二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集中!!!〜 ( No.500 )
- 日時: 2011/08/12 20:01
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 32 交差する思い 
 「春奈と秋はいいとして、アンタはどこほっつき歩いてたの!?」
 「いや〜76層から出た時にさぁ〜修也がいないな〜って、ハハッ」
 (俺のせいかよ…)
 左手で頭を掻き、右手は上下にパタパタさせて、努力したつもりだが、作り笑いがバレバレだ。
 「ハハッ、じゃない!!今もう9時半!く・じ・は・ん!!!」
 「ほら、急がばまw「それはこういう時には使わない!!」」
 「何か、夏未さんお母さんみたいですね」
 怒られている三人を見ながら、音無が言った。今はちょうど休憩時間で、マネージャーがドリンクを配ったり、タオルを渡したりして、汗だくの選手たちを休ませていた。
 「春奈と秋も、もう少し早く来なさい!朝食食べ終わるのにそんなに時間はかからないでしょ!?」
 「……春奈を待てと言ったのは夏未かと思われ」
 「だっ、だってぇ〜服が見つからなかったしぃ〜」
 胸の前で人差し指をつんつんしたりして、必死にいい言い訳を探している。
 「アンタの服は何万枚あると思ってるの!?」
 「そんなに服はないかと…」
 「秋は黙ってなさい」
 秋による正しい指摘を跳ね返し、威圧で三人を押さえつけている。守はハァとため息を吐いた、今の状況でこれが一番ストレス解消の行動だ。
 「もういいわ。怒るのも疲れた。あっ、そうだ。円堂く〜ん練習再開する〜?」
 「あぁ!!」
 元気よく答え、肩にかけてあったタオルを雷門へ渡すと、ゴール前に走って行く。
 「おい、夏未。お前もやるのかよ?」
 自分もフィールドへ出ようと思い、足を踏み出した瞬間、守に引きとめられた。
 「えぇ。アンタもやる?」
 「お前、あいつの事忘れたわけじゃn「忘れてないからよ」なんだと?」
 守が夏未を睨むと、彼女は振り返りあの怒っていた表情でもない、守や修也をからかっているときの表情でもない。彼女の表情はとても意志の強くて、覚悟の炎を灯した瞳を宿していた。
 「彼が託した思い…私はそれを無駄にしたくない」
 ただ一言だけ残すと、フィールドへ入って行った。
 (どいつもこいつも…)
 唇を強く噛み、両手の爪が手のひらに、くい込むくらいの力で握った。
 「まっもるぅ〜なんでそこでぼっとしてんの〜?」
 遠くの方から、春奈の声が聞こえた。もう一度夏未がボールを追いかける姿を睨みつけると、いつものところへ歩いていく。
 (俺はぜってぇにサッカーはやらない。冬花を本当に守れるまで、俺は絶対に…)
 「ゴットキャッチ!!」
 また同じ光景が繰り返された。止めては弾かれ、現れては消え、失敗ばかり、成功への道のりはまだ長いだろう。
 「あと少しなのに!」
 「時間はまだあるから、焦らずゆっくり行きましょ。それで、守、サッカーやらない?」
 ベンチ付近に立ち、木に体を寄りかかり、偉そうに腕を組んでいる守を呼んだ。夏未は手にサッカーボールを持ち前に突き出して、彼が来るのを誘っているが、守は返事も関心を示したりもせず、閉じていた目を片方だけ開け、チラッと少しだけ夏未を見ると、すぐまたに閉じ、自分だけの世界に入ってしまった。
 「寝てるのか?」
 「まさか。任務中に居眠りはルール違反よ。あれは瞑想中。アンタ達は分からないかもしれないけど、さっきから魔力が大きくなったり小さくなったりしてる…って無視すんな!!」
 夏未が怒鳴りつけても完全に無視。相手にする気は全くないらしい、が、夏未の堪忍袋はそろそろ切れるころだ。
 切れるまであと数秒の時、次に円堂が手を振って呼びかけた。
