二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: D.Gray-man -contrast- ( No.84 )
- 日時: 2011/03/20 13:02
- 名前: 蛍 ◆LU8WrcLlXI (ID: 6U7QBJXl)
- 12——— 
 次の日、カレンとシンは剣をもとの祠に返しに来ていた。
 「ねえちゃん、ほんとに返しちゃうの?」
 シンは道中何度もそんなことを言っていた。
 しかし、カレンは一刻も早くこの剣から離れたかった。
 「他の子には抜けないんだから大人になったらまた来れば良いでしょ?」
 子供を納得させるための姑息な言葉だと思ったが、シンを納得させなければ、この剣から離れなければと気持ちが急いていた。
 「はーい。いつか大人になったらこの剣でカレンねえちゃんを守ってあげる!」
 素直にそんなことを言うシンをカレンは愛おしく思った。
 「こんな平和な村で剣を使うようなこと……」
 カレンの言葉を爆音が遮った。
 村の中心の方だろうか、その平穏を引き裂くように響く爆音。
 シンもカレンもビクッと音のした方を向く。
 「何か事故でも起こったのかしら?」
 不安そうに言うカレンにシンは黙っていた。
 爆発事故、そう考えれば有り得ない事ではない。被害者がいないか心配ではあるが——
 「化け物だー!!」
 カレンが自分を落ち着かせるため自答を繰り返していると一番聞きたくなかった言葉が耳に届いた。
 その言葉を境に村中に悲鳴がこだました。
 再び爆音が起こり断末魔のような嫌な声が聞こえてくる。
 「ね、ねえちゃん……」
 震える声で呼ぶ声に振り向くとシンが宙を指差していた。
 そこには、風船のような球体で体中から大砲が突き出ている。そして中心には壮絶な人の顔。
 カレンは本能的にこれが危険だと判断した。
 「シン! 走って!」
 カレンはシンの手を引き走り出した。
 さっきまで自分たちがいたところの地面が弾け飛ぶ。
 シンがビクッと震える。
 「後ろを向かないで! 精一杯走るのよ!」
 球体は自分たちを追ってくる。
 足を止めたらやられてしまう。
 「こっちだ化け物!!」
 一心不乱に走っていると後ろから声が響いた。
 カレンたちも思わず振り返る。
 そこには球体の化け物に向かって石を投げつけるカレンたちの父の姿があった。
 「お父さん!」
 思わず叫んだカレンに父は大きな声で怒鳴る。
 「お前たち、すぐに隠れなさい!!」
 戸惑うカレンたち。
 父を身代わりにさせ見殺しにするような真似はできない。
 ぐずぐずとしているカレンたちに今度は消え入りそうな小さな声で呟いた。
 「お願いだ」
 この思いを無駄にしてはいけない。
 カレンは涙をこらえ再びシンの手を引き走り出した。
 ———どうしてこんなことに……。
 走るカレンたちの後ろで大きな爆音が響いた。
