二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: D.Gray-man -contrast- ( No.103 )
- 日時: 2011/08/28 13:54
- 名前: 蛍 ◆LU8WrcLlXI (ID: bVlGyEWK)
 最初に感じたのは、ふいに目が覚めるような、そんな感じ……。
 意識がはっきりしなくて頭がボーっとしている。
 「またか……」
 もうろうとする意識の中でオレはそんな言葉を言った気がした……。
 ……いや、これを言ったのはオレじゃない。
 オレの中で消えた……。
 —————。
 消えた……? なにが?
 頭を振っても何も思い出せない。
 名前も記憶も……。
 ————— オレは……誰なんだ……?—————
 第一章 — GHOST —
 1———
 イタリア北部、天を突くように高くそびえ立つ大きな城があった。
 その城はよく見ると壁面や屋根のいたるところに穴が開いており今はすでに廃城と化している事がうかがえた。
 よくある戦争の傷跡——でもないか……。
 その城は一夜にして滅んだ。
 多くの兵士を抱え戦力は万全だったにもかかわらず。
 次の日には兵士はもちろん王や家臣などの姿も一切残ってはいなかった。
 まるで、消えてしまったかのように……。
 台所の窓から城を見上げていた黒山 暗(クロヤマ アン)はふと冷たい笑みを漏らした。
 城が敗北した原因、城を落とした犯人は分かるものには分かる。
 ———AKUMA、か……。
 昼食に使った食器を洗い終えた暗は居間で無邪気にそんな話をしていた幼い兄妹の会話に耳を傾けていた。
 暗はその城を見上げる城下町に住んでいた。
 城が堕ちたのは十年以上前で暗もあまり詳しいことは知らないが状況から判断して犯人はAKUMAで間違いないであろう。
 その城は今では幽霊城と呼ばれて町の人間は近づくことは無い。
 城が堕ちても城下町はさびることは無かった。統制はなくなったが人々が助け合い町を支えている。
 ———むしろすごしやすくて良い町かもしれないわね……。
 しみじみそんなことを思っていると窓枠にトンと何かがぶつかる音がした。
 暗は「またか」と小さくもらして眉をひそめる。
 ———まったく、家に傷をつけないでって言ってるのに……。
 窓枠には一枚のトランプのようなサイズの絵柄のついたカードが刺さっていた。
 暗はそれを何ともなしに抜き取り絵柄の裏を確認する。
 ———今夜、会合を行う———
 そこにはとても簡潔な内容だけ書かれていた。時間も場所も記してはいない。いつものことだ。
 暗は内容を確認するとそのカードをくしゃっと丸めてゴミ箱へ放った。
 ———任務じゃなくて会合か……なんかあったっけ?