 「お〜いっ、こっちに来てサッカーやろうぜ!」
 「チッ、しつけぇ…」
 舌を軽く鳴らし、今度は、いい加減にしろ、とでも言うかのように、ため息をつき、河川敷の階段を上り始めた、どうやら帰るつもりのようだ。円堂と夏未のしつこさに耐えきれなかったらしい。
 「依頼放棄だね〜」
 相変わらず、音無に抱きつきながら言った。彼女は昨日のことは覚えていないらしいが、音無に恐怖を与えてしまったことに対して、罪悪感を感じ、さっき何度も謝っていた。しかし、音無は笑いながら、大丈夫だよ、と言い、あっさりと春奈を受け入れたのだ。
 「いいのか?あれだと、ヒロトに首飛ばされてもおかしくないだろ」
 (まぁ、夏未もこれで引き下がるとは思えないけどな…)
 ボールを抱えている夏未を見ると、彼女には余裕そうな雰囲気が漂っている。どうせまた脅しだろう、と思ったがどうやら違ったらしい。彼女は円堂の次の一言を待っていたのだ。
 「逃げるのかよ!!」
 「は?」
 訳が分からなく、思わず間抜けた声を上げたのは春奈だった。修也や秋も頭にはてなマークを浮かべて、円堂を見た。滅多のことでは自分の世界から帰ってこない秋をも引きずり出した円堂の言葉は、それほど大きかったのだろう。
 振り向くことはなかったが、守は足を止め円堂の言葉を聞いたのだろう。
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集中!!!〜 ( No.501 )
- 日時: 2011/08/12 20:01
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 「大好きなもんから逃げてぇんじゃねぇよ!!」 
 「お前に何がわかる」
 興奮状態の円堂とは裏腹に、守は冷静で低い声で答えた。
 「わかる!!お前、本当はサッカーが大好きなんだろ!?だったらどうして逃げるんだ!!真正面から向き合ってみようと思わないのかよ!?」
 「知った口で叩くな!!サッカーをやっていたことで、俺は…俺は大切な人を失ったんだぞ!!バカみたいに毎日サッカーやっているテメェ等と一緒にするな!!」
 「『郁斗(イクト)』のためにも、サッカーはやり続けるべきじゃないの?」
 郁斗——俺はどうすればいいんだ……
 《俺はサッカーが大好きだ!今もこれからもずっとサッカーをやり続ける!!》
 少年の笑顔を声が脳裏に浮かんだ。彼が自分たちにサッカーの楽しさを伝え、居場所をなくした自分たちを癒してくれた一人でもあった。彼がいなかったら、今頃自分はどうなっていただろうか——
 けど
 「俺はサッカーをやめたんだ…サッカーはもう、しない…」
 「っ…」
 「ハァ、分かった」
 諦めたのか、やっとのことで夏未は守を引き留めないかと思われたが、そうでもなかったらしい。
 「一発だけ撃ちなさい。本気のシュート」
 「だから…俺は…」
 「俺が全部受け止める!お前の苦しい気持ちも悔しい気持ちも、全部な!!」
 胸を右手で軽くポンッ、と叩き、満面の笑みで円堂は言った。
 あの笑顔で救われた人々はたくさんいる。今なら少しだけわかる気がした。彼がなぜそんなにも人を惹かせるのか。あの笑顔にこもっている思いは本物だ。
 「《サッカーやろうぜ!!》」
 「!?」
 少年郁斗の顔と円堂の顔が重なった。
 ——郁斗、許してくれ。一発だけ撃つ。もうこれでサッカーとは縁を切るから。
 その思いを胸に守は一度深呼吸をすると、円堂に向かって挑戦的な口調で叫んだ。
 「一発だけだ!!これでもう俺を付きまとうのはやめろ」
 「へへッ、一発で十分だ!お前をサッカーと向き合わせてやる!!」
 サッカーが大好きな少年と、嫌いな少年。顔は同じでも、背負う気持ちは違う。
 一人は皆と楽しむため、一人は少年への思い。
 交差する思いが一つになることはできるのだろうか。
