの魔力の器としての素質を欲しがっている」
 『魔力の器』、冬花が悠也に聞きた質問の一つでもあった。魔力の器というのはどういうものなのか、そして、なぜアルティスはそれを手に入れようとしているのか、何もかもが分からないまま、話は続いた。
 「もちろん、円堂さんだけではない、豪炎寺さん、鬼道さんそれに……」
 「それに?」
 黙ってしまった悠也に、冬花はキョトンとした様子で聞き返した。
 しかし、悠也は何事もなかったかのように、自分で言った言葉を訂正した。
 「?」
 「いいえ、なんでもありません。それより、円堂さん達をあの世界に連れて行きたいんですよね?」
 「えっ、あっはい…」
 どうして話を切ったのかは分からないが、とりあえず円堂たちをあの世界に連れて行く手段を聞いておかねばならない。そのために、悠也の時間を割いてまで聞きに来たのだから。
 「魔光石がない今、姫の魔法だけで転移させるのは不可能です。失敗すれば、空間軸に永久に閉じ込められてしまう」
 「魔光石が一つだけだとしたら?」
 「この世界からの空間距離からすると、できるかもしれません」
 「本当ですか!?」
 その言葉を聞いて冬花は椅子から跳びあがった。突然の行動に、悠也は少し驚かされるが、小さく笑うと、冬花に向かってもう一度コクンと頷いた。
 「夏未さんが今、魔光石の一つを持っているんですよね?」
 「はい!!でも、どうしてそれを?」
 すると、悠也はもう一度クスッと小さく冬花に笑いかけた。
 「会話の声がとても大きくて、ここまで聞こえていましたよ?」
 「えっ、そんなに大きかったんですか!?あわわ、お仕事の邪魔をしてごめんなさい///」
 顔をほんのりピンク色に染めて、頭を下げて謝った。年上から見ると、とてもかわいらしい動作だ。
 「でも、この話は王には内緒ですよ?バレるとうるさいですから」
 悠也が冬花と目線が合うように、しゃがみ込んで自分の口の前で人差し指を立てた。
 「はい!!」
 「では、このことは夏未さんたちの怪我が完全に治るまで、待ちましょう。その後、守さん達も呼んで、どうするか決めてから、行動しましょう。いいですか?姫」
 「じゃあ、この事は今、あまり円堂くん達には…」
 「言わない方がいいでしょう。その時は僕が直接伝えますから」
 今度は立ち上がり、椅子に掛けていた白いマントを冬花に羽織った。
 「もう日が暮れています。少し冷えると思うので、ここで何か温かい物をのんでから、移動してください」
 「ありがとう、悠也さん」
 悠也に渡された熱いココアを、一気に飲み干した。
 一方、悠也の部屋の前では、あの少女がアルティスとの連絡を取っていた。今までの悠也と冬花が話していたことを、一から全部聞いていたのだ。
 「作戦は成功です。冬花姫は円堂守等(ら)をつれて、例の世界へ転移するようです。そこで、ダークエンペラーズとの戦いを」
 「えぇ、そこで円堂守が勝てば、空間軸にも影響が大きく出る。フフッ、本当は彼らがこの世界にいる自体でもうかなりの影響が出ているんですがね。それでもまだ足りない……頼みましたよ——
 
 カリア」
 「はい、ご主人様」
